77話 生徒会の秘密
「え、え、え、ど、どうして憤怒が俺の中に入っていったの!?」
最初に我に返ったのは零で、自分の中に何で憤怒の結晶核が入っていったのかが分からなくてパニックになってた。
「お、お前、なんで悪魔の力を取り込んだんだ!?」
「いや違う! これが勝手に入っていった!」
「そんな訳ないでしょう! 勝手に入っていくなんて有り得ないわよ!」
「いやホントだって! 俺だってこんなの初めてだから分かんねぇよ!」
「零君、ステータス、ステータスを見たらすぐに分かるはずだよ!」
「そ、そうか。ステータスを見れば何かわかるかもしれない。」
真莉亜に言われてすぐにステータスを見た零は、そこに出ていたステータスを見て言葉を失った。
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『大罪の悪魔 憤怒』(現在使用不可)
使用可能スキル
『???,???,???,???』
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「ど、どうだったの白崎君。」
「……現在使用不可で、憤怒が俺の中にあるのが確定しました。」
「現在使用不可? て事は今は使えないのか?」
「多分な。でもこれはあり得ない事なんだよ。」
「どうしてなの?」
零がなんであり得ないと言ってるのか分からずに明日香が聞こうとしたら、真莉亜が何かに気が付いた。
「待って零君、どうして憤怒を取り込んだのに魔人になってないの?」
「「「――――ッ!!」」」
真莉亜の言った事に、三人はハッとなって零の言ってた事を思い出した。
さっき彼は、“大罪の悪魔の結晶核”を取り込んだら魔人になると言っていた。
だが実際零は今、取り込んだ後は特に変わっておらず、人として君臨している時点で異常になってる。
零はそれにいち早く気付いて困惑していたのだ。
「……真莉亜、俺を“見極め師”で見てくれないか?」
「わかった。」
零に言われて“見極め師”を使った真莉亜が、零のほうを向いてどんな状態なのかを確認した。
「ど、どうなんだ神崎。零は化け物になってるのか?」
「……なってない。今見えてるのは人間のままの零君だよ。」
「……そうか。」
零は真莉亜が言った答えを聞いて、一つの疑問が浮かんでいた。
なんで自分はすぐに魔人にはならずに人間のままであって、どうして憤怒の結晶核が自分の体の中に勝手に入っていったのかが頭の中でずっと渦巻くかのように零の思考を惑わせていた。
「白崎君、これからどうするの? このまま放っておくことはできないのよね?」
「とりあえず一旦これは保留だ。これは俺自身も知らない異常である以上、対処法を知ってる人たちに話したほうが早い。」
「そうだね。今はそうするしかないよ。」
「あては先生だけなのか?」
「いや、先生以外にもいるし、そっちの方が信頼性はある。」
「そうか。ならお前の件はこれ以上追及はしないようにするよ。」
「あぁ、助かる。」
キーンコーンカーンコーン
「…時間か。トモ、明日香、俺たちや先生が異能者じゃないのは秘密にしてくれ。もし誰かに聞かれても異能者だと答えてくれ。」
「「わかった(わ)。」」
零たちが話などをずっとしていたらちょうど昼休みの時間が終わって、話し合いは一旦これで終わりにして、放課後にまた話し合う事になった。
それからまたいつものように午後からも授業をして、放課後になってから零は自習の時に渡されたプリントを先生に渡して、先に外で待ってくれているトモたちのいる所まで早歩きで向かっていた。
「まずはいつものあの店で話し合って、それから後はLIFEのグループ内で話し合うか。」
「白崎。」
「ん? ―――げっ。」
零が下駄箱まで続く階段を降りようとした時に、後ろから声を掛けられて振り向くと、そこには見知った顔の人が歩いて零に近づいていた。
「げっ、とはなんだ。先輩である私の顔を見てそんな事が言えるのはお前だけだぞ。」
「他の奴らからしたらあり得ないでしょうけど、俺からしたらそう言いたくなるんですよ、日下部会長。」
後輩である零に粗末な扱いをされて少し不貞腐れている人物は、零たちが通っている学校の生徒会長であって、零の剣道の先輩である日下部沙羅だった。
成績優秀、才色兼備、それに加えて運動神経も良ければ、カリスマを持ち合わせているという詰めれるだけ詰めたかのような人なのだ。
しかもこの学校には生徒会や風紀委員に隠れてファンクラブなども設立されてあり、先輩のファンクラブは男女問わずに多いファンクラブなので、最早隠れきれない状況でもあったりする。
「別に私のことは沙羅でよいと言ってるだろうのに……ところで零、そろそろ生徒会の件は決めてくれたのか?」
