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窓から富士山を眺めながら俺は…  作者: 白い黒猫


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8/14

ここは……病院、俺は佐藤は分かるけど、今は何日の何時?

「佐藤元気さ~ん! 部屋に戻りましたよ~~どこか痛い所はないですか~」

 そんな言葉をかけられる。

「喉が……水を、水……」

 QとAがイマイチ噛み合ってないのを意識することもこの時の俺は出来てなかった、それだけ水分への欲求が強かったのと、麻酔の影響で理性が少し緩んでいたのかもしれない。

 吸い飲みで水を与えられるが、その口からのチョロチョロとした水の流れがもどかしく流れるくらいに俺は水を飲む。

 恥ずかしいくらいむさぼり飲んでやっとひと心地つき、大きく息を吐く。

「佐藤元気さん、いいですか~! 

 夜まで絶対安静ですから! 身体を動かさないで下さいね! 起き上がらないでください!ください! 寝返りも控えて下さい!

 傷開いてしまいますので! ーーー」

 そう言いながらベッドの四つめの落下防止柵を上げる音がする。

 病院というのは患者の転倒、ベッドからの落下を恐れる。その為に通常でも三箇所の柵を上げる事を求められている。そして四つめの柵まで上げられるという事は、ベッドからうっかりでも出ないようにするためのもの。患者を守りつつベッドに閉じ込める為。

「何かありましたら、自分で動かずコチラで呼んで下さいね!」

 そう言われながら握らされる呼び出しボタン。

 いつもよりキツめに言葉をかけてくる看護師さん。

「はい……はぁ」

 情けないふやけた返事を返す俺。喉の渇きが癒えたら、次に来るのは眠気だった。

「食事とられますか? パンだけになりますけど」

 俺は小さく頭を横に振る。今日は朝から何も食べていないが、今は空腹より身体が休みたがっていた。

 そのまま俺は夢の世界へと落ちていった。

 麻酔の影響で意識がボンヤリしている内は楽だったが、麻酔が徐々に切れ出すと身体が色々思い出す。


 俺は痛みで意識を取り戻す。それは手術の傷の痛みではなく、身体がガチガチに強ばった痛み。

 身体を動かそうとして絶対安静である事を思い出す。どこまで動かしてよいのだろうか?『起き上がる』『寝返り』厳禁と言われていた事を思い出す。となると、この階の自動販売機どころかベッドから出ることもできない。

 しかし水は飲みたい。かといって無理に身体を動かして大変な事になっても困る。水を飲むためだけで看護師さんを呼ぶのも悪い。

 隣のおっさんを頼りたいが、コロナのせいでカーテンの中に医療従事者以外の人を入れてはいけない規則。

 考えている間にも身体のアチコチが痛みを訴える。

 特に腰や背中が異様に痛い。手術の傷口があるであろう足の付け根のじんわりとした痛みよりも、強ばった身体の節々の方が辛い。

 もう一つの問題は今は何日の何時なのかが分からない。 ものすごく寝たような気もするがそうでもないような気もする。

 部屋は明るく昼間であることは分かる。

 スマホを見たいが手術に向かう際に引き出しに入れてしまって手元にないので今がいつなのか調べようがない。

 俺は数時間しか経ってないのか? あのまま寝てしまい次の日になっているのか? それすら分からない。

 点滴スタンド見ると知らない袋が増えていた。入院時に説明された医療計画から予想するに、抗生物質か痛み止めだとは思う。

 なんか寝る前に身体を無闇に動かさないように強く言われていた記憶があるだけに身体を起こし伸びとかするのも躊躇われる。確か許可が降りるまで動かさないようにとも言われていた。

 しかし身体中がコリまくっているようでアチコチ痛いし、手術直後程ではないにしても喉も渇いている。

 さてどうしようか? 俺はほんの少しだけモゾモゾ身体を動かしながら悩む。

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