57話 怨霊の獣
≪大和の国 とある集落≫
「おりゃあああ!!」
『ハハハ!! 全ク効キマセンヨ!』
場所は再び戻って、髑髏こと暗暴骸香と戦っている零だったが、ぬらりひょんの手助けにより強化された髑髏に対し、悪戦苦闘をしていた。
「くそっ…さっきより強化されて矢が全然効いてねぇ…!」
『ソウ!コンナ私メニ、コノヨウナ力ヲ与エテクダサッタカラコソ、私ハ完全ナ体ヲ持ッタノデス!』
さっきから嬉々としゃべっているけど、確かにその通りなんだよな…
『聖女の矢』が当たっても、ほとんど傷が見えてない。
しかも強化した際に少しだけ肉体が付いていて、普通の攻撃を撃ってもあまり効き目がなかった。
だとしたらこっちが完全に不利なのは目に見えてよくわかる。
『ドウヤラ、勝機ハコチラニ向イテイルゴ様子。ナラバ徐々ニ攻メテ苦シメマショウ。『萬呪土葬』!』
髑髏が妖術を発動させると、周囲の地面から大量の死体が現れ始めた。
「これは…屍鬼か!?」
『ゴ名答。サア行キナサイ、私ノ可愛イ僕タチ。ソコノ人間ヲ殺シナサイ!』
「っ!…くそっ!」
髑髏の合図とともに一斉に屍鬼が俺に襲い掛かってきた。
数は目視で確認しておそらく五十体。
動きが遅い代わりに集団での攻撃、それにプラスの自身の疲労。
それで導きだされる手段はただ一つ……避けながら数を減らすの一択だけ。
『オヤオヤドウシマシタカ? 動キガ遅イデスヨ?』
「…チッ……これじゃあ埒が明かねぇ。」
そうしていく内にも体力は減らされ、俺が押されていく一方になっている。
あぁもう…仕方ねぇ…こうなったらやけくそだ!
「スキル『飛行』!」
俺は屍鬼の攻撃をギリギリ避けたのちに空へ飛び、ちょうど髑髏や屍鬼の全部が見える位置に停止した。
「諸刃の刃だが…ここで躊躇うな!」
俺は自分に喝を入れて、両手にありったけの魔力を集め、雷を発生させた。
「お前ら全員真っ黒焦げになりやがれ!!極限雷魔法『未知なる雷轟』!!」
その雷は、自然に起きる雷よりも大きく、すべてを焼き尽くす強大な雷。
故にそれは、誰もが見た事のない人工現象。
一人の発明家、ニコラ・テスラが雷を起こす機械を発明し、人工的に雷を発生させる事と原理は同じで、零が異世界で所得した雷魔法は、時間が経つにつれてすべてを凌駕させる物へと覚醒し、悪を裁かんとする雷霆になっていた。
『オ、オノレエエエエエエエエ!!』
髑髏はもちろん、召喚させた屍鬼たちはまともにくらい、すべて雷によって焼かれていった。
攻撃が終わり、辺りにいた屍鬼はすべて黒焦げて死んでおり、その場にはうつ伏せになった髑髏と、満身創痍になってかろうじて意識があった状態でうつ伏せになっている俺だった。
『フフフッ……フハハハハハ!!今ノ攻撃ハ素晴ラシカッタデスガ、ドウヤラスベテヲ出シ尽クシタミタイデスネ!』
髑髏はフラフラと起き上がって、倒れている俺に向かって笑いながら叫んだ。
「ハァ……ハァ……」
『グフッ……ハァ…ハァ…屍鬼ヲ全テ倒シテシマワレタノハ予想外デシタガ、勝機ハコチラニ有リデスネ!』
俺は何とか体を動かそうとしたが、肉体の疲労が限界に近いせいか、体が全くと言っていいほど動かなかった。
意識も朦朧としてきているし、動かせても口だけしか動かせなかった。
『私ニ傷ヲ与エタカラコソ、セメテモノ礼デス。アナタヲ最高ノ屍鬼ニシテアゲマス!』
髑髏が俺に触れようとして来たところで、俺は一つの答えを教える事にした。
「はっ……お前は気づいていないみたいだな。さっきの攻撃は……呼び寄せるために使ったんだよ。」
『……ハ?』
「『桜花白狐流 壱ノ型 乱れ桜』!」
『ナ、何!?』
俺の触れようとしていた髑髏の腕は、来てくれた人の手によって切られ、俺はその人に担がれながら距離をとってその場に座らせてもらえた。
「大丈夫か、零。」
「ははっ……ギリギリセーフでしたよ……桜さん。」
乾いた声を出しながらも、俺は助けてくれた桜さんに笑って答えた。
「零君!」「レイ様!」
後からこっちに向かって来た真莉亜とリラを見て、俺はさっきの攻撃が無駄ではなかったって事がわかり安堵した。
俺がやったさっきの雷は、髑髏と屍鬼に向けての攻撃でもあり、こっちに来ていた三人への目印の代わりとして、目立つためでもあったからだ。
