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127話 魔王城訪問

『ご主人様、アレで合ってますでしょうか?』


「ああ、あれだ。あの湖が魔界に唯一繋がる場所、【縁者(えんじゃ)の湖】だ。」


流れていく雲や大地を見ながら飛び続けいた倶利伽羅と、背に乗って場所をずっと確認していた俺は、パラディエスの最西端に向かっていた。

ちょっと時間が長くて速すぎる長遊覧飛行をしながらも、ついに最初の目的地である魔界の入口になってる湖に到着した。


『かなり長い飛行でしたね。』


「お疲れさん。とりあえず話をするから近くの湖畔に下りてまずは休憩だな。」


『分かりました。』


倶利伽羅はゆっくりと降下していき、一度人に戻ってもらってから、この後のために一度湖の近くにおりて休憩をすることにした。


「最初に聞くけど、倶利伽羅は魔界に行ったことはある?」


「いえ、私は初代様の最期には立ち会えないままずっとオーエドにおりましたので、魔界には一度も……。」


「……そうか。なら、頼りになるのは俺の記憶だけか。」


なんか悲しい記憶を思い出させちまって申し訳なくなったけど、本人は何ともなさそうだし、魔界は俺の記憶で行くことになったし、これで次の段階に進めそうだな。


「ところでご主人様、どうして急に魔界に行くことになったのですか?もしかしてですけど、新しい魔王が目覚めたとかですか?」


「いや、魔王が目覚めた訳じゃない。どっちかって言うと、復活したって思えばいいぜ。」


「復活って…、いつの魔王が復活を…?」


「復活したのは……真莉亜の前の魔王だよ。」


真莉亜の先代の魔王。

つまり母さんの時代の宿敵だった魔王。

今から会いに行くのは、その魔王であって、かつて真莉亜が拠点としていたあの魔王城に向かう予定としているのだ。


「先代魔王は、どのような方か分かりますか?」


「母さんの本に書いてあった事があってるなら、【沈黙の修羅王】って二つ名を持ってたとされていて、部下が死んでも悲しみや怒りを出さなかったとされてたから、その名がついたって事になってるよ。」


ちなみに俺の方の本に書いてあった真莉亜の二つ名は【無心の轟炎王】って二つ名になってて、本人の話を知る限りその通りでちょっと笑いそうになったのはここだけの話。

確かに侵略っぽい事してないから、その通りだと思ってしまった。

でも地味にかっこいい二つ名だから羨ましい。

俺もそういった二つ名が欲しかった。


「まさか今から魔界に行かれるのは、その魔王を殺すためですか?」


「殺すと言うよりかは……シバキに行くって言った方が正しいかな。」


「し……シバキに?」


倶利伽羅は何故って顔で俺を見てきたが、ここで言ったら面白くならないし、倶利伽羅には悪いけど、着くまでは秘密にしておくとするかな。


「な、何か恨みでもあるのですか…?」


「あるな、ありったけの恨みが。それを知りたきゃ今から行くとするか。」


「は、はぁ…。」


休憩を終えて、倶利伽羅にはもう少し頑張ってもらうため、もう一度龍の姿になってもらった。

そして俺も魔界に行く以上、何処で戦闘になるか分からないからこそ、先に魔装に着替えて、倶利伽羅の背に乗ってから一度上に飛んでもらった。


「いいか、湖に入ったら一気に進んでいかないといけねぇ。途中で止まっちまったら失敗して、俺たちは湖の底で溺死するのがオチになってまう。」


『一気に……、速度は?』


「特に考えんでいい。振り落とされないように体は固定するから、お前は構わず進み続けろよ。」


『了解しました。』


倶利伽羅は速度をつけるために少しずつ速度を上げながら飛行していき、充分な速度になったところで俺は体を叩いて合図をした。


かつて俺が勇者だった時の入国も、帰りはメリッサのおかげで楽だったが、行きはホントにキツかった。

飛行できる魔道具で魔界入りをしたけど、あの時は壊れないか不安だらけだったな。

今回は二回目だし、速度も充分だから問題はないだろう。


「突入するぞ。倶利伽羅、急降下だ!」


『了解ッ!』


俺の合図で一気に急降下をして、湖に入る前に“攻殻天盾(アイギス)”を倶利伽羅の前に出し、それと同時に俺の“虚空”で全体をコーティングを完了させて、倶利伽羅と俺は人が出せない速度で湖の中に入った。

視界は一気に奪われ、底が見えない程の暗闇に呑まれていってるが、確実に今の段階では問題なく進めていた。


(この速度だったらもう少しだ……、……3……2……1……見えた!)