「はぁ〜……何度も言ってますけど、俺は家で家事をしないといけないので生徒会には入らないって言ってるじゃないですか。」
「家庭事情があるのは承知だ。だけど学生の間だけでも、青春を楽しんだらどうなんだ。」
「トモたちがいるんでもう青春は楽しんでますよ。てか何で生徒会に入る事を青春の扱いにしてるんですか。」
「青い間に春を持ったから楽しいだけではないぞ、青春だけにな。」
「………」
零は頭を押さえて先輩の言った言葉を必死に忘れようとしていた。
この生徒会長は、容姿や何もかもに恵まれているが、何故かおやじギャグを無性に好んでおり、主な被害者は零と副会長だったりする。
零が生徒会に入りたくないのは、家庭事情があるのに加えて、この先輩のおやじギャグに毎回付き合わされるのが嫌だからいつも拒否をしているのだ。
「まぁ冗談はさておき、今日は生徒会の仕事に付き合ってくれないか?」
「あぁすみませんが、今日はちょっとトモたちと用事があるので明日でもいいですか?」
「いや、できれば今日話がしたい。どうしてもお前には話しておきたい事だからな。」
生徒会の仕事などで見せる真剣な顔を見て、どうやら本気だと悟った零は、一回溜息を吐いてからポケットに入れてたスマホを取り出した。
「(この顔は本気だな。)……トモに連絡をしていいですか?」
「あぁ、構わない。今は見ないフリをしておく。」
そう言って別の方向を向いて知らないフリをし始め、零はメールで生徒会長に捕まったと書いて送信したら、トモからご愁傷様とだけメールでやってきて、続けて真莉亜がメールでそっちに行くとメールを送って来た。
「俺の彼女も来ますけどいいですよね?」
「別に構わないよ。いつかは話さないといけないからな。」
連絡を終えて真莉亜と合流できた所で、先輩に連れられて生徒会がいる生徒会室に向かって歩き出した。
普段こそは真面目でキリッっとした表情だから、周りからは憧れだったり生徒会に入りたいと言ったりする生徒は数多くいるけど、会長の素を知ってる俺からしたらやめておいた方がいいと思ってる。
ぶっちゃけこれ以上この先輩のせいで被害者を増やしたくないしな。
「着いたぞ、入ってくれ。」
「「失礼します。」」
生徒会室に着いた零たちは、彼女が戸を開けてから中に入ると、他の生徒会メンバーである四人から悲しそうな眼をして歓迎していた。
「白崎君、今日は本当にごめんなさいね。」
「気にしないでいいですよ陽菜先輩。もう会った時点で諦めていましたから。」
最初に俺に声を掛けてきたのは、生徒会副会長で合って俺と同じ被害者の東雲陽菜先輩だった。
陽菜先輩は中学からの知り合いであり、いつも相談相手になってくれたり、お互いに先輩のおやじギャグでの愚痴をお互いに言い合える優しい先輩だ。
「白崎サン、今日はお願いシマス。」
「あぁ、よろしくな。」
少し片言になりながらも、丁寧な日本語でしゃべっているのは、ロシアと日本のハーフである長谷川サーニャだった。
彼女の髪はロシアの血が引いた銀色の髪をしており、入学早々同年の男子数人から告白をされた経歴がある俺たち同じ二年生だ。
「白崎先輩、その人が先輩の彼女さんですか?」
「あぁ、後で紹介するよ。」
「先輩、付き合った経緯を後で教えてくださいね。」
「それも後で教えてやる。」
俺が被害者になってしまった事を同情しながら、俺の横にいる真莉亜に興味を持っちながら椅子を持って来たのは、一年の浅野深雪と加賀美早瀬だった。
二人は会長である先輩に憧れて生徒会に入ったのに、先輩のダジャレ好きだった事にショックをしてしまい、陽菜先輩や長谷川と同じ被害者でもある不憫な子たちでもあるのだ。
「よし、零とその彼女さんを連れてきたところで、早速話をしようか。」
「今日は見回りはしないのですか?」
「見回りは昨日したから、今日は目安箱の開封だけだったのよ。」
「その仕事はつい先ほど終わりましたので、後は先輩が来て話し合いをするだけだったのですよ。」
「そっか。」
どうやら今日の生徒会の仕事は終わらせてから俺が来るのを待ってくれてたみたいで、よく見たら全員お茶を飲んで休憩がてら菓子をつまんでいたのが分かった。
「それで先輩、今日は何で俺をここに連れてきたんですか?」
「―――零、お前は異能とやらを知っているか?」
「えぇ知ってますよ。今日トモたちと用事があったのは異能の件について話し合いをしようとしていましたから。」
「…! それなら話が早いが、単刀直入に言うと、私たち生徒会全員は異能者なんだ。」
「「……は?」」
突然彼女が異能者という言葉を言ったからか、零と真莉亜は口を開けてポカンとしてしまった。
「えっと……聞き違いじゃないかと思うので確認しますけど、さっき異能者って言ったんですか?」
