89話 新魔王の強さ
「さてと、まずは俺のステータスが色々変わっちまっているみたいだし、一つ一つ確認していくとしましょうか。」
「ステータスが変わっているというのは、魔力が増幅しただけではないのですか?」
「いや、あの人がいうには魔王になった際に『自動改変』が作動してたみたいでな、俺のスキルとかを自動的に整理したみたいなんだ。」
俺が言った『自動改変』というのは、いわばコンピューターが勝手にファイルとかを使いやすく整理したのと同じ意味で、実際はそれを行える装置でスキルを効率化ができるのだが、稀にそれを使わないでスキルを整理させる事も可能なのだ。
「その‟あの人”というのは、お前の中にいる憤怒がそういったのか?」
「まぁそんなところですかね。どれだけ変わったかは見ないと分からないから、まずはそれを見ていくとするよ。」
俺はそう言ってステータスを開いて、今の状態を確認した。
そして開いた俺のステータスは、以下のようになっていた。
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白崎零 (人間,悪魔)
HP 48900/56000
MP 230000/480000
〈称号〉 6代目勇者
憤怒の魔王
〈加護〉 栄光神の祝福
氷結神の祝福
太陽大神の加護
〈固有魔法〉 夢の世界
古代魔法・虚空
〈使用可能魔法〉
炎魔法 水・氷魔法 風魔法 土魔法 雷魔法
光魔法 闇魔法 回復魔法 防御魔法
〈神術〉
【太陽神】
…『八咫鏡』『封洞 天岩戸』『浄化』
『陽皇女』
〈妖術〉
…『理雨淵』『呪獄爪』『蛇散雀刃』
〈極限スキル〉
【戦神ノ意思】
…『戦極大家』『守護結界』『魔導の極み』
【救済王ノ意思】
…『救済』『無慈悲の断罪』『従者魂』
【叡智神ノ意思】
…『即時解析』『多重並列思考』『森羅万象』
【憤怒ノ意思】
機能『終わらない瞋恚の炎』
…『逆鱗』『痛覚無効』『破壊者』『???』
化身獣:ドラゴン
〈固有スキル〉
『神眼』『魔王覇気』『悪魔召喚』『精霊召喚』
『悪魔擬態』『陰陽』
〈スキル〉
『状態異常無効』『精神状態無効』『思念伝達』
『武器錬成』『隠蔽』『隠密』『見極め師』
『創造作成』『体力消費削減』『MP消費削減』
『防音』『収納庫』
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これが今の俺のステータスみたいです。
まぁ前から“見極め師”のおかげでより分かりやすくなったし、称号や加護も全部きれいに見えやすくなったのはいいけど、誰もスキルをここまで整理しろとは言ってねぇよ。
魔王になってステータス大幅上昇を退ける程のこのスキルの変わりように、思わず思考が一瞬だけ止まったかのようになっちまったよ。
しかも魔術師なら誰もがそれを欲しがると云われている‟極限スキル”が四つも……あぁいや憤怒も含まれているから実質三つになるけど、されど三つあるのは異常すぎる。
横で見ていた桜姉は分からないから後で教えるとして、リラは俺のステータスを見て目が点になって固まってしまっていた。
「い、色々変わっちまったけど、これを今から全部見ていくのは流石に堪えるな。」
「そのすきる…って言うのは後で見てはどうなのだ?」
「うん、そうだね。これは後で俺が簡単に説明できるように確認しておくよ。」
俺はリラの意識を戻して、先に俺の身体能力を確認する事にした。
先にまずはスキルなしで聖剣で素振りしてから、それから近くにある木や氷の柱を数本作って、試し切りをする形でやっていく形にした。
「まずはいつも通りに素振りを10回。」
そうして俺は剣道の時と同じ構えで素振りをしたけど、明らかに違いが大きかった。
「ふむ……」
「どうでしたか?」
「―――――軽い。いつもの半分の重さしか感覚がない。」
