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122話 会談①

しばらく会談の回が続きます

「まずは歴史からだな。400年より()がないのは何でだ?」


俺が最初に出したのは、この世界の歴史についてだ。


勇者時代から魔法と一緒に歴史の本を読んでいたから思っていたが、この世界のはじまりの歴史は断片的だった。

ある本には神があらゆる種族を創ったと書かれていたら、別の本には神と悪魔が争ったことで種族が生まれたと書かれてあったりと、内容はバラバラでさっぱりだった。


そして俺が最初に半分の記憶を取り戻したと同時に思ったのが、魔力量の少なさだった。


前世の記憶が正しければ、その当時の人間の魔力は平均でも30000以上はあった。

なのに今の歴史は英雄クラスが10000弱くらいになっていて、尚且つ魔法も明らかに弱い。


記憶が完全に戻ったから分かったけど、確実に歴史が変わりすぎてる。

歴史が衰退したとしても、これは異常だ。


「俺のとこに最近、アジュールって悪魔王(デーモン・ロード)が従者に加わったけど、そいつの魔力量は29万もあった。これはあの当時の悪魔たちと同じ魔力量だ。最初は魔王レベルと思ったけど、これが普通だったんだよ。」


「あぁ……やっぱ逃れてたのがいたんだね~…。」


こいつ、なにか隠してるな?

さっきからしどろもどろだし、疑える余地はある。

隠す気なら、これを言えば致命的になるだろう。


「なぁホルスティ、何故「アトランティス」が歴史から消えてるんだ?」


「ヴっ…!」


アトランティスは俺の一番知ってる文明だ。

それがなくなってるとなったら俺は黙ってられない。


「あぁ…その……何でだろうねぇ~……。」


俺がそれを言うとホルスティは明らかに動揺した。

やっぱなにか隠してる。

しかも俺に知られたくない理由付きで。

なんかムカついてきたな。


「教えろ……何故だ?」


「わー分かった! 分かったから右手に魔力を集めないで! 周囲が更地になっちゃうから!」


少し右手に魔力を集めて脅迫したらようやく話す気になってくれた。

初めからそうしろってんだよ。

俺だってここを壊したくないんだから。


「まず歴史が無くなったのは、私がアトランティスを消すために【暦の帳】を下ろしたからだよ。」


「帳ィ?」


俺はそんなの知らない。

つまり俺がいない空白の2000年の間の出来事。

何でそんなことをするんだ?


すると横でずっと黙ってた照が俺に声をかけてきた。


「零ちゃんは記憶が戻ってるなら一つ聞くけど、いなくなった種族がいるのは分かる?」


「いなくなった種族? あるならアトランティスの文明の時にいたルシェ族。あとは―――――」


その時、俺の頭の中で一ついない種族を思い出した。

アトランティスにいたルシェ族もそうだが、勇者として召喚されてから有名なあの種族がいないのに気が付いた。


「そういえば、何でドワーフが絶滅してるんだ? 俺たちの時代にはいたよな?」


――――ドワーフ族。

ゲームでは定番のキャラであり、前世でもいた種族だ。


だけど何故かパラディエスには存在していない。

子孫もいなければ、歴史からも消えてる。

これも明らかに異常だ。


俺の疑問に答えようとしたホルスティが、暗い表情になって小さく口を開いた。


「デウス・エクス・マキナ……。」


「は…?」


「別名は【機巧天使】か、もしくは【機械仕掛けの天使】って呼ばれてるわ。」


「待て待て、何だその…機械仕掛けの天使ってのは?」


ドワーフの絶滅を知ろうとしたら、何故か今度は全く知らないワードが出てきて、俺はさっぱり分かんなかった。

何でドワーフが絶滅するのに、それが出てくるんだ?

いなくなるのに意味があるのか?


