47話 奇襲作戦 真莉亜サイド2
それからどれくらい時間が経ったか分からないけど、私たちは着実に進み続けているのはわかった。
なぜなら、さっきまでは平坦な道を行ってたのだが、今は林の中に入り始めてきて、桜さんの言うには大木までもうすぐだって事が分かったからである。
「さて、もう少し先に目的の場所である大木が見えてくるはずだ、そしたら鬼はすぐに攻撃を仕掛けてくるだろう。準備はいいな?」
「私はいつでもいいですよ。」
「ここまで来た以上、覚悟はできてます。」
「私たち四人でやってみせましょう。」
「ふっ…そうだな。よし、では行くぞ!」
「「「はいっ!」」」
お互いの緊張をほぐしてら気になったところで私たちは一気に林を抜けて大木まで走っていった。
林を抜けて視界が明るくなったら、そこには普通じゃあり得ないくらいの巨大な大木があって、周辺は不気味なくらいに静かだった。
「ここが目的の大木ですか…」
「鬼はどこにいるんですか?」
「もしかして、ここにはいない…とかじゃないですよね?」
「…いや、来るぞ!」
桜さんが構えた瞬間、目の前に妖門みたいな黒い渦が発生して、そこから角を2本生やした化け物が現れ始めた。
全身は赤く燃え広がる炎を纏っていて、右手にはあらゆる物を粉砕させるかのような棍棒を持っており、ですべてに憎しみを抱いているかのような目で、私たちを見ていた。
『ヨウヤク来タカ。待チクタビレタゼ。』
その化け物はずっと退屈だったのか、欠伸をしながらこっちにゆっくりとした足取りで歩いてきた。
「あぁ、貴様に引導を渡しに来たぞ…鬼、樹黙僧魔!」
桜さんが目の前にいる鬼、樹黙僧魔に対し、刀を抜刀して突き付けたが、鬼は笑いながらそれを見ていた。
『グフフッ、威勢ガイイノハ良イガ、ソレダケジャアコノ俺ヲ満足サセキレネェゾ。』
「その口、今日言えるのが最後だと思っておくんだな。」
ここに来るまでの桜さんと雰囲気が変わったから、私もそうだけど、常盤さんも香織ちゃんも思わず引いてしまった。
(桜さん、明らかに怒っているようにも見えるけど、違うかな?)
私は不意に桜さんの声を聴いてて、その声に怒りが含まれている事に気付いたけど、一瞬だったからか気のせいにも見えてしまった。
そんな事を考えてたら、鬼は戦闘モードになっていて、考えるのは後にして、まずはこの奇襲作戦を成功させることに専念することにした。
『マズハオ手並ミ拝見ダナ、『血毒爛々息』!』
鬼が大きく息を吸い込むと、私たちに向けて一気に吸い込んだ息を吐いてきた。
その吐いた息は赤黒い血のような色をしていて、あまりにも悍ましい何かに見えてしまった。
「私たちに任せてください、香織!」
「了解、お姉ちゃん!」
「「『妖術 風壺』!」」
二人が突然前に出たから私と桜さんは驚いてしまったけど、同時に同じ力を出して、鬼の攻撃を相殺した事に感心してしまった。
「ここで私たちが役に立たないと、お二人の足を引っ張ってばっかりになってしまいますし、お父さんたちも守る事ができなくなってしまいます!」
「私とお姉ちゃんが抑えている間に、お姉さんと巫女様はあの化け物に攻撃をしてください!」
「桜さん!」
「あぁ、二人の意思に続くぞ!」
私と桜さんは、二人の意思を目の前で見たことで、それに応えようと一気に攻撃を仕掛けることにした。
「『陽炎上昇』……からの、食らいなさい、『灰炎”焔”』!」
「『桜花白狐流 弐ノ型 枝垂れ桜』!」
私は自身の炎魔法を上昇させる技を使って横に出ると、強化させた灰色の炎を鬼に向けて放った。
そして桜さんも私とは反対側に出て、枝が撓っているような斬撃で鬼に攻撃を仕掛けた。
鬼は私と桜さんの攻撃をまともに食らったけど、やはり妖の頭の一体なのか、余裕で耐えていた。
『ホウ、九尾ノ攻撃モソウダガ、残リノ人間モイイ攻撃ダナ。』
