121話 創造神ホルスティ
「ほい到着、場所も完璧だな。」
虚空門を使って、無事に学園の近くにある人気のない場所に到着した俺たち三人。
本来なら城壁で冒険者カードを見せてから入らないといけないけど、照と倶利伽羅にはそれがない。
仮に作ったとしても魔力量で人じゃないとバレるし、めんどくさい事になるのは確定。
だからこそ、ここに転移して不法侵入したって訳だ。
犯罪なんてクソ喰らえだ!
バレなきゃいいんだよバレなきゃ!
「ねぇ、転移して大丈夫だったの?」
普通に不法侵入したのが怖いのか、照が心配そうに聞いてきた。
その心配を俺は自分の理論で返すことにした。
「バレなきゃ犯罪じゃないんだよ。それに6代目勇者は地球に帰ってる事になってるし、それはそれで問題になっちまうんだよ。」
「いつもの私みたいに変装したら?」
「冒険者カードで即バレだ。それにお前たちだってカードを持ってないし、作ったら魔力量で人じゃないのがバレるぞ?」
「……ごめん、安直な考えだったわ。」
「分かればよろしい。」
悪いと思ったのか、照は俺に謝った。
別に怒ってはないし、何も言わんでいいか。
「さて、表は人が多すぎるし、裏から学園に入るとするか。」
「裏があるのですか?」
「普段は使われてないけどな。前に一度、師匠に連れられてそこから入ったことがあるから、前と同じようにすれば入れるだろう。」
俺は二人を連れて裏口に向かい、誰にもバレずにその場所まで来ることが出来た。
裏口は普段は避難用などで使われたりするだけで、本来はあまり使われていない。
しかも学生の授業や訓練は裏ではしないし、ここから入るのが最適だろう。
「よし開いた。監視はいないし、急いではいるぞ。」
((コクッ))
二人は頷いて、俺を先頭にしてから中に入り、人気のない柱で止まって隠れた。
「ここまでは問題なしだね。」
「あぁ。この後は転移で一気に学園長室まで行くしかないな。」
「その必要はありませんよ。」
「「「ッ!?」」」
俺たち以外の誰かの声が聞こえた瞬間、俺たちは聞こえた方を向いて武器を構えた。
するとそこには一人の女性が立っていて、服装からして教師であるのは間違いなかった。
「お待ちしておりました。上で学園長がお待ちです。」
「……? 侵入者だと思わないのか?」
「レターバードであなた様がこちらに連絡を送ってくれたので、あの方が裏から入られるだろうと予想されてたので、待っていたのです。」
「読まれてたのか……。」
向こうもバカじゃないし、読まれるのは当たり前か。
伊達に創造神を名乗ってる訳じゃない。
むしろ俺が安直すぎたやり方だったな。
「俺たちは、素直に付いて行けばいいのか?」
「もちろんです。それが目的で待っていたのですから。」
「……まぁ、当然か。」
「では、こちらに付いて来てください。」
俺たちを待ってた女性は背を向けて中へ歩いて行くと、俺たちもそれを追うように付いて行った。
学園の廊下には生徒は誰一人としていなく、ちょうど授業があっているようだった。
「ここに来るのは、何気に二回目だな。」
「最初はどんなのだったの?」
「最初は確かぁ……魔法の基礎を覚えるために図書館で本を読んだり、夜はグラウンドで魔法の練習をしたりしてたな。今じゃ懐かしいものだよ。」
ここに来たのはホントに最初の時だけ。
それ以降は訪れてなかったし、ここの学園長とも会ったことがない。
だから思ってたより近くにいたのが意外だったわ。
「ところで、6代目であるあなた様は、ご自身の冒険譚を書籍化した本をご存知ですか?」
「―――――もうあるの?」
「ええ、すでに学生の間では人気でして、それを使って授業をされてる所も見られますよ。」
「オー……ノー……」
俺は廊下の真ん中で跪いて絶望した。
俺の冒険譚。
つまり俺のこっちでの行いが全部曝け出される事になる。
俺も母さんの二の舞になってしまうとは。
まぁ回避は出来ないのは分かっていたけど……分かっていたけど…!
「……聞きたくなかった。」
「もしかして、やらかしてるの?」
「最初の方で……盗賊を殺めました…。」
「あぁ……よくない思い出なのね。」
照は何となく察したみたいで、何も言わずに肩にそっと手を置いた。
うん、辛い。
精神的に辛い。
でも照のおかげで薄まってるからそこは感謝だな。
「だ、大丈夫ですよ! ご主人様が人を殺めたとしても、私はあなたに付いて行きますので!」
「コフッ…!」
クリティカルヒットだ―――!
倶利伽羅の言葉が俺の心を貫いてしまった―――!!
痛い……精神的に痛いよ今のは……
「倶利伽羅ちゃん……今のは、傷口に塩だよ。」
「常識のあるわたくしでも、流石に今のはどうかと…。」
「…?」
言った本人は素で言ったのか、何で俺が傷ついているのか分かってなかった。
こやつ……まさか天然か?
