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特別編 白崎家の年越し

【注意 これは零が異世界に召喚される前の話です。】


某年12月31日

今年ももうすぐ終わり、新年がやって来る日だ。


リビングでは年越しそばを食べてのんびりしている俺と母さんに、神社に行くために先に少しだけ寝ている華怜の三人でこたつを囲いながらゆっくりしていた。


「もうすぐ年が明けるな。」


「なんだか早い一年だった気がするよ。」


「まぁ母さんはほとんど仕事に時間を掛けてるからね。それにしても休日が取れたけど、また正月から仕事を再開するの?」


「大丈夫よ、今回は正月明けまで休みが取れたから。」


「そうか、なら良かった。今年も俺たちだけでおせち食べないといけないと思ってたよ。」


「あははは…去年はごめんね。急な仕事が入っちゃったからのんびりできなかったもんね。」


「いや、仕方ないよ。母さんは今やテレビで取り上げられる小説家になっちゃんだし、確か今最新作を書いているんだっけ?」


「そうだよ。ちなみにタイトルは『新緑の騎士』だよ。」


なんだろうな……華怜から借りた異世界ものの漫画とか読んでたから、なんかそれっぽいものが頭の中から出てくるような名前にしか聞こえない。

母さんの事だから悪意はないだろうから、気にしないようにしよう。


「それよりも零君。そろそろ時間になるんじゃないの?」


「ん?…あぁ、そうだな。そろそろ準備するか。おーい華怜…そろそろ行く時間だぞ。」


「ん……ふぁ~もうそんな時間?」


まだ眠いのか、目を軽く擦りながら俺の方を見てきた。


「今日友達も来るんだろ。遅くなったら悪いから準備しな。」


「うん……わかった。」


華怜はゆっくり起き上がったけど、まだ眠い状態で起きたせいか、フラフラしていた。

危ないし仕方ないから、俺は華怜を抱えて二階に上がり、華怜を部屋のベッドに座らせた。


「俺も着替えるから、後は自分で何とかしろよ。」


「はーい…」


そう言って俺は自分の部屋に向かい、暖かい服装に着替えて、タンスからマフラーや手袋を出して部屋を後にした。


「おーい、着替え終わったけど、そっちはどうだ?」


「少しだけ待って、もう終わるから。」


声を聞いた感じ、ようやく起きたみたいで、部屋からはタンスを開ける音が聞こえてきた。


廊下で携帯を見ながら待っていると、華怜が部屋から出てきた。

華怜も俺と同じで暖かい服に、手袋とニット帽を被って完全防備の状態でやって来た。


「ごめんお兄ちゃん。待たせちゃったね。」


「いやいいぜ。それじゃあ行こうか。」


「うん。」


「じゃあ母さん、俺たち行って来るから。」


「はぁ~い、行ってらっしゃい。」


俺と華怜は母さんに言って外に出た。

外は暗く、真冬の寒さが顔に当たって冷たかった。


「華怜、寒くないな?」


「大丈夫だよ。お兄ちゃん、時間は大丈夫?」


「大丈夫だ。まだ一時間はあるから、こっからだったら間に合いそうだ。」


「了解〜それじゃあ、レッツゴー!」


「おいおい、転ぶからあまり走るなよ。」


俺たちは時間に余裕を持った状態で、いつも行ってる瑞風神社に歩き出した。


ぼちぼち歩いたけど、やはり防寒対策していても少しづつ冷えてきたし、顔をマフラーで覆っていない上半分も徐々に冷たくなってきた。


「華怜、あと少しだけど、何かを暖かい飲み物欲しくないか?」


「お兄ちゃん、実は私も心が寒くなってきたから、暖かい飲み物を所望したかった。」


「ならそこにある自販機で何か買おうか。」


そう言って俺は自販機の前に立って暖かいコーヒーを買って、華怜にはココアを買って渡した。


「「はぁ〜…あったまる〜」」


「やっぱり寒い日には、あったかい飲み物がいいね〜」


「ふぅ…この際ならカイロも持ってくればよかったな。」


一時間半だけだから大丈夫だろうって思ってたけど、やっぱ寒い日には躊躇わずに持ってくればよかったなって今になって後悔してしまった。


これからはちゃんと持ってこよう。

慢心、ダメ、絶対!


