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129話 過去の真実

「ゴホッ………撃ち負け……たか…」


十悪剣を地面に落として崩れるけど、俺は時間を止めてすぐに駆けつけてすぐに治療。

幸い致命傷には至ってなかったから、すぐに傷を治すことが出来たのは運が良かった。

このままサヨナラしたら今度は俺が二人に殺されるかもしれないから、外れてくれて助かったわ。


「零……、随分と強くなったんだな。」


「これでも勇者最弱って噂されてるけど、俺は俺なりに頑張ってるよ。」


「そっか。華怜もすでに悪魔を?」


「いや、まだだよ。11歳には少し荷が重いと思ってな。時期は母さんと話し合いながら決めるよ。」


強いて言うなら今の俺と同じ15,6歳くらいになったら考えてやるか。

今はまだ卵からかえった雛の状態。

時間をおいてしばらくは様子見だけどな。

まぁ周りに頼もしいのはたくさんいるし、早いペースで成長していくだろうけどな。


「しっかし、今のは何だったんだ? あれってどう考えても人間の使える技じゃねぇだろ?」


「魔王である父さんに言われたくないな…。てか父さんこそ、あれってどう見てもオーエド剣術を基礎にした構えだよな? もしかして行ったことがあるの?」


「前世に何度かな。父さんが日本に転生したのも、母さんと同じ故郷であるオーエドが気に入ったのと、助けてくれた母さんに惚れたから転生したんだ。」


「なるほど、そうだったのか。」


俺が剣道をするようになったのは、元々父さんがやってて試合を見たときにかっこいいと思って始めたのがきっかけ。

それから父さんに習いながら剣道を覚えていって、始めてから1年で全国大会にまで行ける実力まで持てた。

確かに父さんはあの時から強かった。

俺の剣は、いわば父さんが作ってくれたのと同じ。

それを辿っていったら、まさか同じとこに繋がってたなんてな。

世界って狭いもんだ。


「なあ、父さんは魔王だったけど、人間と戦争とかはしてないのか?」


「ああ、してない。けどそれを話すのは、あの二人をここに来させてからしないか?」


いけね、忘れてた。

つい父さんとの喧嘩に夢中になってて、置いてきてたのを忘れてたわ。


「ごめん二人とも、もう終わったから来ても大丈夫だよ。」


そういって二人をこっちに来させて、父さんの治療を終えてから別の場所に移動して、だれにも邪魔されない部屋でお互いの過去を交えた話し合いをすることにした。

ちなみにさっき戦ってた部屋は父さんの部下が修理をするよう指示をしたから問題ないってシリウスから言われたけど、まあ問題ないのなら別にいいか。


「さてとまぁ…まずはこっちの事情を話したほうがいいかな。」


最初に切り出したのは父さんのほうだ。

はっきり言って父さんの行動は理解できなかった。

死を偽装してまで魔界に戻る理由があったのか?

俺たちに黙ってまでそんなことをしなくちゃいけなかったのか?

