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126話 魔界入国の下準備

「―――今、歴史はまた動き始めたわ……400年ぶりにね。」


「……始まるんだな。またあの(・・)時代が。」


何年と続いたあの忌まわしき戦争。

平和を望んだもの同士で守ってきた世界。

それを壊す害獣。


これ以上はさせない……、絶対にこの時代で終わらせる!


「残りは?」


「ない。また出たら連絡する。手段はティファニスが使ってたやり方で。」


「分かったわ。私は私なりに準備をする。」


「こっちは大罪の結晶核の回収を優先。のちにアトランティスに向かう。」


「時期の目途は?」


「なしで。4つも回収となると期間が皆無だからな。」


最後はわずかな会話だが、お互いに理解し合えた。

道が違えど、目的地は一緒だったから。

そして終わった後の世界も、一緒の夢を見つめてるから。


「じゃ、俺は倶利伽羅を探して行くよ。」


「行先は?」


「魔界だ。今度は今の(・・)俺の事情だからな。」


「分かった。気を付けてね。」


「ああ。」


ホルスティとの話を終えた俺は、部屋を後にして倶利伽羅がいる場所に向かった。

廊下を出て少しだけ教室内を見たけど、全員が何かしらの違和感に気が付いたみたいで、授業を中断して体の変化を探っていた。


体が変わってると思って顔を触ってる者。

魔法が変わってないか確認している者。


それぞれ行動が一緒だったりバラバラだったりしてるけど、生徒と教師が全員で確認しているのを見ていると、帳は完全になくなった証拠になる。


「混乱しているからこそ、基礎からオリジンに変える機転になるかもな。」


俺は窓から中を覗くのをやめてから廊下をまた歩き出し、とりあえずこっちに戻すメンバーを考えることにした。


「俺の従者だと、倶梨伽羅を除いたとして……まずリラは除外。あとはアジュールだけで、それ以外はこっちに戻すか。」


アジュールは戦闘狂じゃないけど、(ロード)だから危険視されても困るし残そう。

サヨリが若干不安だけど、事情を知ってる王様なら何とかなるだろうし、最悪アストレアとエメリルに頼むかティファニスたちに全投げしよう。

正直ティファニス以外に対しての軽い仕返しとして。

ティファニスにはあいつ等を送った後に詫びの品でも用意でもするか。


「反応だとこの辺り……あ、いた。」


学園の別棟に行ける渡り廊下で訓練場を見ていた二人を見つけて、俺は二人がいる場所に歩いて向かった。


「おーい、二人とも。」


俺が声をかけると、二人も俺に気づき、俺の方に向かってきた。


「ご主人様。」

「お話は終わられたのですか?」


「ああ。話も終わったし、俺たちはお暇させてもらうよ。」


「かしこまりました。」


「じゃあ倶利伽羅、行こうか。」


「はい。」


俺たちはシェチルに礼を言って学園を出て、また人気のない場所で転移をして、倶梨伽羅が人化したあの場所に戻った。


――――以上が20分前までの出来事で、現在は復活させたスキルの“武器錬成”を使って妖刀を鍛錬しなおしている真っ最中だ。


「いや、回想なっっっが…」


自分でやってて長すぎたと思ってる。

そのせいで頭が疲れてきた。

思い出すのに頭使わなきゃよかった。

帰ったら糖分とろう。


俺は気を取り直して錬成を続けた。

“武器錬成”は魔力で剣などといった刃物を生成させれるスキルで、魔力量によってその刃の強度や鋭さは変わる。

そしてかつて自分で作った妖刀は、勇者だった時の魔力量で作ったものだから、正直不十分だった。

人を斬れるくらいの鋭さはあったが、斬鉄までは難しく、知らないうちにちょっと刃こぼれしてた。

だからこうして錬成を繰り返して、絶対に次は折れないであろうってくらい魔力を使っていた。


「はぁぁぁ………はぁ!」


ちなみに倶利伽羅は人化になったばっかで今の自分に慣れてないだろうし、俺が作業をしてる間は自分がどれくらい動けるかと、今の体を慣れさせるための自主練をさせていた。

で、今は何か必殺技が出せないか考え中で、何故かずっと正拳突きばっかしていた。


なんかのイメージをつかんでるのか、それとも適当にやってるのか分かんないけど、まぁあれで感覚がつかめるのなら何も言わんめ。

それにもう自分の体に慣れてきてるみたいだし。

もしかしたら意外と感覚を掴むのも早いのかもな。

だとしたら何かしらの技とか覚えるかもな。


「よし、こんなもんだな。」


妖刀の錬成が終わって、試し切りで近くにあった岩を切ってみることにした。


(から)の太刀“無空剣(むくうけん)”」


俺はいつも試し切りで使ってた剣技を使って岩を切ると、岩は紙切れと同じように簡単に切れて、俺が振った跡がくっきり残るようにきれいな一本線ができた。


「グッド! いい塩梅だ。」 


“空の太刀”は技の通り、何の変哲もない魔法なしの普通の一振りの斬撃。

なのに岩が簡単に切れたってことは、妖刀の鋭さが格段に上がった証拠だ。


「これでしばらくは聖剣の代理になるな。あとは鞘に収めて完了っと。」


「あの……ご主人様…。」


「ん?」


作業を終えて体を伸ばしながら横を振り返ると、いつの間にか正拳突きをやめてこっちに来ていた倶利伽羅が、俺が作業を終えたタイミングで声をかけてきた。


「体はどう?」


「学園に行った時からすぐに歩けたので、早めに慣れる事が出来ました。」


「そいつァ良かった。」


確かに学園でも簡単に歩いてたし、もしかしたら慣れるのは早い方なのかもな。


「ご主人様、一つお願いをしてもいいですか?」


「何だ?」


倶利伽羅が頼み?

