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117話 虚空邪神ゼロ

最初が(ゼロ)視点。

後半でレイラ視点です。

「……着いた。」


何も考えずに足を動かし、前に進み続けて、ついに俺は目的地である冥界の最深部にやって来れた。


どれほど歩いただろうか?

どれだけ時間が掛かっただろうか?

無意識に進んでいたから覚えてない。

でも、どうでもよかった。

目の前にある物のせいで、考えるのをやめたんだからな。


「変わってないな。やっぱ冥界において正解だったよ。」


目の前にあるのは、一つの棺。

だけどそれは普通の棺じゃない。

ここに来る前に巫女であるルカが言ってた、氷で出来た棺。

その中には、見飽きるほど見てきたひとりの人物が入っていた。


「こうして別の視点で見てみると、こんなにボロボロだったんだな。」


中に入っていたのは、過去の俺(・・・・)

前世の神だった俺の体。

【虚空邪神】ゼロ。


かつて宇宙の一部を領域にしていた旧支配者の一柱(ひとり)

666柱の邪神の長男で、自分を創ったとホラ吹きをしてる神を憎んでいる邪神。


「これを取り込めば、俺は過去のすべてを取り戻し、残った記憶も戻る。」


俺は氷の棺を触るのを躊躇っていた。

過去の自分を取り込めば、今の自分が自分でいられなくなるかもしれないからだ。


母さんや華怜に…真莉亜や夏奈、トモや明日香やみんなとも、今のような生き方は出来なくなるかもしれない。

白崎零として、人間として生きれるのはもう無理になるだろう。


でも……それでも……俺はこの手を前に出さないといけない。

この棺にある過去の俺を、取り込まないといけない。


「全ては俺が始めたんだ…。俺が絶対……この戦争(ゲーム)を終わらせるんだッ!!」


覚悟が決まり、俺は氷の棺に触れた。

触れてまもなく、氷の棺はビキビキと音を鳴らして割れ始めていった。

ヒビができる度に魔力が棺から漏れ出してきて、それが空気に混ざって俺に入り込んでこようとする。


「ごめん…みんな。俺は今から……邪神(かこ)回帰(もど)るよ。」


その言葉を最後に、氷の棺は完全に壊れ、溢れ出てきた魔力は一気に俺の体に入り込んできた。


「ぐっ……かッ……ぁぁ……!」


全ての魔力が入って、辺りに静寂が訪れた瞬間、激しい頭痛に全身に鉛がのしかかった感覚が襲い始め、俺はその場に倒れ込んだ。


「はぁ……はぁ……。」


頭が痛い。

体が重い。

気分が悪いから吐き気もする。

これはしばらく…このままだな。


「ゼロ………ゼロッ!」


倒れてしまって振り向けなかったけど、声からしてレイラなのはすぐに分かった。


そういえば何気に…レイラが叫んだのを聞いたのは……これが初めてだな…。

お前……そんな声も出せたんだな…。


俺はそう思い、意識を手放した。







「ゼロッ…! しっかりして…!」


私はどうしたらいいか分かんなかった。

彼の背中を見ていて動けなくなって、気が付いた時には彼の姿がなくて後を追ったら、彼が最深部で倒れていた。 

急いで来て彼の体を揺さぶったが、起きる気配が全くなかった。


「どうしよう……どうしたら…?」


「落ち着いて、気を失ってるだけよ。多分、前世の自分を取り込んだ反動ね。」


「―――――え…?」


突然私以外の声が聞こえて、振り向いてみると、私の横には行方不明になってた優越神フォルトナ様がいた。


「フォルトナ……様…?」


「久しぶりね、レイラ。再会を祝したい所けど、今は後にしましょうか。」


フォルトナ様は彼の肩を持つと、その場をあとにしようとした。

私は急に現れたフォルトナ様にびっくりしてしまったが、その場を後にしてるのにハッとなって、ゼロのもう片方の肩をもって安定させ、運ぶのを手伝った。


「行先はリリスがいるあの森。下手に入ってリリスの逆鱗に触れたくはないだろうし、あの場所はあのルールが今でも存在してるだろうから、零を静かに眠らせるには最適だしね。」


「……はい…。」


私は彼の心配もそうだったけど、どうしてここに行方不明となってたフォルトナ様がいるのかが分からなかった。

過去、あんなにゼロを軽蔑していた方が、どうして彼を安全な場所に連れて行こうとしているのか、理解ができなかった。


「なんでここにいるのか疑問に思ってるでしょ?」


「えっ……。………。」


「あぁ…ごめんね。そういえば貴方って、昔から心を開いた神にしか話さないんだったわね。」


私が頭の中で混乱していて、どれから話そうか考えていただけなのに、昔からの性格のせいで別の意味で解釈されてしまった。

否定しようとしたが、昔からあまり話さない性格だったから、うまく話そうにも思うように動こうと口が動こうとしなかった。


「今からいうのは、私の独り言ね。ここにいる理由は、零ちゃんが色欲を持ったジョルメ…かつての兄弟だった彼女に邪神が使う特有の言葉を使っていたから、ここに来るんじゃないかって思って、後を追ってきたの。」


邪神が使う言葉。

それですぐに私は理解できた。

私たちでは理解できない言語。

実際ゼロから一度、言ってるところを聞いたけど、意味は分からないまま。

でもそれを言ったのは、間違いないのだろう。


「邪神か人間か……どっちに転んだって、今の零ちゃんはもう白崎零としての感情は薄くなるのは確実だね。」


「………。」


感情が薄くなる。

私はその言葉で、前世の最期に見た彼が頭に浮かび上がった。


人形のように、光のない瞳。

大切なものを失って壊れかけた心。

それがどんな苦しみなのか、想像できない。

私も孤独だったから理解できるとは意味が違う。

体と心が同時に壊れる痛みは、私は分からない。

だから怖い。

またあの時になるかもしれない。

壊れた人形になるんじゃないのかと。


「大丈夫よ、彼は独りじゃない。貴方がいる、リリスがいる、私がいる。今の零ちゃんは、孤独にはさせない。あんな顔には…もうさせない。」


フォルトナ様は心でも読んでいるのか?