「あっさりと耐えられたわね、強化した攻撃だけど、あまりダメージは入っていないみたいだし。」
「いや、向こうは余裕の態度をとっているが、手応えはあったはずだ。今の連携でもう一度攻めるぞ。」
「はいっ!」
私は『収納庫』から、自分で作った魔剣レーヴァテインを取り出して、今度は魔法に斬撃を交えて再び桜さんと攻撃を仕掛けることにした。
「『須佐之男ノ剣』!」
「『桜花白狐流 参ノ型 朝桜』!」
今度は鬼の足に狙いを定めて、私の炎の斬撃を振ったが、鬼は手に持ってた金棒で攻撃を簡単に防いだが、桜さんの燃える斬撃は鬼の腕に当たり、斬れた場所から出血をしていた。
『ハハッ、俺ニ傷ヲ付ケタノハ、オ前ラガ初メテダナ。ナラ少シハ楽シメソウダナ。』
鬼は自分の傷ができたことに喜んでいたが、私たちは隙を見せないように、一気に連続で攻撃を当てに行った。
「『業火の審判』!」
「『桜花白狐流 漆ノ型 寒桜』!」
「『妖術 鎌鼬』!」
「『妖術 神風』!」
『無駄ダ、『牛頭炎極』!』
「クッ!」「カッ…」「「キャッ!」」
攻撃が当たる寸前で、鬼が発生させた衝撃波によって全部かき消されて、逆にその衝撃波で私たちが攻撃を食らってしまった。
『ドウシタ、コンナモノナノカ?』
鬼が私たちに欠伸をしながら挑発をしてきて来ても、全身が鉛のように重く感じてしまい、体がいうことを聞いてくれなくて立てなかった。
(体が重い…さっきの衝撃波のせい?)
(クソ…体が…真莉亜は何とか耐えたが、夏奈と香織の意識が感じ取れない。気絶しているのか…)
桜さんに意識があったけど、残りの二人がピクリともしなかったから気絶しているって事は私も桜さんもわかった。
そして私は確信した、この鬼は強い。
おそらくリベルと同じか、それ以上かもしれない。
私はここに来るまでに慢心していた事に対し怒りを持ってしまった。
(最悪だ、さっき二人の意思に応えるって決めたのに、この様じゃ全然応えていないのと同じじゃない。)
『モウ終ワリカ、ナラマズハソコノ小娘タチカラ始末スルカ。』
鬼は私たちが全く動かないことを機に、気絶している常盤さんと香織ちゃんに向けて棍棒を振りかざそうとしていた。
「待て…やめろ…」
「や…め…て…」
私たちは必死に抵抗しようとしたが、体がいまだに重く感じるせいで、手を伸ばす事しかできなかった。
『死ネ。』
「いや、死ぬのは貴様じゃ。『烈風刃』」
『ナニ!?』
二人が殺されると思った瞬間、どこからか声が聞こえたと同時に鬼の棍棒がバラバラになった。
そして鬼はなぜが後方に飛ばされてそのまま倒れた。
私は一瞬何が起きたかわからなかった。
(何が起きたの、急に棍棒がバラバラになって鬼が飛んで行った。)
「い、今の風は…まさか。」
「無事か桜よ、遅れてしまってすまない。」
そこに現れたのは一人の少女だった。
ただ普通の少女とは違い、手には紅葉のような扇を持っており、その背中には黒い羽があって、桜さんとは違った巫女服を着ていた。
「久遠、助かった。」
「冬華から聞いて急いで来てみれば、まさか本当に桜が帰ってきているとはな。しかも他に見知らぬ三人と一緒に居るとは。」
「冬華から…だと、向こうはどうなっているんだ?」
「あちらはもう決着はついておる。冬華と外様の者たちの勝ちじゃ。」
(そうか、零君…勝ったんだ。)
私は桜さんともう一人の会話を聞いてて、零君たちの奇襲作戦が成功した事に安心した。
向こうが成功したのなら、こっちも必ず成功させないといけないし、翠嵐さんから二人を任された以上、ずっと寝たままなのはいけないよね。
「『安らぎの歌』…」
私は重くなった体を必死に動かして自身に回復魔法をかけたら、さっきまで重かった体は嘘のように軽くなった。
(さっきの攻撃は私のスキルに反応しなかったって事は、それを無効にさせる何かがあるって事だよね。)
私のスキルの中に、『状態異常無効』があるのも関わらず体が重くなった。
