閑話 最高神会議
「みんな、今日は集まってくれてありがとう。」
ここは神界。
それも最高神しか立ち寄れない場所。
そのある一室には、フォルトナちゃんを除いた最高神の八神が、部屋にある円卓に集まっていた。
「急に最高神全員呼び出しだなんて、一体どうしたってんだよ?」
「ホントよね。しかもティファニスとクロノアが急になって呼び出すだなんて。」
そういって文句気味に言ってるのは、炎帝神アメラちゃんだ。
それに合わせるかのように言ったのは、雷霆神オルドラちゃん。
この二柱は、元素魔法の炎と雷を司る最高神で、アメラちゃんの方は喧嘩っ早いのがネックだ。
そしてオルドラちゃんも同じ。
彼女も面倒事が嫌いで、いつも仕事をサボったりする常習犯だ。
この二柱にはいつも手を焼いている。
私もあまり言える立場じゃないけど。
「Zzz……」
「ねぇ誰か、ヒューラちゃんを起こしてあげて。」
椅子に座った状態で寝ているのは、嵐叡神ヒューラちゃん。
彼女はそれこそいつも寝ている困ったちゃんであって、最高神随一の巨乳の持ち主だ。
彼女の巨乳に見惚れた人類男性が、彼女を酔拝したいと言ってくる事が多々あった時期があって、それを見ていた彼女が鼻で笑って挑発していた時期が何度かある程だったわ。
もうあの思い出は嫌だ。
あれのせいで神界のいくつかはダメになりかけたし。
私もその乳を捥ぎ取りたいって思ってるから、思い出しても嫌な事しかない。
「ティファニス。呼んだのは6代目の子が関係してるの?」
「大体合ってるわね。でもそれが困った事なのよ。」
「どういう事ですか?」
エレイムちゃんの問いに答えたら、ペリアスちゃんが疑問の顔をした。
まぁ普通なら問題ないけど、ここにいるのが最高神だけって事を知っててほしい。
最高神が全員、絶対にここに集まる。
それはこの世界の危機と同じくらい重大な話だって事を。
「忙しい中、ここに集まってくれてありがとう。今日は全員に話しておかないといけない事があるんだ。」
「今更急な話なんて何なのよ、クロノア。私たちは神徒を使ってフォルトナを探しつつ、今の仕事をこなしてんのよ?」
クロノアちゃんに一言物申したのは、地轟神カルアちゃんだ。
彼女はフォルトナちゃんに厚い信頼を持ってた真面目な子で、何度かフォルトナちゃんの世話にもなったし、いち早く彼女を探すのを提案したのが彼女だった。
「言いたいのは分かるけど、今日ここに集まったのは、いいニュースと困ったニュースを持ってきたからよ。」
「そこは悪いニュースじゃないの?」
「悪いニュースにしたら、それこそ私たちが終わるのと同じなのよ。」
「どういう事?」
聞いてきたエレイムちゃんも気になってるし、他のみんなもどんな話なのか気になりだしたし、ここは私が行った方がいいわね。
クロノアちゃん、あとは任せて頂戴。
できれば、フォローお願いね。
「まず最初にいいニュースから話すけど。いいニュースは、フォルトナちゃんが見つかったわ。」
『!!?』
私とクロノアちゃんは先に知っていたけど、他のみんなは知らないから驚愕していた。
それはそうでしょうね。
だって神友のフォルトナちゃんが見つかるなんて持ってもいなかったでしょうし、何よりここにいるみんながそれを願ってたんだからね。
「ねぇ、それはホントの事ですわよね!!?」
「えぇ、本当よ。最近ここにレイさんと一緒に来たのよ。」
一切起きないといわれたヒューラちゃんが起き上がって迫るかのような形相で言ってきた。
というより、久しぶりに目を開いた所を見た気がするわね、私。
いつもは寝てるのか起きてるのかって言いたいほど目を開けてないし、立って寝てる時もあったから、どうしようもなかったもんね。
「なぁ。ここに来たって言ってるけど、どうやって来たんだ? まさか術式か?」
「もしかして、神界召喚をしたの?」
「ええ、そうよ。ここから一番端にある孤島に召還したわ。」
アルドラちゃんの言った言葉に頷いくと、みんなが納得していた。
ホントはレイさんが召還をしたって言いたいけど、黙ってたほうがよさそうね。
そうしないと、後々私が何か言われそうだし。
「んで、今何処にいるんだよ!? 逢いたいんだからよ!」
「待ってよアメラ! 私も逢いたいんだけど!?」
「私も逢いたい。」
「お姉様が逢いたいのでしたら、私も逢いたいです。」
ホラ、やっぱこうなった。
こうなるだろうって思ったから、あの時みんなには言わなかったもん。
あの時みんなに言ってたら、レイさんたちの方に支障が出ちゃいますし、何より私とクロノアちゃんが満足できなくなる可能性があったかもしれないわね。
てかペリアスちゃん、いい加減に自分の意思で動きなさいよ。
「静まれ! 場所は言ってもいいが、まだ行くな。」
「何でだよクロノア!? お前らはすでに逢ってるからそう言えるけど、オレらは何年も逢ってねぇんだぞ!?」
「アメラの言う通りですわ! わたくしたちはやっとの思いで逢えると思ったのに、なんでまだ待てをされなきゃいけないのですの!?」
ヒューラちゃんはまだしも、アメラちゃんはそんなキャラだったかしら?
