113話 呪術師グルブ・モーガン
第三章最終話です。
「最後の隠し部屋は、ここですね。」
あの忌箱があった部屋から出た俺たちは、最後の隠し通路である場所についていた。
そして最後の場所の壁を切って、先に進んだ。
中は大量のモニターに加え、デスクや何もかもがおいかれてあった。
モニターのほとんどが真っ暗になってたけど、いくつか映っている者があり、そこには工場の現場や何処かの倉庫などが映されてあった。
「どうやらここは監視などをしていた部屋みたいね。」
「パスワードは拝借した手帳に書かれてあったので、簡単に入り込む事が出来ましたね。」
勘でパソコンを操作していると、ある場所を開いた所で手を止めた。
そこにはスコーピオンのメンバーや実験のデータが大量に残ってあった。
「博士、どうやら大当たりみたいですよ。」
「そのようね。少し代わってくれないかしら。」
博士はバッグからいろんなものを取り出すと、すごい速さでデータをUSBに入れ込み始めた。
やっぱ慣れてないのと慣れてるのじゃ速さは違うか。
スゲェ速さで打ち込まれていってるけど、俺は専門外だから分かんねぇや。
「少し時間が掛かりそうね。二人には悪いけど、少し待ってもらっていいかしら?」
「分かりました。それじゃあ俺は少し行きたい場所があるから、風巻は博士の護衛を頼んでいいか?」
「え? 行きたい場所って?」
「ヒーローが戦ってた場所にだよ。」
俺は部屋を出てからトモたちが戦ってた場所に向かった。
場所はシグレが側にいてくれたから分かってるし、距離もあるから虚空門で移動をするか。
「……よし、着いたっと。」
電気はそのまま付いてあって、窓もなければ四方が壁で囲まれてある場所だった。
俺は周囲の壊れた場所を一つずつ見ていった。
何かがぶつかった跡。
何かが貫いたような跡。
様々な跡を見ていって、只々考えた。
今のトモは、他の異能者よりも強いって事を。
そしてまだ伸びしろがあるって事を。
「今のアイツらは、多分Aランクに匹敵するかもな。」
「おっ、やっぱお前さんでもそう思うのか。」
背後から声が聞こえたが、驚きはしなかった。
最初から気配を消してなかったし、殺意も何も感じ取れなかった。
もうそれだけで、俺が攻撃をしなくてもいいのはすぐに分かった。
「あの時は分かんなかったけど、まさかE1がアンタだっとはな。グルブ・モーガン。」
俺の後ろにいたのは、パラディエス出身の冒険者のグルブ・モーガンだった。
夜襲を終えたトモたちから話を聞い異世界人なのは薄々分かっていたけど、まさか行方不明になってた冒険者だったとはな。
「おっ、俺の事知ってたのか? 最初は気付いてなかったポカったけど。」
「初対面だったから分かんなかっただけだ。アンタ自体は冒険者の中でも有名人だからな。」
「そうなんか?」
「北の帝国出身でありながら王都に寝返った呪術師でもあり、何より見た目に反するくらいの狂戦士だって冒険者では有名なんだよ、アンタは。」
「はははっ! 間違ってねぇのが笑えるな。」
グルブは笑ってるけど、実際実力は本物だ。
北の帝国は万年冬の季節を迎えている国であって、その国の特徴は兵器などでの戦争を好むはた迷惑な国でもある。
そのせいか王都の同盟国には属しておらず、むしろ敵対関係にもなっている。
そんな帝国を裏切ったグルブ・モーガンは、パラディエスでも数少ない呪術師の力を持っていて、戦闘方法はそのまんま敵を呪って戦うという戦闘をしている。
本来なら戦闘には不向きなのだが、本人が戦闘狂であるのと、術師とは思えない程の剣や拳での接近戦をする戦いから、ついた二つ名が“呪術戦士”って呼ばれている。
「しっかし、俺がずっと見てきたあの二人の幼馴染が、まさか6代目勇者だったなんてな。」
「こっちも同じだよ。行方が分かっていなかったアンタが地球に来ていて、しかもあの二人の成長を見ながら何度か戦っていたなんてな。冒険者から聞いた噂とは似てない性格をしてるな。」
「それは偶々だ。あの二人の異能がまだ雛だったのを思っていたのと、伸び代があって興味が湧いたんだ。だから成長したらどこまで強くなるかが気になってな、少し首を長くして待ってたんだよ。」
「じゃああの二人の奇襲は、アンタが仕組んだものなのか?」
「いや、アレはあの女が勝手に決めた事だ。まぁあれは完全に失敗だったな。現にお前たちに場所を知られる事になっちまったし、何より自分の滅びの道を自分で作ったようなものだからな。」
確かにそうだよな。
俺たちが異能を知るきっかけになったのはあのメールから。
そして異能を知って、トモと明日香が異能者であるのも分かった。
