38話 作戦会議
現在俺たちは委員長から連れてくるように頼まれた翠嵐さんの後を付いて行きながら本殿の奥ある部屋まで歩いていた。
ちなみに俺はこの神社には何度も来たりしており、家族での年越しや俺の高校の合格祈願もここで行っているくらいほぼ常連のような感じなのだが、実際にはほとんど境内の中や、行っても本殿前の賽銭箱までしか行った事がないため、本殿の奥に行くことはこれが初めてだったりする。
俺は中を見る事がなかったせいか何度も本殿の中を横目で見てたけど、後ろにいるリラが真剣に中を見ていたから不意に目線がそっちに行ってしまった。
「なるほど…これは参考にできそうですね…」
声が小さくてなんて言ってたか分からなかったけど、なぜか嫌な予感がしてしまった。
まさかとは思うが、あっちで神社を造りますとか言ってこないだろうな…
もしそんな事言ってきたら流石に止めたほうがいいな。
そんな事を考えながらしばらく歩いて行くと、奥の方に明るくなった部屋があり、その場所には先に行って準備しに行ってた委員長と香織ちゃんが俺たちを待っててくれていた。
「皆さんお待ちしておりました。話し合いの場の準備ができましたので、どうぞこちらに。」
委員長の言葉で俺たちは言われた場所に座った。
俺や真莉亜、桜さんなどの協力者側は入って左の方に、委員長や香織ちゃんたちの神社にいた人たちは入って右側に座り、お互いが面を向って話し合えるような体制になる事ができた。
ちなみに従者組の四人は、人数をあわせる感じにしたので、両側に二人ずつ座るようになってしまった。
「さて、話し合えるようになった所でまずは自己紹介をしよう。私はここの神社の当主をしている常盤翠嵐という。改まって夏奈と香織を含めて門にいた私たちの精鋭部隊のみんなを助けてくれてありがとう。ここの代表の者としてお礼を言わせてほしい。」
「気にしないでください。先ほども言いましたけど、俺たちはこちらにいます桜さんの協力で同じ事情だった故の救援みたいなものでしたので、あなたは何も責任を持たないでください。」
「あぁ、本当にありがとう。」
本殿前の時と同じように改まってお礼をしてきたので、俺はさっきと同じ回答をして翠嵐さんを宥めた。
「お前さんの娘はもう知っているみたいじゃから、後は儂だけじゃのう。儂は稗田鵬祭と言って、こことは違う神社の当主をしているものじゃ。よろしくな。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
委員長たちの事を知っていることは分かってたみたいで、今度は翠嵐さんの隣にいた老人が話をしてきた。
…なんだろうな、この人から感じ取れるこの気は…ちょっと不気味だな。
「それじゃあ今度はこちらの紹介をします。自分は白崎零と言います。」
「私は神崎真莉亜と言いまして、零君とは恋人関係になっております。」
真莉亜が自分の紹介をすると、翠嵐さんは少し驚いた表情をしていて、委員長は一瞬だけ暗い顔になった。
そして真莉亜はずっと委員長のことで考えていたのが分かったのか、何かに納得した感じで頷いていた。
あの、真莉亜さん…よかったらそのたどり着いた答えを教えて貰えませんか?自分いまだに分かっていないのでどう反応したらいいか困っているのでお願いします。
なんか複雑な雰囲気になってきたところで桜さんが一回咳払いをして、全員我に返って真剣な顔に戻った。
「今度は妾でよいな。妾は十六夜桜、大和の国で妖狩りをしている巫女だ。よろしく頼む。」
桜さんがそう紹介したら隠していた耳と尻尾を出して、それを見た翠嵐さんと隣にいた鵬祭さんが驚いた顔をした。
「や、大和の国の妖狩りと言ったら、異界にある国の巫女だけしか名乗れない名で、しかもその姿は、私たちしか知らない秘伝書に載ってあった九尾の巫女ではないか!?まさか本当に実在していたとは…」
「儂も70年以上生きてるが、本物を見たのは初めてじゃ。いやはや…この年でまさかようやく見ることができるとはな…」
委員長と香織ちゃんはいまいち分かっていない顔をしているけど、翠嵐さんと鵬祭さんは桜さんの事を知っていたみたいで、二人は感激していた。
「お父さん、この人の事を知ってるの?」
委員長がそう聞くと、翠嵐さんは二人のほうを向いた。
「そういえば、二人はまだ教えていなかったね。今正面にいるこの人は、妖門の先に繋がっている異界の国、大和の国の巫女で、妖狩りというのは、あらゆる妖を倒した者だけにしか名乗れない称号みたいなものなんだよ。」
