76話 俺のヒーロー
「それじゃ今度は俺たちの番だけど、はっきり言っておくけどお前たちよりも規模がでかいからな。」
「わかった。(規模がでかい?)」
「えぇ、わかったわ。(規模がでかいってどういう事かしら?)」
零の言った言葉に疑問を持った二人だが、何も気にしないかのようにスルーして話を聞いた。
しかし二人は、零の言葉を真に受けなかったことを後々後悔しなければいけなくなってしまった。
「実は俺さ、こう見えて異世界で勇者をしてたんだよ。」
「「はぁ?」」
いきなり零が勇者だったと言ってきて、二人はコイツ何言ってるんだって顔で零を見た。
「いや、そういう顔をしたくなるのは分かるけど、本当の事なんだ。これを見てくれ。」
そう言って零は手の平に炎を出して、その後に水,氷,風,雷,土と、二人に信じ込ませやすいように五大元素魔法を全部出して見せた。
「今の…本物なのか?」
「本当だ。それにこれも本物だよ。」
さらに零は、“収納庫”から聖剣を取り出して、左手に氷の塊を作って上に投げから、氷の塊を聖剣で切ってみせた。
それを見ていた二人は、零のやってみせた事に茫然としてそれを見ていた。
「マ、マジモンの奴なんだな。」
「零、ホントに勇者だったの?」
「あぁ。何なら真莉亜は俺が倒した魔王本人でもあるんだぜ。」
「「えっ!?」」
しれっと零が真莉亜が元魔王であることを言った瞬間、二人はさっき以上に驚いて、今度は真莉亜に質問攻めをし始めた。
「お、お前、魔王なのか!?」
「ま、魔王って言ったらあれよね! 悪逆非道の悪魔の親分のアレだよね!?」
「う、うん、そうだよ。でも少しだけ違うかな。」
「違うって何が?」
「真莉亜は元はこっちで生きてた人間で、転生に失敗してから魔王にされたんだよ。」
「て、転生に失敗ってあるの?」
「さぁ、俺は知らんけど、少なからずも今お前らの目の前にいる真莉亜はそれだよ。」
呆れてものが言えなくなっている二人に追い打ちをかけるかのように、零がどんどん話をし続けた。
「そして夏奈だけど、神社の巫女でありながらつい最近まで妖と戦っていて、妖術が使えるし、神の加護を最近持ったんだよ。もちろん俺たちもな。」
「「か、神の加護!?」」
いつもは大人しく成績一位の委員長である夏奈が自分の住んでいる神社の巫女なのは知っていた二人だけど、まさかその本人が妖(妖怪)と戦っていたことを知らなかったトモと明日香は今度は夏奈の方を向いて驚いていた。
「か、夏奈ちゃん、それ本当なの?」
「う、うん。あ、でも、白崎君たちも最近知ったから、そこは二人とあまり変わらないからね。」
「で、でも神の加護があるんだろう!? どんな神の加護なんだ?」
「私と妹の香織が須佐之男様で、白崎君が天照様、真莉亜ちゃんは月読様の加護だよ。」
俺たちが恐ろしいくらいの力を持っている事を知った二人は、最早見るに堪えないくらいに脱力してしまっていて、明日香に対しては絶望しているような感じになってた。
……ちょっといっぺんに言い過ぎたな。
「勇者に…魔王に…神の加護って……」
「だから言ったろ、規模が大きすぎるって。」
「でかいにしても程ってもんがあるでしょう。」
「ふ、二人とも、大丈夫?」
頭の中がキャパオーバーしてしまって、思考が停止してしまっている中、零は今の現状を二人に打ち明ける事にした。
「トモ、明日香、なぜ俺たちがこんな大きな力を持ってるかってのは、ある目的があって持ってるんだ。」
「も、目的?」
「実は異世界で俺の前の勇者が倒したとされている悪党が、神のいる神界から脱走してしまったんだ。」
「脱走って、それって大丈夫なの?」
「今はどこにいるか不明だけど、もしかしたらこの地球に隠れて生きている可能性があるんだよ。」
「はぁ? それってかなりマズイじゃねぇかよ!」
トモが正気に戻って今大変な事になっているのに対し叫んでいたが、俺は手を出して待ったをかけた。
「そこで、俺と別に前に勇者をしていた二人がこの地球で生きてることが分かって、その二人と俺たちで倒すのだけど、黒幕が人を魔人に変えてしまう“大罪の悪魔の結晶核”を人に渡したりして、この世界を悪の世界にさせようとしているんだ。」
「その大罪の悪魔って、七つの大罪であってるの?」
「その解釈であってる。今は俺たちとある協力者と一緒に暴食を倒して残り6つだけど、ある情報でお前たちが関わってる異能に、色欲が関わってる可能性が高いんだ。」
