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45話 奇襲作戦 零サイド3

「やりましたか…!」


「手応えはあった。これでやられなかったら流石にお手上げだぞ。」


俺は身体強化を解除して、リラと冬華さんに近くに来てもらうよう合図を出して、まだ警戒を緩めないで、倒れている鵺を見た。

正直言ったら今の攻撃で体力を一気に消費したから、もしこのまま何も起きずに鵺が死んでくれたら助かるなって思っている。


『クッ…ゴホッ…ハァ…ハァ…』


だけど俺のそんな願いは届いてはくれず、鵺は満身創痍になりがらも、ゆっくりと起き上がり始めた。


「おいおい、嘘だろ…」

「あれだけ受けたのにまだ立つんですか…!?」

「でも向こうは立っているだけで精一杯な状態です。このままトドメを刺しましょう!」


鵺が起きた事に俺たちは絶望していたけど、向こうはもうフラフラだし、体中から血が出てきている以上もう限界は近いだろう。


「…仕方ない。また『肆の太刀』を使って今度は的確に首を狙おう。二人とも、またサポートをお願い。」


「はいっ!」

「わかりました!」


俺は再び身体強化を使って狙いを定めていると、鵺の周りに妖気が溜まっていき、体がだんだん光りだした事に気付いた。


(なんだ?急に奴の体が…)


『マダヨ…ハァハァ…マダ終ワレナイワ。…コレガ最後ノ足掻キヨ。クライナサイ!『虎導哀火響(こどうあいかきょう)』!!』


「ッ!!ヤバい、二人とも俺の後ろに下がって!『絶対領域(パーフェクト・テリトリー)』!」


鵺の体がさらにに光りだして、大爆発を起こし、周辺が一気に鵺の出す熱で燃えていくのが分かった。

俺は急いで身体強化を解除して二人を俺の後ろにやると、俺は自分が持つ唯一の防御魔法を最大限にして鵺の攻撃を防御した。


「くっ…うおぁぁぁぁぁぁ!!」


衝撃が来たのと同時に体が一気に押され始めたが、後ろにいた二人が俺の背中を支えてくれたおかげでなんとかその場に(とど)まる事ができ、俺は今使っている防御魔法を最大火力にして、鵺の攻撃を防ぎ続けた。


俺はいつの間にか無意識に守る事だけを考えていたせいでどれだけの時間が経ったのかは分からないが、気が付いた時には鵺の攻撃が止んでいて、鵺はずっとこっちを睨んでいたが、ついに限界が来たのか再び倒れ込んだ。


『ハァ…ハァ…』


「はぁ…はぁ…」


俺は鵺がまだ息をしている事に気が付いて、聖剣を右手に持ったままゆっくりと歩いて鵺に近づいた。

二人も付いて来ようとしたけど、その場におらせるように手で合図を出してからその場におらせるようにさせて、フラフラになりながらも、俺は聖剣で鵺を斬れる所まで歩いた。


「…死ぬ前に何か言い残すことはあるか?」


俺が鵺にそう言うと、鵺は目をゆっくり開けて俺の方を見ると、突然笑い始めた。


『ンフフフッ…そうね…まずは、()()()()()()()()()()()()()()()。」


(!? なんだ、急に口調が変わった!?)


俺は鵺の声が変わったことに思わず驚いた。

だけど鵺は俺が驚いているのも構わずにゆっくりと大きな息を一回吐くと、笑いながらポツリポツリと話し始めた。


『…奴に操られていたけど、あなたの攻撃はしっかりと覚えているわ。あなた…本当に強いのね。』


「操られていた?どうゆう事だ?」


『…私はもうすぐ死ぬけど、これだけはどうしても聞きたいわ。…今…九尾はどこにいるのかしら?』


俺が鵺に操られていた事について質問しようとしたけど、今度は質問をしてきて、俺はそんな事は構わずにさっき言った事を聞こうとしたけど、まずは一旦落ち着いて鵺の質問に答えようか考えた。


(九尾?それって桜さんの事だよな…敵だけどとりあえず質問には答えるか。)

「桜さんは俺以外の協力者と一緒に鬼の討伐をしに行ってる。だからここにはいない。」


俺が丁寧に鵺にその事を言うと、鵺は安心したかのように笑った。


『そう…良かったわ。まだ彼女は生きているのね。それに今は桜って名前で名乗っているのね。』


「…おい、さっきから何を言ってる?」


俺は鵺が言ってる事が全然わからなかった。

桜って名乗ってる?それじゃあまるで本当の名前は違うって事になるじゃねぇか。

それにさっき言ってた奴に操られていたって、誰に?…ていうかさっきからなんだ、まったく意味が分からなくなってきたぞ。


鵺が言った言葉の意味を必死に考えてたら、鵺が最後の力を振り絞って右手を俺に近づけてきた。


『手を…出しなさい。…大丈夫よ…もう敵意はないから…』


優しい声で俺に言ってきているけど、どうしてもやってる行動がさっきと全然違うから内心パ二くってる俺からしたら仰天ものだ。


(このままトドメを刺すか?いやでも本当に殺意が全く感じられないって事は、言ってることは本当の事なのか?……もう賭けでコイツの事を信じてみるか。)


