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139話 夜の森に潜む脅威

新章スター―――ート!

「はぁ……はぁ……はぁ……!」


暗い暗い森の中、一人の少女は襲ってきている何かに怯えながら逃げていた。

何処に向かうわけでもなく、何処に隠れるわけでもなく、ただ必死に森の中を走り続けていた。


「何で……何でこうなったの…!?」


彼女は突然この森に連れてこられ、いきなり訳も分からずに「楽しいゲームを始めよう♪」と少女のような声がするアナウンスがどこからか聞こえてきた瞬間、始まったのは「死の鬼ごっこ」だった。

もちろん彼女以外にも連れてこられた人は何人もいたが、そのほとんどはすでに殺されたか鬼に捕まったかのどちらかで、今いる森に残っているのは彼女以外誰もいなかった。


「嫌だ…嫌だ……死にたくない……死にたくない…!」


泣きながらも必死に逃げていたが、鬼ごっこの鬼はそれを許さずに彼女の命を刈り取ろうと迫ってきていた。

だが突然鬼は少女を追うのをやめ、彼女もそれに気づいたのか、少しだけ走るのを緩めて呼吸を整えるためにその場に止まった。


「はぁ……はぁ……た、助かったの?」


鬼が追ってこないのが分かり、月明かりだけが頼りの森で静寂が続いたのが分かると、彼女はやっと安心したのか、こらえていた涙が一気にあふれ出てきて、その場に蹲った。


「もう嫌だ……誰か助けて…お願い…」


このゲームが始まって何日たったのか。

一向に朝が来ないこの森でどれだけ隠れては逃げてを繰り返してきたのか。

今の彼女には、それを数える事すらできないくらい恐怖で押しつぶされようとしていた。


「神様…お願い。もう誰かを馬鹿にしないし、魔法が使えない子をイジメたりしないから……お願い…おうちに帰らせて…」


少女はパラディエスの王都スカイティアにある魔法学園の生徒で、自分の魔法が他の子より使えることから、それを利用して魔法が使えない子をイジメたりしていて、自分が最強だと鼻にかけている子だった。

そんな毎日を迎えている時に、宛先のない一通の手紙が自分に渡され、中身を空けた瞬間この場所に突然連れてこられ、休みのない恐怖の鬼ごっこを続けているのだ。

もちろん魔法で鬼に攻撃をしようとしたが、自慢の魔法はその鬼には傷一つ付けることすらできずに、最強と言ってた自分の魔法が全然効いてないのに恐怖を覚え、今はただ逃げて隠れるしか方法がなかった。


「誰か……お願い…」


……ガサガサ…


「ひっ…!」


彼女の嘆きに対し、鬼は決して許さなかった。

気配と音を消して近づいてきてるとは思わず、再び少女は逃げようと走り出した。

だけどそれが完全に悪手だった。


「はぁ…はぁ…はぁ……嫌だ…もうやめ―――きゃ!」


我武者羅に逃げていた彼女だったが、足に何かが引っかかって転んでしまった。


「な、何…何なのこれ…?」


彼女の足に引っかかっていたのは、糸だった。

細く硬い糸が足に絡まるように引っかかっていて、解こうにもうまく解けなくなっていた。


「お願い……解けて、切れて!」


何とか解こうとしたり切ったりしようとしてるけど、糸は中々解けようとはせず、しかも鉄のように硬いせいか切れようともせず、鬼が近づいてくる度に焦りがどんどん勝っていってた。


「切れて切れて切れて……ひっ!」


必死に糸を切ろうとしていたが、それを全部無駄にさせるかのように、鬼がニタリと笑いながら少女を見つめていた。


この時、彼女はようやく理解した。

自分は罠にかかったんだと。

鬼である目の前の化け物が、何故途中で追ってこなかくなったのか?

それは自分が罠のあるこの場所まで追い込まれていたからだ。

そしてここに来た時点で、すでに詰んでいたと。


「いやだ……こないで……」


もはや自分のプライドとか関係なしに命乞いをしているが、鬼ごっこは捕まったら終わりである以上、鬼である化け物は決して逃がさなかった。


「キシ……キシキシキシキシキシキシ」


もう逃げれなくなって泣いている少女に対して、化け物は悪魔のような笑みを浮かべて笑い、それが決定打となったのか、少女は絶望した顔になって、股から黄色い液が漏れ出していた。


「ぃゃ……ぃゃ…」


「キシシ……キシャァァァァァ!!」


「いやぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


少女の悲鳴は森中に響き渡ったが、それを聞き取ってくれる人はおらず、誰かに助けられることも無く化け物()に捕まってしまった。







ドゴ――――――――ンッ!


少女がいた別の空間にある森では、彼女の時とは逆で地響きが起きるほど騒がしくなっていた。


「ハハハー!! まだまだァ!!」


「キシャァァァァ!!」


その森でも「死の鬼ごっこ」が始まっていたのだが、ルールを全く知らないで始まってしまったせいで、何も考えずに襲ってくる敵をバサバサと斬りまくって暴れている一人の男がそこにいた。