私の知ってるアメラちゃんは、それこそオラオラ系女神なはずなのに、何故かフォルトナちゃんが関わるとそのキャラがなくなるのかしらね。
多分あれかしら?
犬が好物を前に飼い主に待てをされて、それが食べられなくて辛い感じのあれかしらね。
「落ち着いて。今のフォルトナちゃんは人間になってるけど、人だった時の彼女の親が殺されて精神が今は弱ってるのよ。だから一斉に言ったら、彼女が混乱するから言わなかったのよ。」
「それ、どういう事?」
あっ、これ言わなかった方が良かったかもしれませんね。
騒がしかった部屋が一気に静かになっちゃいましたよ。
そしてはよ教えろと殺気を込めたみんなの視線が痛い。
クロノアちゃ~ん……助けて~…
「待て待てお前ら。私もそうだが、ティファニスに殺気を当てるな。今から順を追って話していくから、今は冷静になれ。」
クロノアちゃんの言葉に冷静になったのか、みんなからの殺気が収まった。
ホントにありがとう。
多分今ので私、死んでたかもしれないわね。
全く、なんであの娘は女神にこんなに愛されてるんだか。
私も言える立場じゃないけど。
レイさんの言ってた女誑しは、あながち間違ってないかもなぁ。
「まずフォルトナの居場所だが、今は地球で人間として暮らしているんだ。」
「地球って言ったら、勇者たちが住んでる星だよな?」
「それに、あの国の基でもある星。」
エレイムちゃんが言ったあの国というのは、東ノ国の事でしょう。
あそこはレイさんの従者でもある、シグレちゃんやヒスイちゃんの故郷。
あの国にはサムライといった、レイさんの住んでる日本の国の戦士がこの世界に来てできた国で、王都スカイティアや北の帝国よりも強い国ではないけど、人一人の実力はあの国が最強だろう。
「今彼女は、6代目勇者である白崎零の従兄妹として生きていて、かつて彼女の神徒であったソフィアと一緒に暮らしていたんだ。」
「ソフィア……あの子ね。」
「確かにあの子は、ずっと彼女の側近をしていたですものね。」
ソフィアちゃんはずっと長い間、フォルトナちゃんを支えていた側近の子で、誰よりも彼女を心から慕っていた。
あの子も一緒にいなくなっていたから、多分一緒に付いて行ったのだろうとは思ってたけど、やっぱり一緒にいたからね。
でもそれでよかったのかもしれないわね。
もし一緒に付いて行ってなかったら、彼女は自分の責任につぶされていたのかもしれない。
そしてそれはレイさんも同じ。
あの二人がいたかあらこそ、フォルトナちゃんが幸せに生きているのでしょう。
それにしても、彼にはまた借りができてしまったわね。
あの時の出来事は、全部私たちが悪いはずなのに。
「それで、フォルトナさんの親だった人は、どうなったのですか?」
「彼女の親は、今回の色欲の手下によって殺されてしまったのだ。今はどうにか立ち直っているが、しばらくは本人の接触がない限り、会うのは控えた方がいい。」
「じゃあよう。その殺した奴は、オレたちが代わりに殺してやった方がいいじゃねぇのか?」
「それはやめておけ。彼女の親の仇は、恐らくレイが討ってくれるだろう。それに少しあっちの様子を見たが、アレは奴にも因縁がありそうな感じだろうしな。」
「因縁? 武器を持たない平和な国なのにか?」
武器を持たない平和な国……か。
確かにあの二人が住んでいる日本は、兵器などの武力行使などで平和を作っていない国。
でも、他の国では違う。
私は勇者召喚での関連で、何度か地球に足を運んだ事がありました。
けどあの星は、平和には程遠い景色が何度もあった。
私はそれを見てすぐに分かった。
あの世界は、破滅に自分から進んだ星だと。
……いけませんね、そんな事を今考えては。
「兎にも角にも、フォルトナちゃんと接するのはまだ少し先になります。それにまだ、みんなには話しておかないといけない事がもう一つあるんです。」
「そういえばさっき、困ったニュースがどうとか言ってましたわね。」
「その困ったニュースなんですけど、フォルトナちゃんの従兄妹でもあるレイさんなんですけど、その正体が…――――ゼロなんです。」
ゼロという単語で、全員の表示が固まり、汗を流して焦った顔をした。
それもそうでしょうね。
少なくとも私たちは、彼に恩を仇で返す様な事をしてしまっている。
最高神である私たちだけではない。
上級神も下級神も、彼に対して酷い事をしてしまいました。
ただ―――――二柱を除いて。
「ゼロ……戻ってきてたのね。」
「あいつが、フォルトナと一緒にいるのか……」
「戻ってきてもおかしくないと思うわよ。何せ先に彼女が転生してここに来ているんだから。」
「あぁ……リズか。」
―――――リズ。
彼女もゼロである彼と同じで、あの存在に属している私たちの仲間だった存在。
あの二人には、本当に恩しかない。
ゼロは奴らからの攻撃を防ぐために、自らを犠牲にしてまで戦い続け、リズは今のパラディエスの礎を創ってくれた。
リズとはのちに普通に接していたのですが、ゼロに対しては、ある理由のせいで一度も友好的になれないまま別れてしまった。
たったあの――――――つまらない理由のせいで。
これは一生消えない傷になってる。
いえ、決して消えてはいけない罪にしないといけない。
それほど私たちは、彼に酷い仕打ちをしてしまったのですから。
「私は……加護をあげたけど……恨んでなかった?」
「お姉様…」
そういえば、私とエレイムちゃんは加護を与えていたわね。
今はどうなってるかは分かんないけど、多分元に戻ったら、消滅するかもしれないわね。
「彼がどうするかは分かんないですけど、今は彼の言葉を待ちましょう。たとえどんな事を言って来ても、私たちはそれを受け入れましょう。」
「――――――そうね。」
何というか、お通夜みたいな雰囲気になってしまいましたね。
こういう時はどうするんでしたっけ?
