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回想1

昔の昔の遠い昔。

宇宙が始まって38億年。

誰も知らない宇宙のある場所で、七つの支配者が生まれた。


「……ぅ…。」


薄い膜のような殻から最初に生まれた少女は、ここが何処か分からず周りをキョロキョロした。

周りは草原のような静かな場所で、春風が吹いて明るいはずなのに、空は暗い宇宙空間だけが広がっていた。

そしてもう一つは、自分が入っている殻と同じものが5つ……割れていなかった事だけ。


「………ぅぅ………ふぇ…」


見た目は15,6歳でも、生まれたばかりなら赤ん坊と変わらない。

静かな場所だったのが不気味に見えてきたのか、だんだん怖くなって泣きそうになってたその時、誰かが近づいてくる足音が聞こえてきて、少女はそっちを向いた。


「やぁ、待ってたよ。」


少女に近づいてきたのは一人の少年だった。

ずっと待っていたのか、待ちくたびれた顔をしながら、少女の顔を黙って見つめていた。


「かなり間があったけど、予定通り(・・・・)だったな。」


「ぁ………ぅ……?」


少女はさっきまで涙目だったが、初対面であるはずの彼が来てから何故か安心したかのように涙は引っ込んで、むしろ彼が誰なのか興味津々な顔になっていた。

何より彼女が一番目にしていたのは、彼の瞳だった。

彼の瞳は、宇宙が瞳の中にあるような虹の瞳をしていて、その眼は誰もを魅了させる色をしていた。


しばらくお互いに何も言わずに見つめあっていたが、少年の方が何かに気付いたかのように視線を僅かに逸らした。


「流石に生まれたままの姿でおらせるのはマズイな。ほら、これでも着てくれ。」


今の彼女は何も着てない状態。

たとえ彼に欲がなくても、仮に服を何も着てない彼女をずっと直視するのは申し訳ないと感じてしまっていた。

少年は目を逸らしながらも、持ってた服を少女に渡し何とか着させようとした。


「………?」


だが彼女は産まれたばかりでどうすればいいか分からず、渡された服を見つめながら動かなくなってしまった。


「ああ、そうか。殻から出たばっかだから知性はまだ覚醒してないのか。しゃーね……今回は許してくれよ。」


目を逸らすのをやめた彼は少女の方を向いて、何も考えないようにして渡していた服を着せていった。

抵抗もすることがなかったから簡単に着せれる事ができ、何とか目のやり場に困らなくて済んだ彼は、ここでようやく自分の正体を彼女に明かした。


「紹介が遅れたけど、俺はゼロ。虚空邪神ゼロ。君のお兄ちゃんになる神さ。」


「お…にい……ちゃ…ん…?」


呂律が回らなかったせいか、まだ完全には言いきれていない様子だったけど、それだけでも満足したのか、ゼロはずっと無表情だった顔を緩めて笑った。

少女は突然ゼロが笑ったのに驚いていたが、残っていた殻から音が鳴り始めて、ゼロはそっちを向いた。


「どうやら他も始まったみたいだな。」


殻が破れていくところを見ながらポツリとゼロが呟くと、次々と殻を破っていって、後に旧支配者となる子供たちが中から出てきた。

一人、また一人と、卵から雛がかえるのと同じように出てきた。

産まれてきた子供たちは先に産まれた彼女と同じようにキョロキョロと周りを見て、ゼロが近づくと一気に彼の方を向いた。


「おはよう、そして初めまして。俺はゼロ。この宇宙の二番目の神であり、君たちのお兄ちゃんである最初の宇宙の支配者だよ。」


「「「「「………?」」」」」


最初に言われても分からないって感じで首を傾げたが、ゼロは懐から紐で巻物みたいにさせた紙を六つ取り出し、その場から動かずに紙を一人一つずつ前に置いた。


「その紙の中に十分必要な知識と名前、それとこれからみんなが持つ神格と邪神権限が入っている。それを手に取れば、俺と同じように宇宙の支配者の一角になれる。強制はしないよ。」


『―――――強制はしない。』


つまりここで降りてもいいし、無名のまま宇宙空間を彷徨ってもいい。

それは彼なりの慈悲なのか、それとも単純な選択肢なのか?