暗闇に一つの光が見えたと同時に、湖から外に一気に出て、緑溢れる場所から一点、荒廃した平地が続く世界へと変わっていた。


「倶利伽羅、もう大丈夫だ。着いたぜ。」


『ここが……魔界ですか?』


「ああ、相も変わらず廃れちまった世界だ。」


視界に見えるのはとにかく枯れた大地。

木や草もなければ、自然と言った言葉がひとつもない。

自然大好き組であるリリスやエメリルからしたら、ここは地獄とも言える場所だろうな。


『けど驚きました。湖の底に向かっていたのに、ここに入った時には空に向かっていたなんて。』


「魔界は地上の反転した世界。物を鏡で写すのと同じように、地上が「物体」だとして、魔界は「影」として存在してるんだよ。」


『ではつまり、魔界はパラディエス大陸の影って思えばいいのですか?』


「そうだ。とりあえず入国できた事だし、さっさと魔王城へ向かって、最後の用事をすませようか。」


『はい。』


すでに魔王城の場所は把握してるから、倶利伽羅にはそこまで向かってもらって休ませてやるか。


それからどれ程の時間を飛んでいたか。

何もないまま魔界の上空を駆け巡っていたが、俺はだんだん違和感を感じるようになってきた。


「…………妙だな。」


『妙……とは?』


「――――静かすぎる(・・・・・)。さっきから戦闘をしてる気配もなければ、魔族が一向に見当たらない。」


当時魔王だった真莉亜を討つために魔界に来た時は何度も戦闘を免れない時があったが、今回は明らかに異常だ。

ここに来てから一度も戦闘もしてないし、魔族とも接触してない。

魔族だけじゃない、ここに住んでる亜人も全部見ていない。


『見当たらないなら、変に戦わなくていいのでは?』


「まぁ……そうだけどな。」


倶利伽羅の言った通り、戦闘がないのはこちらとしてもありがたい。

でもここまでないのは逆に不気味だ。

まるで何かに誘われてるような感じで落ち着かなかった。

まさかだけど、もう統一させたのか?

真莉亜がいなくなった短い期間でか?

……いや、有り得ることなのか。


「あぁもう、考えるのやめッ! 直接問い詰めたほうが早いな。」


『では、このまま進んでいく方針で?』


「ああ。どうせもう近いんだ。何も考えずに進んでいくぞ!」


『はいッ!』


考えるより確かめる。

どうせあっさり答えは知れるし、今は会うことだけ考えよう。


それからしばらく飛び続け、ようやく真莉亜のかつて使ってた魔王城が見えてきて、崩壊していたはずなのに、姿や形はあの当時のままになっていた。


「あのデザインは元からだったのか。」


『どうされました?』


「いや、ただの独り言だ。城の前に下りてくれ。」


『了解。』


突然の奇襲を考えていた時の俺が馬鹿らしくなるくらいくらい何もないまま到着し、地面に降りてから倶利伽羅も人になったところで、俺が持ってる装備一式を再確認した。


「腰に妖刀と聖剣。ホルダーには怪銃(ニーズヘッグ)と新武器であるもう一丁の銃、「魔銃(まじゅう)コインヘン」。とりあえずこれで問題ないな。」


「では私も槍を……」


「あぁ悪いけど、倶利伽羅は俺の中でお休みしていてくれ。」


「えぇ!?」


やる気を出しているところに俺が水を差したからか、倶利伽羅はショッキングな顔で俺を見ると、少しづつ目に涙を浮かべ始めた。


くそっ、かわいいな!

泣かせたくないのに、泣かせたくないのに!


「もしかして……私は戦力外なのですか…?」


「いいや、実は前回はメリッサがあの湖にマーキングをしていたから帰りは楽だったんだけど、今回はそれがないし、俺の神格も不十分だから、お前が倒れられると帰れなくなっちまうからさ。だから悪いけど、今回はお前が唯一の帰れる手段なんだよ。」


前回は魔法研究バカことメリッサがいたからこそ、不安だったものをすぐに解決させてくれた。

でも実際どんなのだったか見えいなかったからこそ、今の俺にはできない。

俺の「眼」は一度見たものは完コピできるけど、初見で見ない状態では使えない。

だからどうやったってメリッサのあの魔法は作れない。

イメージしたとしても、その魔法にどんなのが使われていたのか分かんないから、どうすることもできないもんな。


「いいえ、帰り道はもう一つありますよ。」


「―――ッ!!」


魔王城の入り口にはいつの間にか執事姿の女性が立っていて、倶利伽羅は絶槍を構えて俺の前に立った。

だけど俺は途中から気配に気付いていて、向こうに殺意がないことから、何も警戒せずに首だけを入り口に向けた。


「あんたは?」


「我は魔王様の忠実な右腕。名をシリウスと申します。本日は魔王城に来訪いただきありがとうございます。」


目の前にいた女性、シリウスは自己紹介をしてからこっちにお辞儀をして、俺たちを迎え入れくれた。


正直外見じゃ分かんないけど、中身がヤバい。

だってコイツ、確実に悪魔王(デーモン・ロード)だ。

上手く隠してるけど、俺の眼では全部筒抜けになってるから、すぐに分かってしまった。

しかもこの魔力量……アジュールと同格だな。


「本来であれば待合室までご案内しないといけませんが、我が王が早めに会いたいと言われており、お疲れのところ申し訳ありませんが、王位の間までご同行をしていただけませんでしょうか?」


すぐに会いたい?