翠嵐さんが簡単に説明していると、二人は驚いた顔で桜さんを見始めた。
そして何度かこっちを見てそれに協力している俺たちは何だって思ってるのだろうけど、ごめん…俺たちもどういう風にリアクションしたらいいか分からない。
俺たちも桜さんから教えてもらったけど、まさかそんなにすごい人だなんて思ってもいなかったし、ましてや今さっきまで普通に接していたから内心焦ってるからね。
「妾はそんなに気にしていなかったが、こちらのほうではそのような形で教えられていたのだな。其方たちもそうだが、零と真莉亜もさっきと同じように普通に接してよいからな。妾はそのほうが接しやすいしな。」
「「わ、わかりました。」」
よかった、どうやら大丈夫みたいだ。
今更敬語で話さないといけないと思うとちょっと気まずい感じになるから、このままでいいと言われて安心してしまっている自分がいる。
それはそれでなんか惨めだな…
「あの…私たちも一応自己紹介をしないといけないですかね。」
そう言ってきたのはずっと静かに待っていたリラだった。
ずっと静かに待っていたから忘れられてるんじゃないかって思ってそう言ったと思うけど大丈夫だぞ、ちゃんと忘れてないからな。
「悪い悪い、待たせてしまったな。お前たちも自己紹介してもいいぞ。」
俺がそう言うと、みんなばつが悪そうな顔になってまだ自己紹介してない四人に申し訳なさそうに頭を下げた。
「大丈夫ですよ皆さん、お気になさらないでください。私はリラと申しまして、レイ様の従者でございます。」
「某はシグレと申します。リラ殿と同じで主君の従者でございます。」
「拙者はヒスイ。今紹介した二人と同じで主殿の従者だ。」
「わ、私はルナと言いまして、マリア様の従者です。」
リラがみんなを宥めてくれたおかげでこの場がホッと一安心して、リラたちの自己紹介を聞いてくれた。
「少し脱線してしまったところもありましたが、お互いの自己紹介も終えましたので、早速この後の事で作戦会議に移りましょうか。」
翠嵐さんがそういうと、その場にいたみんなが頷いたので妖に対する作戦会議を始めることにした。
「まず最初に西と東にある妖門の監視、および防衛の方ですけど、こちらのほうはここにいる人から二,三人と精鋭部隊を待機させるやり方が良いですかね?」
翠嵐さんが言ってきたことで顔には出さなかったけど、思わずそれはダメだろうって思いながら考えるフリをした。
そのやり方で行けば消耗戦に持っていかれて負けるリスクが高くなるだけだし、仮にそのやり方でやったら、敵の総攻撃を受け、最悪のケースだとこの場が持ち堪える事はできないだろう。
実際に勇者だった時も何度か消耗戦になって苦戦したときがあるからよくわかる。
「いや翠嵐殿、そのやり方ではこちらが不利になってしまう。」
俺と同じことを思っていたのか、桜さんが異議を申してきた。
「しかし巫女殿、今の状況では防衛で凌がないといけませんし、他の派閥のみなさまも2日から3日は掛かりと言われていますので、その間だけでも何とかしないといけません。」
なるほど…どうやら他にも協力してくれる人たちがいるみたいだな。
でも早くても二日って…その間まで防衛ってなると、流石に無理がありそうだな。
となったらいっその事こっちから攻撃したほうが早そうだな。
あ、でも向こうは妖門から出て来るし、そうなったらあの中に入っていくしかないよな?
一応確認で聞いてみるか。
「あの、一つ気になったんですけど、向こうが妖門から出て来るなら、俺たちもあの中に入る事はできますよね?」
「あぁ、妾が入る事ができたから、それは可能だ。」
俺の質問に答えてくれたのは隣に住んでいる桜さんだった。
「ならそれができるなら、いっそこっちから行った方がいいですかね。」
「そうだな。」
どうやら桜さんも同じ考えだったみたいで、俺のやるやり方に賛成した。
ただ他のみんなはイマイチ分かっていないのか、まだ疑問になっている人もいた。
「えっと、こっちから行くってつまり…」
どうやら真莉亜や他の人も俺と桜さんの答えにたどり着いたみたいでその代表で真莉亜が俺に聞いてきた。
「そう。俺たちが異界にある敵の本陣に行って、敵に奇襲をかけるんだよ。」
一週間ぶりの投稿です。
長くお待たせしてしまって申し訳ございませんでした。
次回は金曜日の昼12時に投稿します!




