61話 VS地獄王ぬらりひょん2
「暴食……あの時消滅したんじゃないの?!」
真莉亜は焦っているけど、正直俺も少し焦ってる。
だってその暴食の悪魔は俺が倒したはずなのに、今目の前にいるぬらりひょんが使っているのが暴食の悪魔だと分かった瞬間、俺の中でいくつかの疑問が確信に変わった。
(おそらく七つの大罪の悪魔がの力が盗まれて、その盗んだ犯人は俺たちが知ってる脱走者なのは確定だな。そしてティファニスさんは……ポンコツが発動したな。)
あの女神は黒だな。
だってあの女神異世界で会った時から何か抜けそうな感じだったし、他の神様がどういった神様なのかは知らないけど、これだけは確信できる……あのポンコツ女神よりかはマシだと思う。
だって肝心の情報を教えないってどうかしてるしな。
そんなくだらないことを考えていたら、ぬらりひょんの黒い靄は巨大な三頭の犬の頭の形に変わっていった。
『刮目しろ! これが儂のもう一つの力、『暴食の悪魔』じゃ!!』
ぬらりひょんが大声で叫ぶと、後ろに出現した暴食の化身獣である三つ頭の番犬、ケルベロスが上に向けて遠吠えをしてこっちを睨んできた。
『わっはっはっは! どうだ人間ども、この圧倒的な力の差を! これが神をも超える真の力じゃ!!』
「これだけやっても……私たちは勝てないの。」
「お姉ちゃん……嫌だよ…まだ死にたくない。」
「くっ……ここまでか…」
「………」
全員がここまでだと思ってしまって絶望していたけど、俺は何故か冷静でいられた。
『どうした小僧。これだけの差があって言葉を失ったか?』
「……だらん。」
『なんじゃ、声が小さいぞ? もっとはっきりいわねb「くだらん。」……何?』
「これが真の力? ほとんど借り物の力だろうが!」
「借り物? どういう事なの?」
常磐の言葉でその場にいた全員が俺の方を向いてきたが、俺はそれを気にしないでぬらりひょんを睨みつけながら一つずつ言っていった。
「お前の力は俺と真莉亜とリラがいた異世界の悪魔の力。妖の頭の三体もお前が最初からいた部下でもなければかつていた人間と桜さんの親友だし、しかもこの結界自体も暴食の力の一つであって、お前は自分自身の力を持ってないくそったれなんだよ!」
『なっ……!』
「もういい……ここまでクズだったら俺が徹底的に終わらせてやる。真莉亜、桜さん、それにみんなも…悪いけど全員俺のサポートだけに専念してくれないか?」
「れ…零君?」
「真莉亜、俺はこういった人の力だけしか持っていないで神になろうとしている奴が大っ嫌いなんだよ。心配するな、アイツに俺との格の違いを見せてやるだけだ。」
「……わかった。」
「リラ、アレを連続で使い続ける。サポートの準備はいつでも行けるな?」
「はい。お任せください。」
「桜さん、アイツを憎んでいるのを知ったうえで申し訳ないですけど、よろしいですか?」
「あぁ……其方には絶対に攻撃を行かせないように支援しよう。」
「…ありがとうございます。」
前に一緒にいた二人に確認を取って、俺はゆっくりと前へ歩き出した。
『おい小僧、儂にどこまで愚行な行為をすれば気が済むんじゃ。わかっていないようだったらさっさと貴様を殺したほうがいいみたいじゃな。』
「俺を殺す?…っは、笑わせるな。お前は俺を怒らせてる時点で負けてるんだよ。」
『き、貴様!』
「それに……俺はもう攻撃を始めてるぜ。」
『はぁ?貴様が儂に攻撃ができる……とで…も?』
ぬらりひょんが言い終える時には、俺の聖剣の真名開放は終えて本来の聖剣の姿に変わっており、八岐大蛇の首が二本斬られて地面落ちていたのだ。
『なっ…!?(何をされたんだ? なんで首が二本地面に落ちている? それに小僧の武器、アレは暗暴骸香の時に見せていたヤツではないか!?)』
「あと首は五本…」
『くっ……行け、ケルベルス! 奴を嚙み砕け!』
「『業炎の審判』!」
「『桜花白狐流 捌ノ型 八重桜』!」
「「『神術 神空刃』!」」
ぬらりひょんの指示でケルベロスの三つの頭が襲いにかかって来たが、真莉亜と桜さん、それに常盤と香織ちゃんが『共鳴』で合図を送って指示をしたおかげで、俺に攻撃をする前に消滅してしまった。
『…っ!『地獄道 蛇炎災邪』!』
「遅い…『氷柱壁』」
残りの五本の大蛇を使って俺に炎のブレスを仕掛けてきたが、俺はそれよりも早く氷の柱を数本前に出現させて防御した。
『くそっ…「『玖の太刀 無骨』」ぐはっ…!』
俺は防御して瞬時にぬらりひょんの前まで瞬間移動をして、さらに大蛇の首を一本斬り落とした。
『(何故じゃ……何故小僧の動く姿を捉えれない!? こんな力…一度も見せていなかったではないか!?)』