何故に?

なんか急ぎでもあるのか?

まあいいや。

傍から否定する気もサラサラないしな。


「分かった。案内してくれ。」


「感謝致します。ではこちらに。」


「……行こう、倶利伽羅。」


「は、はい。」


俺たちを連れて魔王城の中に入ったが、歓迎してくれたのはどうやら一人だけだったみたいだった。

その証拠に、俺たちが中に入ってからは周辺から殺意を浴びせられるやり方で歓迎された。


単純に殺意の視線をしてる者。

呻き声をあげえている者。

俺を知ってて「勇者ァ…」と言いながら怒ってる者。


形がそれぞれ違っても、俺に対する殺意が全部同じなのはすぐに分かった。

本来なら武器を構えて迎撃に集中しなきゃいけないが、誰一人として襲ってくることはなく、むしろ怯えてるようにも見えた。


「申し訳ありません。このような形で中に入れさせてしまったのは、我らにとっては恥なやり方だと重々承知しています。」


「気にしないでくれ。多分アンタか向こうのどっちかが何かしらの忠告をしてくれてるから、奴らは何もしてこれないんだろ?」


「おっしゃる通りです。今あなた様に怪我などをさせてしまえば、我が王はその物に「死」を与えるとおっしゃっておりましたので、皆手を出せずに見ているだけなのです。」


「やっぱりか。」


あの魔王…自分の部下に圧政してんのかよ。

まぁそのおかげで消耗せずに会えるのだから何も言わないけど。

だがここに来て、残ってた疑問が完全に確信に変わったのは事実だな。

やっぱり魔王は……あの男なんだな。


それからは魔族の殺意の視線が薄れていって、一番奥まで進んでいくころにはもう何も感じられなくなっていた。

そしてついに、真莉亜がかつていた最奥の部屋である【王位の間】の目の前にまでやって来れた。


「お待たせしました。この扉の奥に、我が王である魔王様がおられます。」


「――――一応確認だが、これから行う行為に邪魔はしないか?」


「はい。これからは王とあなたの二人のお時間。我は何も手出しなどはしません。」


「そうか。なら倶利伽羅、お前も部屋に入ったら邪魔をするなよ。」


「えっ…、あぁ…はい。」


倶利伽羅はまだ分かってないようで、困惑しながらも俺の指示に従ってくれた。

そして俺は何も言わずにシリウスに視線を送ると、向こうも分かったみたいで、王位の間に繋がる扉を開けた。


開けたと同時にやってくる巨大な圧。

肌を刺すかのように流れてくる魔力。


俺はそれを感じながらも、静かに中に入っていった。

中はかつての決戦と変わらない姿になっていて、唯一変わっているなら、玉座が前より少し派手になったくらいしか変わってなかった。


上の巨大な結晶が部屋を照らす。

張り詰めた静かさが恐怖をそそる。

静寂が部屋を包む。

闇が心の奥の恐怖を(つつ)く。


「やっと来たか。」


そんな中、玉座に座ってる一人の男の声が部屋に響き渡った。

俺は声が聞こえたほうを向く。

その目に映ったのは、懐かしい姿。

忘れもしない、あの優しい顔。

忘れもしない、あの声。

飽きるほど聞いてきたその声に、俺はどんな感情を浮かべてるのだろうか。

今の俺には説明ができなかった。


「久しぶりだな、()。」

「久しぶりだね、父さん(・・・)。」


俺の目線の先にある玉座。

そこに座っていたのは、かつて死んだはずだった俺の父親だった。


俺は走った―――その玉座に向かって。

俺は抜いた―――懐にあった妖刀に手にやって。

俺は飛んだ―――人の領域から外れたジャンプ力で。


「元気そうでよかったよ。よくここまで来てくれたなr―――」


「陸の太刀“地獄突き”――――!!」


「うぎゃあああああああッッッ!!」


そして玉座に座ってる大馬鹿野郎に、怒りの剣技を放った。

【白崎家】

・白崎零→六代目勇者

・白崎華怜→人間&悪魔のハーフ

・白崎母→五代目勇者

・白崎父→白崎母の時の魔王


・真莉亜→零の時の魔王

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