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33話 俺の立ち位置が…

「まだあと1時間以上もあるとか……ちょっと時間変動に差がありすぎて感覚が狂いそうだな。」


地球に戻ってきた零は自室の時計を見て夢の世界(シープ・ワールド)にいた時間が経った15分だけだってのを知り、12分の1に設定された時間変動がどれ程感覚を壊すのかを実感していた。

そして結論に至ったのが、明らかにやりすぎだって事だった。


(15分しか経ってないって事は、向こうには約3時間いたって計算になる。これで1週間が3ヶ月になったんだったら、たまったもんじゃないな。)


これをプレゼントしたあの女神のやり過ぎな設定に頭を抱えてしまっていた零だったが、従者四人はそんなのをお構いなしに零の部屋から見える日本がどんなのかをマジマジと見ていた。


「ここがレイ様たちが住んでいる世界なのですね。王都とは全く違います。」

「はわわ……知らない建物がいっぱいなのです。」

「うむ、空気が少しだけ向こうと違って荒れているな。」

「それになんだか嫌な気配が流水のように流れてますね。これは主君の言ってた妖が関係している可能性があるのでしょう。」


それぞれが自分の意見を言い合っていて、日本が異世界と全然違うのをその目に焼き付けていた。

地球の技術は異世界には存在しないし、文明も何もかも異なっていればその星にいるか見も全く違う。

車や鉄道などの移動手段もこの世界でしか存在しなければ、魔法などと言ったファンタジーはこの世界には存在しない。

自分たちの知らないことだらけの地球に、興味津々になりながら窓の外をずっと覗きまくっていた。

ただヒスイやシグレは今の外が何かしら違和感を感じているような様子で覗いていて、すでに妖が出している妖気を肌に覚えさせようとしていた。


「時間はかなり早いけど、一度下におりて事情を話すとするか。」


「それもそうだけど、まずは服装をどうにかしよう。」


「あぁそうだな。ごめんけどみんな、少しだけ廊下に出てくれ。」


みんなに頼んで一度廊下に出てもらって、真莉亜も自分の部屋に戻ってから動きやすい服に着替えることにした。

零は着ていく服について多少迷っていたが、戦いにオシャレはいらないからこそ、シャツの上から普段から使ってる黒のジャージを上下に着て、念の為に肩下げバッグを背負ってスマホをポケットに入れてから廊下に出た。

同じタイミングで真莉亜も部屋から出てきて、色こそ違っていたが、暗い色のジャージを上下に着ていた。


「……まぁこれが動きやすいな。」


「そうだね。最終的にはこれに行くからね。」


お互いにジャージだったからこそそれ以上は何も言わずに、これから桜にどのように話すか話し合った。


「全員で降りた方がいいかな?」


「そうだな。先に俺たちがリビングに入って、その後にみんなが入るようにするか。」


事情を全く知らない桜にこの事を話そうと下におりてる中、二人は桜から聞いていた妖の存在についてみんなにわかりやすく説明をして、リビングの前に来てここに居るようにと指示を出してその場に待機させてから先にリビングに入った。


「桜さん、少し話をいいですか?」


「構わないが、何かあったのか?」


桜から許可を貰った二人は、廊下に待機させてる四人を中に入れた。

突然人数が増えたことに桜は驚いていたが、彼女たちが普通じゃない見た目をしているのに気付いてわずかに構えたが、二人の関係者であると察してすぐに気を緩めた。


「先に聞くが、その者たちは協力者か?」


「はい。全員じゃないですが、かつて従者だった者たちです。」


「全員ではないのだな……まぁ座って話は聞こう。」


桜に言われてソファーに座った零と真莉亜。

その後ろに立って待機している彼女たちを見て、桜は零に一つずつ質問をしていった。


「まず聞くが、その者たちは其方たちの従者で間違いないのだな?」


「はい。実力は得意不得意がありますが、そこにいる黒髪の少女以外が俺の従者で戦闘面では充分強いです。」

「ちなみにその子は私の従者で、暗殺をメインにやってます。」


零の後に付け加える感じで真莉亜がルナは自分の従者であることを話し、黙ったまま聞いてた桜は彼らの後ろにいる四人に目を向けてじっと見つめると、何か分かった感じに軽く頷いた。