ロリっ娘で天然……。
何でだろう、何故か怒れない。
俺の読んでる漫画のキャラにそんなのがいたからあまり言えない。
ここは心に留めるか。
「あ…あの……もしかして、倶利伽羅はまたやらかしてしまったのですか?」
「大丈夫だ、お前は気にするな。これを精神を鍛える修行だと捉えたらかすり傷程度だ。」
「「いや、それは無理があるでしょう。」」
外野が何か言ったみたいだけど、そんなのは無視だ無視。
それにいつまでもここで立ち止まってる訳にもいかんしな。
早く会って用事を済ませないとな。
「よし、行くぞ。」
「足震えてるけど大丈夫なの?」
「大丈夫だ、問題ない。」
静まれ、俺の足。
これしきの事でへこたれるな。
未だに震えてる足を叩いて、ようやく大人しくなった足を前に出して、廊下の先へ進んだ。
それからは特に何もイベントなどは起きず、静かに廊下を歩いていくと、彼女が他のどこよりも大きいドアの前で止まった。
「ここが学園長室です。この先に、あの方がおられますが、よろしいですか?」
「あぁ、お願いするよ。」
「では…――――学園長、失礼します。」
2回ほどノックをしてドアを開けると、中には学園長の座る椅子でのんびり本を読んでる一人の女性がいた。
「やあ、待ってたよ。」
向こうも俺たちが入ってきたタイミングで本に栞を挟んで閉じると、椅子から立ち上がって、こっちに向かって歩いてきた。
「ようこそ、王都スカイティア魔法学園へ。そして…――――久しぶりだね、ゼロ、フォルトナ。」
「あぁ、こうして会うのは二千年ぶりだな。創造神ホルスティ。」
――――創造神ホルスティ。
この星を創り出した神であり、女神たちの母。
神格を取りに行った時から反応がなかったけど、まさか地上に降りて人間として暮らしていたなんてな。
しかも王都にある魔法学園の学園長とは。
世の中、何があるか分からんな。
「まさかこんな所にいるなんてな。正直驚いたぞ。」
「私も意外だったわよ。まさか6代目勇者が君だったなんて。」
俺は勇者で、創造神は王都にある学園の学園長。
これでお互いに会ってないんだぜ?
逆にすごいよな。
近くにいたのに初対面。
まぁ会ってても俺はまだ記憶がないから知らなかっただろうし、会っても特に意味はないな。
「せっかく来てるれたんだし、少しゆっくりしていってね。」
「それじゃあ、お言葉に甘えて。」
俺は部屋にあったソファーに座り、照と倶利伽羅が左右で俺にくっつきながら座った。
それを見ていた創造神が、今までで見た事がないような顔をしていた。
「どうしたんだ?」
「あ……あのフォルトナが……女神誑しに定評があったフォルトナが逆に堕とされてる!?」
「お母様も誑しって言うんですか?!」
どうやら女神誑しは創造神も認識してたみたいだ。
てか自覚してないのって本人だけかもな。
ぶっちゃけ面白いから真莉亜たちに言ってやりたいけど、流石にかわいそうだし、今回は目を瞑るか。
その代わり今から思いっきり煽ってやるけどな!
「ほ~らやっぱお前誑しじゃん! 親公認なら確定じゃねぇ~かよ!」
「ちくしょー何でだ! 何で私が女誑しの称号を持ってしまってるんだ!? そういったのは勇者だった零ちゃんが持つべきでしょうが!?」
「そりゃあ他の娘たちが……いや、殆どだけど…あんなにフォルトナに懐いていたら、不意にそう思っちゃってもおかしくないでしょ? それに彼は勇者だった時に見てたけど、誘われてもちゃんと断ってたわよ。」
「うっ……う~~~……。」
「諦めろ、それがお前の宿命だ。」
「あんまりだ――――!!」
【フォルトナは“女神誑し”の称号を手に入れた。】
え?俺は女誑しじゃないのかって?
まぁ確かに知り合いは男より女の方が多いけど、別に誑してる訳じゃなくて、ただ友人か親友になってくれる人達ばっかだったんだよ。
女性に対しては料理で。
男性とは大浴場や食事などで。
確かにある奴だけは求婚ばっかしてくるバカがいたけど、そいつも嫌いにはなれなかったし、俺にとっての異世界での関係は最高だった。
だから俺は決して誑しはしてない!
……本当だよ?
「ところで気になってたけど、横にいる子は誰なの? もしかして君の子供か奴隷?」
「どっちも違うわ。この子は憤怒の化身獣だったドラゴンで、何故か俺の虚空に染まっちまってたんだよ。名前は倶利伽羅。」
「人化は何時?」
「ついさっき。」
「よかった、服が質素だから虐待だと思ったわよ。」
「間違ってねぇけど、喧嘩売ってんのかお前…。」
俺に対して酷くね?
