21話 従者たちの自己紹介
わぁぁぁあああああああ!!
俺たちが固いハグをしたとの同時に、その場が拍手喝采に包まれた。
リラたちもそうだったが、リベルたちも俺の望んでた答えを出した事に喜んでいた。
「マリア様、おめでとうございます!」
「よかった…これで俺たちも報われる…。」
「これでようやくマリア様の事を安心して見守ることができるね!」
「えぇ、そうね。」
オクタグラムのみんなは自分の事のように喜んでいる者もいたし、安心して泣いている者もいたりと俺たちの事を大いに喜んでいた。
そして俺の従者たちも―――――
「うぅ…レイ様が幸せになるなら…私は…」
「ほらほらリラちゃん泣かないの。」
「でも確かに、主も勇者についてはあんまりいい目では見ていなかったもんな。」
「そうですね…マスターはあまり自分の待遇を気に入っていなかったもんね。」
「まぁそんな事よりも、マスターが幸せになるのは大歓迎です〜」
「ふふっ、そうね。」
こっちも同じ感じだな。
リラは俺の事を心配してたみたいだし、悪いことしたな。
今度好きな料理でも作ってやるか。
「ごめんね零君、急に抱きついちゃって。」
「いいよ、気にすんな。これからはお互いに分かちあっていこう、ゆっくりとな。」
「うん、ありがとう。」
真莉亜から笑みがこぼれて、俺はようやく安心することができた。
しっかし、勇者と魔王のカップルか……。
冷静に考えたら、ある意味最強カップルだな……俺たち。
人類の光である勇者と、闇の破壊者である魔王がカップルになるなんて、歴史だったら天地がひっくり返ってもありえねぇだろうな。
ま、そんなのは俺たちには関係ないか。
なんせお互いの気持ちは、お互いにしか知れないんだからな。
「さて…真莉亜、悪いけど離れてくれんか。みんなの紹介を改めてしたいからさ。」
「あ、そうだったね。それじゃあ、どっちから先で行く?」
「なら今度は俺からしようか。」
俺がパンッと手を叩くと、さっきまで騒がしかった空気が一気に静かになって、俺の後ろにリラからきれいに一列になった。
それを見ていた真莉亜は「おおぉ…」っと言って驚き、リベルたちも真莉亜と同様に、リラたちの整列に驚いていた。
これ俺が教育したと思うやろ?
違うんや、何故かこうなってしまったんだ。
初めて見た時は何があったって思ってしまって、リラに訳を聞いたら―――――
「勇者の従者ならば、どんな時でも凛々しくおるべきなんです。」
――――って言って、リラが今の形にさせてしまっていたのだ。
だから念の為に手を叩いたら、案の定癖になってしまっていた。
ちなみにみんなは満更でもなかったみたいで、何気にノリノリだったりする。
「お前ら、もう勇者じゃないからやめてくれんか?」
「あっ……すみません。つい癖でやってしまいました。」
もうこれは板に付いちゃってるな。
癖を直させるようにしとかないとな。
リラたちは整列を崩してさっきまでいた場所に戻ると、リラから順に自分の自己紹介を始めていった。
「改めまして、私は妖精族のリラで、レイ様のメイドをしております。」
「兎人族のシーナと言います。」
「鳥人族のタジナ……鷹の獣人です。」
「同じく鳥人族のヨムル。フクロウの獣人です。」
「某は狼人族のシグレ。暗殺が得意とする忍者です。」
「サ…サキュバスのロザリアです。…よ…よろしくお願いします。」
「拙者は海人族のヒスイという。よろしく頼む。」
「風の精霊のエメリルと申します~」
「月人のサヨリだ。人間ではないので勘違いはしないでください。」
「そして最後である私は、神の遣いである天使族のアストレアですのでよろぴく☆」
おいアストレア、お前絶対ワザとやってるだろ。
何だよよろぴく☆って…。
紹介の時くらいは普通にせんか。
「まぁ最後にバカがやらかしたけど、これがうちの従者たちだ。」
俺たちの従者の紹介を終えて、最初に口を動かしたのは以外にもリベルの方だった。
「驚きました。まさか月人が実在していたとは……。」
「あぁそうか。忘れてたけど、確か月人って、本来は月に住んでるんだったな。」
―――――月人。
見た目は人間とそのまんまの姿をした存在で、人と同じように食事をとり、睡眠をとる。
ただ月人は地上には住んでおらず、異世界にある月の裏側に存在するとされている「月の都」に住んでいるのだ。
「あの……一つお聞きしたいのですけど、あなたはどうして地上におられるのですか?」
おいリベル! それサヨリの地雷だぞ!?
