70話 時空神との対談
「……知ってる草原だ。」
俺は一度目を開けると視界が変わっていて、そこは前にも来たことのある草原の真ん中で、後ろから気配を感じた俺は振り向いて見たら、そこにはティファニスさんがいつものよう紅茶と茶菓子の置いてあるテーブルについて俺を待ってくれていた。
「レイさん、お休みの時にすみません。」
「大丈夫ですよ。今日はどうしたんですか?」
「特に大きな用事では無いですけど、もう一度改めて謝罪をしておこうかと。」
どうやらまだ自分のやった事を根に持ってるみたいで、昨日と変わらないくらいにしょげていた。
「昨日言いましたけど、もう大丈夫ですから。気にしないでくださいよ。」
「ですが……いえ、そうですね。何時までもこの状態なのは、女神としていけませんね。」
「だから言ったであろう。お前は気にし過ぎだと。」
「ん?」
知らない所から超えが聞こえてきて振り返ってみると、そこには一人の女性が立っていて、こっちに歩いてやって来た。
「クロノアちゃん……」
「此奴に謝罪をして、そして許してもらった。それで終わりなんだ。そういった所で神経質になるな。」
「うぅ……ごめんなさい。」
ティファニスさんが女性に誤っているけど、俺からしたら誰なのか分からないから、誰なのか尋ねた。
「えっと…あなたは?」
「あぁすまない。私はクロノア。パラディエスでは時空神と呼ばれている神だ。」
「時空神、それじゃああなたが俺に手紙と‟虚空”の巻物を渡してきた神様ですか?」
「そうだ。本来なら口頭で話さないといけなかった内容を手紙に書いて教える形にしてしまってすまなかった。どうしても早めに情報を教えねばならなかったからな。」
「いえ、お構いなく。俺もちょうど欲しかった情報だったので助かりました。」
これは俺の本心として言ってるから、情報が欲しかったのは本当だ。
実際あの時の手紙はほとんど情報がなく、手紙の意味をなしてなかったに近かったから、昨日のクロノア様の手紙はかなり大きな情報を手に入れることが出来たからな。
「ありがとう。ここで立ち話をするのもなんだ。ちょうどテーブルもあるから、まずは座って話し合いでもしないか?」
「わかりました。」
俺はそう言って用意された椅子に座り、クロノア様と対面する形でテーブルを囲った。
「さてと、お互い話したい事もあると思うが、先にどちらから話そうか。」
「では先にどうぞ。俺の方はそこまで重要ではないので。」
「それじゃあ先に言わせてもらうが、お前が時間を止められるようになったのはいつ頃だ?」
「時間を停めれるようになったのは……確か召喚されて二年近くの時でしたかね。」
俺は自分の知ってる記憶を少しずつ話して言った。
最初のきっかけになったのは一年半前。
オークの大群と居合わせた際に、一気に前に出ようと考え、走りながら氷魔法を使おうとした時に、その場がゆっくり動いているような感覚を感じてしまって、その時わずかながら自分以外の時間がゆっくり動いていた事がわかって、そこから使える事がわかった。
これが後の『凍える光の世界』だ。
それから半年たったある日、魔龍と戦っている時に、仲間のメリッサが負傷をおって倒れている隙に魔龍がメリッサに攻撃をして、その時は全員が彼女から離れていたから走っても間に合わないのがわかってしまっていた。
俺はそれでもメリッサの方へ走って、絶対に助けてやると思いながらありったけの魔力で『凍える光の世界』を使った時に、その場が静寂に包まれ、覚醒した瞬間だった。
俺は自分のスキルと魔力を使って走り、魔龍の攻撃から彼女を救い出せた時に、俺はさっき使った技の異変に気付いて、無意識だったがその時に初めて俺は時間を止めたという認識をした瞬間だった。
それからは何時でも使えるように何度も戦いながら感覚を覚えさせていこうと必死になって、当時魔王だった真莉亜と戦う前には完全にコントロールさせる事が出来た。
「これが俺が時間が止められるようになった経緯です。」
俺の話を真剣に聞いていた二柱は、驚きながらも納得したかのような表情をしており、クロノア様は紅茶を一口飲んだ。
「なるほど。無意識により、己の本能で使った際に起きた覚醒が、すべての始まりか。」
「確かにレイさんは魔龍と戦った後からそうなっていましたね。」
「正直、使えるようになったのは偶然です。俺もあの時は本当に、無自覚で使っていたので……」
俺の話が終わってから空気が重くなっていこうとしていたのに気付いたティファニスさんは、慌てて俺を宥めてきた。
「べ、別に私たちはレイさんがそれを使えるようになった事を怒っている訳ではないですよ!ただどうしても経緯が知りたかっただけですので!ほらクロノアちゃんもなんか言って!」
