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36話 お互いの事情

門が開いてしばらく時間が経った瑞風神社では緊張が絶えなかったが、空気を換えるかのように捜索班の一人が神社の境内にやって来て状況を報告した。


「申し上げます。西の門の閉門に成功、被害はありますが妖の殲滅に成功したとの事です。」


「そうか…よかった!」


報告を受けた翠嵐は一難去った事に大きく息を吐いて気を緩ませた。

横にいた鵬祭もしのぎ切った事に関心と安心をしてて、そのまま報告を続けるように指示を出した。


「経緯を話しますと、数名の妖術師とは思えぬ身なりの者たちが助太刀をし、我々でも苦戦を強いられる妖をいとも簡単に薙ぎ払うかのように仕留め、そのおかげで我々の被害は過去最小にする事が出来ました。」


「助太刀? その者たちは妖術師の術を使っていたか?」


「水のような術、あとは刀などの刃物だけでした。」


事の経緯を聞いてた翠嵐と鵬祭は助太刀してきた者の特徴を聞いたが、いまいちそのものが何者なのかしっくりしていなかった。


「水……もしや水城家の者か?」


「いえ、水城家はここまで距離がありますし難しいでしょう。それに刃物を使う妖術は聞いた事がありませんし、第三者の可能性があり得そうですね。」


翠嵐の言った第三者とは、妖術以外での攻撃が可能な人物。

だがその存在は政府が関連して情報を送ってくるので、情報がないのは明らかに不信極まりない存在でもある。

仮にあるとすれば、陰でしか行動せずに妖術師と同じ公にならない呪術師があり得るのだが、妖を倒すのならその可能性は低いと思っていた。


「その助太刀してくれてる者たちはどうなっているのだ?」


「怪我をした者の治療をしたのちに、こちらに向かっているとの事です。」


「……少し、身構えておいた方がよさそうだな。」


警戒する翠嵐の言葉に待ったをかけた鵬祭は、冷静に現場の状況を推測した。


「待て待て冷静にならんか。話を聞く限りお前の娘たちが無事であるのは分かるし、何より助けた者に対して警戒をするのは無礼であるぞ。」


鵬祭に言われてハッとなった翠嵐は自分が思ってた事が失礼であるのを思い出して、冷静になった後に鵬祭に謝った。


「すみません、やはり警戒し過ぎなのでしょうか。」


「当たり前じゃ、見るに堪えん。肩に力を入れ過ぎてこぶができるわ。」


「…緊張、してるのですかね。ここの当主になってからずっと気を緩めすぎないようにしてきたので。」


「若さ故であるのと、人間だからだろうな。お前さん、こやつの代わりに言うがその者たちはここに向かっているのだな。」


「は、はい。どうやら話ができる場所が欲しいと言っておりまして、夏奈様と香織様もご同行しております。」


息まいて出て行った彼女たちが同行し、何もないのなら敵対していないのはこれだけですぐに理解できる。

鵬祭はそれを聞いて確信になり、翠嵐に問題ないと言いながら杖で体を叩いた。


「何から何まですみません。とりあえず話し合いの場を設けるから、霧島と数名を会議室に頼む。それと周りの者には無礼のないようにしろと伝えてくれ。」


「はい。」


捜査班はすぐに境内にいた一人に無礼な行動はしないように伝え、霧島を見つけて会議室がある方へと走っていった。

再び緊張によって静寂になった境内に風が吹いて、翠嵐と鵬祭は助太刀してくれた者が来るのを待ち続けた。


「さて、お手並み拝見をするかの……勇ましき者の面を。」









西の妖門の閉門に成功してひとまず安心した零たち一行は、街灯を頼りにしながら暗闇が続く道を歩いていた。


「………。」


零は歩いているその間にでも話を少しでもしようと試みてはいたが、どうしても切り出せずにいて何も話さずに道なりを進んでいってた。

何時話そうか、どのタイミングで行くべきかを狙っているが、どっちも先に言うべきか迷ってしまってずっと静寂になってしまっていたのだ。

そんな空気の中にいるのが耐えきれなくなった真莉亜が零の肩を叩いて、「先に話を切り出して」と言ってるかのような視線をしてきて、零も諦めて先に自分から話を切りだした。