面白い話……ダメだ、KYだと思われてしまう。
こんな時は、フォルトナちゃんの話に戻すしかない。
「さて、この話は置いておいて、フォルトナちゃんがいつでも帰ってこれるように歓迎会の会議でもしましょうか。」
その言葉でみんなの顔色が戻って、どうするかを考え始めた。
すごいわ、フォルトナちゃんの神通力。
何があっても女神を笑顔に帰る魔法の言葉。
本気で申し訳ないと思いそうだわ。
「フォルトナの歓迎会となると、下の奴らにも伝えておいた方がいいか?」
「いいえ、彼女の精神がどの程度か分からない以上、少人数でやった方がいいと思うわ。」
「ですけど上級神や下級神の数は多いのですし、彼女たちも会いたいと思っているはずですよ。」
「だったら、上級神と下級神についてはくじ引きで数名呼ぶ事にしよう。」
……どうしよう、ヤバい。
レイさんの件が大きいはずなのに、一気にフォルトナちゃんの話が大きくなってしまった。
しかもちゃっかりクロノアちゃんも加わってしまってるし。
ホントにレイさんには申し訳ない気持ちでいっぱいになりそうです。
もしこれが知られてしまったら、多分私は……殺される!
「と…とりあえずこの話は長くなりそうですし、また後日ここに集まるまでに何か案を考える事にしませんか?」
「そうだな。ティファニスの言う通り、一旦この会議は辞めて、また後日話し合おうか。」
「それではわたくしは、山脈にある高級食材の準備をしないといけませんね。」
「オレは肉だな。最近邪魔になってたドラゴンたちの尻尾とかを料理したほうがよさそうだな。」
「ペリアス。海に行って海鮮を狙うわよ。」
「お任せください、お姉様! 海の事なら私に!」
各地の食材を持ってくる事を口に出しながら出ていったみんなを見送って、私とクロノアちゃんは大きな溜息を吐いて椅子に寄り掛かった。
「アイツ等、フォルトナの事を考えすぎてまた職務放棄とかしないだろうな?」
「今の言ってる事を考えたら、多分しそうな感じに見えてきたわ。」
いやホント、それだけは勘弁してほしいわ。
仮でも女神の最高神だって事は自覚してほしいし、もしそれになっていたら、私とクロノアちゃんの仕事が増えるからそれだけはやめてほしい。
「この状況、創造神様であるあの御方が見ていたらどんな反応するでしょうね。」
「多分面白半分で、フォルトナとレイを一緒に歓迎して盛大に宴とか始めそうだな。」
「「はぁー……」」
もう疲れた。
これはあれですね。
頭痛が痛いと同じレベルの疲れが来たわね。
何だか久しぶりに真面目キャラっぽく話しましたけど、この役目はクロノアちゃんの方が向いているわね。
「そういえばクロノアちゃん。創造神様は今は何処にいられるんでしたっけ?」
「今は確か……下界にある魔法学園の理事長をしていたはずだな。」
「……念のため、連絡は入れておいた方がいいわよね?」
「そうだな。私の方で大まかな部分だけを伝えておいた方がいいかもな。」
クロノアちゃんは指でいそいそと書いて、それを魔力で固めて鳥の形のさせてた。
そして鳥は当た先を掻いた場所へと飛んで行くかのように、窓から出ていった。
「今のやり方、レイさんにも教えておいた方がいいわね。」
「レターバードか? 確かに教えておいた方がいいかもな。」
どのみち近いうちにあっちに行かないといけませんし、それに付いては私が教えておきますか。
これから本気で、忙しくなりますね。
フォルトナちゃんもそうですけど、レイさんがあの彼だったのです。
色々と準備はしないといけませんね。
そしてあの決戦まで、一年もないのですから。
「これから、忙しくなりますね。」
「そうだな。」