「なんで姿を捉える事ができないとでも思っているのか?」
『!?』
俺の言った事が当たっていたみたいで、八岐大蛇の体が一瞬だけビクッて動いた。
「図星みたいだな。…ま、教える気はないけどな。なんだったら当ててみたら、俺の使っている力をな。」
『くっ……!』
向こうもこうなるとは思ってもいなかったみたいで、さっきよりも攻撃を仕掛けてくる事が減ってきた。
恐らく向こうは仕掛ければカウンターをしてくるの分かっているからこそだろう。
(まぁそっちが動かないんだったら、こっちから攻撃はするんだけどな。)
「『捌の太刀 居合十六蓮華』!」
『ぐわあああああ!!』
一点集中で大蛇の首に十六回の斬撃をくらわせて、残り三本になったところで流石に見苦しくなってきたのか、ぬらりひょんは悲痛な断末魔を言って苦しみだした。
「『マナマンダーレ』」
リラが俺にずっと魔力を送ってきているおかげで、俺の魔力はいまだに充分あるし、庵で体力を回復させていたからまだ息を荒立ておらず、ぬらりひょんをどんどん追い詰めていく事に集中した。
「零君……もしかしてアレを連続で使っているの?」
「はい。だからこそ皆さんを下げてサポートにまわし、私がレイ様に魔力を送っているのですから、そうに違いありません。」
「あの、リラさん。白崎君は何を使ってぬらりひょんを攻撃しているのですか? 私たちには白崎君が瞬間移動してるようにしか見えませんが。」
「あれは瞬間移動とかではなく、レイ様が持つ極限魔法の一つです。」
「「極限魔法?」」
彼女たちにはその言葉を言われてもわからないので、二人は簡単に説明をした。
「極限魔法というのは、私たち異世界における魔法を極限の領域に行った魔法でして、異世界人の魔法が使える者からしたら、目指したい領域なのです。」
「委員長は知らないと思うけど、私もいくつかその極限魔法を持っているんだよ。」
「そうなんだ。それじゃあもしかして、白崎君が使っている魔法もその極限魔法の一つなの?」
「そういうことです。そしてレイ様が使っている極限魔法は、氷の極限魔法です。」
「氷の極限魔法……(もしかしたら、私と香織もその領域にいつかは…)」
委員長が何か考えていると、香織ちゃんがまた私たちに質問をしてきた。
「それで、お兄さんが使っている氷の極限魔法って何ですか?」
「零君が使っている氷の極限魔法の名前は、『禁術 閉ざされた禁忌の世界』。その力の正体は、時間を止めているんだよ。」
「「じ、時間を止める!?」」
あまりにも予想外な力に、二人は驚きを隠せなかった。
まぁもちろん私も最初は驚いたけどね。
あの最終決戦では一回しか使っていなかったけど、私にとってはアレは脅威でしかなった。
「じ、時間を止めているって事は、それだけハイリスクじゃないの!?」
「もちろん、時間を止めるって事は、それだけ魔力を消費させます。レイ様に聞いたのですけど、一秒使うのに魔力の消費は100。今のレイ様がフルの状態で使用すると、最大で4分は使用可能でしょう。」
「よ…4分。」
「お兄さん、もう完全にチートじゃないですか!?」
二人は今私たちの目の前で戦っている零君と、ずっと攻撃されて苦しんでいるぬらりひょんをサポートをしつつ眺める事しかできていない。
まぁ二人の気持ちはわかるし、私も零君と同じでぬらりひょんにはさっさと死んでほしいと思っているし、早く終わらせてしまいましょうか。
「『終焉ノ茨』」
真莉亜が発動してくれた闇魔法の茨は、ぬらりひょんの動きを止めるのに充分だった。
「助かるぜ真莉亜!『妖術 呪獄爪・斬滅』!」
俺は鵺から貰った妖術を聖剣に纏わして、大蛇の首を斬った。
この妖術、鑑定で見た時傷口に火傷を負わす事もできるみたいで、俺が斬りつけた所が出血と火傷でかなり効いているみたいだった。
『この力……鵺の妖術じゃな。彼奴はやはり最後に人間に託したのだな。こんな脆弱な人間風情に!!』
「『桜花白狐流 捌ノ型 八重桜』!」
『ゴボッ……この女狐が!!』
「桜さん!」
桜さんが突然合図を掛けたりしていないのにぬらりひょんを上から斬りにかかり、攻撃が命中しても、桜さんへの余程の憎悪を抱いているのか、大蛇の頭の一つが上にいる桜さんに噛みつかんと迫って行った。
俺は思わず叫んで『飛行』を使って助けに行こうとしたけど、桜さんが目で「大丈夫だ」と言ってきているかのように笑っていた。
「『桜花白狐流 肆ノ型 桜流し』」
『何っ!?』
「妾の憎しみ…そして同胞や民たちの仇、ここでケジメをつけてやる!『桜花白狐流 玖ノ型 彼岸桜』!」
