想いの後先に(6)
「カイルってば何してるの!?」
予想外の行動に慌てふためくリルディ。
「聞いてほしいことがある」
カイルはいつになく真剣な面持ちでリルディを見つめている。
「カイル?」
その熱を含んだ視線を受けて、鼓動が大きく跳ね上がる。
「魔力を持つ出来損ないの、天翼でも人でもない俺を、お前は必要だと言った。だから、俺は自分を受け入れ、偽らざる王になる決心がついた」
「あの……」
「俺の妃は、リルディ意外には考えられないんだ。どんなに拒絶されようとも、俺は何度でもお前だけを求める。俺は誰よりもリルディを愛している」
向けられた眼差しは穏やかで温かい。
胸にこみ上げるのは、大きな喜びと少しの切なさ。
一度目を瞑り大きく息を吸い込み、カイルへと真っ直ぐに視線を向ける。
「私もカイルの側にずっと居たい。でも、私はまだそんな器じゃない。カイルワーン王の妃には全然未熟。だから、もう少し待っていてほしい」
幼く無知な自分を理解している。
恋をして、王たるカイルの側にいるためには、想いだけでは足りないのだと言うことを思い知る。
それが時々苦しく歯がゆくもある。
それでも、妥協も諦めたくもないと思うのは、誰よりもカイルのことが好きだからだ。
大切なその人の隣りに相応しい自分に絶対なるのだと、固く心に決めている。
「またフラれたか」
「ごめん……なさい」
「いや、謝るのは俺の方だ。子供じみた独占欲で、お前を困らせてばかりだな」
握りしめていたリルディの腕を引き寄せ、手の甲に口づけを落とす。
「カ、カイル!?」
「ただの親愛の証だ」
真っ赤になり目を白黒させているリルディへそう言葉を向ける。
「リルディアーナ姫がカイルワーン王の妃になるのは、もう少し待とう」
きっとそれは遠くない未来のことなのだから。
「うん。ありがとう」
「ただし、今日はまだ俺はただのカイルで、お前はメイド兼恋人のリルディなんだ。だから、もう少しだけお前に触れさせてくれ」
抱きしめられ、額に優しく口づけが落とされる。
「うん」
瞳を絡ませ笑みを交わし、どちらともなく唇を合わせた。
………………
そののち、イセン国は更なる発展と安寧を極めることになる。
そして、太平の世を創り上げた王の傍らには、常に金の髪の妃が寄り添っていたという。
王を癒し、時に導いた妃は ”イセンの宝玉”と呼ばれ人々に愛された。
妃はその昔、イセン国の遥か南の小国に生まれた姫君だった。
そんな南の小国の姫君が、大国イセンの王と出会い恋に落ちる話は、多く語り継がれ、長い時を経て一つのおとぎ話となる。
“そして姫君は恋を知る”
そう名付けられた物語が出来上がるのは、それからずっとずっと後の話。
長い長い物語でした!
最後までご愛読大変感謝です!!
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