「というと、お前の半身の力が関係しているのか?」
「可能性があるのはそれだと思うよ。次は試し切りだな。」
そう言って近くにあった木を切ると、まるで紙を切るかのように簡単に木を切る事ができて、今度は氷の柱を数本出してそれを切ってみると、これも同じように簡単に切る事ができた。
「‥‥‥‥今切ってみて思ったんだよ。」
「「何をだ(ですか)?」」
「鵺や髑髏……いやもっと前からか。何で強くなっているはずなのに負ける戦いが多くあったのか分かったんだよ。」
俺は聖剣を強く握りしめて、静かにこう言い放った。
「俺は今まで、半分しか力が出せなかったんだ。」
「半分だけ? それはどういう事だ?」
桜姉はイマイチ分かってなかったようで、俺は少しずつ自分の思った事を言っていった。
「ここに来る前に母親から俺の半身の封印を解いてもらったんですけど、その時から体についてた鎖がきれいに無くなったかのような感覚がしたんだよ。」
「その言い方だと、レイ様は勇者として召喚されるずっと前の……生まれてきた時からずっと半分しか力が使えなかったのですか?」
「そうだ。だから今の俺が本来の自分だったんだよ。今までずっと制限が掛けられえていたかのようにな。」
真莉亜との最終決戦の時からずっと手強い相手だったと思っていた敵は間違いで、俺が最初から半分しか使えなかったから弱かったんだな。
だから『大和の国』で鵺と戦った時も、今日戦った亜種のミノタウロスにも苦戦した理由が全部これだったんだ。
「これが本来の俺だとしたら、もしかしたら封印してきたアレが使えるかもな。」
俺は“収納庫”から黒鉄の銃を一丁取り出した。
その銃はティファニスさんから貰った武器とは違い、俺がとある商人を助けた際に貰った武器であって、あまりにも使えなかったからずっと奥に封印してきた銃だった。
「零、それは何だ?」
「これは銃と言いまして、名前はニーズヘッグ。俺が一回しか使った事がなかった銃なんです。」
零は銃の異常が無いか確認を終えると、近くにあった木に向けて一発発砲した。
バンッ!
「うっ…」
久し振りに撃った銃の衝撃で後ろにひっくり返りそうになったけど、何とか留まる事ができ、撃った弾は木に命中していて、そこにはきれいに風穴が一つ空いていた。
この銃は普通の銃よりも強力で、しかも大きさもハンドガンとは思えない程の大きさをしており、発砲するたびに来る衝撃で骨が折れるんじゃないかと思うくらいの反動を受けるから、当時の俺には危険すぎた故に封印していたのだ。
「―――――久し振りに撃ったからちょっと油断したけど、片手で撃つ事ができたな。」
「すごい音がするのだな、その銃というのは。」
「本来の片手で持てる銃はこれよりも小さいので、これが大きすぎるだけですよ。」
そう言って俺は念のために“見極め師”で銃を調べてみた。
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怪銃ニーズヘッグ
ある貴族が鍛冶師に頼んで作って貰った魔道具で、弾は魔力によって生成させる事ができ、その一撃はあらゆる生物を屠るとされている。
全長 30cm
重量 6kg
モデル デザートイーグル.50ae
専用弾 13mm弾(魔力)
弾数 魔力だからマガジンに流せば作れる
所有者 白崎 零
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ニーズヘッグの情報はこんな感じだった。
改めてこう見るとハンドガンの分野に入っているのか怪しくなるし、重量が6キロの時点で普通とは言い切れないと思えるんだよな。
しかしモデルがデザートイーグルって、映画を見てるから銃の知識は多少あるけど、一番大きい口径だったら何でも倒せるのもおかしくはないわ。