ということは今のは呪いとしてじゃなく、単なる攻撃に付与させた可能性もある。
例えば、衝撃波とかに。
「小娘よ、立って大丈夫なのか?」
頭の中でさっきの攻撃の事を考えていたら、いつの間にか桜さんと話していた人が私の近くに来ていた。
「私は大丈夫です、あなたは桜さんと同じ巫女なのですか?」
「うむ、吾は神風久遠、鴉天狗の巫女じゃ。」
どうやら最後の一人の巫女が助けに来てくれたみたいだった。
私はまず、零君たちの事を聞くことにした。
「さっき聞こえてきたのですけど、鵺は倒したのですか?」
「あぁ、向こうにいた冬華と、お主たちと同じ外様の者たちが倒したみたいじゃ。」
「そうですか……よかった。」
「お主はもう休め、鬼の攻撃で体に呪いが発動されているはずだ。」
「…やっぱりさっき体が重かったのは呪いでしたか、それならもう大丈夫です。それよりも一つ頼みがあります。」
「なんじゃ?」
「あそこで倒れている二人を安全な場所まで運んでくれますか?少し暴れるので。」
久遠さんは、私が指で刺した方向に二人がいる事を確認したけど、私のことを心配しているのか、簡単には動こうとしなかった。
「彼奴らもそうだが、主も限界であろう。」
「大丈夫です、私はさっき自己回復したので。」
「しかし…っ!」
久遠さんが悩んでいると、さっきからずっと倒れていた鬼が起き上がっていこうとしていた。
『グヌヌッ…今ノハ鴉天狗ノ風ダナ。クソッ…アト少シダッテ時ニ…』
「久遠さん、お願いします。」
「…わかった。じゃが主が危険だと思ったら躊躇わずに避難させるぞ。」
久遠さんは私にそう言い残して二人のところに行き、口笛を鳴らすと、どこからともなく数羽の鴉がやって来て、二人を烏たちの背に乗せると、安全な場所まで飛んで行った。
『先ニヤラレタ二人ヲ逃ガシタカ…ダガ…所詮殺ス人数ガ減ッタダケデ、コチラガ有利ナノニ変ワリハナイ。』
「黙れ、もうしゃべるな。」
「真莉亜?」
桜さんは私の様子が変わった事にすぐに気づいて声を掛けてきた。
「すみません桜さん、どうやら私自身が慢心していたせいで桜さんと二人に危険な思いをさせてしまいました。」
「妾の事は心配するな。それよりも-」
「いえ、大丈夫です、『安らぎの歌』。」
「っ!傷が…それに体も軽く…!」
桜さんの回復をしたところで、私は鬼に近づこうとした。
「待て真莉亜、一人では危険だ。いったん下がって作戦を-」
「零君たちが終わった以上、私たちも遅れる訳にはいきません。桜さん、ここで一気に決着をつけたいので、協力してくれますか?」
「…何か策はあるのか?」
「いいえ、単なるゴリ押しです。ですが、奴には隙を一回も与えません。」
「…わかった、なら今度は真莉亜に合わせよう。」
「ありがとうございます。」
桜さんの手をつかんで立たせると、桜さんと私は鬼に一歩一歩歩んで近づいた。
『オイオイ、マサカ自分カラ殺サレニ来タカ?』
「殺されに来た?違うわね、殺されるのはお前のほうだ。」
『グフフッ、イイゼ、ナラヤッテミナ!『血毒爛々息』!』
鬼は私たちにトドメを刺しに来たけど、私は一切躱そうとはせず、二人がやったように、風で相殺させる事にした。
「無駄よ、『風壺』」
『ナニ!?』
私は二人が使ってた妖術と同じようなものをさっき想像して作って、鬼の攻撃を難なく防いだ。
「もうお前には躊躇わないわ。…『21ノ憎悪ノ刃』」
私がその技名を言うと、私の周りの地面が黒くなって、そこから黒く鋭い刃が21本出てきた。
「悪いけど、今度は闇でお前を倒す事にするわ。」
鬼戦突入です。
ちなみにぬらりひょんによって操られているときは、ひらがながカタカナになってます。
それと真莉亜が使った『フルフレイム・ジャッジメント』は、第一話の時に使ったやつと同じです。
次回は金曜日の昼12時に投稿します!お楽しみに!