『グボッ……カハッ!』
桜さんは迫ってくる大蛇を受け流すかのように横にズラして、桜さんの剣技には見えない憎悪を纏った斬撃で首を斬り落とし、残りはあと二本となった。
『女狐……それに人間どもが……この儂にここまでやるとは……身の程を弁えろ!!』
「身の程を弁えろ? お前は自分が今までどれだけの人間を殺してきたと思っているんだ。身の程を弁えるのは、お前のほうだよ。」
『小僧が…ただの人間風情が……殺せ、八岐大蛇! あの小僧をここから生きては帰すな!!』
ぬらりひょんがまた何か仕掛けてくると思い、俺たち全員が次の攻撃に備えて構えたが、ぬらりひょんの攻撃はやってくる事はなかった。
『ど…どうしたのいうのだ! 何故動かない!?』
ぬらりひょんの方も想定外の出来事だったみたいで、焦った声で大蛇を必死に動かそうとしていた。
すると最初から虚ろな目をしていた八岐大蛇の目に光が通り始め、覚醒したかのようにゆっくりと動き出した。
『何だ、大蛇の制御が…か、体が…全く言う事を聞かない!?』
ぬらりひょんがあんなに焦って大蛇を自身の制御化させようとしている。
そして大蛇の目に光が……あぁ、なるほどな。
「何、どうしたの?」
「どうやら限界が来たみたいだな。」
「限界?」
俺はなんでぬらりひょんがあんな事になっているのかを知っているけど、隣にいた真莉亜はいまいち分かっていなかった。
「考えてみな。アイツは"暴食の悪魔"を使って、この空間に人の魂と八岐大蛇を置いていた。それだけでもかなりの負担はかかっているはずなのに、アイツは"暴食の悪魔"をお構い無しに使い続けた。あとは分かるよな?」
「もしかして、器の限界?」
「正解だ。」
本来悪魔の力というのは、悪魔だけしか使えないものであって、人が使えば暴走したり器となった人が壊れて死ぬのどちらかしかほとんどありえない。
ただ稀に、その制御化ができて魔人になる者も存在する。
今目の前にいるぬらりひょんもその一人だ。
そして今ぬらりひょんがなっているのは、"暴食の悪魔"の使いすぎによって制御が弱まってしまい、本来の自我を持った八岐大蛇が、ぬらりひょんの自我へ侵食し始めているのだ。
『オ、大蛇の奴……儂の自我も飲み込むつもりか!? や、やめろ……儂の…儂の自我を飲み込むなああああああああぁぁぁ!!』
グアアアアアアアアアアァァァァァ!!!
今のでぬらりひょんの自我は、大蛇によって完全に飲まれてしまい、今目の前にいるのは、本来の八岐大蛇の自我だけになってしまった。
ただ大蛇は既に俺たちの攻撃で致命傷近くになっているため、野生の本能のように死ぬたくないという思いで、抵抗するかのように暴れだし始めた。
「ぬらりひょんに同情する気は無いけど、なんというか哀れですね。」
「そうだな。だがそれでも、平和を訪れさせるためには、悪は滅ぼさないといけないからな。」
「ぬらりひょんの自我がない以上、この空間も何時まで持つか分かりません。三人でで攻撃して一気にトドメを刺そう。」
「「わかった。」」
俺は『共鳴』で後方にいる全員に伝達をして、俺たち三人以外には先に攻撃をして怯ませて欲しいと伝えた。
後ろにいた五人は、俺の伝達を聞いて頷き、全員が一斉に大蛇に向かって攻撃をした。
「「『神術 天叢雲剣』!」」
「『神術 極楽氷土』!」
「『神術 雷龍昇』!」
「『ディープ・プラント』!」
常磐と香織ちゃんの巨大な風の剣で大蛇を斬り、久遠さんが俺の使える『雷震撃』見ないなもので、大蛇の真下から龍の形をした雷で貫いた。
動かなくなった大蛇を、最後にリラが太い蔦をいくつも地面から生やしてがっちりと動けなくさせた。
「行くぞ、二人とも!」
「「はい!」」
リラの魔法で完全に動けなくなったところで、俺たち三人は同時に攻撃を仕掛けた。
「『常闇を掻き消す神剣 究極』!」
「『業炎の審判 陽焔斬』!」
「『桜花白狐流 拾ノ型 臥龍桜』!」
グアアアアアアアァァァァ……!!
俺は髑髏の時に使った技で……
真莉亜は『陽炎上昇』を使って強化した剣技で……
桜さんは俺の前で初めて使う技で、それはまるで龍を斬り落とすかのような、一切の躊躇いがない剣技で……
三人同時に斬りにかかり、避ける事ができずに斬られた大蛇は、ついに限界が来たみたいで、身体中から血が吹き出てその場に倒れ込んだ。
倒れ込んだ大蛇の体は、妖の頭たちのように、体の至る所から塵になっていって、最終的には、ぬらりひょんの体だけが、その場に残ってしまっていた。
先日は投稿できなくて大変申し訳ありませんでした。
次回は金曜日の昼12時に投稿します。