「これで終いだッ!」


「キュィアアアアアアアアァァァ…!!」


化け物は呆気なく男に斬られ、一つの魔石を地面に転がして消滅した。

男は魔石を拾い上げて剣を仕舞うと、腰にぶら下げてた徳利を手に取って中の酒を飲み始めた。


「ゴクゴク……あぁ~やっぱ戦った後の酒は一味違って美味いなぁ~……つまみがあれば最高だけどな。」


森の木がちょうどない所で足を止めて、空に浮かぶ月を見ながらここに来るまでの事を思い出していた。


仕事がなく久しぶりに友人の一人と酒を飲んでいたところ、突然現れた何某が不気味な手紙を一通渡してくると、突然術が発動してここに連れてこられた。

来て早々始まったのが夜の中でのお遊戯。

だが何も知らないから適当に来た敵をぶった斬ってきたが、一向に終わる気配がない。

そして今に至る。


「何度も何度も襲ってくるけど、これ何時まで続くんだ?」


戦い続けてどれくらい経つかは覚えていなかったが、彼の懐の中にある魔石はすでに満杯だった。

あと何個か入れれば零れるかどうかの状態で剣を振っていたが、彼にとってはそんなのは雨粒とあんまり変わんなかった。


「まぁシャバで暴れるのは悪くねぇけど、流石に“組を持つ者”からしたら長居もできないんだよなぁ~」


そう言ってボヤきながら酒を飲んでると、徳利の中がちょうど空になったみたいで、溜息を吐いて腰にぶら下げた。


「酒も切れちまったし、一緒に飲んでたあいつもどっかにいるだろうし、色々と面倒だな。」


実はここに来る時に一緒に飲んでた友人もここに来てると思っていて、出口を探すついでにおるかどうか探してもいる最中であった。

だが探し続けても姿がないと思っていて、彼はすでに出口を優先して探している。

逆に言えば、探さなくても大丈夫だとわかっているからこそ、友人の安否は確実に理解できている証拠でもあった。


「しゃーね、酒もなくなっちまったし、出口見つけて酒でも買いに行くとするか。このモモタロウの辞書に、不可能の文字はないのだからな。」


男は気長な感じてその場を後にして、森の中を探索した。

道が無ければ道を作り、行く先は天に任せる。

それが彼のモットーでもあり、オーエド最強家臣の一人であるモモタロウという男の生き様でもあった。







また別の空間では、森とは違いお屋敷の中でゲームが行われていた。

屋敷の中は暗く、廊下や部屋には多くの幽霊やゾンビ、ミイラなどといったホラーゲームの定番と言えるものが廊下や部屋に多く徘徊していた。


「おりゃあ―――――ッ!」


「キィィィィ―――――!」


だがそんな恐怖と言えるものたちがいても、平然として幽霊などを持ってる杖で殴っていってる者が一人いた。

その少女は、この屋敷でゲームが始まってずっと襲ってくる悪霊や不死者(アンデッド)などをもう一人の少女と片っ端から聖魔法で攻撃していって、その場にいた最後の幽霊と現在退治中であった。


「あーもさっさと成仏してください!」


杖に魔力を込めては殴り続けて、ようやくその思いが伝わったかのように幽霊は霧散した。


「つ、疲れた…」


「お疲れアイリス。やはり聖魔法はこういった時に役に立つわね。」


後ろからずっと一緒にいたもう一人が少女に水を渡して、それを一気に飲んでのどを潤した。

二人はこの場所に連れてこられてからも、冷静な判断力で瞬時に理解し、襲い来る敵を倒しながらこの屋敷の謎をずっと探している状態であった。

何故そんな事が出来るのかは、何せ彼女たちは零が勇者時代に仲間であったアイリスとメリッサだったからだ。


「どうメリッサ、何か分かった?」


「分かった事と言えば、この人形が何かしらのヒントになっている事だけだね。」


メリッサが手に持っていたのは、額に「1」という数字が書かれた一体の人形だった。

今持ってる人形は、屋敷を探索している最中に拾ったもので、何かしらの手がかりになるのではと思ったメリッサが、拾ってずっと持ち続けていた。


「しかしこの屋敷もそうだけど、魔力で世界そのものを創りあげる幻想空間に、尚且つ私たちを含めた多くの人を転移させる術式付与のあの手紙。実に興味深い。」


「でた、メリッサの魔法バカ。こうなると面倒なのよねぇ…」


「魔法をナメないでよね。魔法とは無限にあるもの。基礎魔法だけじゃ見つけきれない多くの秘密がまだパラディエスに眠っているの。それを全て解明するのが、私の宿命なのよ。」


「あっそ。私はあまり追求しないけど、お願いだから巻き込むのはやめてよね。私そこまで懐広くないのだから。」


二人でやってるコント芸みたいな会話は、彼女たちの日常においては平常運転みたいなもので、これを知ってるのは仲間だった零とハンドレッド、べレナスの三人だけ。

それ以外からしたら変人の会話に付き合ってる人たちとしか思っていないのだ。


「それにしてもよかったじゃない。最近暇になってて体が鈍りそうになってたんでしょ?」


「…確かにそう言ったけど、さすがに限度ってものがあるでしょ。ここにきてから一週間は経ってると思うんだよね。外がずっと夜だから時間の感覚がわかんないわ。」


窓の外は一向に終わらない夜。

すでに何時間、何日経ったのかわかんない中、眠気や疲れが襲い掛かってきそうになりながらも、この屋敷をすっと探索していた。


「はぁ……早く帰りたい。」


「それは同じ意見ね。なら休憩終わってさっさと行きましょ。」


「そうだね。早くお風呂入りたい。」


二人は休憩を終えて、屋敷の探索を再開した。

体力の限界が近い彼女たちに、果たして終わりが来るのかどうか。

それを知るのは――――もう少し先。


「そういえば、この屋敷のお風呂に入ったらどうなの?」


「考えたけど悪霊たちがガン見してきたからやめたわ。見られるのは気持ち悪かったから。」

【???】

その人物によって別々のゲームがあり、鬼ごっこ、かくれんぼなどの子供の遊びをデスゲームみたいにした空間。

参加者は不明でゲームの種類も現在不明……

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