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88話 魔王の誕生と新たな仲間

前回の話で、勇者は魔王へと覚醒しましたが、タイトルは変わらないのでその辺りはご理解を!

「随分と長く掛かっているな。」


桜の言った事に対して、全員が同じ事を思っていた。

零が魔王になるため、黒い眉に閉じ籠ってから30分は経っていて、他のみんなは待っている間に少し離れた場所で座りながら終わるのを見ていた。


「元々勇者の前に、半人半魔のレイさんにとってはどうなるかは分かりませんが、少なくとも最盛期のマリアちゃんと変わらないと思いますよ。」


「そうか。あいつも妾たちと同じで、混血(混ざり者)だったんだな。」


「あの、ティファニス様。」


「リベルちゃん、何かしら?」


何人かで交代しながら待ってる中、リベルがティファニスの横にやってきて、自身が思った事を聞いて来た。


「マリア様は大罪の悪魔を持っていないで魔王となっていましたが、憤怒を持ったレイ様は全盛期のマリア様と同じ力を持ちますか?」


それは真莉亜の従者たちもそうだが、零の従者たちも思ってティファニスを見た。

彼はこれから真莉亜と同じように魔王という肩書きを持つ事になるが、その二人にはある大きな違いが存在していた。


零の場合は――――‟大罪の悪魔の結晶”との適性が高かったからこその魔王への進出になるが、真莉亜の場合は――――優越神フォルトナの転生ミスにより魔王になる子として進出した。


“通常”と“異常”―――“自律”と“他律”―――二人は同じ道を歩んでいるのに、道なりは対極していた。


「―――…全盛期、つまりは最終決戦の時の彼女とレイさんは、ほぼ同格と言ってもおかしくないでしょう。」


「ちょっと待ってくれ。今の真莉亜は人間になっているから弱体化をしているが、その当時は零以上の力量を持っていたにも構わず負けたというのか?」


桜が気になって質問をすると、リベルは少し落ち込んでいるかのようにゆっくり話し出した。


「マリア様は当時のパラディエスでは誰にも負けない実力を持っていましたが、自分を解放してほしいという願望を持っていたからこそ、あの人はレイ様と戦う時に自ら縛りを作ったんですよ。」


「縛り? というと、真莉亜は零に手加減をしていたのか?」


「いいえ。むしろ平等(フェア)で戦っていたんです。レイ様が負けてしまえば、また自分は地獄の日々を送らないといけないからと思い、あえてタイマン勝負(一対一)の戦いを選んだのです。」


「なるほど。侮辱を隠して、救済を望んだが故の平等。そして結果は救済に傾いたという訳か。」


桜は何故零が格上である真莉亜に勝つ事ができたのかが納得できて、零によって救われた(たましい)意思(こころ)が多く存在してるんだなと、改めてそれを実感していた。


「あれからずっとリラは、零がいる繭の方へ祈り続けておるな。」


「きっと、それだけ大事な人という訳なんですよ。


リラは動かないままずっと帰って来てくれるのを祈りながら待っていて、それを見ていた久遠と冬華は、従者としての責務を全うしている事に感心していた。


「あんなに祈っていてもおかしくありません。だってリラちゃんは死ぬ寸前だった自分を、マスターに助けられているんですから。」


「それはどうゆう事じゃ?」


後ろから聞いていたシーナは同じ主人の従者でありながら、親友の辛い過去を知っているからこそ、悲しそうな顔で祈っているリラを見ていた。

それを聞いて気になった久遠は、シーナにリラの過去の事を聞きたいと尋ねた。


「―――彼女にとっては思い出したくない過去なんですけど、リラは幼い頃、同族である妖精族のみんなに嫌われていたんです。」


「……え?」


久遠はリラが嫌われていたというのを聞いて唖然としていた。

それは横にいた冬華も同じで、今の彼女からしたら信じられないと思って彼女の方を見た。


「詳しくは話せませんが、リラは生まれた時から‟ある呪い”を身に宿していたんです。」


「その呪いとは…?」


「――――“遅緩進化(スロウアッパー)”という呪いでして、通常よりも成長が遅くなる呪いなんです。」


「遅緩進化……―――」


それを聞いた二人は、その言葉の意味が何なのかは分からなかったが、成長が遅くなる呪いと聞いて言葉が少し震えていた。

それは二人だけではなく、その呪いを知ってるもの全員が恐怖を抱きだした。


「その呪いというのは、とても危険な呪いなんですか?」


「いいえ。他者には影響は出ないですが、自分がどれだけ努力しても、一定の基準以上は成長できないんですよ。」


一定以上の成長ができない……―――それはつまりどれだけ力を身につけようとしても器がそれを拒んでしまい、他者との力量に差が出てしまう呪いだとわかった久遠は、想像しただけで寒気を感じていた。