「そうだ。」
「ここにいる全員が異能者って訳ですか?」
「そうだ。」
「……マジで?」
『マジで。』
五人が零の問に頷いたのを確認した零は、頭を抱えて本気で悩んでいた。
(まさかのこの人たちも異能者だったとはな……さて、どこから聞くとするかな……)
俺は悩んだ末にとりあえず根本的なところから聞いていく事にした。
「それじゃあいくつか質問をしますけど、異能が目覚めたのは何時からですか?」
「つい最近よ。生徒会の仕事中にみんな同時に頭の中に声が聞こえてきたの。」
「それってどんな声でしたか?」
「確か私が聞こえてきたのは、『あなたに異能を渡します。どうかこれで奴らを倒してください。』って言ってましたよ。」
「私も同じです。」
「ちなみにそれは最近噂になってる怪しいメールとか関係があったりしますか?」
「いいえ、メールは関係ありまセン。」
「……そうか。」
生徒会が全員異能を持ったことに対しては理解できたが、零の中ではどうしても気になっていたことがあった。
それはトモや明日香と同様に、自然に異能というのは目覚める仕組みなのかと。
(先輩たちの話を聞いてる限り、俺が作った仮説は違うことになっちまうな。)
零は昼休みの時に二人の話を聞いてて、ある仮説を立てていたのだ。
その仮説というのが、人の生存本能が異能を目覚めさせるためのトリガーになっているのではないかと思っていたのだ。
トモと明日香は色欲の下っ端に襲われてから覚醒した事になっていたから、多分その可能性で合ってるんじゃないかって思っていた。
だがこの人たちが言ってる事が正しければ、生存本能で目覚めるという仮説はなかった事になってしまったのだ。
(違うとなったら、後は風邪みたいに感染型みたいなものかそれ以外か? ……まぁだけど、それは一旦置いておくとするか。)
「先輩、一応確認しておきますけど、先輩たち以外に異能を持った者は知ってますか?」
「いや知らない。だがたった今、相川や加藤も異能者である事はわかった。」
おっと、どうやらトモたちは初耳だったみたいだ。
―――ん、待てよ……お互いが異能者だったのに知らなかったって事は、アイツらが生徒会の仕事をしていたのは偶然だったのかよ。
「―――俺も生徒会メンバーが全員が異能者であることが分かったので、これで10人になりました。」
「……あの、一ついいですか?」
俺が異能者の知ってる人数を確認しながら話していたら、横にいた真莉亜が先輩たちに声をかけた。
「どうした?」
「ここにいる皆さんは異能というものを持ちましたけど、それを使って悪さをする訳はないですよね?」
真莉亜の言った言葉に対して、ここにいる全員がポカンとなってしまった。
だけどその言葉の意味が分かった日下部は、息を吐きながら笑って答えた。
「それはあり得ないな。私も零と同じで犯罪者は嫌いだし、自らを悪に堕とす行為はしない。ここで誓ってもいい。」
「私も同じね。自分に重しを付けたって幸福になれるとは限らないしね。」
沙羅先輩と陽菜先輩の言葉に同意するかのように、他の三人も頷いていた。
「真莉亜、先輩たちもそうだが、ここにいるみんなも俺と同じで悪が嫌いな人たちだ。だからあっさり信じる事ができるんだよ。」
「……そうだよね。ごめんなさい、無粋な質問をしてしまいました。」
「いや気にするな。そんな事で私は怒らないさ、このスルメのようにな。」
スルメを食べながら言った日下部のダジャレのせいで、さっきまでのいい雰囲気が台無しになってしまっていた。
「え?」
「「………」」
「「「はぁ~……」」」
真莉亜はさっきのようにまたポカンとしており、零と東雲は日下部に冷たい視線を送り、長谷川たちはため息を吐いてガクンとなっていた。
「真莉亜、さっき言った言葉を訂正するよ。この会長は悪だ。」
「ちょ、それはどうかと思うぞ。」
「いいえ、彼の言ってる事は正しいわ。あなたは悪よ、ある意味でね。」
「陽菜まで私を悪というのか。私の何処が悪というのだ?」
「「そのダジャレが悪って言ってるんだよ(のよ)!!」」
毎回毎回この会長はどっかにダジャレを言わないといけない病でも罹ってるのか疑わしくなってきてしまってるし、俺と陽菜先輩がどれだけ苦労しているのかわかってるのか?
ホント何でこんな人が生徒会長を務めてるんだよ。
「まぁともかく私たちが異能者である事は話したし、何かあったら協力はしよう。声の主にも頼まれている事だしな。」
「わかりました。先輩たちが異能者である事はトモたちには俺から伝えておきます。」
「あぁ、頼んだ。」
「それじゃあ、俺たちはこれで失礼します。」
そう言い残して、零と真莉亜は生徒会室を後にした。
特になし。
来週は火曜日と金曜日の深夜0時に投稿します。