可愛い子の頼みならなんなりと!

…と言いたいけど、体術は勘弁してね。

俺そこまで体術のセンスはないから。

どっちかと言えばトモがセンスある方です。


「私、人になって分かったのですけど、射程が短くなって感覚がドラゴンだった時の私のようにならないんです。」


「まぁ人化してるなら当然か。」


「それで何ですけど、ご主人様の力で槍を作ってもらってもいいですか?」


「槍?」


体術じゃなかったのは助かったけど、槍ですか。

話の内容から察するに、多分ドラゴンの時と同じリーチの長さにして、早く感覚を覚えさせようと思ってるんだろう。

別に本人の意思なら俺は何も言わない。

でもどうしても気になってる事があった。


「確認だけど、槍って使えるのか?」


「実物を触ったことは無いですが、あの方とは違う方がオーエドで槍術を教えてる際に見て覚えてるので、もしかしたら使えるかもです。」


「なるほど、オーエド槍術か。そういえば確かいたな、昔修行してる時に槍術で槍の対策をするために協力してくれた奴が。」


オーエド槍術はかつての建国者たちの一人が異世界の人に伝授させたもので、今でも一番槍や槍兵の部隊が使っている伝統術。


『敵を引き付けず、先手をとって討て。』


槍を持つ者は今でもその教訓を頭に染み込ませて戦場に向かうのが形となってる。


「槍といったら、一応俺が持ってる槍が一つあるけど、持ってみたらどうだ?」


俺はかつてシルヴィアに持たせた槍、「絶槍キュリオス」を取り出してから倶利伽羅に持たせた。

倶利伽羅は俺から少し離れて、キュリオスを一通り振り回して、自分に扱えるかどうか試した。


突き、薙ぎ払い、回転


色々と振り回しを試して、「ふぅ…」と息を吐いて、槍を持って俺の方に来て、近くに来たタイミングで倶利伽羅に聞いた。


「どうだった?」


「まだ人化したばっかで少々不安がありますが、槍自体はちょうどいい重さですので問題はないです。」


「じゃあそれ譲るわ。これからはお前が使え。」


俺そう言ってあっさり絶槍を譲り、倶利伽羅も譲るなんて思わなかったのか、何も言わずにただ驚いた顔で俺を見てきた。


そんなに驚くことか?

……いや、驚くのか。

簡単に持ってた武器を譲るなんて普通はしないもんな。

でも俺って絶槍を持ってても使い所なんてないし、メインウェポンは剣が二本と銃が二丁だし、このまま宝の持ち腐れになるよりかは誰かに使ってもらった方が、武器のためだろう。


「あの、いいんですか?」


「別にいいぜ。俺は特に問題ないし、必要になったら作ればいいしな。」


まぁそれが来るのはまだ先だと思うけどな。

今の所は虚空の新技で使うアレ(・・)とあいつら用の武器だけで充分だな。


「ありがとうございます。これは私の家宝として、これからも長く使わせていただきます!」


「あぁうん…、それは任せるわ。さて行くか、懐かしの魔界に。」


「では移動は私に。」


倶利伽羅が本来の龍の姿になり、俺が背中に乗ったのを確認してからその場を離れるように飛んで、魔界がある方へと向かった。


『ご主人様、魔界とはどんな場所なのですか?』


「なんだ、お前は知らなかったのか。魔界は文字通り、魔族が中心として生きてる魔境で、何処にいても争い事が行われ、血が大地を赤く染めるような地獄の場所さ。」


『同族どうしで争いをしてるんですか?』


「俺が知ってる限り、唯一だろうな。でもこれだけは言うが、誰も彼もが争い好きなんかじゃない。うちにいるアジュールやリベルも、悪魔王(デーモン・ロード)でありながら争い事は好んでないし、今の王都にも魔族は少ないけど人間と一緒に暮らしてるぜ。」


『今の王都は魔族も住んでるんですか!?』


「ホントに少ないけどな。」


王都に住んでる魔族は、角ありでもなしでも関係なしに暮らしていて、全員が普通の暮らしをしたいと言って王都に移住してきた者ばかり。

もちろん普通に働いては王都のために暗部として動いたりと、それぞれの思考で動いており、この世界で一番、俺が望んでる形が王都だけだ。


『王都の王は、魔族を受け入れるのに否定しなかったのですか?』


「昔、本人に話を聞いたけど、敵としての意識があったから最初は警戒してたらしい。でも何も問題を起こしたりしなければ、怪我人の治療や何もかもに協力したりしていて、いつの間にか受け入れる方針に決まって、貴族や反対派に論破で撃退して、普通に暮らせるようにしたんだよ。」


『ではその魔族の皆さんは、許してくれた王様にとても感謝してるのですね。』


「まぁな。昔だったらありえないとされた人間と魔族の結婚も少ないけどしてる者もいるし、半魔族の子共も王都にいるぜ。」


今は普通に暮らせてる。

でもいつかその近郊は壊れ、争いになる火種が出来てもおかしくない状況だ。

王都が今できるのは、その火種を作らせないようにすることだ。

今は俺にはできない。

頼むぜ、王様。


『ところでご主人様、この方向であってるのですか?』


「ああ。この先に魔界へ繋がる湖があるんだ。そこから魔界に行けるようになってるから、そこまで頼む。」


『了解しました!』


倶利伽羅は返事をすると同時に速度を上げ、風を切る勢いで目的地である湖まで飛び続けた。

【歴史の帳】

本来あったパラディエスとアトランティスの歴史などを消すためだけに存在していた結界。

創造神ホルスティともう一人の人物の計画で、その存在はゼロだった零が知ってる人物である……?

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