全部が繋がって俺に知られる事となったのは予想外だったろう。
でも所詮は因果応報。
自分が蒔いた種が自分の首を絞める形となったんだから。
あのメールも異能も、全部さらけ出したらバレるのは時間の問題だろうに。
それを隠すのに怠ったのが運の尽きだな。
「そんでこれからだけど、お前は異世界に暮らさないのか?」
「は? 俺が異世界に? 俺はこっちの世界の住人なんだぞ?」
「だってお前は勇者なんだ。富も名声も全部手に入る。うまくいけば一生金持ちの生活を送る事ができるんだぞ。」
コイツの言った通り、確かに異世界に行けばそれが簡単に手に入るだろう。
実際にあの人たちは俺が還るのを惜しんでたしな。
それに正直俺も、日本に住むよりは異世界で住みたいって思ってたりしている。
でも、まだ早い。
あの日までは決める事はできない。
「まぁそのうち答えを出すつもりだぜ。それよりそっちはパラディエスには帰るつもりはないのかい?」
「そうだなー…別に帰ってもいいけど、退屈になりそうだからいっそこのまま戦争している国に行こうかなって考えてるぜ。」
「そっか。だったら一つだけ教えとくけど、近いうちにパラディエスで大規模な戦争が起こるぜ。」
「…戦争だと? 何処でやるんだ!?」
戦争って言った瞬間この食いつきだよ。
ホント狂戦士なんだよな。
呪術師よりも狂騎士として生きていった方が似合いそうだな。
「正直俺もどれ程の規模になるか分かんねぇけど、多分パラディエス全土になるかもしれねぇな。」
「オイオイオイオイ! 最高の戦争じゃねぇかよッ! 何時やるんだ!?」
「落ち着け。起こるとしてもすぐじゃねぇ。早くても12月には勃発するだろうな。」
「12月…! 今から半年後か!」
初めて会ったけど、ここまで戦争大好きなのはどっかの少佐とコイツだけじゃなぇかな。
俺とは正反対だわ。
いや、戦争好きなのは帝国出身だからこそだろうな。
あと戦いを好むのも。
「そんなおっきな戦争が起こるってんなら、一度パラディエスに戻った方がいいかもな!」
「だったら、二日後の夜にここに来な。引き裂けた道がここで起きると思うからよ。」
「二日後だな。それにしても何で戦争が起こるって分かるんだ?」
あっヤベェ…うっかりしてた。
その戦争自体は俺とアイツの計画ではその時期に起きるって推測してるんだっけな。
えーと…どうしようかな。
「ま…まぁ…女神がそう言ってたからだな。そうんな事を口に出していたから、もしかしたらそうなるかもしれないぜ。」
「おぉ! 女神が言ったんなら間違いなさそうだな。」
よし、何とか誤魔化せたな。
女神の奴らには申し訳ないけど、嘘をつかせてもらったぜ。
ティファニス、何かあったら頼むぜ。
「アイツらに伝言を渡しておいたが、こうやって会えたおかげでいい情報を得る事が出来たから来てよかったな。」
「そ、そうか。」
「そんじゃあ、二日経ったらまたここに来るかな。いい情報ありがとな!」
グルブは俺にお礼を言いながらどっか行ったけど、戦争なんてどうなるか分かんねぇし、言わなかったほうが良かったかもな。
でも嘘とは今更言っても遅いし、もうどうにでもなれ。
「博士たちの所に戻るか。」
虚空門で博士たちがいる場所に移動して、終わったどうか確かめに行った。
近くの場所に移動して中に入ると、すでに終わっていたみたいだった。
「おかえりなさい。もういいのかしら?」
「こっちはもう大丈夫です。博士の方は?」
「こっちも今終わったばっかよ。もうする事も終わったし、帰りましょうか。」
もうここには何もないはずだよな?
忘れ物や用事はないな?
―――…ないね。
よし帰ろう。
お家に帰ろう。
そして寝よう。
それじゃあ虚空門オープン。
行き先はスコーピオンのアジトの入り口。
なんだかんだ怒りはもう収まってたし、これからやる事が増えたな。
でもこればかりはしょうがない。
誰かを助けるのに、仕事が増えるのは当然だからな。
「これから面倒ごとになるけど、あの子達共々よろしく頼むわね。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
それから俺たちは工場があった場所を軽く探索して、何もないのを確認してから帰った。
翌日、お偉いさんにあの場所に残ってたものの処分を任せてもらい、今度こそスコーピオンは完全に崩壊した。
ちなみに俺が持って帰った銃は、博士の手によって魔弾銃へと改造してもらいました。
※北の帝国は決してロシアでもソ連ではありません!
次の投稿はかなり遅くなるかもしれませんので、途中から番外編や閑話を投稿しますのでよろしくお願いします