「確かに見た感じ中々の強者だな。特にそこの二人は他の二人と違う。日常的に死と直面しあって来た眼をしている。」


桜はルナとシグレに指で刺して、二人は明らかに戦いを知ってる眼をしているというと、零と真莉亜はすぐに見極められて事に驚いた。


「まさか秒でシグレの本性を見抜かれるなんてな……やっぱ本物にはすぐ気づかれるのか。」


「零の従者のシグレ…だったか、その者はすぐに分かる。逆にそこの娘の方が分かりずらい。見た目や表情は出してないが、内に秘めてる殺気などがわずかに感じれてようやくだ。」


「はわわ…殺気とか出してないのに気付かれるのですか…」

「主君、この方はかなり手慣れた感じのようです。」


ルナとシグレがお互いに自分の内側を見抜かれたのに驚き、言われなかったリラとヒスイも同じ主人に仕える従者であり知っているからこそ、すぐに見抜いた桜に感心していた。

彼女たちの殺気は普通の人もそうだが、冒険者や魔術師のように戦ってる人たちでもすぐに気付くのは難しいくらい体から出さないように自分を鍛え上げていていた。

だがそれをいとも簡単に桜によってバラされたのには思わず焦りすら感じてしまい、この時点で桜がただ者じゃないとわかって、自分と同じもしくはそれ以上の強者であると、この短い時間で痛感されられていた。


「して零よ、何故その者たちは妾たちに協力を申し出てきたのかを教えてくれぬか?」


「分かりました。」


零は丁寧に事の経緯を全部話した。

夢の世界(シープ・ワールド)の存在はあえて伏せて、別の場所で彼女たちを会ってからここまでに何をしていたかを話し、自分たちがこれから戦わないといけない事に協力をしたいと言ってきて、メンバーを厳選して彼女たちが選ばれて連れてきた事を嘘偽りなく言った。

桜は経緯を全部聞き終えると、少しだけ考えてから下を向いた。


「――――妾も、同じように信じておけばよかったのかの…」


「「…?」」


小声で口の動きも読めなかったから何を言ってるのか分からなくて、零と真莉亜もそうだが、後ろにいる四人も聞こえていなかった。

尋ねようとしたがすぐに桜が顔を上げてこっちを向いて、二人の顔を見て口を開いた。


「協力してくれるのが多いのは結構だ。其方たちの視線が嘘ではないのが窺える以上、妾からは何も言わん。」


「「ありがとうございます。」」


桜からの了承を得て、ここにいる七人で妖狩りをすることがい待った所で、桜が一つ提案をしてきた。


「時間は早いが、妖狩りとして行動をする前に見極めをしておかないとな。」


「見極めって…他にも何か?」


「妾の見極めは、其方たちの事だ。」


「「え?」」


桜の発言で「自分たちも見極め?」って感じでポカーンとした二人に、桜が刀を抜いてこっちに向けてきたのに一気に焦りだした。


「ちょちょちょ!何で刀向けるんですか!?」

「まさかここで打ち首するんですか!?」


「何を言ってる。其方たちの意思は分かっても、やはり妾の中の真実にはたどり着けてなくてな。其方たちがどこまで本気なのかを妾の居合で試すのだよ。」


いきなり始まった自分たちの見極めがまさか刀を使って行われるとな思ってもいなかったみたいで、零と真莉亜の顔はみるみる青くなっていって、それに見かねた従者たちが前に出て主人二人を守る体制になった。


