50話 九尾の祀られる神社
俺はリラと冬華さんと一緒に、鵺の記憶を頼りに、一度鵺の住処だった山の山頂から一度降りて、山の入り口付近にまで来ていた。
「確か鵺は、この山の麓辺りに神社の行く道があるって言ってたよな?」
「麓と言ってましたし、仮に神社があるのでしたら、どこかに道があるんじゃないですか?」
「でも見た感じ、そのようなものはありませんでしたよね?」
まだ山を下りている途中だからまだわからないが、そんな物があったのかも正直怪しくなってきていた。
といっても本来の目的は鵺の討伐であって、今やってるのはゲームに例えるならサブミッションみたいなものなのだ。
だから山の入り口にそんな物があったかなんて言われても全く分からないのだ。
「まぁ、なかったらただの下山で終わらして、庵に戻ればいいし、最終的には桜さんに直談判したほうが早いかもな。」
「そうですね、その時はそれでいきましょう。」
俺と冬華さんでそう決めていたら、ようやく山を降り終える事ができて、山の入り口付近に戻ってくる事ができた。
「さて、この辺りにどこか道はあるかどうか…」
「レイ様、あれを見てください。」
「…?」
リラが何かを発見したみたいで、俺と冬華さんはリラと同じ方向を向くと、少しわかりにくかったけど、山の渓谷に行くところに小さな細道があることが分かった。
「もしかして、あれなのかな?」
「でも見た感じ、あれしかなさそうですよね。」
「どうされますか?」
「うーん…」
俺は今見えてる細道が合ってるかどうか迷ったけど、時間もかけられないし、一度行ったほうがいいのかもしれないな。
間違ってたら、それはそれでどうにかなるし、活動限界も多分あと半日以上あるからまだ余裕はあるし、物は試しに行ってみるか。
「行ってみよう、可能性があるならゼロではないだろうし、違ったら引き返そう。」
「はい。」「わかりました。」
二人の同意も得る事ができたし、俺たちはリラが見つけた道に行って見る事にした。
ただ妖が急に出てきてもらったら困るから、静かに『気配感知』は常時使用しておこう。
べ、別に怖い訳じゃないからな、ただこっちが奇襲されたらいけないから使ってるだけだからな。
まぁ、ツンデレ発言は置いといて、俺たちは細道に入っていった。
「かなり木などが覆い茂っているな。」
「道もかなり険しいですね。」
横で流れてる川を聞いて、足元に注意しながらも、合っている事を願いながらもゆっくり進んで行った。
そんな風に険しく行きにくい細道を歩いて行っていくと、神社などに行けるような参道が見えてきた。
「これって参道だよな?」
「どこも壊れていないですし、きれいに残ってますね。」
「ということは、この近くに神社があるのでしょうか?」
「……とにかくこのまま行って見ましょう。」
俺たちは突然現れた参道を道なりに歩いていくと、木がかなり覆い茂ってわからなかったが、鳥居が一つ見えてきた。
「鳥居だ…」
「少し先に石段と灯篭もありますし、どうやらこの道で合ってるみたいですね。」
「周辺を見ても、こんな場所に神社があるなんてわからないですし、私もこんなところに神社があるなんて初めて知りました。」
鳥居が無傷である事にも驚いたけど、横は少し登っただけだけど、横は急斜面になっていたし、空気が湿って足元には落ち葉だらけだから滑りそうだし、コンディションは最悪な状態であった。
人がもう住んでないから掃除をする人はいないし、長年放置されていただろうから何となくわかるけど、さっきの鵺との戦闘に加えて、ここまで歩いて来たから足に力を入れてるからもう足の限界は近かった。
「……正直もう足に力が入らなくなってきてますし、もう行くだけ行って見ましょう。」
「そ、そうですね。」
「では、参りましょうか。」
俺たちは意を決して鳥居を潜った瞬間、視界が一気に歪み始めて、さっきとは景色がガラッと変わってしまっていた。
「「「っ!?」」」
俺たちは急に景色が変わった事に驚き、鵺の時と同じような光景だったから、お互いの背中を合わせながらも周囲を警戒した。
辺りは一気に夜になっており、覆い茂っていた木はなくなっていて、空には大きな満月が神々しく光っていた。
「これって、鵺の時と同じ幻術ですか!?」
「いえ、鵺の時は黒い靄が出てましたけど、さっきは全く出ていませんでした!」
「俺の『気配感知』にも当たらなかった、ということは…っ!?」
「レイ様?」
「二人とも構えて、前から何か来ている。」
「…っ!!」
俺の『気配感知』に何か反応して、二人に武器を構えるように言って、前からきている何かに警戒していると、横にあった灯篭が突然火を灯し始め、桜さんと同じ狐の尻尾と耳をした少女が、提灯を片手に持って石段を下りて来た。
「皆様、お待ちしておりました。」
「……誰だ?」
「警戒はしないでください、皆様が来られたという事は、鵺様を、禍津嶺様を開放成されたという事ですよね。」
「……だとしても、急に視界が変わった以上、敵かどうかも分からないんだぞ。」
優しく言ってくる少女に、俺は聖剣を持って警戒ながらも、少女に対し物申した。
すると少女は考え事をし始めて、何か思いついたのか、再び俺たちのほうを向いて来た。
「ではこういうのはどうでしょうか、警戒したままでよろしいですので、私に付いて来てもらえないでしょうか?」
「付いて行ったとして、俺たちの得にはならないと思うが?」
「皆様が来られたのはおそらく、九尾様の事で何かを知りたいが為に来られたと思いますし、この世界の事も知りに来たのではないでしょうか?」
「……」
どうやらこっちの事はお見通しと来たか…
さて、どうしたものか…このまま目の前にいる少女の言葉を信じていいのか?