それがようやく分かる。

蓋をしていた箱の中身をようやく知れるんだ。


「最初に言っておくが、まずは父さんの話を全部聞いてほしい。質問は後から全部答えるから。」


「分かった。」


「よし。それじゃあ最初は、何故父さんが死を偽装してまで魔界に戻らなかくちゃいけなかったかを話すとするか。」



********************



魔王ガギエルとしての生涯を終え、新たに白崎(みなと)として人間になって地球で暮らし始めてから早20年。

かつて勇者だった彩音と日本で結婚し、零と華怜が産まれて幸せな時間を充実していた。


魔王時代の俺の夢は、こんな何もない当たり前の日常を欲していて、時には人間の国に出向いては人の温かさを噛みしめることも多々あった。

今この時間は、俺にとっては天国と同じであって、失いたくない大切な場所だった。


そんなある日の夜。

二人が眠りについたタイミングで、俺は母さんを呼び出して二人で話す場を設けた。


「彩音、一つ頼みがあるんだ。」


「私を名前で呼ぶってことは、何か重要なことだよね?」


「ああ。実はかつて住んでた魔界のことで話があってな。」


「魔界の?」


俺が話したのは、魔界の現状についてだった。

魔界ではふたつの派閥によって構成されていていた。

戦いを嫌って人と共存をする「楽園派」と、戦いに飢えて戦争を起こしてる「殺戮派」に分かれており、双方で何度も衝突をしては同士討ちが絶えなかった。

俺は当時、どっちにも加担しない中立の立場としていたが、人との共存を願ってた者として、密かに「楽園派」に助力をしながら見守っていた。


しかしその衝突のさなか、当時勇者だった母さんが人間によって召喚され、それを知った「殺戮派」は一気に活動を激化していった。


『勇者がいるなら今のうちに殺してやる。』

『「楽園派」は戦わなくてつまんねぇし、人間界に行って戦争でも起こしてやろうぜ!』


そんなのが毎日のように続き、何時しかもう止められないくらいにまで規模が大きくなってしまっていた。

最初こそは「楽園派」が有利な状況だったはずが、わずかひと月によって形勢は逆転。

「殺戮派」が主導権を握るようになってしまった。


死して今はこのように幸せを掴んでいるが、魔界にいる「楽園派」はそうはなってない。

俺としての唯一の心残りが、今になって罪悪感を増してしまっている以上、どうにかしないといけないと思ってしまっていた。


「なるほど。つまり私の後に出てくる勇者のためにも、今のうちにその派閥を押さえておきたいのね。」


「魔界から去って20年は経つが、魔界の現状はもう分かり切ってる。絶滅しかけてる「楽園派」をできる限り多く避難させるためにも、俺が動かないといけないはずだ。」


「……確かにそうね。でももう20年も経っているなら、生存してるかどうかも分からないし、何よりあの子たちにはどうやって説明するの?」


母さんに言われて、俺は言葉を詰まらせた。

俺が魔界に行くということは、家族を見捨てるのと同じことになってしまう。

言い訳なら何とでもなるが、それがいつまで続くかわからない。


「下手に出張などとしてしまったら、連絡がつかないことで察してしまうだろう。それに華怜ならまだしも、零は勘づいて疑問を持つかもしれないな。」


「まだ小学6年生だけど、子供の勘ってなかなか鋭いからね。誤魔化すにしても期限を作らないといけないわね。」


「……こんな事はしたくないが、一つだけ無期限にできる方法がある。」


「その方法は?」


「――――自分の死を偽装して、家族と別れるやり方だ。」


「!?」


俺の言った方法を聞いた母さんは、驚愕と一緒にわずかな怒りをあらわにしていた。

当然だ、このやり方は俺も嫌なのだから。


――――「死」を偽装する。


嘘の死を利用して、家族を見捨てて魔界に行く。

幸せな家族を持ちたがってた俺にとっては愚行でしかない選択肢だ。

そして母さんが怒るのも当然だ。

家族を見捨てるなんて、父親失格なのだからな。


「そんなの……ダメだよ…」


「分かってるさ。自分の選択肢が愚かなやり方だってのは。だがこうでもしないと……」


「そうじゃないわ…」


「……?」


「そんな事したら、あの子たちは貴方を嫌いになるのよ!」


「――――ッ!」


下に行ってた目線をあげて母さんを見ると、目には涙を浮かべていた。

その涙の理由が何か。

母さんは俺の事を心配して怒っていた。

俺が家族に嫌われるのを嫌がって止めているのだと。

それで分かった。

彼女は本気で俺を家族だと思っている事を。

かつての宿敵を夫として見てくれている事を。


「私は一人で頑張れるわ。でも……それが終わったとして、その後はどうなるかは分かるでしょ。」


「……そう、だな。だがそれでも、かつての同志を見捨てるのは、俺の性分じゃない。それは知ってるだろ?」


「ええ、一番知ってるわ。だから私は止めない。止める権利がないから。」


「ごめ……いや、ありがとう母さん。二人を頼むよ。」


俺は礼を言って母さんと抱擁した。

次に会えるのは果たしていつになるか。

本当なら家族を連れて行ってあげたい。

だが今の俺の目的のためだけに、家族を死に追いやらせるやり方は絶対にしたくない。

それが、最後に思った俺の意思だった。


それから数日経って、俺自身の死の偽装を立てた計画を実行して、俺は日本では死人になった。

そしてそれと同時に、魔王ガギエルとしての俺を復活させて、母さんとの別れを終えて魔界に向かった。


そのあとの行動は早かった。

魔界に残ってるのを祈りながら探してた「楽園派」を見つけては情報をもらって探す。

それを永遠にやり続けた。

魔王が生きてたなら大騒ぎになってたが、幸い魔王時代だった俺の面影はほとんどなく、見つかってもただの人間とだけでしか見られなかったのには助かった。


「楽園派」には本名では行動できないから、あえて「何某」という名前で行動し、服装も目立たないようにローブなどで隠したりして活動していた。

途中でかつての側近だったシリウスには諸にバレてしまったが、この際協力できるものには頼むしかないと思った俺は、彼女と別々に探しながら行動をした。


数年経ったある日、魔王マリアベルと呼ばれてる少女が正式に魔王の座に座り、人類側が勇者を召喚するのを知った俺は、どんなのが勇者になったのか気になって王都に訪れた。

タイミングを伺ってから召喚された勇者の顔を見て、俺は言葉を失った。


「――――――零…?」


召喚された勇者が、まさかの俺の息子だった。

見間違いと思ったが、数年見てなくても分かった息子の姿に複雑だった。


「これも因果なのか? まさか零が母さんと同じ勇者なんてな。」


顔を見てる限り、大丈夫なのは分かる。

だがこの世界は死が隣にいるような場所。

もし零が死ぬような事があったら、絶対に助ける。

たとえ何処に居ようが、絶対に守ってやる。


「せめて埋められない幸せは、贖罪(これ)で許してくれ。」


零を見守りながら、俺は王都を出て目的のために進んだ。

いつかまた来る幸せのために。

またあの時みたいにみんなで笑いあるように。

そんな思いを胸に、俺は救い続けた。

戦いがいつか終わりを迎えてくれるのを願いながら。

【白崎湊】

零と華怜の父親。

前世は魔王ガギエルとして魔界の王として君臨していたが、自身が戦いを嫌う「楽園派」であり、当時勇者として召喚された白崎彩音に本音をぶつけて戦った。

死後は女神に頼んで地球での生活をしたいと頼み、その後勇者を終えた彩音と再会して結婚した。

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