133話 楽園派VS殺戮派②
「“死狂い”!“女王蜂”!」
「はぁぁぁ!」
俺とアジュールは父さんたちが「殺戮派」の配下たちと戦ってる隙に先頭集団のリーダー格を潰すため、敵をなぎ倒しながら前に進み続けた。
俺は高火力を持つ闇で刻みながら爆破させていき、アジュールは得意の“暗黒物質”で石化させる蛇腹剣を作り出しては薙ぎ払って進んでいた。
「アジュール、まだいけるな?」
「むしろまだ物足りないです。少し派手にしますか?」
「うーん……やってもいいけど、味方巻き込みそうだから難しいんだよな〜」
神格は取り込んだばかりだから全然馴染んでないし、今の俺の魔法ってかなり高火力になっちまったから加減が難しくなっちまってるから困ってんだよな〜
幸い時間系の力は氷魔法でやってたからまだ何とかなるけど、他の二つはまだ皆無だから無理。
やってもロシアンルーレットになるから危険度大。
だとしたらあとは【暗黒星雲】しかないな。
「しゃーない、少し派手にするか。アジュール、やれるな?」
「もちろんです。いけます!」
どうやらアジュールも暗黒星雲を使うみたいだな。
だったら一緒に使って数を減らすか。
「「“暗黒星雲”展開!」」
同時に暗黒星雲を展開。
向こうは何を使うか分からんけど、俺は拡散型の奴で一掃するとしますか。
“暗黒星雲”には全部で12種類あって、それぞれが12星座の名前になっている。
俺が初めて使ったのは、スコーピオンのアジトの地下施設。
そこにいた魔物になってしまった人を楽にさせるために、自分の誕生日である星座、てんびん座を使って滅ぼしてあげた時だ。
そしてこれを使っていて分かったことがある。
これを作った製作者、確実に混沌邪神だ。
あの時はまだ半信半疑だったが、今ならわかる。
俺の神格によく馴染む力だ。
「選ぶ星座の名は――――うお座!」
「選ぶ星座の名は――――射手座!」
使うのは別々。
だがどっちも高い火力であり、広範囲に攻撃が届く。
「殺戮派」が混乱してる今、これで致命的になるはずだ。
「食らい尽くせ! “聖霊魚群”‼」
「敵を穿て! “人馬星雨”‼」
俺の出したうお座の攻撃は地上から。
アジュールは上空から。
地上には数多くの小さな術式が展開され、上空には反対に巨大な一つの術式が現れた。
地上からは魚のような形をした白と黒の光が一斉に襲い、上空からは矢のような鋭い白と黒の光が雨のように「殺戮派」を貫いていった。
「グギャッ…!」「ギョボッ…!」
「ジュバッ…!」「ヂュギュッ…!」
下を回避したとしても上から貫かれ、上を避けたとしても下から攻撃をされる。
二人が暗黒星雲を発動させた時点で、「殺戮派」たちの逃げ場などすでに何処にもなかった。
そしてこれを何も合図などを出さないで成し遂げ、実現させた主従コンビは、「殺戮派」たちの数を減らそうと躍起になり、さらに攻撃を増して敵を殺していった。
「む…無茶苦茶だ…。」
その言葉はだれが発したのか。
誰であろうとしても、両軍の悪魔たちは間違いなく同じことを思っているだろう。
後方ではシリウスによる斬殺。
前方では二人による光と闇による天地の裁き。
この光景は、のちに魔界で有名になるであろう。
「楽園派」による希望と、「殺戮派」による絶望。
これにより、完全に勝利は「楽園派」に傾いた。
「…今ので2万も殺せた。完全に勝利はこっちに向いたな。」
天地からの攻撃が終えた時には、空中で海が浮いてるかのように大量の血があり、死んだ虫のように地上へ落ちて行ってる「殺戮派」の死体が目の前にあった。
「我が主、先頭集団が止まっているようです。首を落とすなら今です。」
「そうだな。父さんたちが頑張っている以上、俺たちも早めに仕留めるぞ。」
「いいや、その必要はないぜ。」
背後から第三者の声が聞こえたと同時に、殺意を込めた蹴りが俺の顔面に目掛けて襲ってきた。
だけどすぐに気づいたからこそ、顔面に当たるギリギリのところで左腕のガードが間にあったが、空中だったからそれ以上の抵抗はできずに、俺は落下してそのまま地面に叩き落された。
「……あいつがリーダーか。」
魔装のおかげでダメージは小さかったのは幸いだった。
そして俺を見下すかのように上から見ていたのは、四本の腕と二対の目、悪魔の象徴である二つの角をもった上級悪魔だった。
「人間風情が、俺たちの“殺戮”に泥を塗るな。」
アジュールが近くにいるにも構わず、俺を見下してきていた。
肝は据わってるようだけど、横にお前より格上がいるのを忘れてないか?
