13話 帰宅後の後始末
「「た……ただいまぁぁ……」」
重い荷物につぶされるんじゃないかって思いながら、何とか玄関に上がれた俺たちは、とりあえず身を軽くするために荷物を玄関に全部置いた。
「おかえりなさ―――――って、なんじゃこりゃあぁぁあ!?」
リビングにいた華怜が俺たちを出迎えてきたけど、予想以上の荷物に驚いてしまっていた。
まぁ服だけでも多いのに、今日と明日の食材。
それに加えてクレーンゲーの戦利品に巨大猫のぬいぐるみなんだ。
玄関を埋め尽くしたこの量を見れば、そうなってもおかしくはないか。
「ただいま、華怜。来てもらって悪いけど、この中に刺身とか生ものの食材があるから、それを冷蔵庫に入れ取ってくれるか?」
「いや…それはいいんだけど、何でデートなのにこんなに量がハンパないんだよ!?」
「いやぁ…楽しい事をやってたらはっちゃけ過ぎたんだよ。」
「はっちゃけるにしても限度を考えてよ! それに真莉亜さんの持ってるこの服の量って何なの!?」
「ごめんめ。知らないだろうけど、実は今日からここに住む事になっちゃったんだよ。」
「え!? じゃあ真莉亜さんは今日から私たちの家族になるんですか?」
「まぁそうなるな。華怜の隣の部屋にある空き部屋になるだろうから、そこは理解しておけ。」
俺が軽い感じで言うと、華怜は固まって何もしゃべらなくなってしまった。
というより、思考が宇宙にいってるわ。
最近固まるなこいつ。
「お…お兄ちゃんさん……もしかしてご存知で?」
「俺は途中で知った。何か言っても変わらないから受け入れる事にしたんだよ。」
「そ、そうですか……」
「そんな事より、早く刺身を冷蔵庫に入れてくれ。終わったら、ついでに獲っておいたお前用のぬいぐるみを渡してやるから、頼んだ。」
「あぁうん、分かった。」
華怜は俺の言う通りに頼まれて、刺身が入ってる袋を冷蔵庫に入れに行った。
真莉亜の件は、母さんが帰ってきてから聞いてみるか。
「さて、俺たちも中に入るか。もう大分、体力も戻ったしな。」
「そうだね。私も晩御飯の手伝うよ。」
「あぁ、ありがとう。」
とりあえず、ぬいぐるみとかは真莉亜の部屋になる場所にまで持っていくか。
菓子はどうにかできるし、華怜と母さんの分の景品は俺が持っていくか。
真莉亜は自分の部屋になる場所を見てる間に、俺は二人の部屋に景品を置きに行った。
華怜の部屋にはぬいぐるみで、猫ではなくクマ。
そしてフィギュアは華怜の好きなアニメのキャラだ。
母さんの部屋には低反発枕と、買い物の時に買っておいたアロマキャンドルを置いておいた。
我ながらいい事したと思ってる。
特に母さんには少しでも体を休ませてあげたい。
いつも頑張ってるから、俺なりの感謝がこんな感じだけど、ホントに感謝している。
「いっそ母さんにだけ、俺が勇者だって事を話して、夢の世界に連れて行こうかな……」
その辺は、真剣に考えておいた方がいいな。
俺自身にもリスクはあるけど、母さんのためなら覚悟をするしかない。
だけど、今の関係が壊れたくない。
慎重に事を済ませないとな。
「よし、とりあえず荷物はこんなものか。早く下に降りて飯の準備に取り掛かるか。」
「だったら私も手伝うよ。何もしないよりした方が楽だし。」
「そう言ってくれるなら助かるよ。そっちは大丈夫そうか?」
「うん。部屋も十分広いし、ベッドや机も綺麗だから大丈夫よ。」
部屋を見せてもらったら、部屋は埃一つないほど綺麗にされてあって、いつでも誰かが暮らせれるようになっていた。
「あぁそういえば、父さんがいなくなってからこの部屋、ゲストルームになってたんだっけな。もう片付けてたんだな。」
