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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後7年目

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1134 星暦558年 青の月 18日 遊ぼう!(21)

「お前さんはそいつらに幾らの価値があると思う?」

俺が指したナイフや包丁を顎で示しながら婆さんが逆に聞いてきた。


う~ん。

ここで評価を間違えたら鼻血が出そうな程のぼったくり価格を言われそうだが、包丁の相場ってイマイチ分らんし、ナイフにしたってこの国の相場がどの程度なのか分からんぞ。


品質だけを見るなら今迄覗いて来た店の値段を参考にして、それら平均の2割増しぐらいかな?

だが奥まった店で売っている時点で値段が下がる気もするからなぁ。

取り敢えず品質を見極めるのは出来るぞってアピールするだけじゃダメかな?


「品質的にはこれが一番、2番目がこっち、3番がこれで4番がこれかな。

どれも十分に良い物だが。

大きさや長さが違うから、品質が一番なら値段が一番ってことは無いだろうが。

包丁に関しては・・・切れ味が良ければいいってもんではないって話だが、少なくとも鋼の良さで見たらこれが一番、二番目がこれ、3番がこっちで・・・残りは似たり寄ったりな感じかな」

包丁とナイフを俺なりな評価で並べ替えて婆さんを見やる。


・・・皺だらけな顔じゃあイマイチ表情が読めん。

続けるか。

賄賂を出してみよう。


「この国での相場って言うのはイマイチ分らんが・・・一応金貨や銀貨は入手してあるぞ?

あと、良かったらアファル王国の酒や旨い燻製肉もちょっとあるぜ。

一口、味見してみないか?」

日中に歩いている間に水を出して飲むように持ち歩いているコップに酒を少しだけ注ぎ、自分で打ったナイフで燻製肉を切って一切れ婆さんに差し出す。


「ふむ。

悪くは無いね」

ピックのような物で燻製を口に放り込み、味わってから酒を口に含んだ婆さんが頷いた。


お。

良い感じに好感度を稼げたかな?


「そんな風に見えないが、鍛冶もやっているのかい?」

俺の傷が無い手を見ながら婆さんが尋ねた。


「水精霊の加護もちなんで、火傷はしないんだよ。

精霊同士の伝手で、家の炉は小さいが火蜥蜴サラマンダーがいる。

本職は現時点では魔道具の開発に重点を置いている魔術師だが、死ぬ前にいつか飛び切り凄い魔剣を打ちたいと思っている」

まあ、飛び切り凄いと言っても現時点でスタルノが造っているレベルの魔剣が造れたら満足っちゃあ満足なんだがな。


伝説に出てくるような、戦争の流れを変えられるようなとんでもない魔剣なんぞは作れるとは思わない。

ああいうのは基本的に精霊が手を貸してなきゃ無理だ。


魔剣の動力源として魔石を使うことを考えると、精霊の加護持ちの魔術師が振るう魔術を上回る威力は魔剣で生み出すのは不可能だ。


それこそ、魔石で精霊の加護持ちの魔術師を上回る効果を出そうとしたらとんでもない大きさの石が複数必要になるから、剣に備え付けて振りまわすのが現実的じゃあなくなる。


それだって蒼流どころか清早の力を越えられるかはかなり微妙だ。

まあ、精霊は愛し子が態々自発的に危機にさらされに行くんじゃない限り戦場で手を貸したりしないから、そう言う意味では魔剣は使い手を選ばなくて便利だろうが。


下手に精霊の加護持ちを戦場に強制的に追い込んだら精霊からの報復が怖いからな。

国を守る意思が強い魔術師が運よく加護持ちになれば、過去に学院長がやった様に自発的に戦場へ赴いて戦ってくれるかも知れないが、俺だったら嫌だね。


シャルロの場合は・・・そんな話が出て来た段階で蒼流が敵国を水没させちゃうそうだからなぁ。

戦争って実はそこまでコテンパンに相手を倒したくない場合が多いと聞くから、国の上層部にとっては中々使いどころが悩ましいだろう。


一国分の国民を皆殺しにしたら色々と影響が大きいだろうし、皆殺しにせずに国を亡ぼして難民が大量に流れ込んできても面倒だし。

ガルカ王国が滅びた時だって、資金力のあるザルガ共和国が戦勝国だったからそれなりに現実的な対処をしてボロボロだったガルカ王国内の経済を立て直させたから良かったが、あれが他の国だったら勝った相手の国土に金を掛けて復興させるなんてまずやらないからな。


そうなると貧窮した国の民が他の国に流れ込むか・・・それこそ東大陸のように呪具や毒のような迷惑な物を作って生き延びようとしかねない。


まあ、それはさておき。


「ふうん。

そのナイフはあんたが打ったんかい?」

俺の方に手を差し出しながら婆さんが聞いてきた。


「ああ、それなりに頑張ったんだぜ?」

まあ、ある意味費用と手間を度外視した道楽の成果と言えなくも無いが。


「手間をかけすぎだね。

もっとスッキリさっさといい形に出来るよう、腕を上げな。

まあ・・・これだったら金貨1枚とその残りの燻製全部で売ってやってもいいよ?」

俺が一番と選んだナイフを指さしながら婆さんが言った。


う~ん。

まあ、商業ギルドでの取引の様子を見るに、少なくともアレクが持ってきた商品の売価とそれらのアファル王国での値段を考えると金貨の形とサイズはちょっと違うが金貨1枚の価値はアファル王国のとそれ程違わないようだという話だったから、金貨1枚(6万円)でもこのナイフなら価値はあると思うが・・・。


どう考えてもここは値段交渉をする場面だよな??



実は値段交渉もあまり好きでは無いウィル君。

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― 新着の感想 ―
[一言] お、腕を認めてもらえたみたいですね
[一言] ……足元見られてるなぁ。 自分の領域であるはずの裏社会でも、交渉役は上が止めそうな気がするよこれじゃ。 とはいえ、暖簾分けをしているなら弟子入り志願もやぶさかじゃないかなぁ。 問題はウィル君…
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