71話 今日は帰りたくない……
「さてと、そろそろ俺は元の場所に戻りますね。」
「わかりました。ではレイさん、マリアちゃんの古代魔法はレイさんが寝ている寝室の机の上に置いておきますね。」
「はい。ありがとうございます。」
俺は二柱に別れの挨拶をしてから、眠るかのように瞳を閉じた。
*********
「ん……ふぁ〜……」
俺が次に目を覚ました時には、外が少し明るくなっている時間帯で、持っていたスマホを見て時間を確認したら、地球での時間は午前6時前になっていたことを確認して、俺はベッドから起き上がった。
(ティファニスさんが言ってた事が本当なら、机の上に……あった。)
机の上には、言ってた通り巻物が一つ置いてあって、下には二つ折りしてある紙が敷かれてあり、そこにはティファニスさんが置いていきましたのでお願いしますと書かれてあった。
「これについては今度真莉亜にちゃんと説明しておくか。」
『収納庫』に巻物を入れた俺は、顔を洗って着替えてから別荘に向かい、先にリビングにあるソファーでのんびりくつろいだ。
「おはようございます、レイ様。」
「ん……あぁ、おはよう。」
少ししたら足音が聞こえてきて、俺が振り向くよりも先にリラが俺に声を掛けてきた。
「今日は随分とお早い目覚めですね。」
「まぁ今日は学校に行かないといけないからな。悪いけど俺の代わりに三人を起こしてきてくれないか?」
「わかりました。」
リラが他の三人を起こしに行ってる間に、目覚まし用でコーヒーを飲んで待っていたら、階段から真莉亜がまだ眠そうな顔でやってきた。
「おはよう真莉亜。」
「おはよう……ふぁ〜…」
「まだ眠そうだけど、大丈夫か?」
「う〜ん……少し夜更かししたからまだ眠いかも……」
「だったらもう少しソファーで寝てていいぞ。向こうはまだ朝の6時だし、後から呼びに来ることもできるしな。」
「わかった……じゃあお願いするね…」
真莉亜はソファーに寝転ぶと、そのまままた夢の中に入っていった。
少しして夏奈と香織ちゃんも降りてきたところで、俺はリラに二人の事を任せてから元の世界に戻った。
日本に戻ってきてから俺は真っ先に弁当のおかずを作って、母さんの昼飯を作ってから冷蔵庫に入れて、時間が7時前に待ったところで真莉亜が制服姿で降りてきた。
「おはよう、零君。」
「あぁ、自分から来てくれたのか。」
「流石に来てもらうのは悪いからね。リラちゃんが二人を連れていったのを見送ってからこっちに来たんだよ。」
「そっか。それじゃあ華怜と母さんを起こしてきて。その間に朝食を準備するから。」
「了解。」
そう言って俺は全員分の朝食を準備して、その後はいつも通りの時間に家を出て学校に向かった。
「ところで真莉亜。ちゃんと俺たちで決めた約束は守ってるよな?」
「大丈夫だよ。誰にも言ってないし、誰にもバレてないよ。」
「そうか……なら良かった。」
二股が確定したあの日から俺たち三人は、お互いにルールを設けてから隠れて付き合っていくという事をしている。
まず一つ目は、絶対に誰にも言わない。
次に二つ目は、真莉亜は恋人として、夏奈は親友として装って恋人として過ごす。
最後に三つめは、二人は親友として仲良くする。
これが俺たちの決めたルールだ。
一つ目は絶対に守らないといけないけど、二つ目に関しては夏奈と俺が中学から知り合ってるからこれから親友として話していこうと周りに認知させる。
もちろんこれはトモも明日香も知っているから周りもすぐに納得してくれて、おかげで大きな騒動にはならなかった。
三つ目に至っては、これから交流していくという意味合いでもあって、俺たちがダブルデートをしやすきするために建てたルールだ。
当然トモと明日香との交流も欠かさない事。
これでずっと俺たちだけでやってしまったらバレる可能性があるからだ。
「とにかく俺の命運は二人に委ねられているからな。ホントに頼むぞ。」
「もちろん任せて。もしバレたりしたら大惨事になるからね。」
「仮にもしバレた場合は、俺の最終手段を決行するからな。」
「……念とために聞くけど、その最終手段って?」
「パラディエスで隠居する。」
「おぅ……」
ホントにそうなったら家族を捨てる事になってしまうから、絶対にそれだけは免れたい。
そうしているうちに俺たちは教室の前に着いて、中に入ろうとしたら、トモと明日香が何故か俺たちを止めた。
「ど、どうしたんだお前ら。急にドアに前に立って。」
「とりあえず二人ともおはよう。そんで今は教室に入らないほうがいいぞ。」
「「は?」」
俺と真莉亜はトモの言ってる事の意味が分からずなんでか聞いてみたら、明日香が教室の方に指を指していたから覗いてみると、そこは空気の重くなった俺たちのクラスがあった。