俺は自分のやってる事を信じて、鵺に右手を出して鵺の手に触れた。

すると鵺から何かを送られてきているような感じがした。


「こ、これは?」


『大丈夫よ…そのままで。』


一瞬手を(はな)そうとしたけど、鵺が俺を安心させるかのように優しい目で俺を見てきた。


≪ステータスが更新されました≫


しばらくそのままでいたら、異世界で聞き飽きていた懐かしい音声案内が俺の頭の中で鳴り響いた。

そしてその声が聞こえたと同時に鵺が俺から手を放してやり切ったかのように息を吐いて、代わりに俺の体に何か別の力が入って来たかのような感覚が分かって思わず焦った。


「いったい何をしたんだ?」


『私の一部の力と妖力…それに妖門を与えたのよ…』


「! どうして?」


『あなたに賭けてみたいのよ…彼女を救ってくれるのを…』


どうやら鵺は俺に自分の力を渡してきたみたいだ。

でもやっぱりさっき言ってた鵺の言葉の意味が分からない以上、この力を与えてきても最初の疑問が解決できていない事には変わらなかった。


『役目は終わったし…私ともそろそろお別れね…』


鵺がそういうと、体がだんだん塵になっていってる事が分かったため、俺は鵺に俺の中にある疑問を聞く事にした。


「待て、死ぬ前に聞かせてくれ。桜さんはいったい俺たちに何を隠してるんだ?」


俺が鵺に尋ねると、鵺は何かを察したかのような顔になって、いったん考えていたような感じになっていたけど、俺のほうを向いたら尻尾の蛇で俺の後ろのほうを指した。


『彼女のことが知りたいなら…この山の麓のところに神社があるから…そこに行きなさい。…そこに行けばすべてが分かるわ。』


「この山の麓か…わかった。なら俺たちはそこに行ってみることにするよ、お前の事を、一回信じてみることにする。」


『ありがとう…なら…彼女を…頼んだわよ…』


鵺は最後に俺にそう言い残すと、体が完全に塵になって消滅していった。


そしたら鵺と俺たちがいた空間が少し(ゆが)むと、元の場所に戻りだして、空を見て変わらない分厚い雲に覆われているのを確認できたところで、俺たちは再び開けて殺風景な場所に戻ってきていた事がわかった。


鵺が死んで、周りに妖がいない事が分かったところで、俺は全身の力が抜けるかのようにその場に座った。


「レイ様、大丈夫ですか?」


いつの間にか近くまで来ていたリラが、俺の背中を支えながら声を掛けてきた。


「フーッ…あぁ、どうやら俺たちの勝ちみたいだ。鵺の反応も消えたみたいだし。」


「ほ、本当に鵺に勝つことができたのですか、私たちは?」


冬華さんも近づいてきて、(いま)だに鵺を倒せたことが信じられないのか、俺に戸惑った感じで話しかけてきた。


「はい。これで俺たちのほうの奇襲作戦は、無事に成功することができました。」


「……」


俺が鵺が死んで奇襲作戦が成功した事をいうと、冬華さんは歓喜のあまり泣いてしまい、その場に座り込んで手で顔を覆い隠すかのような体勢なってしまった。


「ようやく…ようやく勝つことができたのですね。」


「やりましたね、冬華さん。」


「…はい。」


「…うっ…!」


「レイ様?」


お互いに祝福をしていたら、俺はいきなり襲い掛かってきた頭痛に思わず苦しんだ。


「くっ…あぁぁ…!」


「レイ様、大丈夫ですか!?」


「白崎様!!」


リラと冬華さんもさすがに俺の異常に気付いたみたいで、心配しながら俺に声を掛けてきた。


「こ、これは…!?」


俺は頭の中に流れ込んできた映像にずっと驚かされていた。

なぜならその流れてきた映像には、自然豊かな光景の中で仲良く話していた鵺と桜さんが映っていて、場面ごとに切り替わっていっていき、そこに映っていたのは、二人が仲良く戦ったり、月を見ながら酒を飲んだり、人とふれあっていたりと、様々な光景が映し出されていた。