「我が主に蹴りを入れた愚行、万死に値するぞ!」
暗黒物質で黒い太陽と造って、それをリーダーである奴に投げた。
しかし奴は一向に動こうとせず、むしろ黒い太陽を片腕一本で握りつぶした。
「生温い。これが“創造のアジュール”の力かよ。」
「な…」
目の前で起きた光景に驚いていたアジュールだったが、次の第二撃に白いギロチンを腕から造り攻撃を仕掛けた。
「温い、温い温い温い。まだ物足りねェぞ。」
リーダーである悪魔は白いギロチンを腕で受け流していき、退屈になったかのように欠伸を一回して、ギロチンを横に弾いてアジュールに近づいて全力の拳を使って殴った。
「カッ…」
「アジュール!」
鳩尾に攻撃を受けたアジュールは俺と同じように地面に叩き落され、砂埃を立てながらわずかに血を吐いた。
「大丈夫か、アジュール!」
「…問題ありません。少々油断しました。」
普段は見せない殺意を込めた表情になっていたが、少し冷静になろうと息を吐いて落ち着かせていた。
純粋な攻撃で俺たちを地面に叩き落とし、しかもアジュールの攻撃を難なくいなしていた。
あいつ、ホントに上級か?
「足りない。足りない足りない。こんなもんじゃあ煮えたぎらねェ。こんなんじゃ一向に冷めてく一方じゃねーかッ!」
かなりイラついた感じで歯ぎしりしていた。
魔力を見る限り上級なのは確か。
だが何か違う。
何か違うモノが奴の体の中にあった。
「皆殺しだ。この際誰でも構わねェ。俺以外はこの世にいらねェんだよ!」
「そうか。だったらまずは先にお前が死ね。」
イラついて叫んでいる間に時間を止めて背後に回り、聖剣に手をやった。
「捌の太刀“居合十六蓮華・断”」
十六回の斬撃を全部受けて腕や足をバラバラにされたことに驚いていたけど、それを無視して俺は雷魔法を使って一気にトドメを刺しにいった。
「塵芥になりやがれ。“未知なる雷轟”‼」
五大元素に極限などいらない俺にとっては、全部が俺の最大火力の魔法になる。
この雷で全部焼き焦がす勢いで周辺にまで感電させるほどの雷を使った。
確実な“死”を与えるためにやりすぎなくらいの攻撃をして、俺はその時点で奴は死んだと思っていた。
だが現実は全く違っていて、雷で死ぬどころか逆に回復していって、さっきバラバラにさせたはずの体が全部元通りになったのに言葉を失った。
「今の斬撃、悪くなかった。だがそのあとが無駄だったな。」
「殺戮派」のリーダーは俺のほうを向いてニヤけ、指や首などの関節を鳴らした。
さっきまで言葉を失ったが、冷静考えると単純だった。
斬撃でダメージを受け、魔法で回復をする。
つまり純粋な物理攻撃だけが有効打って訳か。
となったら、鵺と殺り合った時のような感じで問題はないだろう。
「いい攻撃をしてくれ礼だ、俺の名前を言ってやるよ。」
関節の骨を鳴らし終えると、腰にぶら下げてた4本の剣を抜いて俺に向けてきた。
「俺はディザリック・ドゥ。血に飢えた「殺戮派」のリーダーにして、異星の神の力【暗黒邪神ゲージャズ】を取り込んだ悪魔だ。」
「暗黒邪神…だと?」
暗黒邪神ゲージャズは卑神ニアラの250番目の配下。
奴は前世ですでに俺が殺したはずだったが、神格は宇宙を彷徨い続けていたのか。
そして巡り巡ってディザリックにたどり着いて今に至ってる。
まさか過去に殺した奴と違う形で再会するなんてな。
気持ち悪くて吐き気がする。
「さっきのお前の攻撃で気が変わった。俺と一対一で勝負しろ。」
「何…?」
まさか向こうから俺と一騎打ちをご消耗とはな。
見た感じ本気のようだし、そうしてくれるなら俺もそれでいくか。
「いいぜ、その勝負乗った。」
「ヘッ、話が早くて助かるぜ。テメェ等! 俺とこいつの邪魔したら殺すからどいてろ!」
ディザリックの叫びで、「殺戮派」たちが一斉に「楽園派」がいる方へと向かっていき、俺と奴だけがその場に残るような感じになった。
こっちも奴の機嫌を損ねないように言っておくか。
[アジュール、俺が奴と一騎打ちする。邪魔させないように父さんたちに伝えてくれ。]
[我が主だけでよろしいのですか?]