「「!?」」
自分たちが持ってる異能が、まさか零たちと関わってるなんて思いもしなかったのか、零が言った言葉にトモと明日香もそうだけど、真莉亜と夏奈も驚きを隠せないでいた。
「零君、色欲が関わってるって本当なの!?」
「まだわからない。だけどほぼ確定で間違いないと思うぞ。」
「そんな情報、どうやって見つけたの?」
「……本人の許可で言っていいのかわからないけど、実はこの学校内に俺以外の勇者が一人いたんだよ。」
「えっ!?」
明日香は声を上げて叫んだけど、夏奈は何かに気付いたのか、恐る恐る俺に聞いて来た。
「まさか、朝の自習にいなくなったのは……」
「鋭いな夏奈。そのまさかだ。」
「え、え……いったい誰なの?」
明日香とトモはまだ分かっていなかったけど、流石成績トップにいる夏奈は分かったみたいで、夏奈が次に言った言葉で、三人は度肝を抜かれる事なってしまった。
「もしかして、櫻井先生?」
「正解だ。先生が4代目勇者だったんだよ。」
「「「えええええええええ!!!」」」
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「くっしゅん!……やだ、風邪かしら?」
**********
「う、嘘だろ‥‥‥先生が?」
「お前らもそうなるだろう、俺もそうなった。」
「じゃ、じゃあいつもみんなを黙らしている時に出している殺気って……」
「おそらく覇気を使っていたんだろう。ただ俺も全くわからなかった。」
「「………」」
その場がカオスになってしまっているけど、昼休みの間までに伝えときたいから、零はさっさと話しを進めた。
「それで話を戻すけど、今噂になってる異能がもし悪影響を及ぼしたりしたら、この場所が戦場みたいになってしまうし、色欲を持って魔人になった奴をこれ以上放っておけないんだ。だから俺たちは、異能を使ってる組織と対峙する。」
「「なっ…!」」
二人は異能を持った奴らであって、二人をかつて襲った組織と戦おうとしている零たちを止めた。
「ま、待て、相手はもう三年以上前から結成されてる組織なんだぞ! 数はもう100や200はおってもおかしくないんだぞ!」
「そ、そうよ! それに今言った所で勝てる要素なんてないんだよ! 言った所で負けるのは目に見えてるわ!」
(まぁ三年以上前となれば、トモの言った通りその数にはなってるだろうな。だけど不思議なもんだよな、今の俺は前とは違って満身のない勝ちが見えてるんだよ。)
零はそれこそ大和の国で散々余裕のない戦いをしていたけど、あれから特訓をして自分のカバーとなっていた部分を無くした今の零には、自信が大きくみなぎっていたのだ。
「確かにお前たちが心配するのは分かる、幼馴染だからすげぇ分かる。だけどこれはお前たちの件でもあって俺たちの件でもあるんだ。お前たちは異能で、俺は勇者で、利害が一致してるんだよ。」
「零……」
「トモ、お前は昔から正義のヒーローに憧れていたから、悪い奴らを許さないのはお前の性分だろう。そして明日香、お前もトモに感化されて悪を嫌っていた。だから俺が傷ついた時、誰よりもお前たちは怒ってくれていたのを今でも覚えている。」
「零……でも。」
「俺にとってはな、もうお前たちは俺のヒーローなんだよ。憧れだったこそ、お前たちの横にいられるように自分から前に出て今の俺ができてるんだよ。だから俺はお前たちの力も貸さずに夏奈を助ける事ができたんだよ。」
「白崎君。」
零が積もりに積もった過去をずっと話しているのを見ていた真莉亜は、自分を助けてくれた原点が二人にあるのが分かり、二人に対してとても感謝していた。
(そっか、零君のすべては二人にあったんだな。)
あの時彼が二人に憧れてヒーローみたいになっていなかったら、今の自分がここにはいなかったし、あの地獄からは逃げ出せずにいたかもしれない。
だったら今度は、自分たち二人がが彼らのヒーローになろうと心の中に誓っていた。
そしてそれは夏奈も同じで、中学の時に暗かった自分が変えられたのは彼であって、二人のおかげでもあったからこそ、二人の力になりたいと意気込んでいた。
「トモ、明日香、お前たちは俺のヒーローになってくれたんだ。だから今度は俺が、俺たちが、お前たちのヒーローにさせてくれ。」
