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37話 彼女の秘めた思い

「まったくお父さんたら……急に言わないでよ…」


未だ顔の熱が冷えない中でお茶を入れて、さっき言ったお父さんの事を思い出していた。

私は彼が好きだった。

神崎さんが来る前からずっと好きだった。

あの時彼女が白崎君と付き合ってると言って嘘だと思いたかった。


「でもいまさら……何を言っても遅いよね…」


私は中学生の時の彼と初めてあった時の事を思い出した。


はじめはクラスも違っていれば接触する機会もなく、ほとんど赤の他人だった。

私も最初のころは彼の存在も知らなかったし、小学校の時から一人でいる事が多かったから彼に会うのもひと月に一回か二回程度のような感じだった。

彼の名を知るようになったのは、学年テストで一位を取ってる私の次に二位で名前がいつもある事が始まりだった。


はじめはどんな子だろうと思って興味を持ち、次第に彼の名前がある度に興味が湧いてきて、日に日に彼の名前や顔を見ようと用事もなくクラスの横を通ったりして見ていたりしていた。

だけどそれだけだ、それ以上は全く進展なんてなかった。

なにせ私と彼の大きな違いは、周りとの関係だった。


彼の隣にはいつも幼馴染の二人がいたりしたけど、私の周りにはだれもいなかった。

主な理由は私の家が神社だから古臭く見えるという訳の分からない理由で、小学生の時から同い年の友達なんてあまりいなかった。

何とか友達でも作ろうと努力をしたけど、変な勘違いで距離が離れる一方になってしまってからそんなのは諦めてしまった。

しかも私が成績でいつもトップなのが気に入らない女子が、イタズラ感覚で筆記用具や教科書を隠したり、あえて聞こえるように陰口などを言ったりしていじめなども行っていて、私の居場所はどんどんなくなっていってた。


そんな中で私の人生を変えたのは中学二年の初夏のある日の昼休み、私が一人で何ながら屋上で昼ご飯を食べてる時だった。

その日は偶然私一人で、白崎君がいつもの二人を連れていないで屋上にやってきた。

手にはコンビニの袋があって、その場から中身が菓子パンであるのがわかり、彼は何も言わずに私がいる場所までやってきた。


「隣、座って食べてもいいか?」


最初は聞き違いかと思ってしまった。

あまり接点がないのにも関わらず隣に座りたいと言ってきた事に、私はどうしたらいいかわかんなかった。

結局断るにも理由もなければ、彼と話がしたかったという過去の自分もあって、私は彼の言葉に何も言わずにただ頷いて了承をした。

白崎君も私から許しがもらえて隣に座り、袋の中からジャムパンとカレーパンを取り出して食べ始めた。

会話の一つもなくお互いに昼ご飯を食べて、私がその場を後にしようと片づけていた時に、白崎君が声をかけてきた。


「そっちの名前なんだけどさ、常盤夏奈……であってるか?」


「……そうだけど。」


「そっか。今日ここに来たのはさ、常盤さんと話がしたかったからだよ。」


「……え?」


彼から言ってきた事に少しだけ驚いたけど、どうせ興味本位で話しかけてきたんだろうって思ってしまいいつものように暗い顔で聞いてみた。

すると彼は少しだけ悲しそうに私を見て話をしてきた。


「さっきここに来る際にさ、常盤さんと同じクラスの女子が教科書をまた隠そうとしてたんだよ。で、その一部始終を見た明日香がキレてその女子を喧嘩初めてさ、トモは先生呼びに行くついでに巻き込まれてしまったんだよ。」


だから今日は俺一人だけなんだって言いながら苦笑いしていたけど、私はその前に彼が言ってた事に驚いていた。

教科書を隠されるのは慣れていたけど、彼の口から「また」と聞こえてきて知っていたんだと思ってしまい、内心嬉しかったのと同時に少しだけ怒りが湧いてきていた。

知ってたのなら助ける事もできはずだよって思ってしまい、その場で彼に強く言おうとした。

だけどその理由はすぐに彼が答えてくれた。


「最近明日香が隠しているのを見つけてさ、はじめは先生に言ってたんだけど証拠がないからと言われて門前払いされたんだよ。だから俺とトモに証拠を集めるように仕向けて、今日仕掛けようとしていた時にこれだったから、この後俺も二人の援護に行かなきゃいけなくなったんだよ。」


「どうして……そこまで…?」


ケラケラ笑ってる彼に私は思ってることを口に出した。

一年以上も経ってるのに未だ接点といったものはこれっぽちもなかったからだった。

話す機会もなければ、話したのもその日が初めてだったからだ。

彼は笑うのをやめると、私に自分の本心を語った。


「昔の俺と同じだからだよ。俺も小学生の時にイジメられてるから。」


「白崎君が?」


「まぁあれはイジメとは言い切れないけど、それに近い感じといえばいいかな。」


そのあと詳しく聞くと、彼は小学6年の時に一人の男子に殴られたり蹴られたりっで大怪我を負わされた時が何度もあり、その当時はあの二人に言わずに転んだとだけしか言わなかったみたいだった。