「なぁ委員長、そろそろ話をしてもいいか?」


「ふぇ…あぁうん、いいよ。」


突然話をしてきた事に驚きつつも、言っていた通り話をするのを覚えていた夏奈はすぐに冷静になりながらも、零からどんな話を切り出されるのか不安になっていた。

そんなのを知らずに零はまず自分と真莉亜の正体について少しずつ話をしていった。


「まず俺の正体からだけど、俺は少し前まで異世界で勇者だったんだ。」


「「……………は?」」


二人して「なに言ってるの?」って感じで零を見て、言った本人は真莉亜の方を向いてサポートしてほしいのを視線で伝えて、それに気付いた真莉亜も無言で頷いた。


「二人とも、零君が訳の分からない事を言ってると思ってるけど、実際に勇者だったのは本当なの。」


「か、神崎さん……別に彼のために弁解しないでもいいのですよ。」

「そ、そうですよ。男の子だってそう言った事を言いたいのは分かるのですから。」


彼女たちが明らかに信じてないのが目に見えて分かってしまった零と真莉亜は、証拠となる魔法をもう一度彼女たちの前に出して見せた。

零は得意の氷魔法を、真莉亜は炎魔法を出すと、二人はさっきのが幻じゃなかったのを改めて再確認して零の話を真剣に聞くようにした。


「俺が異世界に召喚されるのに時間は立ってない。けど三年間異世界にいたのは事実だ。現に横にいる真莉亜も、同じ異世界にいた日本人なんだからな。」


「神崎さんも?」


夏奈が真莉亜の方を向くと、彼女は視線をわずかに下にやりながら頷いて、過去に経験した事を隠さずに言った。


「私は8歳で一度死んで異世界に行って、魔王の申し子として転生したの。のちに魔王になって零君に負けて死んで、またこうして人間に戻って「神崎真莉亜」という新しい名前でまた生きてるのよ。」