私はしゃべってないのに、何故か会話が成立する。

何もしてないはずなのに…。


「私ね、昔は大馬鹿者だったと思ってるよ。だって…私は一度も零ちゃんと話そうとしなかった。一方から否定して、軽蔑をした。今の自分からしたら、あんなの黒歴史確定だよ。」


かつて自分のやってきた行動を、間違ってたと決めつけた。

あの優越神様が、自ら自分を否定した。

完璧だとされてた女神が、初めて否定した。


「……どうして…?」


「おぉ、急にしゃべるのね。まぁ…その…あの転生事故が起きて、ようやく分かったの。自分が完璧にやってきていたのは、自分の存在価値を作るだけで、それ以外には何も考えてなかったことにね。」


「……え…?」


自分の存在価値。

たしかにフォルトナ様は、五大元素魔法には該当されておらず、最高神の中で唯一魔法の概念に属していない。

栄光神、氷結神、水精神、炎帝神、嵐叡神、雷霆神、地轟神。

他の最高神様には、魔法の概念は存在する。


だからこそ謎だった。

フォルトナ様は、どれに該当するのか?

それに属することになるのか?

だからこその存在価値なんだ。

どれにも属してないから、恐怖だったんだ。


「私はみんなに認められてたけど、私自身は自信を持ってなかった。表には出さなくても、裏では焦っていていつも怯えていた。だからこそ、突然現れた零ちゃんたちに強く当たってしまった。」


私は、フォルトナ様の本当の顔が分かった。

この方は、ずっと臆病だったんだ。

嫌われたくない、蔑まれたくない。

そんな事を想像しては怯え、みんなの前では完璧を演じてた。

あの時神界から消えたのは、自分の今まで作ってきた存在価値が崩壊して、怖くなってしまって逃げだしたんだ。


「……フォルトナ様…。」


「うぉ…な、何?」


「…私は…冥界の管理者…。人の魂を…管理してます…。」


「う、うん…知ってるよ。」


「でも私は寡黙だし……冥界だから…お友達がいない…。」


「うん…そうね。」


「どんな女神であっても……弱点は…必ずあります…。」


「……。」


「だから…女神は完璧であって……完璧じゃないのが女神なんです…。」


「……ッ!!」


私は言い切った。

相手が最高神であっても、怖気づに言った。


私の弱点は、神友(ともだち)が少ない。

死と直面するから、死の魔力を扱える。

誰よりも強力だけど、周囲にも恐怖を与えてしまう。

制御しても、少し出たら終わり。

だからいつも心を閉ざしてきた。

心が弱い私の、一つの弱点。

それを助けてくれたのが、ゼロだった。


最初は怖かった神友。

でも心を閉ざした私を救ってくれた神様。

嬉しかった。

初めて友達になれた。

邪神だろうと関係なかった。


私を闇から解放(たす)けてくれた、慈悲の神様。


今度は、私が助けたい。

心が壊れそうになった時は、絶対に傍にいる。

独りになりそうな時は、私が寄り添ってあげる。

私はずっと、あの時から決めた意思を忘れない。

大切な神友を、助けるために。


「……ありがとう。そう言ってくれるだけで、心が軽くなったよ。」


フォルトナ様は笑って、私にお礼を言った。

そして話しながら担いで歩いているうちに、冥界の入り口の大穴に辿り着いた。


「この上に……倶利伽羅がいます…。」


「倶利伽羅? それって何?」


「憤怒の化身獣……ドラゴンです…。」


「あぁ、名前つけたのね。だったらこの後は、その子に任せましょうか。」


私とフォルトナ様は、無事に冥界の外に出て、外で留守番をしていた倶利伽羅のほうに向かった。

倶利伽羅も私たちに気付いたのか、こっちを向いて出迎えるかのように体を起こした。


「倶利伽羅……さっきいた森に向かって…。ゼロが気を失ってしまったの…。」


「グルッ!?」


自分の主であるゼロが気を失っているのに驚いた倶利伽羅は、急いで私たちを乗せやすいように体を屈ませた。


「私が零ちゃんを支えてるわ。レイラはこの子に指示をして。」


「はい…。倶利伽羅……お願い…!」


「グオオォォォ!!」


倶利伽羅は私の指示を聞いて、羽をはばたかせて空を飛び、さっき来た方向へ戻るようにして飛行をした。


「そういえば……ゼロのこと……零ちゃんって…?」


「あぁそれ、向こうでは白崎零として生きてて、私は従姉妹だから零ちゃんって呼んでるの。」


「じゃあ私も…零ちゃんって呼ぶべき…?」


「いやそれは本人に聞いてもらってね。多分急に言ったら言葉失うかもしれないから。」


そんなことを聞きながら、私たちはリリスのいる森に向かった。

そしてこの後、フォルトナ様をみたリリスの反応を見て、私は彼女と神友になれてよかったと思わせてくるリアクションをしてくれたのは別の話。


7時間半で書き終えてやったぜ!

おかげで晩飯は10時だけどなぁ〜?

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