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窓から富士山を眺めながら俺は…  作者: 白い黒猫


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3/14

オッサンからの頼まれ事は……

「兄ちゃん、今日もやけどな~頼むわ~」

 あまりにも集い過ぎたので看護師さんに解散を命じられ、部屋に戻る途中にオッサンが俺にコソコソと近づいてくる。規則で自分のベッドスペース以外ではマスク着用というのを守ってはいるものの、近すぎる気もする距離。それだけによからぬ相談を仕掛けているように見えてしまうのはこのオッサンのキャラクターの所為だろう。

 初日に俺をビビらせた【頼み事】は怪しい違法な事ではなかった。

 なんて事ない病院内にあるコンビニへのお買い物。

 それは決してパシリでもはなく、キチンとお金を預かりしかもお釣はお駄賃となる非常に良心的なお使い。

「あの、俺も棟内フリーになったので、もう下のコンビニ行けませんよ」

 ここでは患者それぞれに行動範囲を設定させられる。段階がどの程度細かく設定されているのかは知らないが、初日俺は【院内フリー】という音符つけたノリノリのピクットの描かれた札みたいなものを備え付け棚の壁面に貼られた。コレは病院内なら自由に移動可という意味。

 そこまで鼻歌で踊りながら歩く程ご機嫌なシチュエーションか? とも思うが、制限が設けられた今なら、その自由がどれ程嬉しいものなのかが分かる。

 携帯心電図をつけた後から【棟内フリー】という歩いているだけのピクットさんの描かれたお札に変更となった。

 コレは棟とあるが、今いる自分の階の西病棟エリア内のみ移動可能という意味。 行動範囲はかなり狭められてしまった。

 表向きは俺が何処かで失神などして倒れたら大変という事らしいが、心電図の電波が通じる範囲内がその程度なのでは? と俺は思っている。

 俺の行動も制限されてしまった事を言うとオッサンはチッチと指を振る。その手の指の一本が無いことと、下がった袖の所から彫り物が見える事はもう気にしない事にした。スキンヘッドの厳つい顔も、堅気ではないだようなというのが分かる言動もさほど怖いものには感じなくなっていた。慣れって恐ろしいものである。

 明るい関西弁も、凄みを相殺しているのかもしれない。

「恐らくは今日、兄ちゃんは検査の為に下にレントゲンとかにやりにいく筈や! その時についでに頼むわ~!」

 ヤグザなオッサンが必死にコンビニスイーツを頼む姿のギャップ……。なんか惚けた感じが可愛いとすら感じて……断れない。 こんなオッサンが可愛いと思うなんて俺は病院生活で色々麻痺してきているのかもしれない。

「……分かりました」

 そう答えたものの、それが少し難しいミッションとなる事を理解していなかった。

 確かにオッサンの言う通り、看護師さんが来て今日レントゲンと心電図の検査がある事を告げてきて、その旨が書かれた札をベッドに二枚ぶら下げられた。

 俺は、時間がきたら下には行けば良いと思っっていた。

 そして、『検査の時間です」と看護師さんが来て、胸に三箇所つけられた携帯型心電図を外して代わりに【モニター取り外し中】という札をかけられる。邪魔な電極とモニターが無くなり早くも開放感に浸る俺。

 しかしその喜びの時間も長くはなかった、携帯型心電図よりも強固な厄介なものが俺につけられることを知り俺は唖然とする。

 不味い! コレではオッサンのお使いが難しい! 俺はどうしたものかと悩んでしまった。


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