[問題ねぇ。奴の首は俺が刎ねる。]
[…かしこまりました。ではご武運を。]
アジュールに思念で伝えて、こっちも邪魔しないようにさせたところで、聖剣を強く握りしめた。
「“元6代目勇者”白崎零。闇が続くこの魔界に光をもたらすために、お前を殺す。」
「体に熱が入る勝負ができなくて退屈だったんだ。完全に熱くなるまでにくたばんじゃねェぞ、人間。」
「安心しな。その熱が上がる前にお前の首を刎ねてやるよ。」
「キッシッシッシ。ならやってみろよッ!」
風を切るような速さで俺に近付いてきたが、俺にとってはスロー再生と変わらないものだった。
向こうから仕掛けてきたが、先手はこっちがもらうぜ。
「【裏剣技】“灼”」
目の前にまで引き付けて放った俺の斬撃はディザリックに向かっていき、正面から迎え撃ってきた奴は、4本の剣を重ねて俺の剣技を相殺した。
「ほう…相殺しきったか。」
リハビリなしで父さんの時は俺が勝ったが、今度はそうはいかなかったか。
ブランクがあっても体が前世に寄ってきている今の俺の筋力は人間の域を超えてるだろうから、それを受け切ったのは大したものだ。
「今度はこっちの番だ!」
剣で俺を押し切って距離が開いた瞬間に、4本の剣を振り回しながら一気に攻めてきた。
普通なら魔法などで防御を考えたりしたけど、魔法で回復するなら下手にできないし、俺の神理眼を最大限に使ってから剣で受けるしかないな。
「ブッシャアアアアアアアァァ‼」
型もないし、流派もないが、的確に俺の急所を1本1本の剣で狙ってきて来た。
どうやらあだの殺戮だけを考える馬鹿じゃなさそうだな。
それに流石に4本も相手となると厳しいし、隙を与えずに剣技を連チャンして仕留めるか。
「伍の太刀“神凪”」
「何ッ!?」
4本全部を受け流されたのが予想外だったのか、ディザリックは体勢を崩して前によろめき、そのチャンスを逃さなかった俺は一気に攻め込んだ。
「壱の太刀改“霜断ち”」
「ガッ…!」
「参の太刀改“陽龍”」
「ギッ…!」
「玖の太刀“無骨”」
「グッ…!」
「肆の太刀改“金獅鬼”」
「ゲッ…!」
「捌の太刀“居合十六蓮華”」
「ゴッ…!」
5連チャンの剣技を一気に受けたディザリックは、全身から大量の血を吹き出しながらも、何とか意識は保ったままその場におり続けたが、満身創痍の状態でもう動く力は残っていなかった。
「情けをかける必要もない。これでトドメだ。」
剣は持ち主によって答え、その力を発揮させる。
それは人によって左右されるが、剣を極めるほど無の極地に行く。
オーエドにいる親友はかつて俺にそう言ってきたのを思い出し、俺は聖剣を握りディザリックに迫る。
俺だって剣を持った者の一人なんだ。
その域に行けなくても極めて魅せる。
そしてこれが、俺の出せる最大限の剣だ!
「絶技―――“零閃”」
ガラ空きとなったディザリックの胴へ向けて最高速度の斬撃を使い、成す術もなくディザリックの体は真っ二つに斬れた。
【暗黒星雲】
12星座の名がついた禁忌の魔法。
使えるものはおるが、魔力を大量に消費をするから危険視されてるだけで、それ以外は特にない。
製作者は零の前世の妹かも…?