そして最後に流れてきていた映像は、二人が顔が分からない老人にやられていて、鵺が桜さんを妖門で逃がしている映像などといろいろと俺の頭の中に流れ込んできていた。


『…ごめんさない、■●▼■。』


最後に鵺が誰かに謝りながら死んだところで流れ込んできていた映像が途切れて、さっきまで苦しむぐらいつらかった頭痛も最初からなかったかのように一気に治まった。


「レイ様!」

「白崎様!」


「…今、鵺の記憶が俺の頭の中に流れ込んできた。」


「「!!」」


俺の言った事に二人は驚いた顔をしていた。


「…そうか、さっきの空間は鵺と桜さんの…」


「大丈夫ですか?まだ苦しかったりしますか?」


リラが俺に心配してきていることに気づいて、まずは一旦俺がもう大丈夫な事を二人に報告して、この後の事をどうするか話し合う事を優先することにした。


「あぁ、もう大丈夫だ。」


「いったい何があったんですか?急に苦しんだかと思ったら、今度は何かを理解したかのように見えますけど?」


「その事については後で話します。とりあえずまずは下山をー」


「レイ様、あれを…!」


リラが空を見て何かを発見したみたいで、俺と冬華さんも上を見上げると、そこには4羽の(からす)が飛んでいることが分かった。


「あれは…鴉か?」


「あれは…久遠さんの式神の鴉です!」


「「式神?」」


冬華さんの始めて言った言葉に俺とリラが思わず声をそろえて言ってしまった。


「冬華さん、式神ってなんですか?」


「式神というのは、私たち巫女たちが使える術の一つでして、簡単に言えば従者と言ったほうが分かりやすいかと思います。」


「ということは、リラと似たような感じのものなのか。」


俺が冬華さんから式神の事を聞いて納得していると、上で飛んでた4羽のうち1羽がこっちに降りてきて、冬華さんが出した腕の上にとまった。


『鵺の反応が消えたから式神で偵察を送ったのだが、まさか冬華がいたとはな。鵺はどうなった?』


(か、鴉がしゃべった!?)


思わず俺は目を見開いてしゃべる鴉を見てしまった。


「私の他にいる異界からの協力者のおかげで倒す事ができたのよ。でも倒したのは協力してくれた彼だから、私じゃないですけどね。」


『彼?…(ぬし)の横にいる輩の事か?』


しゃべる鴉は俺の方を向くと、俺の前までやってきて、まじまじと俺を見つめてきた。


『ふむ…式神()しだが中々の面構えだな。』


「それよりも久遠さん、今はどこにおられるんですか?」


『奴らの進行を確認していたのだが、今は髑髏の情報を見つけるために各地を飛びながら探していたんだよ。そういえば桜は一緒ではないのか?彼奴(あやつ)も一緒におると思っていたのだが?』


「桜さんは協力者の人と一緒に鬼の討伐に行って今は別行動をしています。」


『鬼という事は、あの大木の方へ行っているのだな。では(われ)はそちらに向かうとするか。それで、主たちはどうするのだ?活動限界もあるから道草はしないと思うが?』


「私たちは庵に「ちょっと待ってください。」…白崎様?」


冬華さんが庵に戻ろうと言おうとしたところで、俺は冬華さんに待ったをかけた。

俺が急に話に割り込んで待ったを言ったから、冬華さんは少し驚いていたが、俺は鵺の話でどうしても確かめたいことがあるから、その事を話すことにした。


「実は鵺が桜さんの事を知りたかったらこの山の麓に行けばわかると言ってたので、まだ半日以上も時間がありますし、俺はそこに行きたいのです。」


「山の麓にですか?」


「はい。そこに神社があるみたいでして、桜さんが俺たちに何か隠しているみたいなので、そこに行って真実を知りたいのです。」


「桜さんの事…ですか。」


冬華さんは俺の言った事に悩んでしまい、どうするべきか考えてしまった。


『どうするのだ、冬華?』


「…一度そこにある神社に言ってみたいと思います。私たちの方は大丈夫ですので、久遠さんは桜さんの応援に行ってください。」


『うむ、招致した。お主も無事に庵に戻って来るんだぞ。』


しゃべる鴉改め久遠さんの式神は羽をはばたかせると一気に上に飛んで行って、そのまま残りの3羽と一緒に桜さんたちの方へ飛んで行ってしまった。


「それじゃあ、俺たちは一旦下山してその神社に向かいましょう。」


「もう大丈夫なのですか?」


「あぁ、大分さっきよりも楽になったからもう大丈夫だ。」


リラがまだ俺の事を心配してきていたけど、俺がすんなり立つと、安心したかのように笑ってくれた。


「時間も掛けられはせんし、行きましょう。」


「「はい。」」


俺たちは麓にあると言ってた神社に向かうため、一度登って来た山道を降りる事にした。

これにて零サイドは一旦終わりにさせます。

次回からは真莉亜サイドの話を投稿していきます!

次回は金曜日の昼12時に投稿します!お楽しみに

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