「す、すまないレイ!今のは私の方が悪かった。お前は何も気にする必要は無いからな!」
「すみません。どうしても自分でやっちゃいけないことだと言うのは自覚していたので、俺に会いに来たのはそれじゃないかなって思ってました。」
クロノア様は自分の聞き方が悪かったのか、何故か肩身の狭そうな感じになってしまい、逆にさっきまでしょんぼりしていたティファニスさんはクロノア様を呆れた表情で見ていた。
「前々から言いたかったのだけど、クロノアちゃんは真剣な表情が怖いから尋問みたいに見えてしまうから人間に怯えられるんだよ。もうちょっと表情を柔らかくしないと。」
「そうだな……今度から笑顔の練習を定期的にするようにしよう。」
「それで、クロノア様は他に聞きたいことはありますか?」
「いや、聞きたかったのはこれだけだ。それの経緯だけ知りたかったからな。」
クロノア様の聞きたかったのが一つだけだったみたいで、他になさそうだから今度は俺の質問に答えてもらおう。
「それじゃ今度は俺からですけど、真莉亜には古代魔法などは渡さないのですか?」
これに関しては、どうして俺だけで真莉亜にはなかったのかという単純な疑問で、特に意味はなく、只々俺が不思議に思っていたことだ。
「彼女にも渡してもいいのだが、どうしても魔王だったというのが拭いきれなくてな。渡すのに躊躇ってしまうのだ。」
「……もしかしてですけど、会ったことないんですか?」
「実はまだ会ってないんですよ。私は大丈夫だからと言ってるのですけど。」
「あぁ……やっぱりですか。」
ティファニスさんの帰ってきた答えを聞いて、俺は思わず呆れてしまった。
確かに魔王だった真莉亜は人からしたら負の象徴として認知されてもおかしくないけど、実際は元人間であって争いや支配に興味を持たない普通の女の子だ。
不安を持ってることについては百歩譲ってまだいいけど、せめてその辺りの事情は把握しておけよ、仮でも神様ならよ。
「はぁ……仕方ないわね。レイさん、私の方からもうレイさんに渡しておきます。後からでいいので代わりに渡して貰ってもいいですか。」
「わかりました。」
「ちょ……ティファニス!それは流石に無責任すぎるのでは?!」
「クロノアちゃんはまだ会ったことがないからそう言ってるんでしょ。責任は私が取るから、この件は私に任せて。」
「……わかった。すまない。」
「それじゃあレイさん。古代魔法が入った巻物はレイさんの机の上に置いておきますので、よろしくお願いします。」
「はい。」
俺はティファニスさんから言われて頷き、次の質問は俺の気になっていることであって、それを二柱に聞いてみた。
「次の質問なんですけど、クロノア様の手紙に書かれていた魔女王イザベラですけど、そいつは真莉亜と関わりは無いのですよね?」
「どうゆう事ですか?」
「今は人間として第二の人生を送っている真莉亜ですけど、前が魔王だったから何かしら干渉されたりする事とかはないですよね?どうしてもその辺りが怖いので。」
「なるほど。」
「ふむ、その辺りは盲点ではあるな。」
今の真莉亜は俺の彼女でもあるし、過去の時みたいに悲しい思いをさせないって決めた以上、どんなやり方でも守ってやりたいからな。
そんな事を思いつつも、二柱の答えを待っていたら、ティファニスさんが口を開いて答えてきた。
「今のところ可能性は低いでしょうけど、それも視野に入れておいた方がいいかもしれないですね。」
「お願いします。それと最後に聞いておきたいことが。」
「なんだ?」
「真莉亜の最初の転生に立ち会った神様のその後はどうなったのですか?」
「「えっ……」」
俺は二柱の反応を気にせずにそのまま言い続けた。
「真莉亜を間違って魔王に転生させたって事は、それなりの責任を負わされてると思いますし、下手すれば神界から追放もありえるんじゃないですか?」
「……ティファニス。」
「うん、これは話しておいた方がいいわね。」
二柱はお互いに見合い、待ってる間に数秒の静寂があったが、真剣な顔をした二柱が同時に頷いてこっちを見てきた。
「レイさん、これから話すことは絶対に誰にも言わない事を約束してくれますか?」
「……それほど重要な話なんですね。」
「はい。」
「わかりました。それを聞いたら誰にも話さないと約束します。」
「ありがとうございます。まず最初に聞きますけど、レイさんは彼女からどのくらいまで話を聞いてますか?」
「転生する際に調整を間違って魔王にされてしまい、その後その神様に恨みを抱いたってくらいですかね。今はもう無いみたいですけど。」
ティファニスさんとクロノア様はそれを聞いて安心していたけど、緩んだ顔をやめて再び真剣な眼差しで話してきた。