だけど明らかに違和感を覚えた二人は彼に迫ってその真実を聞くと、相川君はその男子に激怒して彼の代わりにボコボコにして、二度とそんなのをさせないように懲らしめた事があったらしかったのだ。


「だからここに来たのも、同じイジメられてる者同士で話し合えばどうにかなるのかなって思って会いに来たんだよ。まぁ目的はもう一つあるんだけどね。」


「もう一つ?」


「常盤さん、俺と友達になってください。」


「―――――――え?」


嘘だと思ってしまった。

冗談だと思ってしまった。

罰ゲームか何かとも思ってしまった。

でも彼の眼は本気だった。

本気で友達になろうと言っていた。


「……どうして?」


「どうしてって……まぁ普通に、常盤さんとは仲良くなれると思ったからだよ。」


「私と……仲良く…?」


「だって常盤さんと俺って、頭もいいし運動も男女別だけど上のほうだし、あとは……イジメられた事もあったりとかさ、いろいろ似てるところがあるからかな。」


そういわれて思わず納得してしまった。

彼との接点は何気にあってる部分が多いし、共通点は何個もあった。

それだけなはずなのに、私は過去一番に嬉しかった。

彼からの友達申請に喜んで頷きたかった。

でもどうしてもすぐにできなかった。

だってこのまま友達になったら、彼はまたイジメられると思ってしまったからだ。


「いいの? ホントにわたしと……友達になって…」


今にも泣きそうな気持ちを抑えながら私は彼に言った。

願うなら嫌だって言わないでほしい。

本気で友達になってほしい。

溢れてきそうな気持ちに押されそうになりながら、私は彼の答えを待った。


「俺から言って嫌だって言う訳ないだろ。それに俺と同じように傷ついている人を、放っておく事なんてできねーよ。」


「~~~~~!!」


私は抑えきれなくなった嬉しさでその場で泣いてしまった。

本気で嬉しかった。

初めての友達が彼でよかったと思ってしまった。

それだけで充分だと思ってしまった。

夢であるなら覚めてほしくなかった。

でも今起きてるのは本物だった事で、また私は目から涙が溢れた。

そんな私を見て白崎君は、背中を優しくさすってくれた。


「今は俺と二人っきりだから、我慢しなくていいぜ。泣き止むまで側にいるからよ。」


「うん……うん……」


彼の優しさが何よりも心の傷を癒してくれた。

初めて家族以外で頼れる人ができたその日は、今でも鮮明に覚えている。

その日流した涙は、もう越えないだろうと思うくらい流した。

それからどれくらい泣いていたのか分かんなかったけど、泣き止んでも彼は側にいてくれて、私は彼に謝った。


「ごめんなさい、みっともない所見せちゃって。」


「そんな事はないよ。苦しいんだったら泣くのは当然だからね。」


「そうか……、白崎君、改めて言うね。」


私は呼吸を整えて、自分の口から彼に友達申請の答えを言った。


「こんな私ですが、友達にさせてください。」


「うん、よろしく。といっても俺友達少ないから、事実まだボッチだけどね。」


「ふふっ、何よそれ。」


彼の言った事が面白くて、私は久しぶりに本気で笑ってしまった。

その笑った顔を見たのに驚いた白崎君は、黙ったままずっと私の顔を見てきた。


「どうしたの?」


「……常盤さんってさ、笑うと結構かわいいんだね。」


「ふぇ! か、かわいい!?」


私は彼にかかわいいって言われて思わず驚き、それと同時に顔がどんどん赤くなっていくのが伝わってきた。

たった「かわいい」って言われただけなのに私の心拍数は上がっていって、無自覚にもその言葉が頭から離れようとはしなかった。

どうして急にかわいいって言ったのか聞こうとすると、校内放送で彼と私の名前が呼び出されて職員室に来てほしいと言われて、彼は座らせてた体を立たせて私に手を差し伸べた。


「どうやらお互いにお呼び出しのようだ。常盤さんのこれからの事にも関わるだろうし、さっさと終わらせるために一緒に行こうぜ。」


「う……うん。」


結局その答えは聞く事はできなかったが、彼のおかげで初めて今の私を捨てられる日になって、それ以降の生活は見違えてしまった。

その後、明日香ちゃんが教師たちに教育員会に証拠を渡すと脅して、私のイジメが本格的に調査されてから一気にイジメられる事はなくなり、白崎君と友達になった事で二人も友達になってくれて、寂しい学校生活とはお別れして新しい生き方に変わっていった。

