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窓から富士山を眺めながら俺は…  作者: 白い黒猫


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ミッション・イン・ポッシブル

「佐藤元気さん。私、真鍋が案内させていただきます!」

 俺と頭一つ違うくらいの小柄の女性がそのように声をかけてきて微笑んでいる。

 病院では常にフルネームで呼ばれる。入院して何度もこの名前で呼ばれ、俺も「佐藤 元気です!」と応える。

 元々この名前に不満がある訳でもな、小さめに産まれた俺の健康を願ってつけた親の愛の籠ったモノであると理解している。

 しかし病気となった今、自分の名前が何とも恥ずかしく感じるのは気にしすぎなのだろうか? 

 「佐藤 元気です」と言葉に出しながら『元気じゃないから、ここにいるんだろ!』心の中でセルフツッコミしてしまう俺もいる。


 まあ、名前の事は今の状況では些細なこと。問題は俺の元にやってきた女性。

 検査に一人で行こうと思っていたら、俺に付き添いという存在が現れたのだ。

 それは女性というより女の子という雰囲気の小柄の子。

 眼鏡をかけた真面目そうな子で『さあ参りましょう!』と元気に促し俺の横をピッタリついてくる。

 俺が途中で失神等おこしても直ぐに対処出来るようにとの事もあるので、俺を見守るように、同時に見張るように……。


 こんな監視の目があるのにコンビニなんて寄れるのだろうか? 俺は真鍋さんを横目に見てそんな事を考えどうしたものかと考えていた。


 二階へいき、キビキビと心電図検査室の前で俺の手続きをしてくれて、俺を検査室に送り出す。

 心電図検査を終えて待っていると、背筋をを真っ直ぐ良い姿勢で待っていて、俺の顔を見るとサッと近付いてエスコートをしてくる。まるでSPのように。

 エレベーターを使い一階のレントゲン室へと移動する。

 一階下の階に移動するくらいは階段でも良いのでは? と思うが俺が失神を起こす可能性があるという事でそれは出来ないらしい。

 男なのに女の子にエレベーターの乗り降りまでエスコートされている。そこも気恥しい。

 レントゲン待合室にて、座っている俺を見守るように立つ真鍋さん。

 ジッと見つめられておちつかない。

「あの看護師さん……」

 そう言うとその子は苦笑する。

「いえ私は看護師では無いんですよ。看護師さんを補助する役割と言いますか……医療行為以外の患者さんのお手伝いが業務となっています」

 看護師さんと制服が違う事に今更のように気がついた。

「看護助手さんだったんですね。

 この病院多くの人がいて、誰が何のお仕事しているのか分からなくて」

 紺の制服を着ている人が看護助手なようだ。

「そうですよね。私もこの職場に来てこんなに色んな職業があるんだとビックリしましたもの!」

「そんなに?」

「はい! あっ順番ですよ行ってらっしゃい!」

 俺は真鍋さんに、明るくレントゲン室に送り出されてしまった。

 行く先々で受付作業をキビキビしてくれる真鍋さんを横目に俺はどうしたものかと考える。

「終わりましたから戻りましょうか!」

 そう言う真鍋さんを前にに俺は悩む。可愛くキリッと俺に帰るように促す真鍋さんと、スキンヘッドのオッサンの顔が俺の前でグルグル回る。

 その回転が昨日俺がスィーツを買ってきた時に嬉しそうに受け取るオッサンの顔で止まる。


「あの! コンビニ寄っていいですか? 少し買いたいものがあって」


「はい! いいですよ」

 覚悟を決めて言ってみた言葉たが、看護助手の女の子は笑顔でアッサリと許可をくれた。そうしても全く問題なかったようだ。

 俺はオッサン用のプリンとヨーグルト、俺用に雑誌と……新製品のペットボトルの無糖の珈琲。

本当は新製品のコーラとか欲しかったが、今の俺の状況を見るとそれは止めておいた方が良さそうだ。

 入口で待っていた真鍋さんは俺が下げている袋のスィーツを見て少し眉を寄せる。

 俺の今の病状で高カロリーの血管に悪そうな間食なんて褒められたモノではないだろう。

「これ、違うんですよ!

 お隣さんに頼まれたオヤツで!」

 そう言うと真鍋さんは表情を緩めてくれた。良かった不真面目な不良患者と誤解される事を回避出来たようだ。

 立ち寄りも終わり二人で部屋に戻り、真鍋さんはお隣にスィーツを届けるのまでを見守って去っていった。


 その後も真鍋さんは別の患者さんのシャワーや洗髪を手伝ったり、ホットタオルを補充したり、ベッドの清掃したりとしてキビキビと働いている姿をよく見かけた。

 そして顔を合わすと笑顔で挨拶するようになる。

 お世話をしてくれる看護師さんなど、名乗り合い顔なじみの人が増えていく。

 そうやって病院が少しずつ自分の居場所となった気がするのも寂しい気がした。

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