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109話 これからの生き様

「よーし、焼けたな。そんじゃあ焼けたやつから食ってけよ。」


『おお―――――――!!』


スコーピオンへの夜襲から三週間。

ようやくほとぼりが冷めてゆっくりする時間ができたこの休日、俺たちは夢の世界(シープ・ワールド)で鉄板パーティをしていた。

参加者は翠嵐さんと瑞風神社の関係者を除いたメンバーで行っていた。


本当なら誘うつもりでいたけど、本人から遠慮されたのと、今回の件を他の妖術師の派閥に話し合わないといけないからと言われたからだ。

なのでここにいるメンバーは、それ以外の俺たちでやっているのだ。

ちなみに調理担当は、俺,真莉亜,夏奈,リラ,リベル,オルソでやっている。


「ん〜♪この焼肉炒め美味し〜い!」


「肉と野菜に付いているソースがいい感じに仕上がってますね。」


うん、見た感じみんな美味しく食べてるみたいだな。

作ってるのは鉄板料理だけだから、焼肉や焼きそば、それに魚介パスタなど、使える食材は丁寧に使って美味しく頂いております。

あぁもちろん、調味料はこっちのを使用してるよ。


「レイ殿に使わしてもらってますこの調味料、かなり質が良いものばかりですね。」


「あっ、オルソは分かるんだね。俺たちの住んでる国の調味料もそうだけど、食材もいい物ばかりだから作りやすいんだよ。」


いやホントに、日本の食材と調味料はかなり世界でも安心して使えるから、その辺はかなりありがたいもんだよな。

日本食バンザイ。

あっ白飯が美味しい。


「白崎君の作った料理もそうだけど、他に作ってるみんなの料理もおいしいわね。」


「そうだな。しかしまさか零が、こんな力を持っているとはな…」


「ゲームのようなキャラクターがいっぱいイマス。」


沙羅先輩たちも、最初こそは戸惑いはあったけど、今はみんなと打ち明けて話したりしているし、あの様子だと大丈夫そうだな。

すでに後輩二人はもう友達になってるしな。


「そう言えば、魔界の食材はほぼ肉しかなかったなぁ……毎日毎日が肉ばっかりだったから、野菜を食べる習慣なんてこれっぽちもなかったのを覚えてるわね。」


「えっ……魔界の食事事情ってそんなんだったの?」


「魔界で野菜も出回ってはいましたけど、環境が人間界よりもあまり良くなかったからか、育っても質の良い野菜などは生産が弱かったのです。」


まさかの魔界、野菜が少なかった件。

俺も一回は魔界に行ったけど、確かに人間界と同じような自然はほとんどなかったし、戦火の跡があらゆる場所にあるような場所だったもんな。

たとえ好戦的じゃない魔族がいたとしても、それを気に入らないで内乱を何度も起こした魔族がいるって聞いた事があったな。

だからこそ、いくつかの魔族はあの組織(・・)にいるんだろうな。


「だからこうやって再び日本人として生きているのがどれだけ嬉しい事なのかが実感できるよ。それに零君のご飯もすごく美味しいし。」


「それはどうも。よし、シーフードパスタ完成。」


大分作ってそろそろ俺も食べていこうかな。

っとその前に、水分補給だな。

環境が暑くなくても、やはり鉄板を前に汗はかくからな。

すると実食組に関わってたヨルムが寄って来て、恐ろしい事を口に出した。


「師匠! この塩味の焼き鳥(・・・)がすごく美味しいです!」


「ブ――――――ッ!!」


俺は休憩がてらに飲んでたお茶を盛大に吹き出しちまった。

だってしょうがねぇだろ!

コイツ、禁忌(・・)を自ら犯したんだぞ!?

共食いだよ共食い!

お茶吐き出さないでいつ吹くんだよ!

今でしょ!


「お…お前、それ食うのに躊躇いとかないのかよ!?」


「え? 別に問題は無いですよ。」


問題ない?!

そう言いましたか!?

俺からしたらかなり重要なんだけど!

考えてないのか?