月人知ってる奴なら分かってんじゃなかったのか!?
だ、大丈夫だよな…?
突然言われて発狂したりしないよな……?
恐る恐るサヨリの顔を見てみると、そこには怒りといった感情はなく、視線は下の方に行って、悲しそうな顔をしていた。
「……サヨリ…。」
「大丈夫だ、少し姉上のことを思い出してしまっただけだ。」
よかった、どうやらそれだけで住んだみたいだ。
ここで発狂するのは洒落にならんし、下手すれば死人が出てもおかしくはないからな。
「リベルだったな。私が月に居ないのは、同族によって裏切られたからなんだ。」
「裏切られた……どうしてですか?」
リベルの問いに答えるかのように、サヨリは少しずつ自分の過去を話して言った。
「元々私の他にもう一人……姉がいたんだ。私と姉上は、同族にとっては強すぎるから故に嫌われていて、ありもしない罪を問われてしまい、しまいには月から追放されてしまったのだ。」
「そ…そんな……そんな事が……。」
リベルや他のみんなはサヨリの過去を聞いて言葉を失っていた。
俺は前に聞いてたからこそ言わなかったが、最初に会ったサヨリの姿は、今でもよく覚えている。
ある国で夜を過ごしていた時、アストレアが何かに反応して俺に伝えて、二人でそこに向かうと、まだ従者じゃない時のサヨリが一人でそこに立っていた。
何もない草原で一人、夜空に向かって叫んでいた。
俺はそれを見て何かが分かった。
――――――怒りの慟哭。
大切な人を失って、怒りが満ちていた顔だった。
姉が人によって殺されたのを知ったのは、仇討ちをする直前に、彼女自身から俺に教えてくれた。
今でも姉の形見だったお守りを、ずっと首に掛けて一緒にいるように見せているのが当たり前になっている。
かつては戦闘の時に発狂なんてしなかったけど、姉を失ってからは時々起きるようになってしまい、いつも俺たちに迷惑をかけているのが欠点だけどな。
「申し訳ありません、不快な思いをさせるような質問をしてしまって。」
「構わない。私も何時までも憎しみに溺れる訳にはいかないんだ。少しずつでも前に進めるように、日々精進していかないとな。」
「なら少しでも精進するように、その発狂を二度と起こさないよう、ヒスイあたりに頼んで精神をみっちり鍛えとけ。」
「………………はい。」
俺の発言にリラたちが満場一致で頷いて、本人も自覚してたみたいで、かなり小さな声で猛省していた。
ホンットにいい迷惑だよ。
反省してるからいいんだよ。
してなかったら思いっきりチョップをお見舞いしてやるだけだから。
「私は月人については知らなかったけど、そんなに珍しいんだ。」
「別に知らなくてもおかしくはないぜ。何せ月人ってのは、存在しているかなんて定かじゃなかったからな。何処の国にも、月人を知ってる奴なんてほとんど知らないからな。」
「しかも月人となれば、実力は本物だと思われますよ。恐らく最上位種である王を凌げる力はあるかと。」
「マジか……!」
リベルの言葉に真莉亜が衝撃を受けてたけど、そういえばサヨリの勝率って、従者になってからは未だに無敗だったし、負けるような場面は見ていない。
やっぱりアイツが言ってたのは本当だったんだな。
でも欠点があるから、俺はあまり強いとは感じれないからなぁ。
最強じゃなくて最狂だもんな。
「っていうか、月人よりも天使がいる方が私にとっては衝撃なんだけど!」
「あぁ…確かに、真莉亜や俺にとってはそっちの方が衝撃だよな。」
「いや〜それほどでも〜」
「褒めてねぇよ。」
月人は知られてない種族だからまだいいけど、天使は誰もが知ってる存在なのは当然だ。
天使は本来、神が住んでいる神界にいるのが当たり前であって、地上に降りるのは滅多にない。
では何故天使であるアストレアが俺の従者になって地上にいるのか?
