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112話 ヴァルシュランの忌箱

「次の場所はさっき言ってた武器が大量に置いてある部屋ですね。」


俺が元の通路に戻ってきてから二人に軽く謝って、再び隠し通路のある場所を確認するために地図を見た。

今度はレーヴェが偶々開けた穴にあった部屋で、そこには大量の武器があったと言ってた場所だ。


「それについては俺も知ってる。確か別の場所にあった工場でそれっぽい物が作られてたのを見た事があったから、多分それだろうな。」


「その場所、あとで教えてくれないか? 警察やお偉いさんに言う際に伝えとかないといけないからな。」


「分かった。」


「それじゃあ、行きましょうか。」


俺たちは次に武器が大量に置かれてある場所に向かった。

武器庫らしき場所に向かっている最中、天井から物が降ってきたりとアクシデントがあったけど、それ以降は何も問題なく進めた。

まぁ天井から落ちてきたのは電灯と壊れかけの天井の破片だけどな。


「地図だとここっぽいな。」


「うわっ真っ暗。電気はこの辺りかな。」


風巻が壁を辿っていくと、照明のスイッチを見つけてくれて一気に明るくなった。

そこには確かに大量の武器がおいてあり、箱にはビルの資料で交流を行っていた国の行き先が書かれてあった。


「かなりの量だな。一体どれだけあんだよ?」


「数はまだしも、このだけの量が海外に流出しようとしたって考えると恐ろしいもんだな。」


「しかもこれが全部魔道具だと思うと少しだけショックね。私も一応魔道具技師だけど、ここまで完璧なものは作れないわね。」


そういえば博士は魔道具を作ってたっけな。

秘密基地においてあった魔道具はいくつか見たけど、確かにレベルがいくつか違うくらいクオリティが高いな。

まぁ別に博士の魔道具がショボいとかじゃないけどな。

まだ持ってる魔道具一回も使ってないけど。


「それにしてもかなり本物に似ているな―――――…ん?」


俺の目に入ったのはハンドガンやライフル。

ハンドガンはリボルバーやオートマチックとあったが、中でも俺が気になったのが、一丁のオートマチックだった。


色は赤と銀色。

大きさは怪銃(ニーズヘッグ)より少し小さいくらい。

ホルダーは7発。


何でそれに目が行ったかは分かんなかった。

ただそれが見えた瞬間、持ってみたいと思ったからだ。

それに俺の銃のサブで持ってもいいし、二丁拳銃っていうのも面白そうだな。

二人にバレないようにくすねよう。

ついでにライフルも三つくらい持っていくか。

俺用と長谷川用に。


しかしこの銃、ただの銃と同じだから魔弾銃とは勝手が違うんだよな。

博士だったできるかもしれないし、聞いてみるか。


「この武器とかは警察に任せてもらった方がよさそうですね。」


「そうだね。サンプル用にいくつか持って行って、それ以外は処分してもらっておきましょう。」


おっ、どうやら博士も持っていくみたいだな。

持ってきたバッグに入れてるし。

これで何かがあっても問題ないな。


「ちなみに博士。魔弾銃って作れたりしますか?」


「魔弾銃ねぇ。一応昔作ったことがあるから、できなくはないな。」


「でしたら基地に戻った時に、この銃を魔弾銃に改造できたりしますか?」


「それだったらいいわよ。設計からだったら無理でしょうけどね。」


よっしゃ! これで二丁魔弾銃が使える。

これで俺の武器は聖剣に妖刀、槍に魔弾銃二丁に弦弓になった。

でも弓は俺の専門ではないから、明日香あたりに譲ってもいいかな。


「それじゃあこの部屋は警察に任せるとして、次の場所に行きましょうか。」


「なぁ白崎、俺もこの銃って持っていってもいいかな?」


「あぁぁ……人を撃ち殺せるって覚悟と、人に撃たれる度胸があるなら持っていってもいいんじゃない?」


「よし、やめておこう!」


あっ、撃てる気がないんだな。

それもそうか。

普通はそうだもんね。

俺みたいに人を殺めた事があるなら別だろうけど、ないならやめておくのが正しい答えだ。


「行きましょうか。」


武器庫を後にした俺たちは、再び隠し通路がある場所まで歩いた。

今度は先生たちが進んでいた通路で、武器庫からは距離があったけど、残りの二ヶ所が先生たちのルートだったから仕方なかった。

この際俺の“虚空門”で一気にその場所まで行ってもよかったけど、場所も把握できてないし、出た瞬間何があるか分かんねぇから無理に使えない。

だから歩くしか方法がないんだ。


20分歩いたところで、ようやく目的地にたどり着いた。

てか広すぎんだよこの地下アジト!