「………そ、それでリラは、何故同族から迫害を受けていたんだ?」


「同年の仲間が成長しているのに、自分の子だけ成長できてない事を周りから馬鹿にされ続けられいた両親は何とかみんなを説得をしようとしたんですけど、結局何も変える事はできずに人に殺され、それを見ていた同族も、彼女(リラ)やその両親が苦しむ姿を嘲笑って見ていました。」


「そんな……酷い……」


今の見た目からじゃあ想像できないリラがあまりにも恐ろしい過去を持ってたなんて思ってもいなかった二人は、最早考えただけでも恐ろしいと思っていた。


「だからこそ彼女があんなに必死になっているのは、自分を助けてくれた大好きな人を、今度は自分が助けなきゃいけないと思っているからこそ、あんな風に一人でも頑張っているんですよ。」


シーナは言い終えるとリラの近くに行って横に座って一緒に祈り始めた。

彼女の過去を聞いた二人やそれを知らなかった人たちは、リラがどれだけ彼の事を大切に思っているかが分かって、彼女たちも無意識に彼が無事に帰って来るのを祈った。


「みんな、一旦ここから離れましょうか。どれだけ時間が掛かるか分からない以上、ここに長く居続けるのは―――


ティファニスがその場にいる全員に声を掛けようとしていたが、途中でそれは渡切れた。

何故なら零を覆っていた黒い繭から膨大な魔力と覇気があふれ出してきて、その場にいた全員がそれを肌で感じてしまった事で、警戒態勢になってしまったからだ。


「この覇気……風が鋭利な刃物のように鋭く、それが肌を引き裂いていくかのような感じだ…!」


「しかもこれ…殺意が覇気を作っているかのようにも見えるな。」


誰もがその覇気の存在に圧倒されていたが、その中でもただ一人、それに屈せずに目に光が宿っている人物がいた。


「大丈夫です……来ます。」


彼の一番最初の従者のリラだけは、零が帰って来るのを分かっていた。

そして膨大な魔力と覇気は次第に小さくなっていき、完全に感じる事がなくなってきたあたりで繭がひび割れていって、中から零が項垂れた状態で立っていた。


「レイ様!」


「待ってリラちゃん!」


リラは何も考えずに零の所へ走って行き、まだ自我があるかどうかわからなかったティファニスはそれを静止させようとしたが、それを構わずにリラは走った。


「レ、レイ様。」


「―――――――リラ……か?」


零は少しずつ顔を上げて、目の前にいるリラをゆっくりを見た。

その目は黒白目に零のトレードマークである蒼い目と、真莉亜と同じ炎が燃え上がるかのような紅い目のオッドアイになっていた。


「――――――――。」


零はただ何も言わないで一歩、また一歩と歩みだしてリラに近づいた。


「リラちゃん! そこから離れなさい!」


後ろからティファニスが叫んで来ていたけど、リラはそこから決して動こうとはしなかった。

何故なら彼女の中には覚悟があって、自分を助けてくれた人が命に代えて自身を闇に染め、これから悪になって悪を裁くと言って覚悟を魅せてくれたのなら、自分も命に代えて証明させる覚悟があると思わせるために近づいたのだ。


(一度は捨てた命だ。ここで命が消えても後悔なんてしない!)