「さて、飲み終わったし行こうか。」


「うん。」


目的地までもあと少しだし、体も暖かい暖まった事だし、もう少しだけ頑張ろう。


それからまた歩き出して、しばらく道なりに歩いていたら、目的地である瑞風神社の明かりが見えてきた。


「時間もあと二十分、何とか間に合ったな。」


「そうだね。あっ、智香(ちか)(はるか)!」


「あーやっと来た。」

「よかった。華怜ちゃん、何とか間に合ったみたいだね。」


華怜が走り出すからなんかと思っていたら、華怜のお友達の智香ちゃんと遥ちゃんが鳥居の前で待ってくれていた。


向こうも気づいたみたいで、こっちに手を振っていた。


「お兄さん、こんばんは。」

「零お兄ちゃん、久しぶり。」


「おぉ遥ちゃん、それに智香ちゃんも久しぶり。二人は誰かと来たの?」


「いえ、私も智香ちゃんも一人で来ました。」


「え、そうなの? 大丈夫だった?」


「大丈夫だよ、零お兄ちゃん。私たちはここから家は近いし、私の姉ちゃんも後から来るから。」


「そうか、なら帰りは大丈夫そうだね。」


子供二人で夜道を来たなら帰りは一緒がいいかなって思ってたけど、後から誰かが来るなら大丈夫みたいだな。


「それよりもお兄ちゃん、早く行ったほうがいいんじゃない? もうすぐ時間だよね?」


「あぁそうだな。二人も寒い中待っててくれたみたいだし、俺たちも神社の中に行こうか。」


俺は三人と一緒に神社の階段を登って、神社の境内に向かった。

境内に入るとそこには多くの人が来ていて、何処も彼処も人だらけだった。


「ひゃ〜人が多い。」


「まぁ大晦日だし、これだけおってもおかしくはないけどな。」


「おーい、零!」


「ん?」


何処からか知った声が聞こえてきて辺りをキョロキョロしていたら、こっちに見知った二人が歩いて来た。


「よう、零。」


「おぉ、トモに明日香も来てたんだな。」


「私の場合は、トモがどうしても行きたいって言ってたから着いてきたんだよ。」


「あははは……相変わらずだな。」


声の主はトモで、明日香と一緒に年越しをしに来ていた。

いや正確には、明日香はトモの付き添いで来て、トモはいつもの年越しをしにやって来たってみたいだな。


「ん? お前らが飲んでるのって甘酒か?」


「そうだよ。あっちで夏菜ちゃんが配っていたから貰ったの。」


「アイツも大変だな、大晦日でゆっくりできないから。俺も甘酒貰ってくるついでに顔を見せてくるか。」


俺は二人に華怜たちを頼むように言って、甘酒が貰えるテントに向かって歩いた。


テントの近くまで来てみると、ウチのクラスの委員長こと常磐が、数人の巫女さんと一緒になって甘酒を配っていた。


「よぉ常磐、今年もお疲れさん。」


「あ、白崎君。今年も来てくれたんだね。」


「まぁな。そっちも大変だな…毎年大晦日はこんなに人が来るから。」


「それだけここの神社に来る人がいるって事だよ。白崎君も甘酒を?」


「あぁ、常磐の顔を見に来るついでに貰いに来た。一杯貰っていいか?」


「いいよ、ちょっと待っててね。……はい、熱いから気をつけて。」


常磐が紙コップに入った甘酒を渡してきて、俺はそれを受け取って一口飲んだ。

……うん、体が暖まっておいしい。

たまに飲むのも悪くないかもな。


「ところで白崎君は一人で来たの?」


「いや、妹二人で来た。今は友達と一緒に二人に任せてるんだ。」


「そうか。それじゃあ私は……い“っ!」


「…? どうしたんだ?」


常盤の顔を見て甘酒も貰ったし、俺が行こうかなって言おうとしたら、常盤が何故か変な声を上げて涙目になってた。


「あははは…大丈夫だよ。」

(ちょっと香織、いきなり何するの!)


(だってお姉ちゃんがじれったいから、手助けしてあげてるだけだよ!)


(人の(すね)を蹴るのは手助けにならないわよ!)


(だったら早く一緒に年越したいって言えばいいじゃん!)


(わ、私の事はいいんだよ! 香織のほうが行けばいいじゃない! 友達来てるんでしょ!)


なんか誰かと口論していたけど、一体誰だろう?