答えはただ単純……
――――気まぐれだ。
本人が勇者だった俺に興味が湧いて一勝負をしようと言ってきて、わずか一分だけの勝負をした後、俺の従者になりたいと言って、今に至っているのだ。
ちなみに当時のティファニスさんは、あまり見せないような顔で頭を抱えてしたのは懐かしい思い出だ。
でも戦闘では役に立つし、従者の中でも最強だからあまり憎めない自分がいます。
「マリア、そこのアストレアもそうだが、そこにいるエメリルも只者ではないぞ。」
一人の少女が真莉亜に言うと、全員の視線がエメリルに注がれた。
エメリルは自分には来ないだろうと考えていたのか、突然みんなからの視線にあらあらと言って困った顔になっていた。
「あの~私はサヨリさんやアストレアさんのように凄くはないですよ~」
「それはないわね。私は強い人物を見抜くのが得意でね、何気なく空気に溶け込んでるようだけど、魔力は隠しきれてないようね。漏れだしてる魔力の質が上品すぎるわ。」
この場で分かっていない者がほとんどだが、エミリアの言ってるのは正解だ。
エメリルの魔力はアストレアの次に多く、魔法も精霊や妖精、エルフなどが使える自然魔法を主力としている。
普段は温厚だけど、自然や野菜をバカにする奴には容赦がない性格で、かつて一度だけ野菜をバカにしていた魔術師が、エメリルの魔法でボコボコにされて以降から、肉専門だったのにベジタリアンになってしまった事例があるくらいだ。
「マスタ~…どうやら私の魔力がバレてしまったみたいです~」
「別に隠さなくてもいいじゃねぇかよ。お前の実力は、全員知ってるんだからよ。」
「でも最上位精霊であるだけで、初対面の人に距離を置かれるのは嫌なんです~」
「そこまで気にしなくてもいいだろうに。」
最上位精霊は精霊にとっては女王様。
精霊ならまだしも、他の種族からも距離を置かれたりする事もある。
エメリルはそれが嫌で、バレない程度に魔力を抑えているのだ。
「最上位精霊……属性は何ですか?」
「風だよ。戦闘はほとんど自然魔法だけどね。」
「何でそんなすごいのが零君の従者にいるの?」
「経緯は確かぁ……自然好きだったのと、エメリルの作った野菜を使ったサンドイッチにして、それを食べて喜んだのが理由で従者になったんだったかな?」
エメリルと出会ったのは偶然で、ハンドレッドの住んでる森の近くをゆっくり散歩していた時に会って、そこから自然の話をして、いつの間にか従者になりたいって話になったんだっけな。
いやぁ〜あの時のみんなのリアクションは面白かったな。
「あの時作ってもらったサンドイッチ、美味しかったですね〜。今度また作ってください〜」
「まぁ、機会があればな。」
俺もエメリルの野菜は新鮮さが抜群だから使いやすいし、今度はみんなの分も作ってやるか。
「それで従者になってのはありなのね。」
「本気で従者になりたいんだったら、何でもありなんだろう。実際俺んとこの半分は、助けて従者になったって訳じゃねぇからな。」
「そうなんだね。聞いてもいい?」
「やめとけ。途中から訳わかんなくなるし、俺も説明が面倒だから、時間が空いた時に本人たちから聞いてくれ。」
今から全員の出会いを話すとなると頭痛くなるしな。
思い出すだけでも、何でそうなったってなるし。
こればかりは放棄するのが正解だな。




