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69話 贈与

≪時空神クロノアの承諾が完了されました。これよりレイ・シラサキに古代魔法の一つ、‟虚空(アカーシャ)”を譲渡します。≫


履物の紐を解いた瞬間、頭の中に突然声が聞こえてきて、巻物が突然光の粒子に変わって俺の体の中に入っていった。


「………え、終わり?」


呆気なかったから終わったことに焦った俺は、ステータスを表示して確認してみた。


「どうだった?」


「……固有魔法として俺の中に入ってる。」


「ということは、魔人というものにはならなかったという事でいいのか。」


「そうですね。……なんか古代魔法を持ったのに呆気ないなホント…」


俺の中ではもっとすごいアクションみたいなものが起きるのかと思ったけど、そんなものは全くと言っていいほどなく、正直言ってなんか手に入れた感があまり感じれなかった。


「ステータス上では『古代魔法・虚空(アカーシャ)』として入り込んでいるけど、一応『見極め師』で確認をしておくか。」


そう言って俺は『見極め師』を使って、どんなものなのか調べてみた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『古代魔法・虚空』

400年前に初代勇者の仲間が所持していた魔法で、空間を歪ませたり一部の物質や生物を粒子にまでさせる事ができ、作成や空間自体を自在に操る事もできる。


またこの魔法を所持している場合、相手の空間にも干渉が可能で、結界破壊や空間同士の衝撃で爆発を起こすこともできる。


管理者 白崎零(レイ・シラサキ)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うわぁ、超ぶっ壊れ魔法キター……」


最早説明なんていらないというレベルだった。


こんなおっかねぇ魔法を初代勇者のメンバーは全員持ってたっていうのか?

それじゃあ架空と言われてもおかしくないし歴史が少なくてもおかしくないわ。


「これ……使い方次第では殺人とかしてしまいそうだな。」


「スキル、また整理する?」


「ぶっちゃけ香織ちゃんの『魔法熟練者・皆伝』を持ってた方がいい気がするけど、とりあえず朝に一回試しに使ってみるか……ん?!」


俺はステータスを見ていて、ふと自分の魔力の貯蔵庫をチラってみた瞬間に、目を疑った。


「ど、どしたの?」


「俺の魔力……鵺と戦った後から増えてなかったけど、増えてやがる。」


「ホント?どれくらい増えたの?」


「26900から32000になってる。」


「ブ━━━!」


俺の魔力が増えた事を聞いた真莉亜は驚いて飲んでいた紅茶を思いっきり吹いた。

実際俺も内心では真莉亜よりも驚いているし、どうしてこうなったのかずっと考えている。


いや、考えなくても大方予想はできる。

十中八九この古代魔法が原因だろう。


「まさか、その古代魔法という奴のせいで増えたのか?」


「可能性があるならそうだろうね。それかもしくはこの特訓で増えたかのどっちかだろうな。」


もうこればかりは仕方ないだろう。

仮に古代魔法のせいでも今更取り外すこともできないし、何より神様からの贈り物と言われたら尚更だ。


「……向こうの時間は夜中の4時前、特訓は明日までだし今日はもう休もう。というか俺がもう限界。」


「そうだね。それじゃ今日はもう解散して、明日の朝に早速見て見ようか。」


そうして俺たちは一旦解散してから眠る事にして、夏奈と香織ちゃんも次の日まで特訓をすると言ったので、別荘にある部屋に向かって行った。


ちなみに俺は最初からティファニスさんが用意してくれた家の一室で寝るようにしている。

理由は単純で、女だらけの別荘の中にいるのは気まずいのと、リラが俺の部屋で一緒に寝ようとするからである。


――――翌朝


「よし、早速使ってみるか。」


朝少しだけ早めに起きた俺は、特訓する場所から離れた場所に真莉亜と一緒に来ていた。


「それで零君、今からその古代魔法を数本出した氷の柱に試し打ちをしていくつもりだよね?」


「あぁ、ここまで離れていたら爆音の心配はないだろう。」


今俺の前には『氷柱壁』と同じ大きさの柱を数本出していて、虚空がどれくらいの威力と範囲なのかを確認するために用意したのだ。


「まずは手の平に出してみるか。」


いきなり使うのは流石に怖いと思った俺は、とりあえずどんなものなのか見るために、まずは手に出してみる事にした。

すると手の平に紫色の少し禍々しい球体が現れて、俺と真莉亜はそれをじっくりと見た。


「何というか……闇に近いのかな?」


「色はそれに近いよな。……やってみるか、『虚空(アカーシャ)』!」


俺はまず手に出した古代魔法を目の氷の柱に向けて放った。

速度は中々早かったけど、威力を見て俺たちは絶句した。


まず最初に氷の柱に一直線に向かっていき、そこで本来なら爆発みたいなどが起きてもおかしくなかったのだが、当たった瞬間に起きたのは一瞬の爆発で、氷の柱に当たった場所には風穴がきれいな円形状に空いていた。