未だに言ってる事が信じられない以上、むやみに付いて行く訳にはいかない。
「沈黙は肯定とみなしていいですか?」
「……」
「もし私に付いて来てくれましたら、皆様のお助けになりますし、知っていることを全部話します。それに私たちは、ぬらりひょんの正体を知ってます。」
「……!」
俺はぬらりひょんの名前が出た事で一瞬警戒が緩んでしまった。
ぬらりひょんの正体を知ってる、つまり顔が分かるってことだよな?
鵺の記憶では分からなかったけど、この少女は知ってると確実に言った。
たけどそれで信じていいのか、はっきり言ってまだ信じれない。
「…これでもダメですか…でしたら、これで私が味方ということが確信できることを言います。」
少女は一旦深呼吸して、真剣な目で俺たちに言ってきた。
「今の元号は平成ですよね?」
「!!?」
今度こそ、俺の心は確実に揺らいだ。
(今なんて言った…平成って言ったよな!?)
最初は聞き違いと思ったが、確かに俺の耳には平成という言葉が確かに聞こえた。
ってか何で今の元号を知っているんだ!?
ここは別の世界なんだろう…いやでも、嘘は言ってなさそうに見える。
だとしたら、もう信じるしかないのか?……いや、信じてみよう。
どのみちどう転がっても、先に行かないといけないしな。
俺は黙って聖剣を鞘に納めて、自分の『収納庫』の中に入れ込んだ。
「……わかった、お前を信じる事にするよ。」
「! ありがとうございます。はっきり言いますと、これでダメだったら諦めてました。」
「その元号が出た以上、信じるしかないしな。何せその名前は、今の元号だからな。」
一人の少女は俺がようやく信じてくれた事に一安心したかのように笑って、後ろにいる二人にも、武器を構えなくていいと合図を出した。
「では皆様、私に付いて来てください。」
少女がそう言うと、踵を返して石段を登り始めた。
「レイ様、信じても大丈夫なのですか?」
「あぁ、もう信じて大丈夫だ。付いて行こう。」
リラが心配をしてきたけど、俺が大丈夫だというと肩の力を抜いて少女の後を付いて行くことにした。
石段を登っていくと、さっきと同じ鳥居があって、そこを潜ると、瑞風神社と同じくらいの広さの境内と神社があり、そこには俺たちを連れてきた少女と同じように、狐の尻尾と耳を持った巫女が数人いた。
「着きました、ここは九尾様を祀られている神社、稲荷神社でございます。」
一人の少女は付いたと同時にこっちを向いて、俺たちを待っていたかのように全員がお辞儀をしてきた。
「自己紹介がまだでしたので、ここで言わせてもらいます。私は神の使いをしており、名を橘花を申します。呼び捨てで構いませんので、どうぞよろしくお願いします。」
俺たちを連れてきた少女、橘花は俺たちに自己紹介をしてきた。
「俺は白崎零、後ろにいる二人は、右がリラ、左が白雪冬華さんだ。」
「リラと申します。」
「同じく、白雪冬華と申します。」
「では、話し合いを設けておりますので、本殿の中に。」
俺たちはさっきとは全く違い、彼女を信じてそのまま付いて行った。
本殿の中に入ると、暗かった本殿の中が一気に火を灯して明るくなり、正面には女性の神様の仏像が佇んでいた。
「こちらにどうぞ。」
橘花の言った所には、人数分の座布団が置いてあり、俺が真ん中、リラが右に、冬華さんが左に座った。
すると横から違う狐の巫女がお茶を持って来た所で、お互いに話し合う事にした。
「それでは話をしていきたいのですけど、まずはどこから話した方がよいですか?」
「それじゃあ最初から気になってた、桜さんの事について話してくれないか?」
「わかりました。あなた方がお会いしている桜様なのですが、実は本当の名前ではないのです。」
「「…ッ!?」」
俺は知っていたが、知らなかった二人は驚いた表情をしていた。
「やはりあなた様は知っていたのですね。」
「あぁ、鵺の力を持った時に記憶が流れてきて、桜さんの本当の名前を言ってと思ったんだ。」
「疑問で言われているという事は、その部分だけは聞こえなかったのですね?」
「そこだけは、ノイズが掛かったかのようになっていて聞こえなかった。」
「なるほど、わかりました。」
橘花はお茶を一口飲むと、一呼吸置いてから、俺たちを見てきた。
「九尾の巫女、十六夜桜様の本当の名前は、かつては”玉藻の前”と呼ばれており、この稲荷神社の神の使いをやられておりました。」
今回の投稿で50話になりました!
長いようで短かった感じですね(●︎´▽︎`●︎)
来週は火曜日と金曜日の昼の12時に投稿予定です!お楽しみに♪




