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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目

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1000/1357

1000 星暦557年 桃の月 18日 家族(?)サービス期間(24)

「ウィル?」

店員が持ってきたヤギのフライをシェイラに分けようと切っていたら、横から声をかけられた。


「はい、あ〜ん」

シェイラの方を向いたら、魚の蒸し焼きとやらを乗せたフォークが口元に突き出された。


え??

皿に乗せるだけじゃダメなのか??


思わず周囲を見回したら、さっと何人からか目を逸らされた。

なんか口元が笑いに歪んでいる人間が居るぞ!

何人かは目を逸らさずに苦々しく睨みつけてきているが。


「ほら、早く。

フォークから落ちちゃうわよ」

シェイラに急かされ、急いでパクッと魚を咥える。


美味しい。

が、これは皿の上に分けてくれるだけで良かったんだが。


取り敢えず、報復だ!

「じゃあ、シェイラもあ〜ん」


ヤギ肉のをフォークに乗せて出したら、全然恥ずかしそうな顔をせずにあっさり食べられた。

あれ?

報復になってない??


「もう一口どう?」

更にフォークが突き出される。


うっ。

美味しいんだけど、このスタイルは居た堪れない。


「じゃあ、これで最後で」

パクッと急いで魚を貰い、自分の方からヤギ肉のを差し出す。

王都じゃあこんな事しないのに。


旅先だと大胆だな、シェイラ。



「夕食はどうする?」

店内にいた人間に生温い目で見られながらの昼食を終わり、外に出ながらシェイラに尋ねる。

『あ~ん』は男性にとってかなり強烈な攻撃だ。

しかもお返しに同じことをやってもシェイラは全然平気な顔だったし。


ううむ。

他に人が居ない個室ならまだしも、周りからああも生温い目で見られる普通の食事処で何かを分けようという話があったら、今後は絶対に取り皿を要請しよう。

切り分けてシェイラの皿の上に乗せれば良いだろうと思っていた俺が甘かったらしい。

・・・旅先で羽を伸ばすと、ああ言う事をするものなのだろうか。


今後の対応策を考えている間に、シェイラがぽんっと手を叩いて応じた。

「甘味処でケーキだけでなく軽食がある店があったらそこに行かない?

しっかり昼食を食べたから夜は軽くて良いと思うの」


以前来た時に食べたケーキはドライフルーツががっつり入った感じでちょっと俺的には甘さ過ぎる上にねっとりしている感じでイマイチ合わなかったんだが、シェイラはそれなりにあれはあれでアリと思ったらしい。


シェイラがケーキ、俺はサンドイッチ程度の軽食で済ますのは良いかも知れない。

なんだったら、王都に帰ってからお茶と一緒にクッキーかスコーンでも食べたらいいだろうし。

「ということで、そんな店を教えてくれ」

バルダンを振り返って頼む。


「勿論お前も一緒に食べて良いぞ」

バルダンが甘い物が好きかは知らんが。

でもまあ、滅多に食べられない物ならそれなりに楽しめるだろう。

珍しさだけだとしても。


アファル王国よりも暑くて砂糖の生産地に近いせいか、ジルダスの方がケーキや菓子類が安い。とは言え普通の食材よりは贅沢品扱いなので、幾ら収入が増えても気軽に食べられる訳ではないだろう。


あれは海際ではなく内陸地で生産しているらしいが、それなりに大量に輸出品としてこちらや南の港町へ運ばれているらしい。

西の大陸側でも砂糖は生産しているから香辛料程重要な交易品ではないが、砂糖も香辛料の仕入れに失敗した商人とかがそれなりに買っているとの話だ。


・・・考えてみたら、東大陸の砂糖と今まで普通にアファル王国に持ち込まれていた砂糖と味は違うのかな?

少しお土産に買って帰ってドリアーナにでも持って行くかな?

ついでにデルブ夫人にも持って行ったら甘い物に拘るシャルロを巻き込んで色々と確認作業をしてくれるかも。

パディン夫人にも一応持って帰るが、俺とアレクはそこまで拘りが無いからなぁ。

クッキーやスコーンは隠し味程度に甘けりゃいいだろって程度だから、食べた評価を詳しくするのはシャルロの方が向いている。


俺たちの家のクッキー諸々はシャルロだって食べるが、パディン夫人は他の家事でも忙しいから砂糖の比較評価の為に甘い物ばかり作っている暇はない。

その点デルブ夫人は実質甘い物を作るために雇われているようなもんだろうから、幾らでも実験できそうだ。

出来上がった甘い物もシャルロが喜んで食べるだろうし。

まあ、既にシャルロが大量に砂糖を持って帰って比較実験をさせているかもだが。


そんなことを考えていたら、バルダンの顔がぱっと明るくなってにっかり笑いかけられた。

「おう!!

任せておけ!」


「じゃあ、私たちは蚤市に戻っているから、暗くなる前に店に着けるぐらいに迎えに来てね」

シェイラが軽い感じに頼んで蚤市の方へ歩き始めた。


「そう言えば、明日か明後日にでも街の中を歩き回るんだろ?

どんな店を回りたいのか言っておいたら、おざなりじゃなくって詳しく色々調べておいてもらえるかも?」

今回はツァレス達の買収が上手くいったお蔭で早めに書類が集まってこちらで過ごす日数にも余裕があるから、蚤市をしっかり見て回った後に街の中も散策できそうだ。


「う~ん、あまり詳しく調べられすぎると発見する楽しみが減るわ。

大雑把な評判と何を売っているか程度の情報で丁度いいの」

シェイラが笑いながら教えてくれた。


そんなもんか。

まあ、確かに何もかも前もって揃えられていて解説だけされるのよりは、自分で色々と視て発見する方が楽しいって言うのはあるよな。


俺も蚤市で面白そうな魔術回路とか魔具が出てこないか、もう少ししっかり見回しておこう。

変なのを見つけちゃうと後で誰かが頭を抱える羽目になるかもだが・・・まあ、問題があったら見て見ぬ振りをすりゃあいいさ。

あ〜ん攻撃。

もう1000話ですねぇ。

良い加減きりが良いところで終わらせるべきですかねぇ。

ウィル達を終わらせて新しく書きたいような構想はイマイチないんですが。

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― 新着の感想 ―
[一言] ………………ウィル君達カップルは、バルダン君と読者一同に砂糖でも吐き出させたいのかな? まあ、そのまま人生の墓場に入ってくれるのが一番いいわけですが。 というわけで、次の話も楽しみにして…
[一言] 千話おめでとうございます。毎日楽しい一時をありがとうございます。
[一言] えええええええええ……!? 終わってほしくないです、もっとウィルくんたちの話を読みたいです。
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