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134話 楽園派VS殺戮派③

「ガギエル様、我が主から伝達です。」


アジュールは零からの思念で行動を変えて、一度後方にいる自身の主の父である湊の下に向かっていた。


「どうした? 零に何かあったのか?」


「敵の大将と思われる悪魔と接触し、そのまま一騎打ちで相手することとなってしまいまして、我々は邪魔をしないようにしてほしいとのことです。」


「一騎打ちだと?」


敵の大将と一騎打ちをすることとなった息子を知ってわずかに狼狽えたけど、見た感じ臆することもなく正面からやりあってるのを見た湊は、あの場所に出向くのは野暮だと瞬時に理解した。


「バーディラ。」


「ここに。」


「全員に伝達しろ。「殺戮派」のすべてがこっちに向かってくる。先にある剣戟に横槍は入れず、残党(・・)だけを狩れと言え。」


「了解。」


バーディラは湊の指示を受けるとその場で思念を「楽園派」の全体に伝達し、それを聞いた者たちから一気に襲いかかってきている「殺戮派」を迎え撃つために、自らの意思で向かっていった。


「アジュール、お前も協力してくれ。」


「もちろんです。今は違えど、かつては貴方に従っていた(・・・・・)のですから。」


アジュールは笑って湊の横に立ち、暗黒物質(ダークマター)で1本の黒い剣を創り出した。

二人は過去に主従を交わしていたのだが、当時のアジュールが戦闘を嫌うのを知っていた湊は、これ以上の負担をかけさせたくないと考え、今は従者としての契約はない状態にしている。

しかしお互いを嫌悪していなかったため、こうして主従としての関係がなくても、共に戦える戦友としての絆は残っていた。


「60年ぶりですね、こうして横に立つのは。」


「そうだな。しかもお前がまさか零と契約を結んでるなんてな。」


「ふふっ。これも何かしらの運命なのかもしれませんね。」


あの話し合いの時に零は、二人の関係はないと思っていた。

だがそれは大きく間違っていた。

本当は二人には絆が存在していた。

それを察しることができなかったのは、父親である湊よりも先にシリウスが言ってしまったため、それに反応できないまま話が行ってしまい遅れてしまっただけだったのだ。


(零が一人で頑張ってるんだ。俺も父親として全力でやってやる!)


「行くぞ、アジュール!」

「はい!」


先に行った「楽園派」を追うように「殺戮派」に向かっていき、大将と戦ってる零のために十悪剣を振って、前の敵から順に斬っていった。


「攻めろ! 形勢はこっちに傾いてるんだ! この好機を絶対に逃すな――‼」


『うおおおおおおおおおおッッ!!』


勢いをさらに増した「楽園派」に怖気ついてきたのか、複数で相手しないと倒せないはずの上級(アーク)たちが、今や格下である下級(レッサー)に押され負けてしまう状態になってしまっていた。


こんな光景は絶対にありえない状況でもある。

戦いだけを快感にしてきた「殺戮派」が、人類と平和を望むような「楽園派」に最初から最後まで攻められるのは、数百年続いたこの戦いで初めてだった。

そして次第に恐怖を覚えてきた「殺戮派」たちをさらに追い打ちをかけるかのような光景が起こった。


「ガギエル様、地上部隊の「楽園派」が到着しました!」


「さっきの伝達は済んでるな?」


「もちろんです。」


「よし、一気に攻めるぞ! 挟み撃ちだ!」


「了解!」


このまま一気に攻めに掛かろうとしたあたりで、湊は少し前のバーディラの言葉を思い出していた。


(そういえばさっきバーディラが言ってた率いてる人間って言った誰だ? もしかして魔界に関連する奴なのか?)