ただ思ったのが、この銃が地球にある銃をモデルにしてるという事は、作った鍛冶師か頼んだ貴族のどっちかは“流れ人”か“転生者”だった可能性があるかもしれないな。
「さて、一旦帰るか。」
「なんだ、もう終わりなのか?」
「いや、先に無事に終わった事を連絡しておきたいからな。終えたらもう一回来て再確認をするよ。」
「そうか。なら妾も一度帰るとしよう。」
「では私も。もう夕暮れ時なので、夕飯の準備に取り掛からないといけませんからね。」
そうして一度解散してから俺は自室に戻って、一階にいるみんなに無事に終わった事を話しに向かった。
一階に降りてすぐにリビングに入ると、真莉亜と華怜の横で部屋に戻らないで座っていた母さんがソファーに座っていた。
「えっと……何でお通夜みたいになってんの?」
「あー……実はね―――」
「「零くん(君)!!」」
俺が何でこうなっているのかを華怜に聞こうとしたら、母さんと真莉亜が急に叫ぶと同時に俺にしがみついてきて、身体中を隈無く調べだした。
「えっなになになに、これ一体何!?」
突然な事で混乱してしまった零は、ただ為されるがまま二人に見られて、しばらくそのままの状態で固まっていると、最初の勢いは少しずつ小さくなっていって、二人は俺の顔をジッと見続けてきた。
「え――――と‥‥」
「お母さん。」
「うん、何も変わってないわね。」
お互いで何かしらの結論にたどり着くと、二人は安心したかのように俺に抱き着いて来た。
「あ、あの――――何が何なのか教えてください。」
「「よ……よかった――――――」」
「……は?」
俺は今の状況を自己解決するために脳をフル回転して考えて、これまでの俺の行動を振り返っているある答えにたどり着いて、二人に聞いてみる事にした。
「もしかして、俺が魔王になったから何かしら体が変化してないか確認していたのか?」
「「うん。」」
「……華怜、俺がいなかった間に起きた事の説明プリーズ。」
「あ―――うん、実はね…」
抱き着いて全く説明できなさそうだったから、唯一この状況で平常心を保って見ていた華怜に頼んで説明して貰うと、どうやら俺が夢の世界に行く前に入れ替わりでリビングに向かった真莉亜と華怜は、俺がこれから魔王になるのを母さんから聞いて、それを聞いた真莉亜が母さんと一緒に俺が図時に帰って来るのを祈っていたら、いつの間にかお通夜みたいになっていたという事だった。
(つまりこんな事になっているのは、俺のせいって訳ですか。)
犯人が俺だとわかって申し訳ない同時に、俺はちゃんと約束したんだから大袈裟じゃないのかって思ってしまい、二人をゆっくり宥めることにした。
まぁ心配されているのはよくわかったけど、いい加減離れてほしいんだよなぁ――――もうすぐ6月だから暑いし。
「母さん、それに真莉亜も、少しだけ離してくれないか。これからある場所に行くんだから。」
「お兄ちゃん、ある場所って?」
「治外法権の領域にだよ。」
俺は安心しきった顔の二人を引き剥がして、夢のカギで扉を出してから、まだ知らない母さんと華怜を夢の世界に連れて行った。
「これは……すごいわね。」
「ワーオ……スペクタクル……」
二人が夢の世界に来てから最初の反応は予想通りの顔をしてくれて、まずは話がしやすいように別荘に行ってから説明する事にした。
「ただいまぁ~」
「あ、おかえりなさいレイ様。」
俺の魔王化が成功してから安心して上機嫌なリラが迎えてくれて、それを見ていた華怜がモノホンのメイドがいるって言いながら狼狽えていて、母さんは久しぶりに妖精を見たのか、懐かしそうにリラを見ていた。
「ところでレイ様、後ろに居られるお二方は一体?」
「紹介するよ。こっちが俺の妹の華怜で、こっちが俺の母親で5代目勇者だよ。」
「まぁ、レイ様のご家族の方でしたか!」