彼女の過去、そして今の自分の正体を聞いた夏奈と香織は驚愕していた。

零に向いてそれが真実かどうか確認すると、零も頷いて彼女の話が本当である事に否定は一切しなかった。

夏奈はその話を聞いて混乱していたが、持ち味の頭の回転の速さを最大限に生かして二人の関係を考察していった。


「つまり二人はその異世界で出会って、神崎さんは何かしらの呪いのようなものから解放してくれた白崎君を好きになって付き合っている……で、いいの?」


「あぁ、ほぼほぼそれで正解だ。さすが学年一位の頭の回転力だな。」


夏奈が二人が付き合ってるって言葉で後ろにいた香織が別の意味で驚愕をしていたけど、三人は今の状況でそれに気づいていなかった。

そして今度は零が彼女たちの正体について夏奈に質問をした。


「それじゃあ今度はそっちの正体だけど、二人は妖術師であってるんだな?」


「そうだよ。私たちの神社は表では普通の神社としてるけど、裏では妖狩りをする妖術師が集まる場所なの。もちろん私たちも妖術は使えるわ。」


夏奈があっさりと自分の正体を答えたのに意外と思った零は、思わず動かしていた足を止めて夏奈の方を見てしまった。


「隠さないんだな、妖術についての存在。」


「知ってるのなら隠す必要もないからね。それにさっきから強い妖力を持ってる人が横にいるのなら、何かしら教えてもらったって考えれば解決するしね。」


彼女の目線の先にいた桜を見て話しをしているのに気付いた零は納得していた。

そして何故か桜は自分の妖力を見られたのに驚くと、夏奈を見て何かしら感心するかのように彼女の顔をじろじろと見始めた。


「ほう…その若さで妾の隠してた妖力に気付くとは。其方は将来良き妖術師となるだろうな。」


「え、えーと、ありがとうございます。」


急に接近してきて顔を見られてたじたじとなってしまっていたが、桜が離れた事でそれもなくなり、桜は歩いている方向を向いて何かを感じ取っていた。


「少し先に妖力が多く集まってる場所がある。そこが行先の神社であろう。其方たちの正体はそこについてから改めて話をしたらどうだ?」


「あ、でしたら私からも一ついいですか。」


香織が挙手して言いたい事があると言うと、桜も他のみんなも許可してくれてお礼を言うと、彼女は零の正面に立って頭を下げた。


「言うのが遅れてしまいましたが、助けて下さってありがとうございます。私は妹の香織といいます。お兄s…いえ、白崎さんの事はお姉ちゃんから何度も聞いていましたので、改めてよろしくお願いします。あと私の事は香織で構いませんので。」


「あぁ、よろしく。それとお礼は不要だよ。元々妖狩りに協力をする形で足を踏み入れたなら、助けるのは必然になるからな。」


「そうだとしても、初陣(・・)で死にかけていた私たちを助けてくださったのは本当の事なのです。ですのでこれは正しくお礼をさせてください。」


(この子は常盤と同じで真面目だ。いい親に育てられたのだな。)


礼儀正しい彼女に心の中で感心した零は、香織に頭を上げるように指示して移動を再開させ、山道とは違って明るくなった道を歩いて行った。

しばらくまた静寂になった時間の中を歩み続けていると、身に覚えのある灯篭が見えてきたのに安心した零と常盤姉妹は、石段がある場所の近くで誰かが待ってくれてる人がいるのを確認した。

すると向こうも歩いてきてる彼らに気付くと、スーツを着た人物がこっちに近づいてきて本人確認のために夏奈と香織と話をし出した。


「お二人とも、ご無事で何よりです。」


「ありがとう。それより神社に奇襲はあった?」


「今はまだです。協力者様のご要望で話ができる場所を設けておりますので、先まずは当主様とお会いになってください。」


「分かったわ。先に行って私たちが戻ってきたのをお父さんに伝えて頂戴。」


「かしこまりました。」


話をしていた人物は先に石段を駆け上がっていき、その後を追うかのように零たちもゆっくり石段を上って行った。

何も変わりない瑞風神社の石段だったが、零はかすかに何か嫌な雰囲気を感じ取っていたせいで違和感を覚えていた。


(なんだ…この感覚。妖力とは違うこの感覚……まるで俺たちを呑み込もうとするこの違和感は何だ…?)


一瞬だけ後ろにいた真莉亜に目をやったが、彼女は何も感じ取っていないのが窺えて、自分の勘違いじゃないのかと思ってしまっていた。

そんな事を考えている内に石段を上りきると、境内ではすでに迎え入れる感じで通路の左右に並んでいる妖術師たちが待ってくれていて、彼らの姿が見えたところで正面にいた妖術師が声を出した。


「常盤家令嬢、常盤夏奈様、常盤香織様、並びに協力者様が参られました!」


夜にも構わず大きな声で叫んだ人が合図だったかのように、左右に並んでた妖術師たちが一斉に頭を下げてきて、初見で見た常盤姉妹以外の全員がビビる感じに後方に下がった。

思わず下がって一旦引き返そうか考えていた所で、奥の方から一人の男性と老人が歩いてやって来た。


「夏奈、香織、無事でよかった。」

「ほっほっほ、初陣は問題なかったようじゃな。」


奥からやって来たのは翠嵐と鵬祭で、翠嵐に至っては汗をかいていたのか来ていた服の首回りにシミが出来ていた。


「ただいまお父さん。正直何もできなかったけど、白崎君のおかげで無事に帰ってこれたよ。」

「同じく、傷は付けてもそれ以降は何もできませんでした。」


「気にするな、二人が無事だったらそれいいんだ。それよりも……白崎君?」


二人が無事に帰ってきたのに安心していた翠嵐だったが、夏奈が助けてくれた人物の名に覚えがあると思って後ろにいた彼を見ると、翠嵐は彼に近付いて顔を覗いた。


「……もしかして、白崎零君だよね。」


「え、あぁはい…そうですけど、お会いした事ってありましたっけ?」


「いや、実際にあった事はないよ。けどまさかまた(・・)君に助けられるなんてな。」


「またって……あぁ、もしかして中学の時ですか。」


「そうだよ。夏奈をまた助けてくれてありがとう。」


翠嵐が頭を下げてお礼を言ってきて、零がそれに対してお礼は必要ないと言って宥めている中で、事情を知らない夏奈以外の人物は何が何だかさっぱりだったような感じで置いてけぼりにされていた。