敵を斬りつけながらも、さっきの疑問をずっと考えていると、地上から来ていた「楽園派」が合流し、その先頭にいた人物が、手に持った双剣(・・)を使って迫ってきた。


「地上にいた「楽園派」何事もなく無事に合流完了………って叔父さん!?」


「お前……照か!?」


なんと地上部隊の「楽園派」を率いていた人間は、まさかの姪である白崎照だった。

お互いに驚きながらも、攻撃を休ませずに会話をしながら剣を振り続けた。


「なんで叔父さんがここにいるの!? 数年前に死んだんじゃなかったの!?」


「訳ありで「死」の偽装をしたんだよ。それよりお前は人間じゃないのか?」


「人を化け物扱いしないで! 私は零ちゃんより先に地球に戻っていたけど、優越神としてのブランクが多かったから、リハビリがてらにやっぱり魔界に行くことにしたんだよ! そしたら魔界で二つの派閥が戦争する事になるみたいだから、一緒に同行してもらうように頼んで率いていたんだよ!」


「優越神って………お前いなくなってた女神だったの!?」


「そうです。私がいなくなってた優越神です。」


何故かドヤ顔で答えてる()に対して、呆れて物が言えない状態になってしまった(叔父)

本人に至っては今日だけで驚きの連発だったから、頭がこんがらがりそうになっていたが、そんなのをお構いなしに迫ってきている「殺戮派」を斬りながらも、何とか指揮をとろうと我武者羅になっていた。


「息子が邪神で、姪がまさかの優越神。白崎家に純粋な人間はもういないのか。」


「華怜ちゃんがグレーの状態だけど、もうそれも時間の問題でしょうし、諦めたほうがいいですよ。」


「だな。零の方はどうやら一方的に攻めてるし、このまま…――――ッ!」


勝利が確実になってきたと思った湊だったが、突然横からすごい速度でやってきた「殺戮派」の攻撃をギリギリでガードして、空いた左手で黒い球をした闇魔法を当てて距離を離した。


「おいおいおいおい……何でだよ。何で弱虫な「楽園派」のゴミ共に対して俺たちが一方的に攻められてんだよ。俺たちの方が明らかに上の存在だろうが――ッ‼」


今までなかった状況で情緒不安定になってる一人の悪魔は、頭や顔を掻きむしりながらイライラした顔で湊を見た。


「お前だッ! お前がこんなゴミ共を率いちまったせいで俺たちが負けてンだッ! どう責任取らせてくれるンだよ!! あぁ!?」


「知らんな。殺すことを生きる脳のない貴様らと違って、俺たちは人間と共に暮らしていく“明日”を望んでここまで来たんだ。この“悪夢”も、今日で最後だ。」


「あんな踏み潰しただけで死ぬような短命種族の雑魚(ザコ)共の何処に魅入られたンだよぉ!? 雑魚は雑魚らしく、大人しく俺たちに殺されて死ぬのるが幸福なンだよォ!!」


「「あ"ぁ?」」


人類を短命種族の雑魚(ザコ)といった。

その言葉は二人にとっては逆鱗に触れる事になる。

だがそれを気付かずにその馬鹿な悪魔は叫び続けた。


「大体何でお前ら「楽園派」と名乗る魔族の半端共が、人間といった下等生物と共存する必要があンだよ⁉……いや待てよ。お前等、さては俺たちと同じで人間を玩具としか考えてないンだろ?」


「「は?」」


突然訳の分かんない事を言い出した馬鹿に対し、二人は一瞬だけ思考が止まった感覚を覚えた。

そしてそれが図星だと思ったのか、馬鹿な悪魔はさらにニヤけてしゃべり出した。


「やっぱりそうだ‼ お前等も人間と下の存在としか思ってねェ‼ 下等な生物に同情したって、なんの意味のないンだもんなァ‼」


「「………」」


「沈黙か、どうやら正解みたいだな‼ じゃあこうしようぜ。「殺戮派」も「楽園派」もなしで、悪魔として生まれた事に感謝しながら、人間を虫のように潰す遊戯(ゲーム)でもしようぜ。悪魔らしくよォ‼」


――――――ブチッ!


血管が切れるような音が聞こえたのと同時に、その愚かな悪魔の体は首以外消滅していた。


「………ぇ?」


その悪魔は理解できていなかった。

なんで自分の体が消えたのか?

なんで目の前にいた人間が突然消えたのか?