「「エ、エグい……」」


「昨日俺が言ってたこと、何時かホントになりそうで怖いな。」


「使い所は慎重にしていったほうがいいかもね。」


「……他も試してみるか。」


そうして俺は色々と試して放ってみた。

例えば聖剣に付与させてから斬撃にしてみたり、散弾銃みたいに粒状にして投げたりと俺ができそうなやり方で試して体に覚えさせていった。


「ふぅ……大体こんなもんかな。」


「結構試していたよね。私も色々と参考になったけど。」


思いついたものを試していったけど、実戦で活用できそうなのはわずかに3つ4つ程で、それ以外はあまり実戦では期待できないものばかりだった。


「はぁ……これだけ強い魔法を貰えるんだったら、五大元素の極限魔法の特訓はほとんど意味をなさなくなってきたな。」


「五大元素?魔法は闇と光を除けば6つじゃないの?」


「水と氷は一括りにされてるんだよ。ある事件以来から。」


俺もこればかりは本当に呆れる程どうでもいい事件で、王様や師匠も頭を悩ませるほどのつまらない事件だった。


「ある事件って何?」


「知ってるかどうか分からないけど、水と氷の魔法だけ派閥みたいなのがあったんだよ。」


「派閥ってことは、宗教みたいなものとか?」


「そうだ。その二つの派閥では、昨日会ったエレイムさんとペリアスさんの二柱(ふたり)を称えているんだけど、そこである事件が勃発しちゃったんだよ。」


「ねぇ……それってまさか。」


真莉亜は察したのか、顔を引きつらせていた。


「その事件っていうのが、『どっちの神が強くて相応しいのか』っていうやつだったんだよ。」


「あぁ……何となく予想はできたわ。」


真莉亜も事件の内容を聞いて呆れた表情をした。

傍から聞いている俺たちからしたら他所でやれって言ってやりたいほどつまらない事件であって、当時鎮圧化させてた師匠たちも愚痴として話すくらいの酷いものであった。


「結局、どうやって一括りにさせることができたの?」


「詳しい経緯は知らないけど、怒った二柱が『これからは一つになれ。』って鶴の一声をかけて決着がついたみたいだよ。」


「なんというか……アホらしいわね。」


「まったくだよ。」


朝からずっとやってた俺は時計を覗いてみると、なんと3時間もやっていたみたいで、時間を見たタイミングで腹の虫が鳴いた。


「腹減ってきたし、朝飯食いに戻るか。」


「賛成。」


俺たちは一度腹の虫を抑えるために朝飯を食いに別荘へと歩いた。


それにしてもどうするかな……折角覚えた新技の魔法、一部は使わず終いになりそうだし、どうしようかな。


桜姉たちに教える……だけど時間がない。

感覚で覚えさせる……これは論外。


うーん……なんか昨日のやつみたいに簡単にできる方法がないものか。


送る……贈与……ギフト……ギフト?


「……あ、あった!」


「うわっびっくりした……急にどうしたの?」


「あぁごめん。さっき言ったことだけど、"贈与(ギフト)"なら可能だと思い出してな。」


「なるほど、その手があったか。」


贈与(ギフト)、これは4代目勇者が作ったとされている魔法の一つで、魔術師なら誰でも作れて、簡単に魔法やスキルを渡すことができる。

しかも俺はそれが使えるし、条件も全部満たしている。


これを活用して他のみんなに渡していこう。

そうすれば俺が使わなくなるだろう魔法を自分たちが使ってくれから安心して見られるしな。


(そうと決まったらを食べたら早速取り掛かろう。)


