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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後7年目

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1073/1357

1073 星暦558年 紺の月 7日 例年の時期と言えるかも(10)(第三者視点)

ちょっと時間が戻ってます

>>>サイド ペブラン


ペブランは物心がついた頃にはケンパッサのスラムでゴミを漁って食べる物を探していた孤児だった。

生き残る為に必死に努力した結果、偶然と必然が重なってパストン島に流れて来た。

ここはスラムが無く住民も鷹揚で比較的暮らしやすい。街を彷徨くちょっと小汚いガキ達への態度が悪化しない様に、浮浪児達に住民の顰蹙を買わない食い扶持の稼ぎ方を指導しているうちに何やら浮浪児のボスっぽい存在になっていた。


教えても教えても安易な手段を取ろうとするガキが出てくるのをゲンコツで止めていたら、いつの間にかそう見られる様になったのだ。

自分としてはイマイチ納得出来ないが。


「こら!

狙うならどれだけ払ったか覚えていないような酔っ払いにしろと言っているだろうが!」

街をきょろきょろと見て回っている本国からの呑気そうな人間を狙おうと近付いていたチャブの頭にゲンコをやり、裏路地へ引き摺り込んで叱る。


「え〜、絶対あれなら気付かれないで盗れたのに!」

チャブが不満げに頬を膨らましながら言い返す。


「どこで盗まれたのか分からなくても、素面な人間相手に財布を盗んで中身だけ一部抜き出して財布を戻すのは無理なんだから、『盗まれた事』はしっかり自覚するだろうが。

街から追い出されたら山で野草と野鼠や兎を狩って食べる羽目になるんだぞ。

スリをする孤児が居ると街の人間に確信させるな!」


チャブや自分の様にジルダスやケルパッサで生き残る可能性に見切りをつけてここまで密航してきた浮浪児の数はそこまで多くは無い。なのでしらっと街の子供に混じって適当な雑用をこなしてなんとかギリギリ生きていけないことも無いが、雑用やお使いがない時は街の住民以外の人間を狙って財布を頂いてなんとか食っていくことになる。


何やら過去に島の内地でヤバい麻薬を育てようとした連中のせいで内地側への街からの出入りがそれなりに管理されているせいで、住民でない孤児たちが農地での手伝いに参加出来ないのは痛い。


孤児院の子供達が手伝いに行く日はさりげなく合流して参加する時もあるのだが、いつでもそれが出来る訳ではないし、孤児院の子供達の農業手伝いは非定期だ。

お陰で時期によっては上手く屋台や店の人間に話し掛けて雑用を頼まれる社交性が無いガキはつい安易な手段で食い扶持を稼ごうとするので、目を離せない。


「そんな事を言ったって、今日は入港した船が無いから酔っ払いなんてまだ居ないんだよ」

チャブが不貞腐れた様に言い返した。


「これであっちの半額焼き損ねパンでも買ってこい」

銅貨を1枚渡して言い聞かせる。


チャブはまだ幼いので酔っ払いが多い夜に出歩くのは難しく、雑用や小遣い稼ぎの仕事を貰えないとどうしても食うのに困る事になりやすいのだ。


自分がそんな弱者の世話を見る必要があるのかと言うのは微妙なところだが、ここでチャブが安易にスリをしてそれが発覚すると、そのうち街の人間が浮浪児全員の排除に動く可能性がある。

街の外に追い出されるならまだしも、島の内部に不審者を行かせたがらないこの島の方針を考えると、殺される可能性だって低くはないだろう。

力仕事や夜の酔っ払い相手の荒稼ぎが出来る自分が支援して安易な行動に走らせない方が自分の身の安全にも繋がる。


疲労ばかり多くて実りの少なかった1日の収穫に溜め息を吐きながら、夜になってきたので残り物の焼き物を屋台で買い、塒にしている倉庫の所へそっと忍び込む。

今日は入港した船がないので夜になっても酔っ払いは少ない。

先日入ってきた変な形の船は何やら若い身なりの良い男が数人しか乗っていなかった様だし。


気候が穏やかで雨も比較的少ないパストン島だが、やはり夜はそれなりに冷えるのでどこか屋根の下を確保できないと眠りづらい。

隠れ家は何ヶ所か見つけてあるもだが、他の浮浪児にも幾つか教えてしまったのでまた新しい場所を探しておいた方が良さそうだ。


「よう。

浮浪児として不定期に雑用を熟すんじゃなくて、島の一員として働かないか?」

突然倉庫の上部から声を掛けられた。


慌てて逃げ出そうとしたが、何故か出口に見えない壁があり、跳ね返された。


「別に浮浪児狩りをしている訳じゃあ無い。

島の行政府の人間も、住民の奥様陣も、浮浪児が増えてきてどうしようかと困ってはいるが排除したいとは言ってないしな。

無理に隠れてコソコソ暮らす必要は無いんだが・・・小さいガキ達を捕まえて無理やり孤児院に突っ込んでも逃げるだけだろ?

孤児達に一定の仕事を任せるから、そのまとめ役にならないか?」


倉庫に積み上げてある木箱の上から顔を出した若い男が、のんびりと座り込んでオレンジを投げ掛けて提案してきた。

「取り敢えず、話を聞いてもらう為の代金だ。

美味いぞ」


自分もオレンジの皮を剥きながら男が言った。

「俺はウィルと言う。

この島に住んでいる訳じゃあ無いが、開拓を始めた頃からちょっと関係してきた魔術師だ」


魔術師?!

さっきの見えない壁は魔術なのか。


なんだって魔術師なんぞが浮浪児に話を持ち掛けてきているんだ??



孤児達関連がさらっと流されすぎたかな〜と思ったので、ちょっと孤児側の視点で話を入れる事にしました。

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、ウィルくんの生まれを知らなければ、魔術師って恐怖が先に来ますわなぁ。 で、仲良くなって色々話を聴いてたら、孤児達が自主的に魔力測定に来そうで(苦笑)。 魔力や勉強ができるようになれば、…
[一言] まあ、ウィルの場合、自分もそうだった分、そっち絡みの信用は得やすいよな。
[一言] ペブランくんはなかなか有能そうですね ウィルの手下になるのかな
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