なんで工場地帯の大半を地下にしてるんだよ!

やりすぎなんだよ!

もうちょっと狭くしなさいな!


「もうスイッチを探すのも面倒だし、切って開けますね。」


だって歩くのでやる気がないんだから仕方ねぇじゃん。

しかも朝からずっと動いていれば、疲れも溜まる溜まる。

もうスイッチを探す気力もないし、二人も何も言わないから同じだったんだろう。


「また階段か。」


「ここのアジトは地下帝国かなんかなのか? 更に下に行くとか。モグラやアリじゃないんだからよぉ。」


「文句を言っても何も変わらないんだし、早く行きましょうか。」


博士……せめて少しだけでも同情はしてよ。

涼しい顔してるけど疲れがあるのは見え見えだからね。

さっきから若干ふらついたりしてるし。

確実に持ってきた武器が重りになってるよ。

いったん休憩を挟んだ方が身のためじゃないのか?

まぁ言ったところでもう先に行っちゃったし、俺も行くとするか。


「さてと今度の部屋は一体何だろうな―――――ってデカッ!?」


階段を下りて奥の部屋に入ると、正面には巨大な鉄の箱が置いてあった。

大きさは大人が一人入れるくらいの大きさで、見た目は鋼鉄で作られていてキラキラしていた。


「な……なんじゃこれ!?」


「これって、何かの装置か何かか?」


見た目はコンピューターの機械みたいだと思ったけど、電子的な要素は全くなく、それどころか何かしら異様な気配を感じ取れた。


いや、異様というより禍々しい感じと言った方がいいかもな。

何ていうか……大和の国と同じだな。

瘴気が漂ってる嫌な感じ。


「風巻、博士と一緒に机とかにある資料を探すのを手伝ってやってくれ。」


「白崎はどうするんだ?」


「俺はこの箱みたいなやつを少し調べてみるよ。」


風巻は二つ返事で博士の方に行って、俺はこの箱が何なのかを調べてみた。


素材は鉄……じゃないな。

よく見るとこれって金剛魔鉄(アダマンタイト)で作られてるじゃねぇか。

しかも血管のように箱全体に帯びてある赤い線も、魔力を微かに感じ取れた。

つまりこれ自体が魔道具。

ただこの魔道具が一体何なのかが分からない。

俺もパラディエスでかなりの魔道具を見てきたけど、こんなにデカい魔道具は初めてだ。


しばらく箱全体をグルグル周りながら見ていくと、箱の下の部分に何かが彫られたような跡があるのに気付いて見てみた。

そこにはパラディエスの文字でこう書かれてあった。


『ヴァルシュランの忌箱(きばこ) A.D.210』


その文字が分かった瞬間、肝が一気に冷えた。

彫られた文字が本当なら、これはかなり危険な魔道具だと分かったからだ。

急いで壁に掛けてあった脚立を持ってきて、箱の中を確認した。

中に誰もいないのが分かって安心していると、俺の慌てた様子を見ていた博士と風巻がこっちを見ていた。


「お、おい。どうしたんだ? そんなに慌てて?」


「―――――…博士、そこの下に彫ってある文字を見てください。」


博士は俺が刺した場所を見ると、分かったのか焦った様子で俺を見てきた。


「…コレ……本物なのかしら…?!」


「普通ならあり得ないですけど、多分本物です。箱の素材が金剛魔鋼(アダマンタイト)で出来ているので。」


「中には…?」


「今見たんですけど、誰もいないので問題はないです。」


「そう……よかったわ…」


「な…何なんだよ! 一体この箱がどうしたっていうんだよ!?」


博士も安心して安堵していると、風巻が俺に焦った感じで聞いて来た。

そういえば君には教えなきゃいけないんだったな。

こればかりはふざけなしで教えるか。


「この鉄の箱はな、“ヴァルシュランの忌箱”ていう魔道具なんだよ。」


「魔道具って言うのは、さっきの武器庫にあった銃と同じもんなのか?」


「意味は同じだ。そしてこの魔道具の特徴は、中に入った人間を魔物の姿に変える(・・・・・・・・)事が出来る魔道具なんだよ。」


「え…?」


この忌箱の特性は、あのキノコと同じように、人を魔物にさせる事が出来るという、歴史上最悪の魔道具とも呼ばれている。

やり方は人を一人箱の中に入れて、起動させたら待つだけ。

あとは時間が過ぎていく度に、中にいる人は魔物へと変化していく仕組みなのだ。


バイルス・マッシュルームは自然的に魔物になる。

ヴァルシュランの忌箱は人工的に魔物になる。


この二つはパラディエスの歴史上、害悪でしかない存在なのだ。

特にキノコは危険だ。

あれは繁殖場所が限られてるから。


