135話 楽園派VS殺戮派④
「■■■■■■■■■■■■■―――――!!!!」
「うおおおおぉ――――ッッ!!」
言葉にできない叫びを放ちながら攻撃をしてきてる。
来るのは有象無象の黒い「何か」。
それが出してくる謎の攻撃を神理眼で視て、体の当たる場所を聖剣と妖刀で弾きながらなんとか無傷で攻撃を回避するしか無かった。
「死骸が……何時までも図に乗んなッ!」
一瞬だけ空いたわずかな隙間を逃さずに、俺は今日完成させた新技、亜空間と虚空の門、そしてこの技用でスキル“武器錬成”によって作り出した西洋ランスのような見た目の剣。
一本作れば複製させるのは簡単。
あとはそれを雨のように降らす。
「“飛来するは天星の雨”」
虚空の門から出てきた剣は、弓から放たれた矢のごとくゲージャズの所に行き、触れた瞬間爆発した。
剣自体は魔力を少なめにして脆くしてもいい。
その剣一本ずつに爆裂の魔法を付与させれば威力はそれで補える。
効果は爆裂以外もできるけど、今はこれでいい。
―――だがそれだけだ。
それ以外はできてない。
奴には暗黒でできた肉壁がある。
そのせいで攻撃が核に当たらないからだ。
「…チッ、掠ってたか。」
攻撃を止めて痛みがある場所を見ると、奴の一発が横腹を掠めたみたいで、魔装に血が滲んでいた。
すでに何百発の攻撃を弾いたのか。
途中で数えるのをやめたけど、間違いなく500発は俺の眼で捉えていた。
それを2000年のブランクでよくやれたもんだ。
「にしても、まさか死体となってまた俺の前に現れるなんてな。」
目の前にいる黒いのは、間違いなくかつての俺が殺した暗黒邪神ゲージャズだ。
だが今いるのはゲージャズであってゲージャズじゃない。
さっき起きた事を振り返るとしよう。
まず俺は、ディザリック・ドゥの肉体を俺の剣技でバラバラにした。
魂も全部斬った時点で俺の勝ちだった。
だが奴は死んでなかった。
いや魂は死んだんだが、中にあった神格は死んでなかった。
おかげで神格は一気にディザリックの肉体を暗黒で真っ黒い肉にさせて、それで物足りなかったのか、周辺に残ってた「殺戮派」の残党を一気に黒い触手みたいなので捕まえては取り込み、前世のあの時と同じ姿をした【暗黒邪神ゲージャズ】になった。
つまり目の前にいるゲージャズは、魂のない状態で神格が肉体を操ってるような状態だ。
「死しても尚、使命を果たす。哀れでしかないな。」
「零!」
「零ちゃん!」
後ろから父さんと照がやって来て、俺の横腹が怪我をしてるのを見ると、照が瞬時に回復魔法で治療してきて、父さんも俺の顔を見ては大丈夫かどうかを確認してきた。
「無事のようだな。」
「まぁな。そっちはどうなの?」
「あとは残党だけ。残りはあの二人に任せることにしたわ。」
おっ、向こうはほとんど終わったみたいか。
てことは後はこれだけか。
しかし完全体じゃなくても所詮は邪神。
神の分類である以上、「楽園派」の奴らじゃ太刀打ちできないのは目に見えて分かる。
ましてや俺と照はブランク持ちだから無茶できない。
まぁ俺の場合は【裏剣技】があるからどうにかなるか。
「さて、あれをどうやって仕留めるかだな。」
「なぁ零、あれは何だ?」
「暗黒邪神ゲージャズ。偽王によって創られた偽物の兄弟であり、ディザリック・ドゥの腹の中にいた奴だよ。」
「邪神ってことは、零ちゃんの義兄弟?」
「あんなのを義兄弟だって思いたくないわ。赤の他人だ赤の。」
人型でもない奴が義弟とか吐き気がするわ。
せめて人の姿をしてから考えるわ。
あんなのは論外だ論外。
「で、あれ倒せそうなの?」
「今の俺じゃあ難しいだろうな~。あれって見ての通り暗黒だから核が何処にあるか分からんし、当てずっぽうでやってもジリ貧なのは確定だろう。しかも、ディザリック自体の魔法か何かで、魔法だけを“反転”させて回復させちまう手段があるから、殺せるかどうか分かんねぇだよ。」
「でも無理じゃないんでしょ?」
「………まぁ無くはないんだけどな。」
やってもいいけど、不安は大なんだよ。
あれを倒す方法は、全部を消すほどの一撃だったらやれるはずだ。
だけど被害がどうなるか分かんないから使いづらい。
