22話 従者たちの自己紹介2
「俺の従者は強い!」
「なん…だと…?」
「んじゃまぁ、今度はそっちの従者の紹介をしてもいいか?」
「あぁうん、分かった。」
真莉亜は自分の従者に合図を出すと、リベルを筆頭にみんなが一人ずつ自己紹介をしていった。
「改めまして、マリア様のメイドであり、魔王特殊部隊【オクタグラム】の隊長、悪魔王のリベルと申します。」
「獅子の獣人のレーヴェだ。」
「熊の獣人オルソ。よろしく。」
「ね、猫人族の、ル…ルナ……です。」
「鷲の鳥人のグレイと言います。よろしくお願いします。」
「吸血鬼王のエミリア。よろしくて。」
「竜人族のセレナでーす!よろしくっ!」
「同じく竜人族のシャルル。セレナの双子の姉です。」
外見で獣人と竜人はすぐに分かった。
獣人はべレナスなどを見てきたから大体わかる。
竜人はある場所にしかいないから、会うのは二回目。
別に問題はない。
竜人は珍しいけど問題じゃない。
問題なのは竜人とかじゃなくて―――――
「王が二人もいるじゃねぇかよ!!」
王というのは、いわば種族の王。
その称号を持つのは、王の器になる素質を持つことだ。
悪魔王は魔王になるのが多い。
歴代の魔王は、全部その称号を持っていたとされているから、真莉亜もその一人だったかもな。
ただ俺としては、もう一人の王が危険で仕方なかった。
「エミリア……だったな。お前はホントに吸血鬼なのか?」
「えぇ、そうよ。正真正銘の吸血鬼王であって、陽の下を普通に歩ける希少種でもあるわ。」
初めてかもな、ただの自己紹介で恐怖を感じたのは。
――――吸血鬼の希少種。
希少種とはあらゆる亜人の中で、極稀に存在するもので、知ってる知識で最も珍しいのは、吸血鬼だ。
吸血鬼自体が絶滅危惧種と同じくらい少なく、会えるのはある意味幸運って感じになれるほど、出会う確率も低い程だ。
希少種の特徴は、同じ種族でも「体質」が全く違うのが特徴だ。
例えばエルフとハイエルフのように、種族によって身分が違ったり体質が違ったりとは意味が違う。
希少種の場合は、「自身の弱点」であるものを、最初から克服できてる状態で生まれしまうのが最大の特徴だ。
魔族の場合は「光に強い」。
アンデットの場合は「神聖に強い」など、弱点が初めから効かないのが、人類にとっては驚異であって、全ての亜人の希少種は災害として認定されている。
そんな中でも一番脅威としてされているのが、吸血鬼の希少種だ。
吸血鬼の希少種の特徴は――――陽の光に強い。
太陽の光は、吸血鬼にとっては最大の天敵。
だけど希少種は、陽が出ていようが出ていないようが関係ない。
それが理解出来る者にとっては、恐怖でしかなかった。
希少種は俺も初めて会ったけど、確かに災害として扱われてもおかしくはないな。
「陽の下を普通に歩ける吸血鬼……。もうそれチートじゃねぇか?」
「そうでもないわ。他の弱点には滅法弱いわよ。例えば銀の剣や十字架……あ、十字架は最近克服したんだったな。」
「――――ん? 克服?……十字架を?」
「えぇ、暇つぶしに神の信仰である十字架を耐えれるか試していたら、いつしか全く効かなくなっちゃたんだよね。」
うわぁぁ……チートだチート。
十字架までも克服するとか化け物かよ!
吸血鬼から普通の人になっていってないか!?
お前、吸血鬼をやめようとしてないか!?
「エミリア、アンタいい加減に自分の弱点をなくしていこうとする癖やめてくれない? なくなっていく度に怖いんだけど。」
「あら、別に減らないものだしいいじゃない。」
「私の寿命が減るからだよ! 完全な不老不死になろうとしないでよ! 心臓に悪いんだから!?」
「だって暇なんだもん。許して♡」
「許せるかァ――――!!」
うん、許さんでいいぞ。
俺も寿命が縮みそうで怖いし。
完全な不老不死になった場合は女神に頼もう。
俺たちじゃ対処できないからな。
「ていうか、何でそんな奴が奴隷商人に捕まったんだよ……。」
「それなんですけど、実はその当時日向ぼっこしていて寝ていたらしく、気付いた時には捕まっていたらしいです。」
「吸血鬼なのにあるまじき失態だな。」
俺の独り言に反応したリベルが隣にやって来て、当時のエミリアの事を説明してきたのにツッコんだ。
けど行動が吸血鬼のやるやつじゃねぇな。
日向ぼっこって……他の吸血鬼からしたらタブーでしかないやつやん。
「じゃあ真莉亜の従者になったのって、助けてくれたからか?」
「いえ、ただ単にお腹が空いてて、倒した盗賊と商人の血を吸って満腹にさせてくれたからです。」
「ロクでもねぇ出会い方だな……。」
感動の「か」すらねぇのかよ。
出会い方あんまり嬉しくねぇな。
「そういえば、リベルの方は何で捕まったんだ?」
「私の場合は負傷していたからです。襲いかかってきた人間3万人と戦った後でしたから。」
「こっちもこっちで似たり寄ったりだな。」
リベルの方に至っては血生臭い争いの後だったのかよ!