俺が頭の中で必死に考えてると、今度は照が俺に説明してきた。


「元々アトランティスが歴史から消えてるのは、ドワーフがある禁忌を犯したからなの。」


「その禁忌ってのは?」


次に出た言葉で、俺はドワーフが消滅をしたのを納得することになった。


「……人間を捕虜にしてから機巧天使にさせて、「神殺し」をしようとしたからよ。」


「はぁぁぁ!!?」


照の口から神殺しが出てきて、俺は驚愕した。

初めこそはドワーフが神殺しをしようとしてた事に驚いてたけど、「神殺し」のワードで一気に冷静になっていき、俺は少しずつ真実を聴いて言った。


「ドワーフは神殺しの技術は知らないし持ってないはずだ。となると、アトランティスの技術を盗んで利用したのか?」


「最初にアトランティスの技術を奪ったのがドワーフで、矛先を最初に向けたのが人間なの。」


「人間との間に戦争は?」


「ない。それどころか友好的だったわ。」


特に理由はなしか。

襲ったのは実験のためで、力がなかった人間なら反撃はしてこないとみて選んだのかもな。


「他の種族も捕虜に?」


「やったのは人間だけ。「空の器」だからさせるのに最適だったのよ。」


「あぁ、なるほどな。」


そういえば、人間は「空の器」だったから形を変えやすかったな。


人間は女神や天使のクローン。

一から創られたからこそ、器の中身は空っぽ。

獣人やエルフなどとは違い、何も無い。

だからこそ何かに染まりやすい。

真っ白なキャンバスと同じだ。


「その機巧天使はまだいるのか?」


「そこは素直に分からない。隠してるのかもしれないし、隠れてるのかもしれないわ。」


情報はなし。

存在してるかもしれないのか。


「俺の眼で探してもいいが、生憎起きたばっかだからまだ完全じゃない。リハビリでもしねぇ限り、視ることは出来ねぇだろうな。」


「時間はかかりそうなの?」


「いや、時間が操れるからすぐに終われる。だがやるべき事が多すぎるから、それが終わってからになるだろうな。」


これが終わっても、まだやる事はある。

そっちも俺の大事な事情であるからこそ、今やったら曖昧になっちまう。

今日の用事が終わってから、それに取りかかるべきだな。


「アトランティスの文明は、もうこの世には無いのか?」


「ううん、まだあるわ。かつて(・・・)の大陸に今でもね。」


「かつての?」


その言い方だと、今のパラディエスはかつてのアトランティスのあった大陸じゃないのか?


――――いや待てよ、そういえば大陸の面積って……前世俺の知ってる面積より小さい。

多分大きさは半分くらいか?

だとしたら今は何処に?


「なぁ、この星って前より小さくなったか?」


「――――気付いたのね、大陸が小さいのに。」


「……何かしたんだな。」


「したわ、大陸を二つ(・・)に分けてね。」


「二つに…!?」


つまり簡単に言うならこうか?