「な、何があったの?」
「お前ら、ニュースは見たか?」
「ううん、見てないわ。」
「知らないのならいいけど、これが原因よ。」
「「?」」
トモは俺たちの前にスマホを出して、そこに映ってたものを見ると俺はすぐに納得してしまった。
そこに書いてあったニュースの内容は……
「『人気アイドルユニット フォルテッシモが活動休止!詳細は不明で、関係者は黙認している。』……フォルテッシモ?」
「これ……何時のやつだ?」
「今日の朝からだよ。おかげでファンである男子の大半はショックで朝からこれなんだよ……」
「なるほど。お前らが中に入れないのはこれが理由か。」
俺は中の様子を見ながら呆れていた。
このクラスもそうだけど、他のクラスでも同じ現象が起きていて女子やファンじゃない生徒が廊下でたむろったりして避難していた。
「ねぇ、このフォルテッシモって言うアイドルって人気なの?」
「フォルテッシモは四年前から活動し始めたアイドルで、デビュー当時から微かに注目されていて、今は彼女たちの出すCDはいつも人気上位にあるほどなんだよ。」
「中でもここに写ってる‟ライカ”って子は、アイドルとモデルの二つで活動していて、男子には絶大な人気を誇ってるんだよ。」
「へぇー、そんなに人気なんだ。という事は零君たちもこの二人のファンだったりするの?」
「まぁ…ファンなのかそうじゃないのか、俺の場合は複雑なんだよな。」
俺がそう言うと、トモと明日香は哀れみの目で俺の肩に手を置いて同情してくれて、真莉亜はその異様な光景になってしまっている俺に対しわからない顔をしていた。
こればかりは真莉亜には申し訳ないと思っているし、いずれ知る事になるだろうから黙っていた方がいいかもな。
「あれ、みんなどうして教室にいないの?」
「あぁ夏奈。おはよう。」
「おはよう夏奈ちゃん。」
「よっす常盤。」
「おはよう夏奈。」
後ろから声が聞こえて、振り返るとそこには今登校してきた夏奈が不思議そうに俺った位を見ていた。
俺の代わりにトモが簡単に説明をすると、夏奈もすぐに納得したみたいで、中の様子を見てから溜息を吐いた。
「それにしても零、あなたが知らないって事は、まだ連絡は来てないの?」
「まだないな。下手すれば今日は事後報告になるかもしれないな。」
「なんで事後報告なの?」
「気にするな真莉亜。どうせすぐにわかる事だから。」
「そ、そう……」
とりあえず時間になるまで俺たち五人は廊下に避難をして、櫻井先生が来たところでいつもの学校生活をしていて、昼休みは珍しく全員で一緒に食べる事にした。
「それで零、連絡は来たか?」
「いやまだだ。こっちから返信したからそろそろ―――」
~♪
「来たわね。」
俺はスマホを取り出してからメールの内容を見て見ると、そこにはこんな風に書かれていた。
『今日晩ご飯の食材買ってくるから、ご飯食べさせてね~』……と。
「どうだった?」
「はぁ……どうやらこっちに帰って来るみたいだ。」
「「「あぁ~…ご愁傷様です。」」」
メールの内容を聞いた真莉亜以外の三人は、俺に対し憂いを帯びた顔で見てきて、それを見ていた俺は目で救援要請を出したが、誰も俺の助太刀をしてくれないみたいで、全員揃って目を逸らした。
「はぁ……面倒な事になったな。」
「何というか…いたたまれないな。」
「まぁ…その、何だ…がんばれ。」
「その……できるなら少しは協力するからね。」
「ねぇ零君、もしかしてだけどこのライカって子と知り合いなの?」
真莉亜からの質問を気に、俺は真莉亜に打ち明ける事にした。
「ライカ……本名は白崎照って名前で、こいつは俺の従姉妹なんだよ。」
「へぇー従姉妹なんだ………って従姉妹?!」
真莉亜は俺と今話題になっているライカと従姉妹同士だという事を聞いてありえなさそうな顔で、写真に写ってる彼女と俺を交互に見てきた。
「え、待って……髪の色とか顔付きとか似てないけど、本当に従姉妹なの!?」
「顔付きが違うのは、母親がイタリア人だからだよ。髪の色もそれが濃く出た結果だ。」
「な、名前は?」
「名前は叔母さんが日本大好きな人だから、子供の名前は日本人の名前がいいって言ってたらしいよ。」
俺の叔母であり、照の母親であるその人は、昔から日本で暮らす事を憧れるほど大好きな人で、自分の親と絶縁してまで日本に来たとんでもない人でもある。
「日本人とイタリア人のハーフ……確かにそう言われたらこんなに可愛いのは納得するわね。」
「だからこそ俺は密かに一緒にいてほしくないと願ってるんだよ。」
「どうして?別に問題はないんでしょ?」
「あるんだよ……中学の時に一度ね。」
あれだけは絶対に忘れたくない。