しかも言い方が近所の犬と遊んでたような感覚で言ってるし!
その辺りは魔族と同じだな!
「しかし吸血鬼か。確か魔法は魔力を血液に変換して攻撃してるんだったよな?」
「そうなりますけど、エミリアの場合は何故か聖魔法が使えるんですよ。」
「……それは、あれか? さっき言ってた十字架を克服した副作用で使えるようになったのか?」
「いえ、正確には同族に嫌われたので、仕返し代わりに覚えてしまったら使えるようになったそうです。」
噓でしょ?
それで使えるようなものなのか?
俺の知ってる聖魔法の覚え方と全然違いますけど。
いやその前に、吸血鬼が聖女の力を覚えるなよ。
「―――――エミリアって、ホントに吸血鬼なのか?」
「正直、自分も疑問に思うようになってしまう時が何回かあります。」
エミリアって、何になるつもりだ?
神か、神になりたいのか?
敵になったら災害だけど、味方になったら最強の助っ人になりそうだな。
もし俺たちがやられた場合は、大トリを務めてもらったほうがいいかもしれんな。
「なぁそこの竜人姉妹。えっと…セレナとシャルルだっけか?」
「ん? な~に?」
「ちょっとセレナ、失礼な言い方しないの。」
「あぁいいよ、気にすんな。それよりお前たちって、出身はバストリア鉱山の方になるのか?」
「そうだよ~。もしかして知ってるの?」
「そこは王都と友好的な関係だからな。俺も一度行ったことがあるぜ。」
バストリア鉱山――――
王都からだったら西にある最大級の鉱山で、そこでは竜人族が住処としていている。
王都とは太いパイプラインに繋がれている関係で、王都は鉱山から「鉱石類」や「鉄」などをを輸入し、鉱山は「食料」を輸入しており、お互いにメリットを持った形で取引をしている。
俺も一度だけ訪れたことがあって、そこで魔物の襲撃から助けたことで友好的になっていて、お礼としていくつか鉄や鉱石を貰ったりしている。
「でもよかった。龍の巣の出身だったら気まずい状態になってたからな。」
「どうしてなんですか?」
「実は龍の巣の山頂にいた魔龍の討伐の前に、俺の仲間が暴れまくて一部を崩落させちまったからな。そこの元住民だったらどうしようかなって思ってたんだよ。」
魔龍の討伐。
俺やかつての仲間にとっては生死の境におるような戦いをして、長い時間を掛けて倒せたから思い出として今でも頭の中に残っている。
でもそれと同時に、あまり思い出したくない思い出でもある。
何故なら俺の仲間であったベレナスが最初の方で何も考えずに飛竜を斬りまくってたせいで足場が壊れて、一部が崩落して迷惑をかけてしまっているからだ。
今でもいい思い出じゃない、色んな意味で。
「あ~確かに、あっちにも同じ竜人が住んでたけど、あっちとはあんまり関わりは持ってなかったよね?」
「そうだね。私たちとは交流しようにも距離が離れてるし、親戚どころか赤の他人だったわね。」
「同族でも交流とかはなかったんだな。それを聞けて安心したよ。」
とりあえず俺の不安材料がなくなってホッとした。
二人は魔界の近くで奴隷商人に捕まってたんだし、距離は龍の巣の方が近いから少し怖かったんだよな。
迷惑をかけたのが仲間である分、責任は俺にあるんだからな。
「それにしても、あなたが私たちが思っていた勇者と違って少しだけホッとしています。普通の冒険者だったら、鉱山に来たらすぐに金銭目的で襲ってきたりしますから、もしかしたら勇者もそんな感じなんだろうかと思ってしまっていたので安心しました。」
「そんなんだよ! いきなり来たかと思ったら鉄や金目の物を出せとか言ってきて、盗賊みたいなことをしていた奴なんていたんだよ!」
「俺はそんな目的で金銭を求めたりしないよ。それにそんなことをしたら仲間や王様がなんて言われるか分かんないからな。」
てかそこでそんな事してた冒険者がいたのかよ。
そいつら、王都と友好的な関係だって事を知らないでやったのか?