「「「「「「……。」」」」」」


生まれて間もない彼女たちにとっては、ゼロの言葉は学者が使う数式を子供に言ってるのと同じ。

今この段階でわかるのは………誰もいなかった。

だからこそ、誰も躊躇わずにその紙を手に持った。


「……やっぱりダメか(・・・・・・・)。」


何も考えずに紙を持った彼女たちに、ゼロは悲しい顔をして見届けた。

そして渡していた紙の巻物は持った時点で承諾するようにしていたため、全員が持った紙は承諾だと感じ光の粒子になると、彼女たちの体の中に入っていった。


―――――――――――ドクン


彼女たちの鼓動が一回だけ体内で鳴り響き、変化は突然起こった。

一人一人がさっきまでの何も考えてない顔から一変して、頭の中に情報が流れ込んで表情が険しくなった。

だがそれもほんの数秒だけ。

情報が頭に入り込むと、同時に魔力の霧がそれぞれの体を覆っていき、徐々にそれは服に変化していった。


「終焉邪神――――リズ。」

「紹介。幽幻邪神、次女のフェルサリア。」

「混沌邪神は三女のゼフィル。優雅に乱すわ。」

「海皇邪神……名前は……シルヴァ…?」

「太陽邪神ことソーマ。何なりと。」

「最後は天地邪神であるシンシア……以上。」


見た目は変わらなかったが、さっきまでの裸体を晒すことはなく、魔力の霧はそれぞれの個性があった服装へと変わった。


「…………。」


それを最後まで見届け人として眺めていたゼロは、一瞬だけ視線を下に落としたが、息を吐いて自分を冷静にさせ、ゆっくりと話を始めた。


「長男として、お前たちの選んだ選択肢を大いに喜ぼう。そして俺たちはこれより、宇宙の王である母に仕える七つの支配者として、この宇宙の秩序を守り、兄弟として末永くしていこう。」


一番最初に生れた長男だからこそ、礼儀をもってほかの兄弟たちを快く歓迎した。

まだ状況を把握していない兄弟たちに対して、不審に思わせない態度をとりながら話を進めていった。


「まずはこれからについてだな。何せ俺たちの中で最初に生まれた俺が、母であるグァーラから直接聞かされたのだからな。」


ゼロは自身の神格を使って別空間を六つ映し出すと、それぞれの場所を紹介した。


「リズはこの宇宙領域の管理だ。この辺りは「死」が最もあふれ出る場所になってるから、“終焉”の神格を理解するのに最適な場所になるだろう。」

「承りました。」


「ファルサリアはここの管理だ。この辺りは幻覚やそれに近い現象を出す星がいくつかある。“幽幻”を使いこなせるようになるにはここが一番いいだろう。」

「分かりました。」


「ゼフィルについてだが、ここの宇宙領域はかなり危険だ。種類の違う星が多く混ざり合ってしまってる領域であるが故に、構造は全宇宙の中で一番滅茶苦茶だ。“混沌”の神格でも対応ができるかどうかまだ分かんないから、俺もできるだけサポートはするよ。」

「ありがとうございます。」


「シルヴァの領域は、主に水を多く含んで膨張している星が多数ある場所だ。宇宙の干渉をせずにできるだけ星にある水を枯渇しないように管理してくれ。」

「仰せの…ままに。」


「ソーマの宇宙領域は主に熱の集合体が合わさった星がある場所だ。神格のおかげで体に影響はないだろうが、無理は禁物だ。下手なやり方で星が爆発して宇宙のバランスが壊れるかもしれないから、そのあたりは気を付けておいてくれ。」

「分かった。」


「最後にシンシアの宇宙領域だが、この辺りは天と地の二層が一つとなった星が存在する。神格を合わせながらその星の偵察、および後の神が誕生する際にそこを任せられるか自己判断をして管理してくれ。」

「うん。」


全員の宇宙支配領域をあらかた説明し終えたところで、ゼロは映し出していた別空間を閉じて、踵を返してさっきとは別の空間に行ける門を出して、そっちに歩いて行った。


「さて、これから宇宙の始まりとともに生まれた神であり、我らが王である邪祖神グァーラにお前たちが無事に誕生をしたことを報告しに行く。顔合わせは必要だろうから、ついてきてくれ。」


ゼロに言われて後ろを付いて行こうとしたが、ゼロはその場から動こうとはせずに、視線を兄弟たちに向けて口を開いた。


「俺たちはこれから兄弟となる。だから堅苦しいのも無しにしたいし、これからは俺がお前たちの親の代わりをすることになる。だからこれからは、兄弟としての愛を教えるから、それを含めてこれからもよろしくな。」


そういって微かに笑い、王が待つ空間へ繋がった門へ入っていった。

兄と名乗ったその者の笑みと言葉が一体何の意味があったのかは、今の彼女たちにはその時点では分かっていなかったが、それが後にどれほど大切な事になるのかは、今の段階では理解できていなかった。

これにて第四章は終了です。

次回の投稿で少し間が開いてしまいますが、長くならないようにしますのでよろしくお願いします。

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