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15話 夢の中へ

「零君、おまたせ。」


「おう、ゆっくり浸かってきたみたいだな。」


俺が二階に上がって20分経ち、二人が風呂から上がってきて、それからパジャマに着替えて二階の俺の部屋にやって来た。

ちなみにパジャマは母さんのがぴったりだったみたいで、それを貸してあげてるみたいだった。


「華怜、少しは楽になったか?」


「…うん。ごめんねお兄ちゃん、迷惑かけちゃって。」


「気にすんな。お前のその涙の理由は知ってるんだから、辛い時は何時でも俺に言いな。」


「……うん、ありがとう。」


俺が華怜の頭を優しく撫でてやると、ようやく華怜が笑ってくれて、俺も一安心する事が出来た。


やっぱり華怜には笑った顔が似合うな。

シスコンじゃないが、家族愛はあるんだ。

心配もするし、支える事だってしてやる。

家族を大事にするのは、誰だって常識だからな。


「そうだ真莉亜、この後だけど少し話がしたいから、華怜が寝たら俺の部屋に来てくれるか?」


「うん、いいよ。」


「それじゃ、俺は風呂に入ってくるよ。」


それだけを言って一階に下りて、風呂は長めに入った。

上がった後もすぐには二階に行かずにソファーに座って、冷蔵庫で冷やしておいたソーダを出して飲んだ。


今日は色々とあったから、疲れが何時もよりも多かった。

魔王の訪問に加えてのデート。

昨日に至っては、魔法が使える事でパニくる。


「でもこの疲れは、いつもの疲れとは違って嫌じゃないな。」


「それは良かったじゃない。どんなデートしたの?」


天井を向いてぐったりした感じでのんびりしていると、母さんが微笑ましそうにしながらやってきた。


というより、まだ一階にいたんだな。

気配がなかったから分かんなかった。


「デートといっても、そんなに拘ってないよ。むしろ普通に買い物をしたり、楽しく遊んだりしてたよ。」


「そうみたいね。あっ、部屋に置いてた物、ありがとう。大事に使わせてもらうよ。」


「どういたしまして。この後も続けるの?」


「うん、もうすぐで終わりだし、このまま一気に終わらせたいからね。」


「分かった。でも無茶はしないでね。」


「分かってるわ。それじゃあ、母さんは二階に行くね。」


「うん、おやすみ。」


「おやすみ。」


母さんはそのまま二階に行って、俺も少しだけソファーでくつろいで、前に買ってた菓子やジュース、後俺の日課で飲んでるコーヒーとカップとかを収納庫(アイテムボックス)に入れ込んでから二階に上がった。

部屋に入ると、すでに来ていた真莉亜が俺の部屋にあったマンガ本を読んで待ってくれていた。


「あっ零君、ごめんね、勝手にマンガを読んじゃって。」


「いや、別にいいよ。華怜はもう寝たのか?」


「うん、泣いて疲れたのかもね、すぐ寝ちゃったわ。」


「そっか。マンガは部屋に持っていきたい時に事前に言ってくれ。」


「分かったわ。」


俺は真莉亜に“夢の世界(シープ・ワールド)”の事を話して、話はそこでしようと言った。

真莉亜からここで話さないとと言われたけど、母さんが起きているのと、中の確認を一緒でした方がいいだろうと言ったら納得してもらって、早速俺は真莉亜を連れてあの場所に向かった。