ちょうど俺の横に魔王がいるし聞いとくか。
「父さん、一応考慮はするけど、魔界が一部壊れる可能性があるけど大丈夫?」
「それほどヤバいのか……、分かった、頼む。」
あっ、意外にあっさりとOK出しちゃうんだね。
被害より死人を増やさん方を優先したか。
どっちかを選ぶならそうするか。
土地は戻せても、死人は戻せないんだからな。
「一発で確実に終わらせる。二人とも、奴を一秒だけ動かせないようにしてくれ。」
「「了解。」」
俺の頼みを聞いた二人は奴に近づき、俺に攻撃が来ないように身代わりの役をしてくれた。
もちろんこのまま俺も見てる訳にもいかないから、俺も妖刀を戻して聖剣にありったけの魔力を蓄積させた。
「聖剣が何で出来てるかは分かるが、果たして俺のアレに耐えきれるかだな。」
使用するのは俺の【裏剣技】の一つ。
“灼”とは違い、こっちは破壊を文字にさせた巨大な魔力の攻撃。
前世はこれで星ごと邪神を滅ぼした事があるが、馴染んで10%の肉体だったら、上に攻撃を逃がしてもどうにかなるだろう。
あとは全部賭けだ。
父さんの許可も出たし、一撃で屠ってやる。
「我が主、地上に向かってた「殺戮派」は全部仕留めました。これで残すは主たちの戦ってるあの黒いのだけです。」
「被害は?」
「シリウスのおかけで被害はかなり少なかったです。ですが止めるのに少し一苦労したくらいで、今は主がサヨリ殿に使ってたやり方で強制的に止めました。」
「……それって凍らせたって意味になるよな?」
俺がやってたあれをやったのか。
行動を止めるにはうってつけだけど、凍死して死んでないよな?
まあ使った相手が王だから死ぬ事はないだろうけど、後処理は自己責任で頼むぞ。
「とにかく終わったのなら話は早い。今すぐ「楽園派」をここから避難させてくれ。」
「避難? ですが我々はまだ戦えます。一斉に襲えばすぐに終わるのでは?」
「あれは仮でも邪神の亡骸だ。被害が甚大になれば元も子もない。それに今から俺の一撃で巻き込まれるのは勘弁だからな。」
ここでもし「楽園派」の奴らが残ってみろ。
俺の攻撃で全員が一撃死するわ。
こればかりは確信を持って言えるわ。
コンテニューがない限り、生きてる心地なんてしないだろうし、この後その現実を知る羽目になるんだしな。
「よろしいん…ですか?」
「ああ。これは俺案件の不始末だからな。あとは任せろ。」
「……いいえ、私だけは残ります。」
良かった、これでどうにか…………え?
今なんて言った?
自分だけ残るって言ったか?
ちょちょちょ待って!それはダメ!
残ったら洒落にならないから!
「何故に……残るのでやんすか?」
イカン、唐突すぎて変な口調になってもうた。
そして聖剣に魔力を送るのを不意にストップさせてしまったわ。
「多分ですけど、我が主の聖剣に貯めてる魔力を放たれたら、あのお二人は回避が難しいのではないかと思ったまでです。」
「…あ。」
確かにそれは一理あるわ。
巻き込まれてGAMEOVERになったら取り返しのつかない事になっちまう。
しかも父親と従姉妹となったら、精神的に病んで自殺する勢いになるだろうし、間違いなく保険を置いといた方がいいな。
「年取りすぎて考えも怠ったのか……俺は……、分かった。アジュールはタイミングを見計らって二人を回収したのち、即時この場から避難。できるな?」
「もちろんです。」
「なら頼んだぞ。」
作戦が固まったところで、聖剣に貯めてた魔力の蓄積が完了して、何時でも放てる準備が出来た。
「照、父さん、準備完了だ! こっちは何時でもいけるぜ!」
「「了解ッ!」」
二人は俺の声に反応して、亡骸のゲージャズの攻撃を弾きながら拘束をするため別行動を開始した。
「叔父さん! 拘束魔法を!」
「分かった! “神封じの呪縛”」
「“天命の封じ剣”」
照が光の魔方陣を複数展開させ、父さんは黒い光の剣のようなものでゲージャズを突き刺してその場に封じ込めた。
お互いに光と闇の拘束魔法を使用されて、ゲージャズは完全にその場から動くことができなくなった。
拘束できてもわずかに数秒だろう。
だが俺には充分すぎる事だ。
それだけで確実に仕留めてやる!