理由としては簡単で、屍鬼の攻撃を避けながらも『気配感知』を使って、こっちに来ている事は分かっていたから、ある程度の距離になったら使うつもりで髑髏に放った、これが理由だ。
まぁもちろん捨て身のやり方であったから、失敗すれば俺が屍鬼にされていたけど、成功した以上、結果オーライになったけどな。
「レイ様、大丈夫ですか!!」
「心配するな……疲労と少しの魔力不足だ…死にはしない。」
「零君、体は動かせそう!?」
「いや…ダメだな……一向に動こうとしない。」
「リラちゃん、零君を連れて安全な場所に移動できる?」
「『空間転移』は使えますので、ここから移動する事は出来ます。」
「なら、零君をお願い。ここからは私と桜さんでやるから。」
「わかりました。レイ様、少し動かします。」
リラが俺の背中に腕をやると、いつでも移動できるような体勢になった。
俺はリラに体を預けようとしたけど、代わりに戦ってくれる二人に向かって、髑髏の今の状態を話しておく事にした。
「桜さん……それと真莉亜。一つだけ…言っておきたい事がある。」
「何だ?」
「今の奴は、ぬらりひょんによって強化されて…肉体を微かに持ってしまっています。…だから恐らく…通常の攻撃も入りますし、神術も有効打になるかと思います。」
「わかった。後はゆっくり休め。」
「では…後は任せます!」
それを言った後に、俺はリラの『空間転移』によって、その場から離脱した。
「……さて、さっさと終わらせてやろう。みんなの為にも。」
「そうですね。それに今の私はかなり怒っていますから、簡単には死なないですよ。」
『……アノ小僧ハ逃ゲマシタカ。マァ良イ…結果トシテハ一人カラ二人ニ変ワッタダケダカラナ!』
「言っておくが、今の妾たちに勝てると思うなよ…暗暴骸香!」
「私たちが相手する以上、安らかな死を迎えられると思うなよ。獣畜生!」
『ソウデスカ。ダッタラヤッテ見セロ、下等生物風情ガ!!』
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≪大和の国 庵前≫
「誰か開けてください!レイ様が危険な状態です!」
リラは『空間転移』を数回に分けて移動しながらも、何とか無事に庵前まで来ることができ、急いで庵の戸の前まで俺を運んで、戸を何度か強く叩いた。
「リラ様!少々お待ちください!」
中からは冬華さんの声が聞こえてきて、早歩きをしながら戸の前まで来て、止め具である棒を急いで外して戸を開けた。
「リラ様、白崎様は!」
「疲労と魔力不足でかなり体力を減らされてます。布団の準備をお願いします。」
「わかりました。久遠、布団の準備をお願いします!」
「うむ、招致した!」
奥から久遠さんの声が聞こえて、押入れを開ける音なのか、奥から物音が聞こえてきた。
「リラ様、手伝います。白崎様、肩を。」
「ありがとうございます…冬華さん。」
俺は冬華さんにもう片方の肩を預け、二人に協力されながら庵の中に入っていった。
「白崎君!……よかった。」
「お兄さん、無事でよかったです!」
中に入ったら、二人が涙目になりながらも、俺が無事に帰って来れた事に安堵していた。
なんだか申し訳ない気持ちになってくるな。
二人にこんな心配をかけてしまったせいか、俺の良心がグサグサ刺さって痛い。
「お気持ちは分かりますが、今はレイ様を休ませる事を優先しましょう。」
「! ごめんなさい、そうでした。香織、手伝いましょう。」
「了解、お姉ちゃん。」
二人は安心した後に今の俺を見て、急いで俺を休ませるためにお互い揃って何かを準備し始めた。
「冬華、準備ができたぞ。早く横にさせよ。」
「ありがとうございます、久遠さん。リラ様、白崎様を。」
「はい。」
二人は布団が敷かれた所に俺を移動させ、ゆっくりと俺を布団の上に乗せ、そして異世界にいた時からの癖なのか、リラは当たり前のように自分の膝に俺の頭を優しく置いた。
その場にいたみんなは驚いた顔をしていたけど、俺はリラの膝枕に慣れたせいか、あまり違和感は感じられず、周りの目も全く気にしていなかった。
「レイ様、これを飲んでください。」
「あぁ、ありがとうリラ。」
リラがそう言って渡してきたのは、リラが自分で作り上げたオリジナルのポーション、『多重完全回復薬』だった。
このポーションはリラが独自に開発を重ねて作ったポーションで、わざわざ俺のためだけに自分で作り、たったの一年半で完成させた最強ポーションでもある。
