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119話 再び異世界へ

「―――――うっ……うーん…。」


俺が次に目を覚ますと、ベッドの上で眠っていた。

どうやら今度は戻って来れたみたいだな。


「ここは……リリスの領域か?」


周囲を見てまず分かることは、ここは冥界じゃないのはすぐ理解できた。


だって植物がある時点で冥界じゃないじゃん。

レイラには悪いけど、あそこ殺風景だから好めないんだよなぁ…。

暗いし寒いし、おまけに周辺にずっと人魂があるわで居心地は良くないもんな。


「―――――…ゼロ…?」


「うっ……レ…レイラ…。」


部屋のドアの所にレイラがいて、思わずマズイってなってしまった。

だってさっきまで冥界の愚痴を言ってたから、聞かれれば最悪の空気になっちまう。

しかもレイラの魔力は冥界のエネルギーを大量に含んでるから、女神の中でもかなりヤバい。


冥界のエネルギー……つまり「死」の魔力だ。


「レ……レイラさん?」


「ゼロ…!」


「えっ、ちょ…うわっ!」


レイラは物凄いスピードで俺に飛びついて来て、俺はベッドに叩きつけられた。


「……良かった……良かったよぉぉ……。」


「ちょっとレイラ、一体どうし……あ…。」


なんでレイラが涙目で抱きついているのか思い出した。

冥界で前世の俺が入った氷の棺を触って、それから一気に苦しくなって倒れたんだったな。

だったらこれは俺が悪いな。

あの時考え無しに進んで倒れたんだから。


「レイラ……ごめん。」


本気で申し訳ないと思い、レイラの頭を撫でながら謝った。


こればかりは俺が悪いわ。

ホントに申し訳ないわ。

神友を泣かせるとか最低じゃんかよ。


「ううん……無事だったらいいの……。」


レイラは俺から離れると、涙をふいて立ち上がり、横に置いてあった椅子に座った。

よく見るとレイラの目が赤くなっていて、さっきまで泣いていたのがすぐに分かった。


「心配…かけちまったな……。」


「もう大丈夫…。ゼロが生きてるから……安心したから…。」


相変わらず、昔と同じで優しいまんまだな。

あの頃も俺が血で汚れる度にいつも最初にやってきては、泣きながらタオルで体を拭いてたな。

できる限り心配はさせないようにしないといけないのに、やっぱ全て終わらないとこれは治せなさそうだな。


「そういえば、ここはリリスの管理してる森でいいのか?」


「うん……そうだよ。」


「もしかして、一柱(ひとり)でここまで?」


「ううん……最深部で後からフォルトナ様がやって来て……一緒にここまで運んだの…。」


「あいつが…?」


なんで照が神界(ここ)に来てるんだ?

まさかリリスたちに会いに?

いや、元々面識なんてあまりなかったと思うし、まさか俺が冥界に行くのを分かってたのか?


「おっ、気がついたみたいだね。」


「照……。」


ドアにはいつの間にか照とリリスが立っていて、安心して笑ってたけど目だけは怒ってた。


「ご迷惑をおかけしました。」


ベッドの上で俺は素直に謝った。

説教されるのを覚悟で先に謝った。

照はまだしもリリスに心配をかけたのはレイラと同じだからな。

うん、謝って反省。

それ優先。


「まったく、あの時アレを言ってなかったら来なかったわよ?」


「あの時? アレ?」


邪神語(・・・)だよ。何言ってるか分かんないけど、零ちゃんがあの時使ってたじゃん。」


「確かに使ってたわ。よくそれで分かったな…。」


「クロノアたちと再開した時、「外側の歴史」ってワードを言ってた時点で、分からない訳ないじゃん。」


「あぁ…なるほど納得。」


「外側の歴史」の方についてはまだしも、俺がジョルメに正体を明かした時に喋った邪神語(アレ)