「今だアジュール!」
「はいッ!」
アジュールが俺の合図で二人に近付き、そのまま二人を連れてその場から外れるかのように転移し、俺と拘束されたゲージャズの亡骸だけになった。
「これでようやく俺の出番だ。」
時間を止めて奴の下に潜り込んだ。
奴が空中で止まってるのなら、下から放って上に逃がせば被害は最低限にできるはずだ。
「一度目で「死」を知ったのなら、今度は恥じずに潔く己の「死」を受け入れなァ!」
聖剣に集めた魔力は黒い閃光を出して力の強大さを知らしめた。
溢れ出た魔力はもう止まらない。
あとは剣を魔力ごと奴に向けて振れば終わりだ。
「■■■……■■………!」
ゲージャズも危険だと察知したのか、何とかその場から逃げようと拘束を壊し始めた。
だけどもう遅い。
俺の攻撃はもう始めてるのだから。
「あばよ、愚弟。【裏剣技】―――――“亡星”」
聖剣より繰り出された宵闇の光は、亡骸のゲージャスを呑み込み、闇によって染まっていた魔界の空をも呑み込んだ。
宵闇の光によって塵となり死んだゲージャス。
そしてその贄となったディザリック・ドゥと「殺戮派」の兵士たち。
時代が違えど、どちらも殺すことしか考えずに生き続けてきていた。
その罪は、死して重くのしかかり、数えきれない罰を受けることになるであろう。
だがそれを知る者は、誰もいないであろう。
「あぁー……なんとか出来たなぁ~…………さて、落ちるか。」
力を全開まで出し切った俺は、重力に逆らうことなくそのまま落下した。
ついでに纏っていた魔装も俺の私服に代わってしまったわ。
だってさっきの攻撃で馬鹿でかい反動が俺の体を襲ってきたんだもん。
このまま落下しても文句も言えないわ。
はぁ……またリンゴのように地面にぶつかるのか。
しかも今度は魔装なしだから死ぬかもな。
「倶利伽羅ぁ……助けて。」
『うらああああああぁぁぁぁ‼‼』
俺が小さくつぶやいた本音が聞こえていたのか、はたまた自分の意志で行動をしたのか、俺が地面に直撃する10mのところで倶利伽羅がやって来て、硬い地べたにタックルすることなく倶利伽羅の背中に乗せられた。
『ぎ…ギリギリセーフでした。』
「マジで助かったよ倶利伽羅。家に帰ったらとびっきり美味い飯食わしたるわ。」
何時ぶりだろうか、己の死を悟ったのは。
多分だけど前世―――――いや、もしかしたら初めてだったのか?
だとしたらこれだけは言うわ。
「――――生きててよかった。」
倶利伽羅の背で出した言葉は、一生忘れることはないだろう………多分。
「零!」
「零ちゃん!」
デジャブのような呼び方をしてやってきた父さんと照は、倶利伽羅の背に乗って俺の安否を確認してきた。
「大丈夫か! ちゃんと生きてるよな!?」
「大丈夫大丈夫。反動で体が動けなくなっただけだから。」
「本当だよね! 死んだら嫌だからね!」
「だから大丈夫だって。ここで死ぬのは早すぎるんだから。」
本気で心配させちまってたんだな。
流石にやりすぎたわ。
反省しよう…無茶は体に毒だ。
「さて、最後にやるべきことをしてから、家に帰ろうか。」
最後の仕事で、家に帰れる。
今日の俺ってかなり仕事してるな。
働いた分の給料をもらって帰るか。
みんなが避難してる時、楽園派は途中で零の放った“亡星”で言葉を失ってました。