「あーえっと……だ、大丈夫か?」


「うぇ! あぁうん、大丈夫だよ。」


「…?そうか。それじゃあ俺はこの辺で。」


「ねぇ、あなた夏菜のお友達?」


俺が立ち去ろうとすると、常盤の隣にいた巫女さんが俺に声を掛けてきた。


「え?…あぁはい、そうですけど。」


「だったらさ、彼女も一緒に連れて行ってくれないかしら?」


「え?」


「ちょっ…ちょっと霧島さん!?」


なんだろうなって思ってたら、この巫女さんは常盤と連れて行ってほしいと頼んできた。

まぁ別に俺は問題ないのだけど、何故か当の本人は顔を赤くしていた。


「あの…確認なんですけど、常磐が抜けて大丈夫なんですか?」


「それなら大丈夫ですよ。今応援の人が来たですし、もう甘酒のほうも配り終えそうなので問題ないですよ。」


「だ、だけど霧島さん。」


「夏菜様、いつも我慢されずに、たまにはわがままを言われてもいいんですよ。」


「……本当にいいんですか?」


「大丈夫ですよ。香織様も、お友達の所にいかれてはどうですか?」


「そうですね。ではお言葉に甘えさせてもらいます。」


どうやら他にもお友達が来ていた子がいたみたいで、その子は声しか聞こえなかったけど、奥の方に歩いていったのはわかった。


「さ、夏菜様。後の事はお任せ下さい。」


「うぅ……」


「常磐、来るんだったらきな。その人も大丈夫って言ってるんだし、そう言ったのは、甘えるべきだと思うぞ。」


「白崎君…霧島さん、ありがとうございます。」


「はい、ではいってらっしゃいませ。」


ようやく頷いてくれた事に安心したのか、巫女さんは嬉しそうな顔をして常磐を見送ってくれた。


「ごめんね白崎君。急に一緒になっちゃって。」


「気にしなくていいぞ。俺も一度くらいは常磐も一緒に年を迎えたかったしな。それにアイツらも、お前が来るのを待っていると思うぞ。」


「うん、ありがとう。」


「それじゃあ、トモも明日香も待ってるんだし、行こうか。」


俺は常磐と一緒にみんなが待っててくれてる所に向かって歩いた。

やはりもうすぐ時間になるせいか、人もさっきより多くなっていて、ずっと混雑していた。


しばらく人混みの中を歩いていたら、トモの姿が見えてきて、それと同時にようやく人混みの中から抜け出す事ができた。


「ふぅ……何とか間に合った。常磐、大丈夫か?」


「うん、大丈夫。」


「おうお帰り…ってあれ、常磐も一緒に来たのか?」


トモがこっちに来て、俺の隣に常磐がいる事に気づいたみたいで、一緒に来た事に驚いていた。


「あぁ、巫女さんがもう大丈夫だって言ってたから、今年は一緒に年越しをする事になったから。」


「そっか、そういえば何気に初めてじゃないかな、一緒に年越しをするのは。」


「えっと、今年はよろしくね。」


「おう、むしろようやくって感じだしな。それよりも急ぐぞ、もう時間が無いからよ。」


「あー悪い。……あぶね、後二分だったのか。」


どうやらかなりギリギリだったみたいで、俺たちは急いでみんなのいる所に向かった。


「悪い、遅くなった。」


「遅かったね……って、夏菜ちゃんじゃない!もしかして今年は一緒にできるの!」


「うん、いつもはみんなとしたかったのだけど、ずっと我慢していたの。ごめんなさい。」


「そんな事はないわよ。私たちは全然大歓迎だよ!」


明日香は余程嬉しかったのか、常磐に抱きついてずっと喜んでいた。


「ほらな、俺たちはお前の事を嫌う理由はないんだよ。」


「うん、ありがとうみんな。」


俺の言葉でようやく常磐が笑みをこぼした。

中学の時から何かと落ち込む癖があったから、こうやって来させれば後はどうにかなるから、常磐ももう少しわがままを言ったらいいのにな。


「ってあれ、華怜たちはどこに行ったんだ?」


「さっき担任の先生と同じクラスの子がいたからそっちに行ったぜ。すぐに戻ってくるって言ってたから大丈夫だろう…っと、どうやら、始まったみたいだな。」


トモが言った事で、俺は耳を傾けてみると、周りからあのカウントダウンが聞こえ始めてきた。


『10…9…8…7…6…』


「おっ、ようやくか。」


「今年もようやく終わっちゃうね。」


「よし、それじゃあみんな、いくぜ!」


『うん。』


『5…4…3…2…1…』


『新年あけましておめでとう!』


周りから聞こえてきたカウントダウンのタイミングで、俺たちは一斉に声を合わせて、新年を迎え入れた。