いやもしかしたら、別の国の冒険者がやった可能性もあるな。
王都の冒険者だったら、そんな命知らずな事はしないだろうしな。
「そういえば勇者って、実際マリア様のどこに惚れ込んだの?」
「惚れ込んだのかぁ。う―――ん……笑顔…かな。」
「笑顔?」
セレナの質問答えると、みんな俺の答えが気になったのか、おしゃべりをやめて俺の方に視線を向けてきた。
気になるんだな、俺と真莉亜の馴れ初めを。
まぁ別に隠す理由はないし、全部さらけ出した方が気持ちいいか。
「いやさ、理由はさっき言ってたのもそうなんだけどさ、俺って昔から妹の笑顔を見ているだけで幸せだったんだよ。でも真莉亜の場合は妹のそれとは違ったんだよ。なんていうか……純粋に喜んでいるその笑顔がすんごい可愛かったんだよ。それを見ていたら何故か、ずっとその笑顔が見たいって思ってしまってな。それで初めて、俺も真莉亜が好きなんだなって思っちまったんだよ。」
言っちゃった。
全部言っちゃった。
これで引かれたりしないかな。
今になって少し不安になっちゃった。
俺が全部言い切ると、みんなは納得したかのように笑い出して、俺と真莉亜を交互にニヤニヤしながら温かい目をしていた。
そして当の本人である真莉亜は、口をパクパクしながら顔全体が真っ赤になってた。
あっ、どうしよう。
今になってすんごい恥ずかしくなってきた。
やってしまった感がハンパないわ。
ヤバい、俺の顔が触らなくても分かるくらい熱くなってきたわ。
「も、もしかして零君……私の笑った顔に惚れ込んじゃったの?」
「まぁうん、そう…なるな……うん。」
いやまぁ、本音で言ったので真実です。
でも正直に全部言わなくても良かったな。
俺って学生では成績が良くても、恋愛では後先考えずにやってしまうな。
ベレナスの猪突猛進が伝染ったのかもな。
「う……うおぉぉぉぉぉ……嬉しいはずなのに、嬉しいはずなのに…――――――理由のせいですごく恥ずかしくなってきた…!」
顔を手で隠して足をバタバタしながら恥ずかしがっている姿もすごく可愛い。
ホント、俺も生まれて初めて好きな人ができたけど、こんなに可愛い彼女ができてなんかすごく嬉しいな。
「あ――――! また可愛いって言った!! これ以上私の事を可愛いって言わないで! ホントに恥ずかしいんだから!」
「あっ、口に出してしまってたのか。……まぁ、俺の本音として受け取ってください。」
「受け取れないよ! これ以上もらったらキュン死しそうだから! もう零君に対する好感度メーターはMAXを超えてるんだよ!」
どうやら本当に限界が来たみたいで、“収納庫”からクッションを取り出して顔を隠すと、そのまま倒れ込んで体をビクビクさせながら唸り声を上げ始めた。
それを見てさらにみんなは真莉亜に対して温かい目をしていた。
俺はそれをただ見る事しかできなかった。
うん、やっぱかわいい。
彼女になってくれてよかった。
心からそう思った。
「そっか、勇者もマリア様も、両想いになって好きになったんだね! よかった、よかった!」
俺は口から漏れ出さないように気を付けながら思っていると、セレナは今のやり取りが本物だとわかったみたいで、一安心したかのように笑って頷いていた。
よかった、どうやら反対意見はなかったみたいだな。
まぁ最初から認めているような感じだったし、問題にはならなかったか。
「――――それじゃあ、二人の心境が知れたことだし、みんなの代弁で私が思いっきり叫んであげようか。」
え? 叫ぶ?
何を叫ぶの?
俺がセレナの言った事に疑問に思っていると、セレナは大きく息を吸い始め、自分の体に入り切れるくらいの空気を吸うと、それを一気に吐き出すかのように叫んだ。
「甘ァ――――――――――いッッ!!!」
セレナの叫びは夢の世界全体に響き渡り、それがみんなの合図となったみたいで、半数がリラとリベルに頼んでブラックコーヒーを一気飲みしだして、もう半数あ口から砂糖を吐き出していた。
――――なんか……ごめん。
「実は私の従者もだ。」
「なん…だと…?」