「「…………」」
ずっと聞いていた二人はお互いの見合い、それからしばらく静寂が続いていたが、トモがそれをかき消すかのように口を動かした。
「俺は、お前のヒーローになっているのか?」
「あぁ、あの時からずっとな。」
「……そっか、俺はあの時からもうお前のヒーローになってたんだな。」
空を見上げて笑っていたトモは、さっきまでとは違って清々しそうな感じになっていた。
「……わかった、なら零、今度はお前たちが俺たちのヒーローになってくれるか?」
「もちろんだ。」
「そうか……明日香、もう俺たちは我慢はしないでいいみたいだ。これからは零や二人を頼ってみようぜ。」
「ふふっ、わかったわ。そしたら零、それに夏奈ちゃんや真莉亜ちゃん、よろしくね。」
「「もちろん!」」
夏奈と真莉亜が頷いてくれたのを勢いに、俺たちは手を重ねあって、これから五人で悪の組織に立ち向かいあうために気合を入れあった。
「これからまた戦いになる。だけど俺たちが力を合わせれば、どんな事でもやり遂げれ見せれる気がする。俺たちでみんなのヒーローになるぞ!」
「「「「おー!!」」」」
五人の心が一つになったところで、これから悪の組織と戦うための作戦会議を始めた。
「それで零、お前の所には協力者はどれくらいいる?」
「俺と真莉亜が異世界で従者にさせた奴らと、最近ある場所で同居人になった人たち、それと夏奈と香織ちゃんを含めば、25人になる。」
「25人、かなり多いわね。」
「でも私たちの従者は全員人じゃないから、できたとしても戦闘だけしかできないよ。」
「なるほどな。常盤はどうなんだ、そっちの協力者は?」
「私たちが使える妖術っていうのを使える人はたくさんいるし、その人たちに結界を作らせれば外に逃がさないようにすることはできるわ。」
「そうか。先生にも協力してもらうか?」
「いや、先生は個人で異能者に関して情報を探しているみたいだから、そっちはそっちで任せた方がいいと思う。」
「わかった。…あぁそうだ。」
トモは何かを思い出したかのように声を上げて、零にある事を聞いてきた。
「なぁ零、さっき言ってた大罪の悪魔の結晶核だっけ? それってどんなものか分かるか?」
「あぁそれなら、これがその結晶だよ。」
零は“収納庫”から“暴食の悪魔の結晶核”を二人に見せた。
すると何かに気付いたみたいで、トモは学生服のポケットの中を急にあさくり始めた。
「それってさ、これも同じやつなのか?」
そう言ってポケットから出したものを見て、零は驚いて声を上げた。
「それって、“憤怒の結晶核”じゃねえか!!」
「あぁやっぱり。なんかそれに似てるなーって思ったんだよ。」
「お前、それどうしたんだ?!」
「最近だけど、俺たちの協力者のいる秘密基地がある場所の近くに落ちてたんだよ。なんかわからなかったから、そのままずっとポケットの中に入れてたんだよ。」
「お前……よくそんなものをずっとポケットの中にしまえたな。」
「まぁ一番小さい野球ボールの大きさだったし、少し平べったかったから簡単にポケットの中に入れられたんだよ。」
何気なくそう言ったトモの言葉を聞いた零は、呆れてものが言えなくなってしまっていた。
「とにかく、これで俺たちが探してた結晶核が2つになったし、それを俺に渡してもいいか?」
「あぁいいぜ。はっきり言ってこれ、ポケットの中を占領していたからちょっと邪魔だったしな。」
そうして零は、トモから‟憤怒の結晶核”を貰って“収納庫”に入れようとした次の瞬間、突然‟憤怒の結晶核”が強烈な光りを放ち出した。
「うわっ、急に何?!」
「え、何これ? 何がどうなってるんだ?」
急に光り出した事に焦りだした零たちだったが、ずっと光っていた“憤怒の結晶核”は光を出したまま零の手も中にゆっくりを入り込んでいった。
≪‟憤怒の結晶核”が、白崎零と合成されました。≫
≪なお現在、合成者との適性率を確認しているため、‟憤怒”の使用は現在不可になっております。≫
『……えっ?』
頭の中に懐かしく響いた言葉をスルーするかのように、その場にいた五人はどうしてそうなったのかが分からずに思った事を声に出した後、しばらくそのままになって固まってしまった。
最近ブクマと評価が増えてきているおかげで、あと少しで総合が400になりかけているから嬉しい。
次回は金曜日の深夜0時に投稿します