「いやぁー、今年もこれが出来て良かったぜ!しかも今回は常磐も来てくれたしな!」


「そうだな。何気にずっと誘ってはいたけど、家の手伝いだとかでずっと断られてたもんな。」


「でも仕方ないよ。これだけの人がいるんだったら、流石に文句も言えないしね。」


まぁそればかりはお互いに同意せざるを得なかった。

今現在この場にいる人は、おおよそ三百人近くは来ていておしくらまんじゅうに近い状態だし、今俺たちがいる場所も正直少し狭い。


だからこそ、いつも断ってきている常磐に対しては、誰も責めたりはしなかった。


「さて、アイツが迷子になる前に探してくるか。」


「「いってらっしゃーい。」」


「もし分からなかったら、フロントに行ってね。」


常磐の言葉を真に受け、それから俺は三人と別れて、華怜を探す事にした。

最初こそは人混みのせいで全く動けなかったし探す事も出来なかったけど、次第に人が減っていって、視界も見やすくなった。


「アイツ、どこに行っちまったんだ?」


仕方なしに常磐の言ってたフロントに行こうかと考えていたら、ある方向を見ると、華怜と二人の姿が見えた。


(あ、いた!)

「おーい華怜、やっと見つける事ができた。」


「あ、お兄ちゃん。どうしたの?」


「お前を探しに来たんだよ。こんな所にいたんだな。」


「あーごめんね。できるだけ早く戻ろうと思ってたんだけど、この人混みだったから。」


「まぁ、下手に動いていなくて助かったよ。」


「ごめんなさいお兄さん。早く戻ろうと言ったのですけど。」


「気にしないでいいよ遥ちゃん。ここにいるって事は、何かお参りでもしてたんだろ。」


「はい、そうなんです。」


そう、三人がいたのは本殿にある賽銭箱の近くで、できるだけ人目がいきやすい場所に立っていた。


「ちなみになんだけど、三人のお願い事は新年を迎えられた事?」


「そうです。まぁ他にもありますけど。」


「そうか。まぁ、それに関しては触れないでおこう。」


とりあえず俺は妹とお友達を見つけた事を、三人に連絡した。

するとすぐに連絡がきて、見つかったのなら先に帰るぞって連絡がきて、俺は了解と言って電話を切った。


「それじゃあ、常磐に挨拶をしたら、俺たちも帰ろうか。」


「はい。」

「「はーい。」」


そうして俺は三人を連れて、常磐に挨拶をするため、また会いに行く事にした。


「常磐、俺たちも帰るからな。」


「あ、白崎君。見つかったんだね。」


「あぁ、賽銭箱の近くにいたよ。」


「そう、わかったわ。それじゃあ白崎君に他の三人も、良いお年を。」


「常磐も、良いお年を。」


『良いお年を。』


挨拶を済ませた俺たちは神社をあとにして、二人を近くまで送る事にした。


最初こそは遥ちゃんから大丈夫ですって言われたけど、さすがに子供二人を真っ暗の中行かせる訳には行かないって言ったら、「家まではいいので、その近くまでお願いします。」っと言ってきた。


それからは二人を近くまで一緒に付き添いをして、遥ちゃんからここで大丈夫ですっと言ってきたので、二人とはそこで別れ、俺たちも家に帰る事にした。


「ふぅ…今年も無事に新年を迎える事ができたな。」


「そうだね。それよりもお兄ちゃん、私が願ったのはなんだと思う?」


「うーん…お前の事だから、魔法が使えるようになりたいとか願ったんじゃない?」


「お兄ちゃん…エスパーか何か!?」


「当たってたのかよ…」


まさか我が妹は、魔法少女になりたいとか言ってたからそれじゃないかって思いあてずっぽうで言ったら、まさかのそれが正解だった。


まぁうん…俺も似たような事を昔言ってたから、何も言わなかった。


「さて、明日はちゃんと起きれよ。母さんと三人でおせちを食べるんから、早く起きれるようにはしろよ。」


「わかってるよ。お兄ちゃんも、早く起きるようにね。」


「はいはい。」


俺は華怜と何気ない話をしながら、星空が見える道を歩いて家に帰った。


だけど俺は、まさか近いうちに魔法が使えるようになり、妹もいずれ近い日に、そういった事に巻き込まれるとは、今の俺たちは全く思ってもいなかった。

あけましておめでとうございます!

2020年はコロナなどで息苦しい年になりましたが、2021年は無事にコロナが終息して、オリンピックが開催される事を願っております。

次回の投稿は、来週の火曜日の昼12時の予定です!

それでは皆さん、良いお年を。

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