どうしようと思っていた中で、零に近かった真莉亜がどんな関係なのかを零に尋ねた。


「ねぇねぇ零君、委員長と前から会ってたの?」


「常盤とは中学が一緒だったんだよ。トモと明日香も同じで、四人で何度もしゃべる仲だったんだよ。」


零の説明で納得した真莉亜は、自分の知らない零の過去を知ってる彼女を見てわずかに悔しい思いをしていた。

対して夏奈は過去を思い出して視線が下に行きかけていたが、翠嵐が話し出した事でその意識は父親のほうへと向かった。


「しかし君のおかげで助かったよ。夏奈も君を気に入ってるようだし、近いうちに跡継ぎができる未来も近いのかもな。」


「ちょ、ちょっとお父さん、何言ってるの?」


「何って、夏奈は彼が好きなんでしょ?」


「え?」

「な!?」


翠嵐の発言で零は身に覚えのない好意にポカーンとして、夏奈は父親の爆弾発言で一気に顔を真っ赤にさせていた。

そして二人だけではなく、恋人である真莉亜は衝撃を受けて夏奈の方を向いて「やっぱりか」と小さく呟いて警戒して、香織は何かしら察していたようで、納得と同時に「こんな人が好きなの?」っていうような感じで零の方を向いて首を傾げていた。


「お、おおお父さん、なな何言ってるの…!?」


「おや、違ったのか? 時々話をしていている時に彼の名前が出てくるからそうなのかって思ったんだよ。それに電話していた後も何かしら後悔しているようにも―――――」


「あああああそうだ!この後話をするんだよね! 香織と一緒にお茶用意してくるからいつものあの場所で会議室に行くだろうから先に行っててね! ほら付いて着て香織!」


「えぇちょっとお姉ちゃん、引っ張らないでよ~……!」


顔を真っ赤にしながら香織を連れてその場を後にして、静かになったその場はどうすべきか考えていると、後ろで物静かに見ていた鵬祭が笑い出して全員がそっちを向いた。


「いや~若いっていいものだのう。翠嵐、お主は少々娘の気持ちを考えるべきだぞ。」


「えっ……それってどうゆう…?」


「まぁそんなのは今はいいわい。先まずはこの者と話をするのを優先せんか。」


「あぁはい、……白崎君、君が話をしたい事は聞いてるから、まずはそこから始めよう。霧島、みんなを案内してあげてくれ。」


「かしこまりました。」


石段の前で立っていた黒スーツを着た人物の霧島がいつの間にか零たちの後ろで立っていた事に気付かなかった全員が一斉に後ろを振り返った。

注目されてるにも一切動じずに彼らの案内をし、零たちはその後を追う感じについて行った。


「……。」

「ムスー…」


「まったく、罪深い人ですな主君は。」

「そうだな。」

「成程、零は女子(おなご)に好かれやすいのだな。」

「あわわわわ。」


彼の後ろでは真莉亜とリラが顔を膨らまして零を睨んでいて、その後ろを見ていた他の四人は、零がこっちの世界でも女子に好かれているのに若干呆れているシグレとヒスイと、零が好かれやすい体質をしてるのだとどことなく納得していた桜、他人の恋沙汰を見て顔をほんのり赤くしていたルナがいたのだが、一番前を歩いてる零はこれに気付かなかった。

【オクタグラム】

魔王マリアベル(神崎真莉亜)に忠誠を誓った従者たちの異名。

マリアベル以外の指示には絶対聞かず、魔族の幹部が死んでもなんとも思わず、彼女のために動き続けていた。

その中で唯一エミリアだけは種族も実力も同格レベルだったから自由に行動させていた。

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