俺は昨日リラに頼んで朝飯を作っておくように頼んでおいたから、俺たちが戻って来たタイミングで作り終えたみたいで、俺たちは全員で朝食を食べた。


朝食を食べた俺は、片付けを済ませてからすぐに家の方に向かってからシャワーを浴びて、『収納庫』からパラディエスの紙を10枚以上取り出して寝室の机で作業を始めた。


「渡すのは炎と風と水と土でいいかな。氷と雷と光はメインウェポンとして使うし、妖術と神術もあるから充分だな。」


土魔法は得意だけど、3つ持っておけばどうにかなるだろうし、それこそ妖術などでカバーすればいいだけだしな。


「それじゃあまずは風魔法からだな。極限魔法以外を贈与(ギフト)にすればいいかな。どうせ極限魔法渡しても使えないというパターンになりそうだしな。」


俺は風のオリジン魔法を一つずつ丁寧に作っていき、終われば次に、終われば次にとほぼ休まないでずっと贈与作成にのめり込んだ。


それからどれくらい経ったのかわからなかったけど、最後の一つを終えた俺は、椅子から立って体を思いっきり伸ばした。


「終わった〜ふぅ……かなりの量になったな。てか外真っ暗だし。」


窓の外を見たらもう夜で、どうやら俺は半日近く休まずに作業をしていたみたいだ。

俺がベッドや色んな所にに仕分けておいた贈与(ギフト)を見てみると、全部で20個の贈与(ギフト)が完成していた。


「これだけあれば充分だろう。全員に二つずつって感じになったな。」


それぞれの贈与(ギフト)には名前を刻んでおり、紐も仕分けができるように色を変えて縛っていたからすぐに見分けがつくだろう。


「さてと、あっちに戻ってさっさとみんなに配るとするか。」


収納庫(アイテムボックス)』の中に入れて言ってると、ドアをノックする音が聞こえてきて、俺が答えるとドアの向こうからリラと真莉亜がやって来た。


「レイ様、大丈夫ですか?」


「大丈夫だけど、何かあったの?」


「リラちゃん、零君が昼ご飯も食べに来る気配もなかったから心配していたんだよ。」


「あぁ悪い悪い。贈与(ギフト)をずっと作ってたから昼飯食べに戻らなかったな。連絡くらいしとけばよかったな。」


「すみません。レイ様が贈与(ギフト)を作られている際は邪魔をしまいようにと声をかけなかったのです。だからレイ様は何も悪くありません。」


リラは自分が悪いみたいに思ってるけど、これは俺の方が悪いからな。

流石に申し訳なくなった俺は、しょんぼりしているリラに近づいて頭を撫でてあげた。


「ごめんな。こればかりは俺が悪いから、リラは何も気にするな。」


「……はい。」


「真莉亜もごめんな。俺が何も言わなかったから迷惑かけちまって。」


「大丈夫よ。それより早く戻りましょう。もう晩ご飯ができてるし、みんなも零君を待ってるみたいだからね。」


「わかった。それじゃあすぐに戻るか。」


俺は二人と一緒に別荘に戻り、みんなに謝った後に夕食を食べてからみんなに渡していくことにした。


「全部で20個あるから、二つずつ渡していくからな。」


そう言って俺は『収納庫(アイテムボックス)』から贈与(ギフト)を出していって、一人ずつ配っていった。

ちなみに贈与(ギフト)は4種類×5で20個にしていて、みんなに合うであろう魔法を渡していってます。


「まずリラは、炎と風の魔法を贈与(ギフト)にしたよ。」

「ありがとうございます。」


「次にシーナだけど、シーナは水と土魔法ね。」

「ありがとうございます。」


「そんでタジナは風と土で、ヨルムは炎と風だ。」

「ありがとう、マスター」

「ありがとうございます、師匠。」


「それじゃあ次はシグレだけど、シグレは水と土だね。」

「ありがとうございます、主君。」


「ロザリアは炎と水、ヒスイは風と水ね。」

「あ、ありがとうございます。」

「感謝する、主よ。」


「それでエメリルは風と土だね。」

「ありがとうございます〜。大事にさせてもらいますね。」


「最後にサヨリは炎と土、アストレアは炎と水だな。」

「ありがとうマスター。しっかりと使わせてもらうよ。」

「ありがとう。もう強いけど貰っちゃうわね。」


全員に行き渡ったのを確認して、俺は使い方を全員に伝えた。


「やり方は俺の時と同じで、紐を引っ張れば自然的に頭の中に入っていくはずだから。それから後は自分たちでコツを掴むようにしてくれ。」


「わかりました。」


「真莉亜も思えたかったら教えるぞ。簡単だから時間も計画掛からないし。」


「そうだね……じゃあ教えてもらおうかな。」


そうして俺は真莉亜に贈与(ギフト)の作り方を簡単に教えて、実際に一つ作らせてあげてから、完成させることが出来た魔法はリベルに渡すと言ってリベルに作ったばかりの贈与(ギフト)を手渡した。


「マリア様から貰った魔法、大事に使わしてもらいます。」


リベルもすごく嬉しかったのか、真莉亜から貰った贈与(ギフト)を胸にギュッと抱き締めて大事そうにしていた。


他のみんなも羨ましがった目で見ていたのに気が付いて、真莉亜は必ず作ってあげると約束をしてから今日はこれで終わりにして寝る事にした。


(現実の方では深夜0時を回った所で午前6時になるはずだから、朝起きてすぐに現実に戻ればちょうどいいかな。)


そう考えていたら睡魔がどんどん大きくなってきたから、俺は毛布を被ってそのまま自分の夢の中に入っていった。


昨日は震災から10年経った日でしたけど、テレビで中継されてた映像は未だに覚えています。

実家が九州だから、いつかそれと同じ大きさの地震が来ると思うと怖いですね。


来週は火曜日と金曜日の深夜0時に投稿します。


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