「―――――――ナニコレ。」


見て最初の一言がこれだったけど、俺もそのリアクションに同情した。

流石にできすぎてるからこそ、この世界は異常に感じ取れた。


「やっぱ…そう思うよな?」


「えっ待って……この世界が…零君の力なの?」


「正確には、女神から貰った力だけどな。ちなみに予想だけど、歴代勇者の中で最大の力かもな。」


「噓でしょ。」


最早信じられないって感じの表情をしていて、それからは何も考えないようにしていた。


まぁそうなっても仕方ねぇよな。

俺も似たような感じだったし。


「さて、こんな状況で言うのも何だけど、中はまだ確認してないから一緒に見てくれないか?」


「う、うん。流石に中は普通であってほしいよね?」


「そうだな。ホントに普通であってほしい。」


お互いに普通であってほしいと言った願いを込めて、家のドアを開けた。

中は思ってたよりも広く、全体が木で出来ていた。


「中は特に何の変哲のない空間だな。」


「そうだね。ただ強いていうなら、かなり広いくらいかな?」


人数だと5,6人は住める広さだし、外観から見ていて広いのは大体わかってはいた。

大きめなソファーやテーブル、一枚板で出来たロングテーブル。

食器棚には皿やコップがキレイに整頓されてあった。


「見た感じ、普通の部屋だね。」


「そうだな、普通の部屋だな………一部を除いて(・・・・・・)。」


俺がそう言ってみた方向には、木造建築には似合わない水色のクリスタルが部屋の端に置いてあった。


いや見た目はキレイだし、オブジェとして置いとく分に至っては問題ねぇんだよ。

でもね……そのクリスタルから異様なくらいに魔力を感じ取れるから不気味なんだよ。


「これ……一体なんだ?」


「ただのクリスタル…じゃないよね。」


「あぁ、ここまで魔力を感じられるのに、普通のクリスタルなんて思いたくねぇよ。」


どうするべきか考えたけど、今は保留にして、家全体を見てからまた考えることにした。


次に向かったのは台所。

ここで暮らす部分として重要なのは、LDKの存在だ。

どれかが欠陥だったらダメなのと同じだからな。


「冷蔵庫も完備、シンクも充分に広い。コンロは……ガスかこれ?」


「元栓はないから、ガスじゃないね。でも火はちゃんと点くわ。」


「となると、魔道具かもな。」


「あぁ、なるほどね。」


魔道具は異世界では頻繁に使用されてる道具で、冒険者の全員が持ってる物だ。

道具にはいろんな種類があって、特に使われているのは、家電製品に似た魔道具だ。


「コンロが魔道具で出来てるなら、冷蔵庫もそれっぽく似せた魔道具なのかもな。」


「多分そうなるのかな。」


「まぁそれはどうでもいいや。キッチンはちゃんとしてたし、次は風呂や他の部屋だな。」


そう言って向かった先は、風呂場だ。

中身は普通の風呂場となっていて、まだシャンプーやボディソープがなかったから、その辺りはこっそり買って使えるようにしよう。

窓の景色は自然を十分に満喫できるようになっていて、風呂場についても申し分なかった。


「ここでお風呂に入りに来るのも悪くないわね。」


「そうだな。気分を落ち着かせたいときには役立ちそうだな。」


俺たちは風呂場を後にして、そのあとはトイレ、物置部屋などを探索して、どれも日本での暮らしとまんまの形をしていた。


「一階は一通り見たな。次は二階か。」


「結構広いから、二階もかなり広いかもね。」


リビングの横にあった階段を上がって行って、二階に到着した俺たちは、各部屋を見ていった。

二階にあった部屋は全部で5つ。

ほとんどが寝室となっていて、書斎に近い感じで造られてあった。


「二階の造りは全部似たような感じだったな。」


「そうだね。これで全部なのかな?」


「あぁ、これで全部だ。どうやら俺の願ってた形で安心したよ。」


普通の部屋だったのは安心したけど、一部分に至っては正直驚きがあった。

まず一つは、この世界でなぜか携帯の電波が受信できることだ。

さっき向こうの時間を確認したときに、俺の持ってるスマホが電波をキャッチしているのに驚き、普通に扱うことができた。


そして二つ目は、各部屋にコンセントがちゃんと完備されていたことだ。

コンセントは異世界には存在しない。

もちろんこれは地球でしかない存在だ。

なのにコンセントがあって、しかもちゃんと使えた。


ちゃんとした部屋になってた。

いや……なりすぎてた。

もう普通にこっちで住めてもおかしくないほどにちゃんとしてあった。

はっきり言いたい。

誰もここまできっちりしろとは言ってねぇよ。


「この家、別荘としても使えそうだよな。」


「二人で住むには少し大きいかな。」


「そうだな。できれば母さんたちには時間を空けてから全部話して、ここを使わせるようにさせたいな。」


あの女神が何の理由でこの世界を渡してきたのかは分かんないけど、俺にとってはかなりありがたいものだ。

これで少しは母さんに親孝行はできるし、体を休ませることはできるだろう。

でもさすがにこの世界の時間経過に至っては修正してもらいたいな。


「ふぅぅ……ひとまずこの家は全部見たけど、特に異常なのはなかったのは助かった。」


「そうだね。ひとつ言うなら、そこにあるクリスタルくらいね。」


「だな。とりあえずテーブルにマニュアルって書いてある冊子と一通の手紙があるし、これで何かわかるかもな。」


実は最初にこのリビングに入ったときに、テーブルと手紙があったのは知っていた。

だからあえてクリスタルを後回しにして、最後にとっておいたのだ。


「そういえば、ちょうど飲み物と菓子を持ってきていたから、それを出してまずはお互いのステータスなどの状況を照らし合わせていくか。」


「うーん……もう歯は磨いたけど、夜の菓子は悪魔の味。少しわがままになってもいっか。」


なんだよ、夜の菓子は悪魔の味って。

まぁ夜食にカップ麺といった背徳的な行動と同じだし、悪魔っていうのはあながち間違いじゃないか。


真莉亜にはオレンジジュースで、俺はあったかい緑茶でいいか。

菓子はクッキーと煎餅にしよう。


「そんじゃあ、まずは俺からだな。」


湯呑に入れたお茶を一口飲んでから、俺は自分のステータスを拝見した。

タイトルを考えていたら井上陽水の夢の中へが頭の中から出てきたのでそのままタイトル名にしてしまった。

悪意はないです、決して。

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