その光景は、沈黙の怒りをあらわにした二人が証明させてくれた。


「人間を下等生物を見る。その時点で貴様は俺たちと違ってる。」


「そしてそんな目でしか見てない貴様は、ここで死ぬ運命(さだめ)なんだよ。」


「……ぁ…ぇ…?」


死にかけている愚かな悪魔にとって、最期に見たものは何だったか。

下等生物か、それとも「楽園派」を名乗る平和主義者か。

どっちにしたって、己の命が一瞬にして終わるのは理解できるだろう。


「クソが………おれは……ッ……にんげんをころす……それ……だ……け……が…」


しかし悪魔は、最期まで悪魔でしかなかった。

落ちていく中でも、考えて出した言葉は何も変わらないままだった。

最後の最後まで、殺す事だけを生きがいとした、悪魔だった。

そして名も知らないまま地に落ちていく愚かな悪魔の最期の様を見ていた二人は、ゴミを見る目で言葉をこぼした。


「哀れなものだ。人間こそどの種族よりも美しいだって事に気付かないとわな。」


「短い命で後世に語り継がせていき、それを永遠に続けているからこそ、人間の歴史が存在している。それを唯一やってる人間こそ、この世界には必要な生き物なんだから。」


「全部が全部じゃないが、それを成しえた人間は、夜空の星よりも輝いて見える。それはとても良いものだ。」


「そうですね。人間になったからこそ、かつての生き方では知る事が出来なかったものが多く見つかり、どれだけ自分が小さな者だったのかを見れたのですから。」


同じ人じゃなかった者同士、人間がどんなのかを理解してるからこそ語り合えた。

誰よりも人間を知ってるからこそ、それを語れる。

どの種族よりも恵まれた生き物だと知っている。

だからこそ二人は、人間になった事を後悔してない。

理解しているからこそ、自分の生き方に間違いじゃないのを知れたのだから。


「ところで思ったんだけどさ、照は女神の時代の時は人を見てなかったのか?」


殺意を抑えて剣を鞘に収めると、ふと思ったことを照に言った湊に、怒りが完全になくなった照が、恥ずかしそうに顔を掻きながら言った。


「いや~昔はハリセンボンよりもトゲトゲな性格をしてまして~。人間どころか全部の種族を自分よりも下としか見てなかったので、全然女神らしさは皆無でしたね。」


「……その性格は人間になってから?」


「…はい。前世の行いを猛省してこのキャラを体に染み込ませました。今となったら過去は黒歴史として永遠に私の記憶に残るでしょうね~……ガックリ。」


己の因果応報だとはいえ、かなりキツいは自覚してるだろう。

だがどれもこれも全部自分の過去の行いが悪かったのは自覚をしている以上、彼女に来る災いはもう来ないであろう。


「まぁそれは後でにしようぜ。とりあえず残党はもうほとんどいないし、零のようすで……ッ!?」


「ん? どうしたんですかおじ……ッ!?」


様子がおかしいと思った照が訪ねようとした瞬間、体全体におぞましい覇気を感じ取ってしまい、その場に固まる感じになってしまった。

もちろん二人だけじゃない。

今戦場にいる「楽園派」と「殺戮派」の全ても感じ取ったみたいで、事態は戦争どころではない状態になっていた。


「何だ、この気配……背筋を一気に冷やすような感じ。」


「叔父さん、あれを!」


照が見ている方向を見た湊は、それを知って言葉を失った。

その方向には息子である零と、最初の時にはなかった黒い球体をした「何か」が戦い合ってた。

零の方は無傷であるのに対し安心したけど、戦ってる相手がいったい何なのか分からずにただその場に立ちつくしかなかった。

加勢に行きたいのに体が思うように動かない。

邪魔しないようにとかの意味でなく――――本能(・・)が行くなと叫んでいるからだ。


「零……!」

「零ちゃん……。」


零が向かうために、必死に体を動かせれるように魔力の覇気を出して体に鞭を打ち、動けるようになってすぐに零の元へ向かった。

【愚かな悪魔】

名前も知られないまま死んだ悪魔。

「殺戮派」のNo.2だったのだが、魔王と優越神に喧嘩を売ったのが災いになり、あっさりと死んだ。

ちなみに名前は口禍(くちわざ)のガガリアン

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