もちろんその後私をイジメてた女子たちがガタイのいい男たちを連れて彼らに報復をしようとしたが、その男たちは前に三人にボコされてから逆らえなくなっており、それ以降その女子たちは居場所がなくなり学校に来なくなって、私のイジメはそれ以降二度と遭う事はなくなってしまった。


学年も三年になってから私は見違えるように変わり、自分から変わろうと前に出て生徒会に立候補したり、学校の風紀を変えようと教師と話し合いなどをしたりと、私と同じような人が出ないように取り組んだりもした。

その結果その中学校はかつてのような治安の悪さから一変して、どこよりも快適に学校生活のできる場所へと変わっていき、私や白崎君たちは偉い人から表彰をされたりと一躍有名にもなったりした。

その結果学校に行けば何度も人とすれ違うと挨拶をしてくるようにもなったし、後輩の男子からも告白されたりと、かつての自分にない事だらけで毎日が楽しかった。

時折、相川君に巻き込まれて白崎君と明日香さんが不良と喧嘩して迷惑をかけたりする時もあったけど、それでも今の生き方が嬉しかったから何も言い返したりしなかった。


高校に進学しても関係はそのまんまで、成績の悪い相川君のために私と白崎君でもう勉強させたりと、夏休みになって四人で遊んだりと、毎日楽しめる生活に飽きもしないで三人と仲良くした。

今の自分があるのは全部白崎君のおかげ。

憧れでもあり、初めて好きになった人物。

べ、別に本気で好きになりたいかっていうならそうかもしれないし、ただただ信頼を持ってるだけで恋人になりたいとか―――――


「お姉ちゃんさっきから何ぶつぶつ言ってるの?」


「ひゃあ―――――‼‼」


いつの間にか後ろにいた香織の声に驚いてしまい、持ってた湯呑を落としそうになってしまった。

ホントにびっくりした。

気配が全くなかったから妖とも思ってしまった。


「か、香織……い、つからそこに…?」


「何度か読んでたけど返事がないから見に来てみたら準備をしながらぶつぶつ何か言ってるし、変顔七変化みたいなことしていて少し気持ち悪かったけど、面白そうだから少しだけ見てたんだよ。」


「ど、どのあたりから……聞いてたの?」


「なんか……「私が一人で何ながら屋上で昼ご飯を食べてる時だった。」って言ってるあたりからずっと黙って聞いてたんだよ。」


「って、それほぼ最初からじゃないの‼」


まさか口に出してたなんて思わなかったし、しかもほとんど香織に筒抜けだったという事をカミングアウトされたから死にたくなってきた。

顔が熱くなってくるのが今でもわかる。

できれば今のはなかった事にしてほしい。

記憶が消せるのなら今してほしいわ。


「お姉ちゃんさ、あの白崎さんの事が好きなんでしょ? 一回でもいいから告白でもしたらどうなの?」


「べ、別に私は恋愛とかあまり分かんないし、それに白崎君は神崎さんと付き合ってるんだからもう無理だよ。」


「そんな事言ってるけどさ、その顔は諦めたくないってのがすぐ分かるし、告白しないで終わりってのは私としてもそれはどうかと思うよ。」


「うぅ……でも…」


香織の言った通り、確かに彼の事は諦めたくない。

でもすでに神崎さんと付き合ってる状態で私が横槍を入れるのは間違ってる。

そんなのは私のやるやり方じゃない。

だったら素直に諦める方が断然マシだ。


私が心の内に秘めようとしてるのを見ていた香織は、溜息を吐いて私に言いたい事を全部言ってきた。


「はぁー……お姉ちゃん今更だけど、もう昔の事を引きずる必要なんてないよ。はっきり言って今のお姉ちゃんは可愛いし、元からポテンシャルが良かったんだからいけるって。」


「で、でも今白崎君は神崎さんと付き合ってるし、告白したところで付き合えないよ。」


「あのね、その人が他の人と付き合ってるからもう無理なんて常識は私には通用しないし、何だったら奪うような感じでその人にアタックしてみなよ。」


「う、奪うなんて……したらダメだよ。」


(こんな状態で妖狩りとか……できたらさせたくないのが私だけど、そんなのお姉ちゃんには通用しないもんな。)


彼女は自分の姉がどれだけ極端に真面目なのかを知ってるからこそ、これ以上は野暮だと思って急須を取って残った湯呑にお茶を入れた。


「とにかく、今は妖とこの後の話し合いに集中しなきゃいけないから、お姉ちゃんもいつまでもした向きな対応はしないで早くお茶を持っていくよ。」


「………。」


「返事ッ!」


「ふぇ!? は、はい!」



香織に怒鳴られてようやく元に戻った彼女は、お茶を入れた湯呑をお盆に乗せて話し合いをする部屋に持って行き、その後姿を呆れながら見ていた香織は、残った湯呑にお茶を入れて姉の後を追うように話し合いの場所に向かった。

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