111話 不明の足跡
今回は気持ち短めです
「時間は残り5時間で、残りの地下を調べる…でよかったかしら?」
「はい。それで合ってます。」
ビルの探索が終わった俺たちは、エントランスに戻ってきていた。
そして現在の時刻は午後の1時。
お偉いさんから許可をいただいた時間まで残り5時間になっていた。
本来ならもっと早めに終わるつもりだったが、ビルの方の情報を探すのに思ってたより時間がかかってしまった。
だってあの書庫が多すぎたんだもん。
予想の3倍は多かったんだもん。
「それで確認なんだけど、君が持ってる地下の地図で隠し通路はいくつあるんだ?」
「まだ分かっていないのは三ヶ所ですね。それと母さんが言ってた武器が置いてある部屋にも行きたいので、全部で四ヶ所になりますね。」
武器庫に至っては特に手付かずだって聞いたし、もしいいものがあったら拝借すればいいしな。
「それじゃあ近い順で行きたいので、そこから行きましょうか。」
まずは自分が防いだ氷の壁を粉砕しなきゃだけどな。
てか数日経っても存在を維持してるって、俺の凍りどんだけ熱に強いんだよ。
「なぁ…この氷っていったい誰がやったんだ?」
「あぁこれ俺が敵に挟み撃ちされないように、通路を氷で防いだやつだよ。」
「氷って……お前の異能ってつえーんだな。」
うん、そう思ってもらおう。
考えるな、察してくれ。
まぁそれは置いといて、この氷を妖刀でスパッと切って進みましょうかね。
地下の方はまだ電気が通っているみたいで、明かりもついてるし機械等も健在していた。
「えーとこの地図だと、母さんたちが行ったルートになるな。」
地図をガン見しながら進んでいくとしますか。
え? 前は見なくていいのかって?
問題ない。
だってもう敵はなんだからな。
「てかずっと思ってたけど、お前って刀とか持ってるけど、それって大丈夫なのか?」
「心配いらないぜ。バレなきゃ犯罪にはならないんだよ。」
「いや俺にバレてる時点でアウトだろ。」
「大丈夫大丈夫。俺もそうだけど、ホークアイのメンバーは警察と同じ扱いになるから、銃や刀は申請すれば許可はもらえるぜ。」
「……それならいいんだけどな。」
まぁそのルールは俺がお偉いさんに頼んでそうしたんだけどな。
俺はまだしも長谷川はライフル使わない限り無能になっちまうし、沙羅先輩に至っては銃刀法違反以前の問題になっちまうしな。
しかも後から話を聞いたけど、陽菜先輩の“手品師”もトランプが刃物になっちまうとか言ってたし、明日香の“天穹”に至っては当たり所次第では人を簡単に殺せるんだよな。
………ホークアイのメンバーの異能、殺傷性高くね?
「さて着いた。この壁の向こうに隠し通路があるみたいだな。」
ついた場所はなんも変哲のない廊下。
右にも左にも特にないけど、ここに隠し通路があると地図には書かれてあった。
ただあるとしたらレーヴェがやってであろう、ボコボコになった壁と床があった。
「どっかにボタンでもあるんかな?」
「とりあえず探してみましょう。」
博士に言われて俺たちは頷き、壁のあらゆる場所に何かないか探しまくった。
通路がある場所の横の壁や、反対の壁だったりと、いろんなところを探したけど見つからなかった。
3分くらい探したあたりで我慢できなくなった俺が、妖刀を抜いてから壁をぶった切ってやった。
「これって、階段か?」
「階段どうとかは置いておいて、君……もうちょっと探すって努力をしなさいよ。」
もうちょっと努力?