邪神語は邪神にしか分からない言葉で、女神であるティファニスたちもそうだが、人間である他のみんなには聞き取ることは出来ない。

唯一クロノアだけが頑張って覚えようとはしてたけど、まだまだ先になるだろうな。


「ジョルメの時に言った時に、もしかしたら冥界に行くんじゃないかって思ってね。案の定、当たってたから良かったよ。」


「よく俺の遺体が冥界の最深部にあるって知ってたな。」


「ティファニスに教えてもらったのよ。最高神じゃあ、彼女だけが知ってたからね。」


「そういえば、ティファニスにはサラッと教えてたっけな。普通に忘れてたわ。」


転生する前日。

あの時念の為に教えてたわ。

リリスとレイラが忘れたとき用のために、保険として教えてたわ。

いやはや、歳をとるとボケがまわって困るものだわ。


「それでさ……零ちゃん。」


「なんだ?」


「私もそうだけど……二柱(ふたり)以外の女神についての罪は……どうなるの?」


「罪…? ……あぁ、過去のか。」


照が言ってるのは、過去の自分たちの俺に対する態度だろう。


昔の彼女たちは、それこそ水と油の関係だった。

外様だった邪神である俺たちは、その星に住んでた女神たちとはすぐに仲良くはなれなかった。

当時生きてた長女のエリスが何とか繋ぎ止めてくれたおかげで、大事にはならなかった。


―――――あれが起きるまではな。


リリスとレイラは無罪なのに、やはり同じ女神として心配なのか、俺と照を交互に見ていた。

まぁ本音を話して終わりにするか。


「はっきりいって、許す気は全くない。お前たちのやった事は、集団による悪事だったからな。」


「「「…………。」」」


「―――――って、昔の俺だったらそう言ってただろうな。」


「「「え…?」」」


俺が言った言葉を否定するのが予想外だったのか、照たちは呆然としていた。


なんだよその顔は。

まさか俺が殺すとか考えてたんじゃないだろうな。

失礼な、仮でも今は俺の従姉妹なんだ。

そんな簡単に殺めてたまるか。


「もう過去に囚われないようにするって決めたんだ。それに今更2000年以上も前のことをいちいち覚えてる訳ねぇだろうがよ。」


「じ……じゃあ、私はどうなるの?」


「不問だ。お前は俺の従姉妹だし、やったら母さんや華怜になんて言われるか分からんしな。お前だけは特別だ。」


今の照は、叔父さんと叔母さんが死んでまだ心を痛めてるんだ。

それに追い打ちをしてトドメを刺すのは俺の所業じゃねぇ。


「ホントに……いいの?」


いつの間にか照の目には涙が溜まっていた。

体も震えていて、今にでも倒れるんじゃないかって感じになっていて、俺は息を吐いて照を見た。


「もういいよ。俺も……憎しみを何時までも抱くのはやめた。あの時とは違い、今度は仲良くしてくれ。」


「…〜〜ッ!!」


「うわっと…!」


照は我慢できなくなったのか、目に溜まってた涙は溢れて、俺に飛び込んできた。

また倒れそうになったが、起きて少し時間が空いたおかげか、今度はしっかり支えられた。


「あ…とう………りが…う……れいぢゃ…ッ…。」


今思えば、俺が見てきた「白崎照」が、優越神フォルトナの本当の顔だったのかもな。

今までは誰かのためで、自分のためじゃない。

ずっと隠してたんだ。

優越神フォルトナの本当の姿顔を、誰にも見せずに偽物の仮面をつけて騙していた。


でも、それは俺の前では関係ない。

どんな顔でも、今のこいつは白崎照であって、俺の従姉妹だ。

それは変わらない、現世(いま)が終わるまで。


「フォルトナ様……嘘の顔だったんだ…。」


「誰にも言うなよ。特に他の最高神の奴らには。」


「そうね。あの方たちは本心を知ったらどうなるか分からないでしょうね。」


最高神はフォルトナに圧倒的な信頼を持ってる。

大きな利点でもあるが、逆にそれ相応の欠点もある。


フォルトナのパイプラインは女神の中でも随一で、情報が流れるのは速いからすぐに起点を利かせれる。

だからこそ、彼女の本当の素顔がバレれば秒で他の女神の耳に入るだろう。


今のネット社会と同じだ。

嫌な噂はすぐに流れて人の目や耳に入る。

それを信じて嫌な気分になっちまったら、そいつに糾弾する輩が次々と現れる。

最悪な悪循環だ。


「まず今は、あの神に会いに行くしかないか。」


「「あの神?」」


リリスとレイラは誰か分かっていなかったが、教えるよりも先に俺がリリスに向いて聞いた。


「リリス、この神界に創造神はいるか?」


「創造神様? いや、ここにはもういないけど。」


「そうなると、人間として隠居してるのか?」


「うん。今は王都にある魔法学園の理事長をしてるわよ。」


「意外と身近にいたのかよ。」


創造神はその名の通りこの星を創った神。

そして女神たちの母でもある存在だ。

自分の子ががこんな状態だと知ったらたら真っ先に協力的にはなってくれるだろうし、前世で頼んでいた「歴史の外側」の境を解除させるのにもちょうどいいな。


ただそんな近くにいたのは意外だったわ。

もしかしなくても俺の正体は二つの意味で知ってるパターンだよな。

【6代目勇者】と【虚空邪神】は同一人物だってのは、もう向こうは分かってるだろうな。


「まぁ場所が分かってるならあとは早い。今から創造神に会いに行くか。」


「今から……なの…?」


「早めに行動して、対策を練らないといけねぇからな。」


「……だったら、私も行く。」


「照?」


下を向いたら照はもう泣き止んでいて、俺の顔を見て一緒に創造神に会いに行くと言ってきた。


「もう大丈夫なのか?」


「少しは楽になったよ。私がついて行きたいのは、あの方に迷惑をかけたことと、自分の本性を話して地球でしばらく暮らすって言いに行きたいの。」


「「「え…?」」」


予想外すぎる照のカミングアウトに俺たちは同時に固まってしまった。


えっ…地球で暮らす?