リラは驚いて母さんたちを見ると、近づいて二人に挨拶をした。
「初めまして。私はレイ様の最初の従者で、メイドのリラと申します。」
「初めまして。私は母の白崎彩音と言います。」
「ハ、ハジメマシテ…」
なんか華怜がガチガチに緊張してるけど、まぁ挨拶も終えたし中に案内するとしますか。
「ここは俺と真莉亜の従者たちが住んでる別荘であって、来客を迎え入れるような場所だよ。」
「随分と立派な建造物だけど、これは零くんたちが作ったの?」
「いや、建設には俺と真莉亜は携わってないよ。全部リラたちがやった建設なんだ。」
「へぇ―――…結構きれいに造ってあるわね。後で紹介してくれる?」
「いいよ。ところでリラ、アジュールや他のみんなは?」
俺はみんなの気配がなかったから聞いてみると、リラは嬉しそうな顔で説明をした。
「アジュール様はリベル様の案内で地下の書斎に行かれておりまして。ほどんどの皆さんは完成したばかりの温泉を堪能されております。」
「そっか―――――…なぁリラ。」
「はい、どうなされましたか?」
「何で何時もとは違う形の嬉しそうな顔で俺を見てるんだ?」
俺は何故かさっきから上機嫌なリラの顔が気になってしまい、つい本音で聞いてみたら、リラは嬉しそうな顔をしながら突然泣き始めた。
「レイ様……私…わだし…」
「えっ、ちょ…何で急に泣いてるの!?」
何で急にリラが泣き出したのかが分からないでオロオロしていると、それを見ていた真莉亜が冷たい視線を俺にしてきていた。
「ちょっと零君、何リラちゃん泣かしてんのよ。」
「いやいや、俺は何も知らないし何もわからないんだよ!」
「零くん、女の子は大事にしないといけないんだよ。」
「いやだから俺は知らないって言ってるじゃん!」
「お兄ちゃん、女を泣かせるのは重罪よ。見敵必殺‼ 見敵必殺だ‼」
「いやだから知らないんだってんだよ! ええ加減せぇ!」
何で何もしてないのに俺が責められなくちゃいけなくなるんだよ。
誰か、誰か教えて下さ――――――い!!
俺が心の叫びを言っていると、泣いていたリラが俺の服を引っ張ってきて、俺はそっちを向いた。
「ち、違うんです。レイ様は何も悪くないんです。」
「え、じゃあ何で泣いてるんだ?」
「………呪いが…‟遅緩進化”が消えたんです…」
「…え?」
リラの言った事で一瞬固まってしまった俺だが、横にいた母さんがその呪いの存在を知っていたからか、俺にその事で聞いてきた事でようやく我に返り、俺は母さんにリラの経緯を手短に話してからリラに質問をした。
「なぁリラ、それって本当なのか?」
「はい。急に体が軽くなったと思うと同時にレイ様に似た魔力を感じて、何かと思ってステータスを確認したら無くなってたのです。」
「無くなっていた……なぁリラ、お前のステータスを確認していいか?」
リラが承諾をして俺はすぐに“見極め師”を使ってリラのステータスを全部確認すると、リラのステータスにあった遅緩進化は完全に無くなっていて、代わりに魔王となった俺の庇護下が新たにステータスに入っていた。
「ホントに無くなってる。」
「レイ様――――!」
リラは我慢ができなくなったのか、ようやく泣き止んだはずなのにまた泣きだして、今度は俺に抱き着いて離れようとしなかった。
俺もリラが抱き着いてきても、何もせずにただ頭を撫でてあげた。
「レイ様……私…信じて本当に良かったです。」
「あぁ、お前はよく耐え続けてきたよ。頑張ったな。」
「――――――はい!」
リラはしばらく泣き続け、みんなが温泉からあがってきたところでアジュールの案内が終わり、リラが泣いているのを説明してから母さんたちをみんなに紹介したのちに、俺のステータスは寝る前に確認して、今日は終わらせる事にした。
大遅刻ですけど、主人公をようやくチートにさせました(遅すぎだっての!)。




