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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後7年目

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1087 星暦558年 紺の月 16日 裏社会からの依頼(10)

入り口で見つけた顔見知りの士官の名前はゲルグ中尉だと紹介された。

どうやら俺が名前を憶えていないのを悟られたらしい。


それとも自己紹介が無かったのかな?

情報部の人間なのだ。

自己紹介は必要最小限にしている可能性も高い。


それはともかく。

暫く待っていてくれと言われたと思ったら、何やら偉そうなおっさんとウォレン爺が案内された会議室に入ってきた。


やっぱまだ居たんか、爺さん。

年寄りなら、しっかり休まないと疲れが取れないんじゃないのか?


「お主がこちらに自分から来るなんぞ、珍しいの。

何があった?」

ウォレン爺が気軽な感じに聞いてきた。

偉そうなおっさんは名前を紹介されなかったから、やはり情報部って言うのは名前のやり取りはあまりしないのかな?


まあ、俺も情報部の偉そうなおっさんと名前を呼び合うような顔見知り以上の関係にはなりたくないから、それで良いんだけど。


第一、偉いおっさんに紹介されたのに名前を憶えていないと後で不味い可能性があるからな。

興味が無い相手は、紹介されないのが一番だ。


「お久しぶり。

実は知り合い経由でとある組織に、最近東大陸から進出してきた違法な暗殺業者の駆逐へ協力する様に依頼されてね。

ある程度情報を集めたら国の当局に渡してアファル王国側の取りまとめ役を逮捕してもらえば良いって話だったんだが・・・その活動のトップっぽい貴族の家で伯爵と家令の話を耳に傾けていたら爺さんを殺そうって話題になったんだ」

馬鹿正直に盗賊シーフギルドの長経由で暗殺アサッシンギルドの依頼を受けたと言う必要はないだろう。


予想はついているとは思うが。


「暗殺業者の駆逐?」

偉そうなおっさんが変な顔をしてこちらの言うことを聞き返してきた。


「新規参入者が割り込もうとすると、元からいた連中が縄張りからそれを追い出そうとするのはどの業種でも起きるだろ?

お互いに殺し合って解決するのではなく、国の当局側に法に則って新規参入者の手引きをしている人間を逮捕させようというのは平和的でいいんじゃないか?」

金にならない殺しをしないのが暗殺アサッシンギルドの方針ポリシーなだけなんだけどね。


「貴族が関与しているなら、確かに変に殺し合いなんぞされては面倒じゃの。

で、何か使えるような証拠はあるのか?」

ウォレン爺があっさり応じる。


「まあ、ある意味あんたが襲われたらそれが証拠とも言えるかも知れないが・・・調べる様に言われた3つの貴族家のうち、ゼルパッグ伯爵は真っ黒、ペディアグナ子爵は子爵本人と家令は関わっていないようで誰が関与しているのかまだ調べ切れていない。

グアナス男爵家は今夜調べる予定だったんだが、爺さんの名前が出て来たから先にそっちに関して情報共有した方が良いかと思ってまだ調べていない。

ゼルパッグ伯爵に関してはそれなりに証拠がある場所も見つけてあるから、他の2家にも人をやって証拠隠滅をされない様にしてくれるなら今すぐ案内しても良いぞ?

あと、ウォレン爺の暗殺に関してはまだこれからだから証拠はこれだけだな」

ゼルパッグ伯爵と家令の会話を記録した魔具を取り出し、音声を再現する。


『ウォレン・ガズラートを殺して欲しいという依頼が何人からか来ている。

丁度いいからそれらの契約を履行することにしよう』

その後の会話も暫く続くが、何分まだ何も確定していないから、直ぐに終わった。


「便利じゃのう、その魔具」

自分の暗殺計画をよそに、ウォレン爺が机の上に置かれた魔具に興味を示した。


「こないだの防音用魔具のついでに作ったトランペットの音を記録した魔具と同じ様な魔術回路で動いている奴だ。

あっちは記録機能は別の魔具にして再生機能だけの簡単なやつだけど」

これはそれなりに売れそうだなぁ。


軍部だけじゃなくって、それこそ浮気の証拠として使って慰謝料を吊り上げたい人間なんかにも欲しがられそう?

とは言え、声だけだから声真似の上手い役者とかの後ろ暗い収入源にもなりそうだが。


まあ、その言動が完全にでっち上げだって自信があるなら魔術院の方に真偽判定の術を頼めば良いんだから、極端な悪用は出来ないって事で世に出しても構わないか。


「確かに便利そうだな・・・いや、そんなことよりゼルパッグ伯爵?!」

偉そうなおっさんがウォレン爺に合意してから慌てた様に驚きの声を上げた。


「あの伯爵、領地の運営をちゃんとやってないから副業で稼いでいたみたいだが、密輸やヤバげな薬の違法販売や人身売買とかが相次いで潰されたせいで、東大陸の複合毒の販売に手を出したらしい。

ただ、複合毒は素人が扱うのは難しすぎるから、使う人間ごと提供の仲介をしているようだ」

あれだけ違法な副業をやっているのに情報部の偉いおっさんがこれほど驚くとは。


やっぱ貴族だと違法行為をあまり疑われないのかね?

結局密輸なり人身売買なりでも捕まるのは下っ端と、その上ぐらいのもんだからなぁ。

貴族の当主まで話が繋がる事って滅多にないんだろう。


まあ、それはさておき。

この後どうするんかね?

俺としてはグアナス男爵をちゃちゃっと調べて、長に適当に報告して後は第三騎士団に丸投げしたいんだが。


遅い時間まで、ウォレン爺と団長(でしたw)は何を相談していたのか・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] >ウォレン爺があっさり応じる さすが胆が座ってますね 自分が狙われているのに
[一言] さて、王太子が呼び出されるのは確定として。 (多分軍部が蜂を突くような騒ぎになる前に、上に行くだろうし) 学院長と宰相閣下も来て、「ウィル君の証言付き」で会議開始だったら笑えねぇ。 というか…
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