俺にとって最悪の日でもあったし、二度と思い出したくない記憶でもあるあの事件。
これは俺もそうだけど、トモも明日香も夏奈も嫌な思い出として頭の中に残っている。
「中学の時に何があったの?」
「……中三の時、その当時から照はテレビやモデル雑誌などに出て人気だったけど、一年に一回は必ず家に遊びに来てるんだよ。」
「去年は確か忙しすぎて遊びに来れなかったんだっけ?」
「まぁな。去年はかなり仕事が詰まってたらしいから半泣きしてたよ。そんでその当時家に遊びに来た時にある事件が起きたんだよ。」
「ある事件って?」
「……二人で買い物に行ってるところを週刊誌に出された。」
「はぁ!?」
俺が言ったことで真莉亜が驚くのもおかしくない。
あの時は普通に食材の買い出ししてただけだし、変装もしていたから大丈夫だろうと思っていた次の日に週刊誌に載った時はお互いに焦ってたなぁ。
「照のプロデューサーには既に話していたから問題は大きくならなかったけど、あれは最悪だった。」
「しかも誰かが特定してしまったから、そのせいで零は針のむしろになってたもんな。」
「誤解を解いたとしても、相手が相手だったからほとぼりが冷めるのに時間がかかったからね。」
「白崎君、周りが鬱陶しくてずっと苛立っていたのを覚えてるよ。」
「そ、そんなに大変だったんだ。」
真莉亜も俺の大変さが伝わってくれるのを祈りながら、スマホでニュース記事をのんびりくつろぎながら見ていた。
「できれば今回は記者とは警察沙汰にならないで欲しいもんだよ………ん?」
俺はふと目に見えたニュースの記事で指を止めて、その内容をじっくり見始めた。
「どうした。ライカ関連のニュースでもまた見つけたのか?」
「あぁいや。照のニュースじゃなくて、ちょっと気になるやつが出てきてな。」
「零が気になるやつね〜…ちなみになんてやつ?」
「なんか…『あなたは異能力が欲しくないですか?』って匿名で誰かが毎日携帯でメールが出回ってるみたいなんだよ。」
「「えっ……」」
「「異能力?」」
真莉亜と夏奈は超能力って言葉に疑問視していたけど、何故かトモと明日香は唖然としていた。
「…?どうしたんだお前ら。このメールについて何か知ってるのか?」
「あ、いや別に知らねぇけど……ちょっとな。」
「ま、まぁ…私たちの事は気にしないでいいから。それでそのメールはなんて書いてあるの?」
二人はどこかぎこちない様子だったけど、気にするなって言ってきたから、俺は気にせずにそのメールの内容を読んだ。
「えーっと…『異能力を持ってみたいあなたにおすすめ!下に書いてある電話番号に連絡すると、あなたの潜在能力を活性化せて異能力に目覚めさせてあげます!気軽に電話してくださいね!』…って書いてあるね。」
メールの内容を聞いた真莉亜と夏奈は呆れていて、胡散臭い内容にダメ出しを言ってきた。
「アホらしいわね……」
「そんな事ができるわけないですよ。」
俺もメールの内容を見ていてばかばかしいと思ってしまった。
そもそも超能力なんて存在するわけじゃないし、仮にそれができたとしても犯罪が増えたり戦争になったりして、世界が滅茶苦茶になるだけだ。
「な、なぁ、お前らはこれを見て異能が欲しいとかならないのか?」
「いや、それはないな。」←元勇者
「私もないね。」←元魔王
「私もいらないわ。」←妖術師
「「え?」」
俺たちがあっさりいらないと言ったからか、トモと明日香は口を開けてポカーンとしてこっちを見ていた。
「え、いや、え、いらない?」
「別に欲しくはないな。持ってても使わないだろうし。」
「ふ、二人も同じなの?」
「うん。だって異能って言われても全然思いつかないし、持ってても意味はないからね。」
「私も同じよ。それにこんなメール、詐欺か何かとかだと思うしね。」
(((まぁ俺(私)たちもその異能とは違う力持ってるからなぁ(ねぇ)……)))
異能が欲しいの前に俺たちはすでに魔法や妖術など使えれば、神の加護を持って神術も使えちゃってるんだ。
俺もこれ以上はホントにいらないし、持ってても意味がないのは事実だしな。
「それよりも俺の場合は、これをどうしようか考えないといけないしな。」
「変装がダメだったなら、化粧やカツラとかでどうにかしないといけないよね。」
「さっきは目を逸らしちゃったけど、できる限りは協力するようにするからね。」
二人が茫然としているのをほっておいて、俺たちは今日家に来る人気アイドルのアイツをどうやって包み隠そうかを昼休みが終わるまで話し合った。
ずっと休みだらけだと、だらけてしまって体が重くなるのがネックになってきています。
来週は火曜日と金曜日の深夜0時に投稿します!