「話を戻しますけど、その転生に携わった女神なのですけど、彼女は最高神の中でも仕事を完璧にこなし、下にいる上級神や下級神の皆からも厚い信頼を持たれるほど人気の女神でした。」
「もちろんそれは私たちも同じで、彼女のやり方や行動はいつも見ていて安心するような奴でな、あのエレイムですら彼女をお墨付きにするほどだったんだ。」
「エレイムさんがですか。それなら優秀な女神だったのですね。」
ぺリアスさんからひっそり聞いていたけど、エレイムさんは感情を表にはなかなか出さない神で、興味を持つ事すらも珍しいと言っていたから、お墨付きが付くって事はかなり有望な神様だったのだろう。
「ですが真莉亜ちゃんの転生で失敗をしてしまった彼女は深く落ち込んでしまって、責任感の強い子でもありましたから、普段は顔には見せないほど落ち込んでいたのを今でも覚えています。」
「しかもやった事が大きすぎる案件でもあったから、私たちもできるだけ彼女をフォローをしたんだ。……だがある日を境に、彼女は自身の神格を置いて神界から消えたんだ。」
「神界から消えた?それって本当なんですか?」
俺は聞き違いじゃないのかと思ってしまったが、二柱の暗い表情見てから察するに、どうやら聞き違いじゃなかったみたいだ。
それにしても自ら神を捨てて神界からいなくなるなんて、よほど責任感の強い神様だったんだな。
「それで、その後はどうなったのですか?」
「それから私たちも含め、神徒や上級神、下級神を総出でパラディエス全土を徹底的に探したのですけど、結局見つける事はできませんでした。」
「推測として彼女は自分から転生をして、どこかの未来や異世界に行った可能性があると思ってる。それほど彼女を追いこんでしまったのだろうな、私たちは。」
話を聞いていてずっと二柱は悲しそうに話しているけど、もしかして俺の予想とは違うのか?
それとも他に何かしら理由でもあるのか……これ以上深追いするのはマズいと思うけど、とりあえず聞いてみるか。
「あの、お二柱はその神様に責任を押し付けた訳ではないのですよね?」
「あぁ、むしろ逆だ。私たちは彼女に対し何も責めてなどはいなかった。それどころか何度も励ましたりしていた。」
「私たちは何かしらのトラブルと思ってますし、彼女がそんな凡ミスをしないのは分かっていましたので、誰も彼女を責めたりしていませんでした。」
「という事は、今でもその神様の神格などは残ったままなのですか?」
「はい。他の上級神の誰かをその座に座らせようと考えてたのですが、誰もその座には絶対座ろうとはしませんでした。それほど彼女は、他の神から信頼を得ていましたからね。」
「そうなんですね。」
他の神様からも信頼されるほど、その神様は愛されてたんだな。
まるで昔のトモみたいだな。
「すみません、そのような事を簡単に聞いてしまって。」
「いえ。レイさんに話したおかげか、少しだけ楽になる事ができました。」
「不思議だな。今お前と話していると、まるで彼女と話しているみたいだ。」
「そんな大層なものじゃないですよ。俺はただの元勇者なのですから。」
二柱の顔から笑顔が見えた事で、俺の方からも笑みがこぼれてきて、その場が穏やかになったところである提案を出した。
「ティファニスさん、それにクロノア様。もし良かったらですけど、その神様の名前を聞いてもいいですか?」
「レイさん?」
「レイ、それはどうしてだ?」
二柱からの質問に対し、俺は簡単に説明をした。
「その神様ですけど、もしかしたら地球に転生して生きてる可能性もあるはずですよね。だったらもしかすると、俺たちの方で見つけたりする事も出来ると思うのですよ。」
「うーん……可能性はなくはないですけど、はっきり言うと当たる確率はかなり低いですよ。」
「でも可能性は0では無いのですから、少しの賭けに出てもいいじゃないですか。」
「……そうだな。やらないよりやった方がいいだろうし、それに賭けるのもありだな。」
クロノア様が賛成してくれて、その後ティファニスさんも考えていたが、合わせる感じで賛成をしてくれた。
「それじゃあ、その神様の名前を教えてください。」
「あぁ。その神の名は、優越神フォルトナ。神界で最も他の神から愛されていた神の名だ。」
「優越神フォルトナ。確かにその名を覚えました。」
俺は行方が分からない神様の名前を聞いて、今後どのようにしていくか考えながら二柱と話をいくつかした。
先週の土曜日を最後に退職してからは暇になったけど、新しい仕事探しがこれから大変になりそうだなって思ってしまってます。
次回は金曜日の深夜0時に投稿します。




