表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして姫君は恋を知る  作者: 未華
メイドの日々編~そして想いは日々積み重なる~
60/180

将軍の依頼(2)


「ところで、リルディは仕事の方はどうなのですか?」

「うん。まだ慣れないけど、何とかがんばっているわよ」

「それはよかった。自分もですが、カイル様もかなり心配されておりましたので」


 何気なく出たその名に、また心臓が跳ね上がる。


「……」

「……もしかして、カイル様と何かあったのではないですか?」

「!?」


 思わず言葉に詰まり、おかしな沈黙が流れる。


「カイル様が何か無礼を?」


 私の様子にエルンの顔色が変わる。


「そ、そうじゃないのっ」


 あれは、カイルも考えあってのことだ(多分)

 おかしいのは、過剰反応してしまっている私なんだから。


「何か、嫌な思いをされたわけではないのでありますね? その……」


 言いかけて目線を反らして口ごもるエルン。

 何かを言い淀んでいる。


「うん」


 嫌ではなかった。

 ただ、ちょっとびっくりしただけだ。


「はぁ。まったく仕方のない奴だ」


 独り心地でそんな呟き漏らすと、私へと視線を向ける。


「リルディ、少し時間を作っていただくことは出来ますか?」

「え? えーと、午後の早い時間に一度休憩があるから、その時間なら大丈夫だけど」

「貴重な休み時間に申し訳ないのですが、この屋敷の北の奥にある”書庫”に、これを届けていただけますか?」


 そう言って、エルンはリボンのかかった手のひらサイズの、正方形の小箱を差し出す。


「可愛い小箱だね」


 白いリボンに箱は淡いピンク色に花の模様があしらわれていて、綺麗で可愛らしいものだ。

 女の子が好みそうなデザイン。

 私も例にもれず、その可愛らしい小箱に顔が綻んでしまう。


「よかった」


 そんな私の様子を見て、何だかエルンは嬉しそうに微笑む。


「?」

「あ、あと、少々お待ち下さい」


 そう言うと、小箱のリボンに挟んであったメッセージカードらしきものに、更に何かを書き足すと、元の場所に戻す。


「では、よろしくお願い致します」

「それで、これは誰に届ければいいの?」

「カイル様にです」

「えぇ!?」


 思わず、おかしな声が出てしまう。


「申し訳ありません。自分はこれから火急の用事があり、届ける時間がないのであります」

「で、でも……」


 よりにもよってカイルにだなんて。


「そうそう。それから、お茶もお持ちいただけますか? 二人分」

「二人分……」


 ということは、カイルの他に誰かいるということになる。

 お客様がいるのなら、これを渡してすぐに部屋を出てしまえばいい。


「うん。分かったわ」

「助かります。それではお願いしますね」


 いつものように、礼儀正しく一礼する。


「うまくいくことを願っております」


 そう言った顔がなんだか、少しだけ寂しそうにみえてしまう。

 でもそれも本当に一瞬のことで、すぐにいつものように晴れ渡る空のような笑みへと戻る。


「? うん。きちんと届けるから安心して」


 私は小箱を握りしめて、エルンへと笑みを返すのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