これがあるんだったらなんで鵺の時に使わなかったのかって思っているだろうけど、これはもちろん簡単には量産させることができないし、何よりあの時は飲めるタイミングが悪かったっていうのが主な理由だ。
「ゴクッ…ゴクッ…プハァ…フゥ……さっきよりかは少しだけ楽になった。ありがとう。」
「よかったです。倒れているのを見た時、正直間に合わないかと思いました。」
リラはようやく安心したのか、ポロポロと涙が俺の顔に落ちてきているのに気づいて、俺は優しくリラの頭を撫でた。
「ごめんなリラ。こればかりは俺の落ち度が悪いから、許してくれないか?」
「……なら…一つだけ約束してください。」
「何だ?」
「もう二度と……命を落としかねないくらいな……無茶をしないでください。」
「……わかった…約束するよ。」
俺はリラと一つの大事な約束をして、動けるくらいまで回復したから、リラが泣き止むまでしばらく頭を撫で続けた。
いつもは俺のためにサポートをしてくれたりするけど、俺がこういった無茶をすると自分の事かのように泣いて心配する。
だからこそ俺はリラを一番信頼しているし、俺の一番のサポートだと思っている。
ある意味俺も、リラの事を特別な存在として扱っているのかもな。
「白崎君、準備をするのに時間が掛かったけど、これを飲んで。」
俺が膝枕されて驚いた後に何か準備をして外に行った後、しばらくして戻って来た常磐が湯呑みに何かを入れて俺に渡してきた。
「これは?」
「清水って言って、これで体の中の瘴気がなくなって楽になると思うよ。ただ私もあまり得意じゃないから、効果はあまり見込めないけど……」
「いや、ありがたく貰うよ。」
ちゃんとできてるかどうか分からないで困った顔をしていたけど、せっかく俺のために作ってくれたのなら、ここはありがたくいただくのが礼儀だよな。
俺は湯呑みを貰い、中に入ってた清水という水を飲んだ。
最初こそは特に何もなかったけど、しばらくしていたら体の中の不快感がなくなって、気分も少しずつ楽になっていった気がした。
「ど、どうかな?」
「うん……なんというか、体の不快感が少しずつ薄れた感じかな。」
「その不快感は瘴気だと思いますので、恐らくその水は効果を発揮されたかもしれませんね。」
「そうですか…はぁーよかった。」
常磐は自分が作った清水がちゃんと役に立つか分からず不安になっていたけど、効果があったと聞いた瞬間、大きく息を吐いてその場に座った。
「ところで零とやら、さっきは髑髏の罠に引っかかってしまって連れ去られたが、奴はそんなに苦戦するほどの強さなのか?」
久遠さんから聞かれたところで、俺はさっきの戦いを思い出しながら話す事にした。
「髑髏自体は鵺よりかは弱く、最初こそはこっちが有利でした。だけどトドメを刺す瞬間に奴に邪魔されて、しかも髑髏を強化させて、その後はこっちがずっと押されていったという感じでした。」
「話の途中に出て来た奴って、もしかして…」
「ぬらりひょんだよ。」
『っ!』
その場にいた全員が息を飲んだ。
全ての元凶であるぬらりひょんが自ら目の前に現れ、髑髏と戦わせるだけでなく、強化させて追い込んだのだから。
「もしかして、ぬらりひょんも戦ってきて二対一になったんですか?」
「いや、ぬらりひょんはその後は何もせずに消えたよ。ただ元の場所に戻るって言ってたから、分身だったって可能性もある。」
「だけど、ぬらりひょんの顔が見られたって言うのは、かなり有力な情報になるんじゃないかしら。」
「そうだな。……」
「白崎様、どうかされました?」
俺がぬらりひょんの使っていたアレが気になって考えていたら、いつの間にか冬華さんが横にいて、俺の顔を覗き込んできていた。
「あ…いや、一つだけ気になっている事がありまして…」
「気になる事ですか?」
「奴が使っていた力が……俺の知ってるヤツに似ていたんですよ。」
少し前…庵に着いたあたりから考えていて、ぬらりひょんが使っていたあの黒い渦が、あの力と全く同じだったからだ。
「その力とは、どういったヤツなのだ?」
「俺と真莉亜がいた異世界、その世界でその力は……悪魔の力と呼ばれていたものです。」
眠気が多いと全く意味のわからない小説ができたりして、全然思い出せない時があって困ってます。
次回は金曜日の昼12時です!