「ちょっと!何考えてるんですか!」

「何もせずに見ていましたが、これは流石に見てられません!」

「貴様が剣を抜くなら、某の剣を抜いて相手するぞ。」

「し、縛ります! ギューギューに縛り上げます!」


臨戦態勢になって空気がどんどんひしひしとなっていたが、桜は首を傾げて剣を下した。


「何を勘違いしてるんだ? 妾がやるのは度胸試しなだけで殺し合いはする気などない。」


「いやいや明らかにさっきまでの眼は殺す勢いでしたよ!?」

「私たち妖じゃないですからね‼」


一気に場がぐだぐだになってしまい、しばらくごたごたが起きて何とかお互いに納得しあいながら、度胸試しといわれる行事をするために家の庭に出て始まることになってしまった。


「あの…本気でやるのですか?」


「当然だ。ここでやっておかないと妾が其方たちの命を守らないといけなくなって、本命の奴の首を切れない所業がもしもの出来事で起きてしまうかもしれないんだ。」


「話して信頼をもらったはずなのに何故か信頼を得ていないようで複雑なのですけど…」


「やはり言葉だけでは全部は信頼できないのだ。妾や其方たちの為であると思って頼まれてくれ。」


不安たらたらですでに信頼云々の問題になっていると思っている零は、これから死ぬかもしれないと思われる行事に乗る気ではなかった。

もちろんそれは真莉亜も同じことであった。

ようやく地獄から解放されて、第二の人生を謳歌できると思ってた矢先にこれだからやる気以前にもう人生終わりそうな雰囲気に悲しみすら出てきていた。


「やり方は単純だ。どちらかが先にその場に立って、妾が最速の居合で其方等に斬りに掛かるふりをする。其方たちは、その場に立ってるだけで充分だ。」


「「………。」」


やり方の単純さに驚きはしなかったが、最速の居合をぶつけに行くと言われたあたりで再び顔が青くなった二人は、もう止められない状況にお互いの顔を見あって覚悟を決めるかのように頷きあった。

悪気もなければ殺意もない純粋な度胸試しをしようとしている桜に対して他にないのか何度も聞こうと試みていたが、決まるとさっさと始めようと準備に乗り出していて、すでにその時点で聞こうとしても途中でもうダメだと察して、庭に出たあたりでもう諦めていた。


当の桜本人はというと、刀を抜いては切れ味が変わっていないのを確認していて、すでにいつでも行けるような状態にアップを始めていた。

彼女の刀である名刀「白日(はくじつ)」と「星月夜(ほしづきよ)」は桜がずっと愛用している刀で、その刀身は光にさらせば煌めき、その鋭さで多くの妖を斬って戦ってきていた。

その姿を見ていた真莉亜は哀愁を出しながら悟った。


「一週間……短い生涯だったな…」

「縁起でもないこと言わんで。少しは希望を持とう。」


何とか宥めようとしているが、零も着実に真莉亜と同じ感じになりかけていた。

今、零の頭の中では二つの恐怖を思い出していた。

一つは中学の時に初体験したバンジージャンプ。

もう一つは勇者の時に初めて恐怖を覚えたドラゴン退治。

過去に二度の恐怖を知った彼にとって、今から始まろうとしている度胸試しとどっちが怖いかを天秤に乗せて考えていた。


(かつてのあの時と今のこの状況……怖いなら過去が充分怖い。であるなら注射感覚ですぐに終わらせられるのなら行くしかないか。)


勇者を終えても終わらない死の直面に嫌気が出てきていたが、これが終わらない限り妖狩りが始まらないのを理解している彼は、今この場にいない家族の顔を思い出しながら空を見上げた。


「母さん、華怜……先に逝くかもしれませんが、どうかお許しを…」


家族を一番に大事にしている零は、ここに家族がいなかったことに感謝しつつ、真莉亜と一緒に命の駆け引きをする今の夜を呪った。


―――妖との衝突まで1時間。

【名刀「白日(はくじつ)星月夜(ほしづきよ)」】

桜が愛用している刀。

刀身は光にさらせば銀色に輝き、当初からずっと変わらない鋭利の刃は風をも切るとされている。

妖狩りをするときに使用し、人に向けて抜くのは零と真莉亜が初めてでもある……

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