仮でも前世は同盟していた邪神なんだぞ?
それともコミュニケーションのつもりか?
だったら俺もそうするぞ?
「はぁ…布は持ってなかったから俺がスキルを創り出して作って、照…フォルトナに任せて作ってもらった服なんだよ。こんな小さな少女を全裸で連れ回してたらただの変態にしかならんわ。」
「まぁその通りだね。でもその格好じゃ奴隷と間違われるだろうし……シェチル、この子に合う服を頼んでいいかしら?」
「かしこまりました。」
彼らを連れてきた女性、シェチルは全員分のカップを用意してお茶を入れて渡し終えると、懐からメジャーを取り出した。
それ察した俺は、視線を窓の外に向けて明後日の方向を見た。
「では、失礼します。」
シェチルは倶利伽羅に近づくと、着させていた布を脱がせ、身体の採寸を計り出した。
「あぅ……ぅぅ……。」
メジャーが体に当たってくすぐったいのか、倶利伽羅の口から色っぽい声が出始めた。
視線、外に向けててよかったわ。
あぁ…こっちの天気はいい青空だな。
あっちの天気は雨だったし、やっぱ何もない日は晴れがいいな。
「申し訳ありません。少々くすぐったかったでしょうが、終わりました。」
そういって布を再び着せて、終わったと同時に照が肩を叩いてきて、俺はようやく前を向いた。
倶利伽羅のほうを向いてみると、さっきから声を上げていたせいなのか、それともくすぐったからだろうか、顔を赤くして恥ずかしがっていた。
だがそれを余所に、シェチルはぶつぶつと小言を言いながら手元のノートに何かを書いていって、何かが分かったかのように俺たちのほうを向いてきた。
「採寸の結果が分かったので、今からお召し物を作ります。何かご希望はありますか?」
「「え、今?」」
シェチルから出た言葉に唖然とした俺と照。
だって今から作ると言ってきて、驚かないほうがおかしいもん。
でも今から話が長くなると思うし、その間にできるのなら問題はないのか。
「あぁでしたら……。」
俺は言おうとしたところでしゃべる口を閉じた。
こういったのって本人の希望がいいかもな。
しかも倶利伽羅はまだ人化になったばっかだし、本人に聞くとするか。
「倶利伽羅、何か希望したらどうだ?」
「え? ですがご主人様たちが作ってくれたこの服が……。」
「「大丈夫、心配しないで!」」
俺たちの心配をしてきたけど、そんなのは気にしないでほしかった。
だってそれ服(仮)だし!
今日だけのために作っただけだからな!
「大事そうに着ようとしてるけど、そのままは絶対にダメだからね!」
「そうよ、女の子なら尚更! 自分に合った服を着るのが、私のためだと思って!」
「で、でしたらこのままで…。」
「「だからそれだけはダメ!!」」
律儀に着ようとしてるけど、それじゃあ奴隷と勘違いされるから絶対にダメ!
俺たちは必死に説得をすると、倶利伽羅も分かってくれたのか、渋々受け入れてくれて、自分が動きやすい服は何か考え始めた。
「―――――あの方の…。」
「ん?」
「あの方が大好きだった国の服でお願いします。」
倶利伽羅は決まったみたいで、俺たちに希望の服を言ってきたけど、意味が分からずに全員がポカンとしてしまった。
ただ俺は倶利伽羅が言った「あの方」というのが誰かを予想して、倶利伽羅に尋ねた。
「もしかして……あの方っていうのは、浦ノ島与一で合ってるか?」
「はい! 先代の私のご主人様だったので、その方が大好きだった国の服がいいです!」
初代様の大好きだった国ってのは、間違いなく東ノ国であるオーエドだろう。
あそこの服は俺のよく知っていたから、俺はすぐにシェチルに言った。
「彼女の言ったのは、オーエドの普段着である和服だろつ。先代の主人が初代勇者だったら俺にも分かる。」
俺が倶利伽羅の希望を代わりに言うと、シェチルもようやく分かったみたいで、ノートにスラスラ書き始めると、走らせていたペンを止めた。
「服装の下書きが完了致しましたので、これから作業に取り掛かります。お時間は大丈夫でしょうか?」
「あぁ大丈夫。今からこっちで話し合いをするし、問題ないよ。」
「かしこまりました。では今から始めますので、失礼します。」
そう言ってシェチルは頭を下げると、倶利伽羅の服を作るために部屋を出ていった。
「あの子って優秀だから、大体のことを言ったらすぐに完璧なものを作るでしょうね。」
「あれってそっちの神徒か?」
「最初っから私に忠義を尽くしてきた子よ。それじゃあ待ってる間に始めようか。」
「そうだな。これから大変だし、さっさと始めるか。」
俺たちは本来の目的である話し合いをするために来たんだ。
待ってる間に始めるとするか…――――真相を知るための話し合いをな。