いや確かに日本人だからあってるよ。

でもそれでいいの?

みんな裏切っちゃうのよ!

それでええのか!?


「あれ、何でみんな黙っちゃうの?」


「お前……本気で日本で暮らすつもりなのか?」


「そうだよ。でもずっとじゃない、一時期だけ。強いて言うなら「白崎照」の間までだけどね。」


「「「あぁ…。」」」


びっくりした。

てっきり地球に鞍替えするのかと思ってたわ。

白崎照として地球で暮らすってことは、要はあと数十年は戻らないつもりと。

いや長すぎるわ!

最高神(あいつ)ら絶対お前にチャージを一斉に行っちまうぞ!


「照、長すぎるからせめて20年で抑えときな。」


「何で? やっぱり人間なんだから、それくらいは地球で暮らさないといけないでしょ?」


「仮にそれで通したら、前のティファニスとクロノアみたいになるぞ……他の奴らも。」


「よし、20年で手を打とう! それで十分だね!」


あっさり短くしやがった。

やっぱアレは嫌だったんだな。

まぁ顔引っつけてチャージだから、それを全員にされると思うとたまったもんじゃないよな。

20年ならあいつらも我慢はできるだろう。


「じゃあ早速向かいましょうか。零ちゃん、向こうに行けるようにして。」


「はいはい。ちょっと待ってな。」


あまり扱き使われるのは好まないけど、まぁ照が自分で人生決めたことだし、今回は大目に見てやるか。

しかしパラディエスに行くとなると、どの辺りに繋げようかな〜……


あ、前にメリッサが転移したあの草原の端にするか。

あの辺は人は寄り付かないし、なりより俺だったらすぐに学園にまで移動はできるからな。


場所が決まって早速“虚空門”で迎える通路を作ろうとした時、俺はある事を思い出してレイラの方を振り向いた。


「レイラ、ちょっといいか?」


「何…?」


「ふと思ったんだけど、倶利伽羅は何処に?」


「倶利伽羅だったら…さっきから外でゼロを待ってるよ…。」


「外?」


言われて窓から外を見ると、倶利伽羅は家の前で体を丸めてから休んでいた。

俺が外に顔を出したのに気づいたのか、倶利伽羅は体を起き上がらせて尻尾を振って喜びを表していた。


お前も犬か!

三匹の子豚じゃなくて三匹の忠犬ができるわ!

いやそもそもそんなに忠犬いらんし!

それにお前は龍だろうが!

あとなんで消えてないんだよ!?

憤怒はもう俺の中にはないんだぞ!?


「どうしたのゼロ? さっきから倶利伽羅をずっとみて?」


「いや……ちょっとな。」


これについては転移してから確認しよう。

今はとにかく、ここを出るのを優先にして、それから考えよう。


「倶利伽羅も連れて行かないといけんし、外に出てからやるか。」


家の外に出て、体がちゃんと動けるように軽く柔軟をしたのち、俺はパラディエスの指定した場所へ行ける“虚空門”を展開した。

もちろん倶利伽羅は俺たちよりも図体がでかいから、ちゃんと通れるようにビッグサイズの門を出してる。


「それじゃあリリスにレイラ、今度こそお邪魔になったな。」


二柱(ふたり)とも、お願いだから私の事は誰にも言わないでね。」


「安心してください。誰にも言わないように口止めしておきますから。」


「うん…私も気を付ける…。」


まぁ、こいつ等ならバラす事はしないだろうし問題はないか。

俺が見てきた中でも約束はちゃんと守るし、何よりあんなのを見てからじゃあ尚更だろうしな。

ここは二柱の言葉を信じよう。


「じゃあ行きましょうか、二度目の異世界に。」


俺たちは再びパラディエスに行く門をくぐり、数ヶ月ぶりの異世界へ向かった。

【優越神フォルトナ】

元女神、現人間。

白崎照の名で、零の従姉妹として人間で暮らしている。

周りからは優秀な女神と言われてるが、本当は心が弱く、偽りの仮面をずっと被っていた。

前世では(ゼロ)を嫌っていたが、現世では家族として好意を持ってる。

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