元々ひとつだった大陸をパッカーンってして、アトランティスを片方に固めて隠して、パラディエスだけを歴史として続けたってことか。


「いや地形変えてまで隠すのかよ。てかどうやってやったんだ?」


「いるじゃない、最高神に全ての大地を統べる者が。」


「……地轟神(カルア)か。」


カルアだったらそんな馬鹿げたやり方なんて容易いはずだ。

あとはどうやって隠してるかだ。

ルールを作ったとしても、必ず誰かがタブーに触れるから不可能だし、あいつの神格で隠してもいずれバレる。

となったら一番やりやすいのは…―――――


「クロノアの力で空間を二つに分けて隠す…?」


「うそーん……何故分かったし…!?」


「あぁ、合ってたんだ。」


どうやら俺の予想は的中してたみたいだ。

恐らくクロノアでアトランティスの文明がある大陸の部分の空間を歪ませて、その近くを通っても気付かれないような結界を張ったんだろうな。


「じゃあアトランティスがある大陸に入れるのは、俺かクロノアだけになるんだな。」


「そうね。あの子ったら結構しっかりとした結界を造っちゃったから、同じ女神でも入るのは至難の業になってしまったわ。」


「それって俺への当てつけとかじゃないよな?」


最後まで仲良くなれなかった女神は数多いし、むしろ未だに俺たちを恨んでる奴がいる。

クロノアもそれに含まれるし、ある意味当たっててもおかしくないな。


「話は帳の件に戻るけど、対象外はいくつあるんだ?」


「ん、対象外って?」


「さっき言ったアジュールのように、歴史から消えきれてないものがあるように、その帳は欠陥なんだろ?」


「――――――うん。」


あ、自白した。

そこはあっさりしてるんだな。

まぁせっかくだし、知れるだけ知るとするか。


「俺の推測としてだが、対象から外れてるのは「全ての種族の【(ロード)】」と、「【神霊】や【神獣】」……って辺りか?」


「……正解。」


「いちいち当たる度にしょげるな。お前がやった事だろうがよ。」


さっきから俺が推測したのが当たる度に目線が下に行っては落ち込み、それ見ているとイラってするんだよ。

こいつって昔はこんなポンコツじゃなかったはずなんだけどなぁ…。

何処で何を間違ったんだか。


「あとは400年以上生きてる奴らだけど、そいつらの場合はどうなるんだ?」


アジュールを見てると、明らかに今の俺はただの主としてで、前世の俺は全く知らない雰囲気だった。


記憶をなくして力はまんま。

この時点で誰かは違和感に気付くものが現れるかもしれない。

現にリベル、アジュール、エミリアの三人のうちの誰かは疑問に思ってるはずだ。

それにエルフや魔族などといった長生久視(ちょうせいきゅうし)の種族も同じだ。

長生きしてる奴こそ疑問は大きいはずだ。


するとホルスティは手元の紅茶を一口だけ飲んで、小さく息を吐くと、俺を呆れさせる答えを出してきた。


「400年より以前の記憶はバッサリ切られて、自分たちは神によって創り出されたって思わせてるわ。」


「要は半ば洗脳をしてから騙してるって事でいいのか?」


「もうその解釈でいいわ。」


おい適当になったぞ!

嫌気さすな!

張り倒すぞ!

こうなったら本気で脅したるか。


「実はさ、試してみたかったんだよね。拳にありったけの魔力を込めて地面を殴ったら大陸が粉砕できるかどうかさ―――――――今やっていい?」


「すみませんごめんなさい真面目になりますので勘弁してください。」


俺だから出来ると思った瞬間、早口で止めにきやがったよ。

左右の二人も「本気でやるの…?」って言いそうな感じで真顔になってるし。


やらないからね、冗談だからね。

そんなことする気ないからね。

真に受けちゃダメだからね。


「で、帳の外しはそっちに全任せでいいのか?」


「あぁうん……え、今外すの?」


今やるとは思ってなかったのか、ホルスティは持ってたカップを落としそうになってた。

慌てて持ち直したが、少しだけ中に入ってた紅茶が服にかかって、まだ熱かったのか慌てて氷魔法でこぼした場所を冷やした。


「ちょちょちょ、ちょっと待って! 今から帳を外さないといけないの!?」


「あったりまえだろ? もう過去の歴史に蓋をしたところで、中身は隠しきれてないんだ。だったら堂々と全部さらけ出した方が気分がいいじゃねぇか。」


「で、でも、今は北の帝国が戦争をおっ始めようとしてる時なのよ! 今やったら確実に北の帝国はそれに食いつくわよ!」


北の帝国……師匠から聞いてたけど、まだ戦争しようとしてるのかよ。

あそこは転生者を利用しては技術をそのまんま兵器として使ってるし、王都やオーエドと戦力は変わんないし、厄介なものがあるな。


「でもクロノアが空間を歪めてるから入れないんだろ?なのになんの問題があるんだってんだ?」


「あそこはドワーフを最後まで包み隠してた国なの。だから下手すると、【神殺し】の兵器が一つか二つあってもおかしくないわ。」


「となると、「神話崩し(グングニル)」や「神殺しの銃身(ゴッドバレル)」があるかもしれねぇのか。」


どっちか警戒するなら……「神殺しの銃身(ゴッドバレル)」の方を警戒しとくべきだな。

あれは射程がかなり長いし、盾なんて瞬で破壊させる威力はある。

魔力を多く消費するから連チャンでは撃てないが、ホントにあるなら危険だ。


「とりあえず帝国は警戒するとして、帳を外すのに変わりはない。俺の方からも助太刀はするからな。」


「助太刀って……どうやって?」


「俺の従者たちだ。あっちにいるから話せば連れて着やすいし、戦力も前より増えたからこっちの人員を減らすことも出来る。真莉亜……魔王マリアベルの従者と合わせれば文句はないだろうし、すぐにでもメンバーを決めればこっちに送れる。」


あの時から桜姉たちもそうだが、アジュールや横にいる倶利伽羅といった即戦力になる奴がいるんだ。

それに母さんや櫻井先生も勇者として見つかった。


会長たちもいるが、あまりこっちに深追いさせてしまえば戦争に巻き込まれるし、何より会長たちは異能者の件でおってもらわないといけない。

戦力としては除外した方がいいだろうな。


「ホントに……外さなきゃダメ…?」


「マジで頼む。ここで外さなかったら後々後悔するのはお前の方なんだからよ。」


「――――ホントに?」


「娘に罵られたくないならな。」


「……分かった、外すよ。けど今は他にもあるみたいだし、外すのはその後でやるわ。」


ホルスティはようやく認めてくれて、帳を外す気になってくれた。

しかしそこまで外したくない理由でもあるのか?

まぁ目的はこれでまず一つなんだ。

帳も解除も後になったし、次の話をするか。

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