「ちょっと待ってくれ! そんな恐ろしい機械を、スコーピオンは所持していたのか!?」


「最初に見た時に気付かなかったのは、実物を見た事がなかったからなんだ。そして……これがここにあるのはあり得ないんだよ。」


「どうゆう事だ?」


風巻の疑問を、博士が俺の代わりに教えてくれた。

こればかりは博士に任せよう。

俺が教えるより、本家が話した方が分かりやすいだろう。


「この魔道具はね、今から200年前にできた魔道具で、この箱はすでに存在しない魔道具なんだよ。」


「存在しない? それじゃあこれは偽物なのか?」


「えぇ。これはもうすでに100年前に壊されているはずなのよ。しかもたった一つしか存在しないから、ここにある事自体が変なのよ。」


博士が言ってるのは事実だ。

これは3代目勇者の伝記に書かれてあって、すでに3代目が壊したって記録が残っている。

もう存在しない。

だから二つ目があるのはあり得ないんだよ。

でもそれを可能にできるのは、怠惰(・・)だけだ。

暴食の時と同じように、“時間転移”をしたんだ。

でもそれだと歴史の改変(タイムパラドックス)が起きて、3代目の伝記に破壊したってワードは出てこないはずだ。

だとしたら残る可能性は…――――複製(・・)


怠惰で過去に戻って、材料と忌箱の設計図を持ってくる。

そして奴らの技術力で同じものをそのまま作り上げる。

そうすれば複製が可能になるし、忌箱(コレ)がここにあるのに合点が付く。


「何がどうあれ、これは存在しちゃいけない物だ。今すぐ破壊しよう。」


俺は箱から降りて、博士と風巻をその場から離し、虚空で一瞬にして塵にさせた。

これでもう、おぞましい魔道具は二度と存在する事はないだろう。

あとは、これの被害者がいないかだ。


「博士、これの実験のレポートはなかったですか?」


俺はこれが未使用であって欲しかった。

そう願いたかった。

でもその願いは、博士の次の言葉で決まった。


「―――――…これを。」


曇った表情をしている博士から渡されたのは、二つのレポート。

そこに書かれてあった事は、二人の少女だった。

内容は…―――――忌箱に入れられてからの変化が明確に書かれてあった。

つまりこれがここにあるって事は、二人の少女は魔物に変えられたって意味をあらわしていた。


「ふっ…ざけんな!」


これを見て怒りしか湧いてこなかった。

憤怒を止めていたからよかった。

もし止めていなかったら、俺は“逆鱗”を使ってこの部屋をぶっ壊していただろう。

それくらい怒っているからだ。

文字通りの激怒。

抑える事も考えなかった。


「ここの組織は全員クズじゃねぇか! 人の心を持ってねぇのかよ!!」


「落ち着きなさい。ここで怒っても意味はないわ。」


「意味がない?! 二人の少女が化け物に変えられているのにか!?」


レポートある少女は、願ってもないのに魔物になった。

普通の女の子で生きたかったに違いない。

でもそんな願いを、クズな大人のせいで壊された。

生きる意味を失った。

生きる自由を奪われた。

それがどれだけの苦しみなのかが、俺には分かる。

何度も、それと同じ出来事を見てきたからだ。


「この世界はクソッタレだ! 罪のない人間が死んで、人を殺めた人間が償いのために生かされる! そんな法律(ルール)がある以上、この世界に平和なんて永遠に来ねぇよ!!」


罪人が嫌いだ。

法が嫌いだ。

平和じゃない世界が嫌いだ。

俺はこの世界に平和が存在しないのが嫌いだ。

法が正しく罰を与えない。

人を殺めた人間に、罪と平等な罰が与えられない。

そんなんだったら、罪人を生かす理由なんてないのと同じだ。


人間は欲だらけだ。

欲が悪の蜜となり、人を誘い込む。

でも全員が欲だらけじゃない。

少なからず、俺の知ってる人たちは違う。

そして本当に罪な人間は、自分が悪い事をしているのに気付かないんだから。


「君の怒りは分かる。私も怒りたい。でもこの子たちは生きてる。私はそう思ってるよ。」


「……それは俺も分かってるよ。この子たちは…生きてるはずなんです。」


レポートには死んだと書かれていない。

つまりこの子たちは何処かで生きてる。

だとしたら出来る事は簡単だ。

元に戻せるやり方は知ってる。

だからこの子たちを探して元の姿に戻すだけだ。


「……行こう。」


瞋恚の炎は消えない。

俺の怒りが尽きるまで。

悪が終わらない限り……永遠に。

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