リラはゆっくりと近づいて来ている零に臆せずその場に立って、ついに目の前に来たところで、零の腕が動いてリラの頭に手を置いた。


「………レ、レイ様?」


「――――俺の自我があったら最初に頭を撫でる。お前が言ってきた頼みだからな。」


「レイ様!!」


零の自我が完全にあるのが分かった瞬間、リラは零に抱き着いて、ただ何も考えずに零の体に顔を埋めて泣き出した。


「よかった……ちゃんと戻って来てくれて…」


「無茶な願いをして悪かったな。あの時約束したはずなのに。」


「いいえ、レイ様は何も悪くないです。レイ様は自分で決めた道なので、従者である私はそれを見守る事が責務なので。」


「そうか……ありがとう。」


零は自分のために泣いているリラの頭を撫で、彼女が泣き止むまでやめなかった。

その間にティファニスたちがやって来て、零の状態を確認し始めた。


「レイさん、本当に大丈夫なのですか?」


「はい。自我も完全に維持できてますし、何ならパラディエスで今まで起こしてきた凡ミスを全部言っていきましょうか?」


「よし本物ですね!! 大丈夫ですね!!」


ティファニスの慌てようで既に何人かは察してしまい、あれが最初がじゃないのかと思って、哀れんだ目をティファニスに向けていた。


「まぁまずは第一関門突破ってところだ。次に第二関門だな。」


「“悪魔の召喚”ですね。魔力は大丈夫なのですか?」


「あぁ。ここにあるあの牛の魔石に加えて、俺の魔力を使って召喚に応じらせる。」


「という事は、少なくとも上位悪魔(アーク・デーモン)はほぼ確定でしょうね。」


悪魔王(デーモン・ロード)であるリベルが言ってるのなら、そうに違いないだろうなって思った俺は、早速その場で悪魔の召喚を実施した。


「さぁて、できれば話の聞ける奴が召還に応じてくれる事を願いますか。」


そう願っていたら召喚術式が作動し始めて、明らかに大きめの魔力を持った悪魔が召喚に応じたみたいだった。

いや応じてくれたのはありがたいけど、この魔力から察してこれはもしかして……


(ロード)か?」


「おそらく……いや、これは確実でしょうね。」


「リベル、俺でどうにかできそうか?」


「普通の上位悪魔(アーク・デーモン)なら応じるかどうか分かりませんが、この反応はまさか……」


リベルが横で考えながら召喚を見ていると、術式から青い結晶が出てきて、その結晶が割れて一人の少女の姿をした悪魔が召喚に応じてくれた。

身長は160前後で、髪は銀色のセミロングで、目はサファイアのようなきれいな目をしており、何より魔力は多分俺の直感だと、アストレアに引けないくらいの魔力を持ってるかもな。


少女は目を開いて俺に近づいてくると、何も恐れないかのように体に触れ始め、高揚したかのような顔でしゃべり出した。


「あぁ……懐かしい憤怒の王の気配。そして凍てつくかのような魔力――――あなたが来てくれるのを心から待っていました。」


「えっと、お前が俺の召喚に応じてくれたのか?」


「はい。私は悪魔王(デーモン・ロード)の一人、名をアジュールと申します。あなた様に永遠の誓いをここに捧げます。」


彼女はそう言って俺の前に跪いて契約を果たしてくれた。

これが初めての召喚だからなんというか、前にやってた従者としての契約とは違って何故か緊張してしまうな。


しかし俺の召喚に応じてくれたのがまさか悪魔王(デーモン・ロード)だったとは。

果たしてこれが棚から牡丹餅か、それとも飛んで火にいる夏の虫か、果たしてどっちに転がってくれるかどうかだな。


俺との契約を終えたアジュールが立ち上がると、横にいたリベルの方を向いて驚いていた。


「まさか、ノワールなの?」


「久しぶりですねアジュール。いままで消息がなかったのでどうしているのか心配してましたけど、元気そうで何よりです。」


「本当ね。何年振りかしら。」


「もうざっと考えて200年ぶりですかね。それと、今はリベルという名を持ってますので、そちらでお願いします。」


「そうなの、わかったわ。」


なんか久しそうに話しているけど、もしかして知り合いなのかな?

一応確認のために聞いておくとするか。


「リベル、知り合いなのか?」


「古い旧友です。まだマリア様に仕える前に仲の良かった者でして、魔界でもかなり名を轟かせていた悪魔です。」


「そうだったのか。だったら話し合いは大丈夫そうなのか?」


「はい。彼女は好戦的じゃないですし、人間にも特に嫌悪感を抱いているわけではないので、問題はないかと思われます。」


リベルの言ってる事が本当なら、どうやら俺は当たりを引けたみたいだな。

最近はあまり運がなかったり負けたりと不幸続きだったから、今回の悪魔の召還もうまくいくかどうかわからなかったから、正直言って安心しきっている俺がいます。


「ところで召喚者(マスター)に聞きたいのですけど、ノワール…いえ、彼女(リベル)召喚者(マスター)の従者なのですか?」


「いいや、リベルは俺の彼女の従者だから、俺の従者じゃないよ。」


「そうでございましたか。でしたら旧友の主人とも近々、そのお方とご挨拶をしないといけませんね。」


「まぁそう遠くない話だし、もしかしたら今日中にでも逢えるとは思うぞ。」


とりあえず分かり合えそうな子が召喚に応じてくれたし、これで今日の目的は特に何の問題もなく事が終わってよかったな。


「それじゃあまずは俺と彼女のステータスの確認と、俺の体の状態が前とどこまで違うのか、少しずつ確認をしていくとしましょうかね。」


「ではアジュールの事は私が案内を済ませておきますので、レイ様はご自分の確認を優先になさってください。」


「ありがとう。それじゃあアジュール、くれぐれも迷惑はかけないようにな。」


「かしこまりました。」


アジュールはリベルの後を付いて行って、ティファニスさんにシルヴィアは地球にいるかもしれないから心配しないでくださいと言って伝達を頼んで、他のみんなも俺の状態が大丈夫だとわかって別荘へと戻って行った。

そしてその場に残った俺とリラ、それと何故か一緒に確認がしたいと言い出した桜姉の三人で俺の確認を行う事になった。

早いペースで書いたり、遅いペースで書いたりと振り幅が大きすぎる毎日です。

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