華怜の横の部屋。
実はその部屋は父さんの部屋だ。
数年前までは、ここに父さんが寝たり仕事をしたりしていた。
しかし今はその面影もなく、ゲストルームだった部屋は真莉亜が住めるように綺麗になっていて、新品といえるほど綺麗にされてたベッドと机が置いてあった。
「零君のお父さんは、今はどうしてるの?」
「……五年前、病気で死んだよ。」
今から五年前。
俺の父さんは突然倒れて、未知の病に侵されてしまった。
医者からは対処の余地がないといわれて、ただその日が来るのを待つしかなかった。
あの時から俺は、父さんとの約束を守って生きてきている。
今でもそれは変わっていない。
「え?……あっ、ごめん。知らなくて聞いちゃって。」
「いや、いいよ。いずれ教えようと思ってたし、その手間が省けたのなら問題ないよ。」
俺は真莉亜の部屋を確認し終えて、持ってきた荷物を全部置き終えてから、俺は一階に下りた。
「手巻きだから簡単だし、真莉亜と華怜は酢飯を作ってから海苔を出してて。」
「うん、分かった。」
「そんじゃあ、俺は買ってきた刺身を皿に乗せて、あとはきゅうりや冷蔵庫に入れてたシソの葉も出すか。」
華怜に頼んで冷蔵庫に入れてもらってた刺身と、前に買ってたきゅうりとシソの葉も一緒に出して、皿を棚から取り出して盛り付けていった。
その盛り付けてる間に、俺は少し考え事をしていた。
真莉亜が収納庫を使えるなら、異世界の道具とかもそのまんまなのか?
もしまんまだったら、その中身を確認したいし、もらえるならもらいたいしな。
「なぁ真莉亜、この後なんだけど―――――」
「今よ華怜ちゃん! 全体にお酢を入れていって!」
「はい大将ォ!」
「「ハイハイハイハイハイッ!」」
……見なかったことにしよう。
そして話も後でしよう。
なんか寿司屋のノリになってるし、ここで水を差すような事はしたくないしな。
それにしてもあいつら、もう仲良くなったのか。
ま、別にいいか。
それに話も急ぎじゃないし、ゆっくり待つのもありか。
「ただいまァ~」
「おっ、ちょうど帰ってきたみたいだな。」
「おかえりーお母さん。もうすぐ晩御飯だから、一緒に食べない?」
「あら、今日は手巻き寿司なのね。だったら母さんも一緒に食べようかな。」
そういって母さんは二階に上がって、わずか一分いつもの部屋着に着替えてきて、そのまま洗面所に向かって化粧を落としに行った。
いや毎度思ってたけど、なんでそんなに早着替えができんだよ!?
たった一分だよ!?
そんなの普通はできねぇよ!
「もういいや、考えても無駄か。」
「お兄ちゃん、まだ盛り付け終わんないの?」
「早くできないと食べれないよ?」
二人から言われてそっちを向くと、どうやら酢飯と海苔の用意はできていて、先に椅子に座って待っていた。
俺も母さんが戻ってくる間に残りの刺身を盛り付けて、テーブルに持って行った。
「お腹空いたァ~……早く食べよう。」
「そうだな。母さんも来し、さっさと食べようか。」
「あっそうだ。お兄ちゃん、今日の真莉亜さんとのデート、あとで教えてよね。」
「なんで教えなきゃいけねぇんだよ。まぁいいけどよ。」
だけどまずは飯だ。
腹が減ってるなら、先に満たすのが先だ。
四人でテーブルを囲って、全員が座ったところで、俺が両手を合わせたのと同時に、三人も手を合わせた。
「そんじゃまぁ、いただきます!」
「「「いただきまーす!」」」
今日は手間を省いた手巻き寿司でも、今日は真莉亜の歓迎会。
どんなものでも、美味ければ問題はないだろう。
今日の夜は、少しだけ楽しめる夜になりそうだな。