3分経てば頑張ったほうでしょうに。
しかもあと5時間しかないのだから、こんなので時間を無駄に使いたくないじゃないですか。
そう言ったら更に呆れられるから黙っておいた。
気にしたら負けだ。
「まぁいいじゃないですか。考えただけ無駄ですよ。」
「……君って、時々トモと同じような考えをするわよね。」
「類は友を呼ぶっていうじゃないですか。そう考えれば楽ですよ。」
まぁそんな事はどうでもいい。
さっさとこの隠し通路にある階段を下りていきましょうか。
階段自体はあの変なカプセル部屋と同じ長さだったな。
さーてと、中はどんな風になっているのでしょうかね。
「ここは…牢屋か?」
中は一本道が続いてあり、左右には牢屋の檻がたくさんあった。
牢屋の中は何かが閉じ込められてあった跡が残ってあり、壁には血痕が何ヶ所かあった。
ただ血の匂いがしないって事は、この血痕はかなり前のだというのはわかるな。
「この牢屋、一つで何人も収容できるくらいの広さはあるな。」
「これは俺も知らねぇな。まさかこんな場所があったなんてな。」
風巻も知らなかったって事は、この場所はほとんどの異能者には知られていなかったのかもな。
すると博士がその場で止まって、ある牢屋の中を見始めた。
「どうしたのですか?」
「……白崎君、この牢屋に明かりを灯してくれないか?」
「え? あぁ、はい。」
俺は牢屋に明かりを灯すと、壁や床にも血痕が残ってあった。
博士は牢屋の中に入ると、床にある血痕を触って何かを調べだした。
「この血痕、人の血じゃないわね。」
「人の血じゃない? つまり魔物か何かの血って事ですか?」
「その可能性があるわ。それに、これを見て。」
博士が指で刺した場所は、何かの足跡だった。
足跡は血でできていたが、人の足をしていなかった。
まるで何かしらの小さな生き物が牢屋の外に出たかのような感じで残ってあり、それは廊下の途中で消えてなくなっていた。
「これって……まさか宇宙人の足跡!?」
「いや違う。これは魔物の足跡だ………だけどこの足跡…」
床にあった足跡は、ゴブリンでもなければ、妖の餓鬼のようなものではなかった。
まるで墨がついた筆を押し付けたような足跡をしていた。
「博士、この足跡って、見た事ありますか?」
「いいえ、私は知らないわ。君も分かんないのよね?」
「はい。俺も始めてみました。」
この足跡、一体何の足跡だ?
大きさからしてもそこまで大きくないし、予想で大体60cmって辺りか。
ゴブリンと同じ大きさだけど、足跡の時点で違うのは分かる。
ゴブリンの足跡は人と同じような5本の指で歩いてるから、筆のような足跡じゃないのは明白だった。
「もしかして、未知の魔物の可能性がありますね。」
「アンノウンか。その可能性はあるかもね。」
アンノウンというのは、文字通りの未確認の魔物の総称を意味する名前で、過去には何度か発見されたって例があり、パラディエスでは2年間に一回は発見されている。
もしアンノウンがこの牢屋の中にいたというのなら、この足跡には合点がつく。
「なんか……俺も知らない話が二人で行われている。」
あっ、そういえばここには全く知らない人物が一人いたな。
でもここで話をしたら夜になるし、この話は近いうちに簡潔に話そう。
もしくは面倒だから本を書いて説明書みたいに書いて渡したほうがかもな。
「とりあえず、他の牢屋も見てみましょうか。」
念のため他の牢屋を確認したが、似たような足跡はどこにもなく、結果最初に見たあの足跡しか見つからなかった。
まぁアンノウン自体がごく稀に存在しないのだから、二体や三体もいるのはおかしいもんな。
「ここは牢屋だけですし、戻りましょうか。」
「そうね。」
―――――――……助…ケテ…
「……?」
階段を上ろうとした辺りで、後ろから声が聞こえたような気がして振り向いた。
だけどそこには誰もおらず、気配も全く感じ取る事ができなかった。
……なんだ、今の声?
確かに掠れた声で助けてって聞こえた気がしたんだよな。
でも後ろには誰もいない。
気配も全く感じ取れない。
はっ! まさかここに地縛霊でもいるのか!?
つまりこの場所はすでに呪われている!
いや別におかしくない!
だってここには多くの人質が囚われては実験によって犠牲になったんだ。
だとしたら成仏できんでこの場所にずっといるのかもしれないな。
「どうしたのかしら?」
「すみません博士。先に行っててください。」
「何かあるのか?」
「いや、少しだけ用事が出来たんだ。大丈夫、すぐに戻るから。」
「そうか? 分かった。」
二人が先に階段を上がりだし、俺はその場に残って紙でできた造花を何本か“創造作成”で作っていった。
造花に選んだのは、『白い菊の花』だ。
そして牢屋の各場所に置いて行って、全部の場所に置いたところで合掌をした。
「ここで閉じ込められてた人たちに告げます。あなたたちの事を忘れないように、隣町に慰霊碑を作るように頼んでおきます。どうかご冥福をお祈りしますので、安らかに眠ってください。」
そう言って、俺は神術の一つである“浄化”を使って、その場に残っているであろう、霊たちを成仏させた。
本当ならこんな強引なやり方はしたくなかったけど、のちにこの場所で何も起きないようにするためには、こうしないといけないからな。
―――――――ありがとう。
どこからかそう聞こえたと同時に浄化が完了して、俺はその場所を後にした。
だけど俺はのちに、恐ろしい事実を知る事になってしまった。
さっき聞こえた声の正体は、別の隠し通路にあったある物によって姿を変えられた悲劇の少女だったという事に。