「いやお前、それ鳥なんだぞ!? 共食いなんだぞ!? それでいいのか!?」


「だって師匠。アタシは王都にいた際は、害鳥であるハミングバードを駆除しては焼いて騎士のみんなと仲良く食べてましたよ。」


「あれ焼いて食べてたの?!」


ハミングバードというのは、口笛のような鳴き声を発しながら群れで行動している魔物だ。

そしてその魔物のランクはCランクなんだが、農家の畑を荒らしたり、野菜などの食物を食べたりとしている害鳥として有名な魔物で、冒険者もクエストとして行動するのは多々あるのだ。


あっ、ちなみに魔物でも食用として食べれる魔物はちゃんと存在しており、ゴブリンやオークなどは食用などには向いてないけど、ハミングバードやクラーケンなどは食用として食べれたりするんだ。


「お前さ、仮でもフクロウの獣人なんだぞ? 鳥を食べて心が痛まないのか?」


「師匠、戦場となったらいざという時に食料がない場合がございます。たとえ同じ鳥の分野に入っても、所詮は鳥と獣人なのです。」


「お、おう……」


「ですので鳥を食べて心を痛めるような事は、戦う者からしたら弱音をずっと吐く弱虫と同じなのです。」


コイツって、昭和を生き抜いた軍人みたいなことを言ってるな。

確かにパラディエスでも戦争は一年に一度くらい起きてるけど、そこまで言うような奴はそんなにいないんだぞ。

しかもそれを聞いてた何人かは理解ができたのか、食べながら頷いていた。


「お前、結構図太いんだな。」


「当然です。師匠と同じように、あらゆる戦場に出るのなら、それに見合う精神(こころ)を持たないといけないのです。」


「そ、そうか…」


コイツは軍人だな。

獣人でもなければ、本物の軍人ですわ。

そういえば新人の騎士がヨルムに尊敬を持っていたけど、これに尊敬していたのか。


「ふぅー……ようやくのんびりできそうだね。」


「お疲れ真莉亜。そっちも食べたらどうだ?」


「うん。調理中にリベルが私たちのために装っくれてたみたいだから、あとで一緒に食べましょう。」


「了解。俺も少し休んでから食べるようにするよ。」


横に座ってお茶を飲んでた真莉亜は息を吐くと、空を見上げて俺に話をしてきた。


「それにしても、この三週間は大変だったね。」


「そうだな。俺たちの学園生活も、一気に変わってしまったからな。」


そう、ホントに変わってしまったのだ。

あれからどれだけ変わったのかを話していこう。


まず大きく変わったのは、俺たちの学校の校則だ。

俺は翠嵐さんと改めて話し合って、政府に異能の件を公の場に公表しない事を決めた。

そして夜襲を終えて二日経ったある日、知り合いになった警察官の野々宮さんが学校にやってきて、俺と生徒会長である沙羅先輩と櫻井先生の四人で、話し合う事になったのだ。

そこで聞いてて分かったのが、なんと野々宮さんは警部だったのが分かり、警察の中でも上にいるような人であって、俺たちが関わってた異能の事件についても捜査をしていたのだ。


そして野々宮さんが学校に来た理由は、俺たちが政府のお偉いさんと話す前に異能がどんなモノなのかを聞きに来たのだ。

俺は信じれる人だと分かり、簡潔に異能の事を話した。

そして話を聞いた野々宮さんは、俺の話をすぐに信じてくれて、今まで起きた事件が異能者のせいだと分かり、しかも洗脳されてたんだと分かると、異能者についての処遇をこれから検討していこうと言って、それからは俺たちには何も聞いてこなかった。


その翌日、俺は博士と一緒に翠嵐さんと妖術師に関わってた政府のお偉いさんと話をした。

翠嵐さんを通して話を進めてくれたおかげで、俺についてはあまり深く追及はしてくる事はなかったが、前の妖の件を隠す事ができなくなってしまい、俺は正直に話した。


はじめは信じてもらってなかったけど、妖の被害が少なかった事と、親玉が倒された事があやふやになってた事から、真実を知ってようやく合点したみたいで、お偉いさんは頭を下げて感謝されてしまった。

真実を話したら急に陽気なおっさんになったお偉いさんは、ぬらりひょんを倒した事で日本が救われたと、ちょっとしたお礼だと言ってかなりの額のお金をもらい形になってしまった。

まぁ口止め料も込みでその額になったと思うだろうけどな。


話が脱線してしまったが、話し合いの結果で校則については変更とかはなく、新しくいくつか追加された。

追加された校則は以下のような感じだ。


1,学校や日常生活においての異能の使用を禁ずる。

2,一般人に向けて異能を無断で使用した場合、即退学とする。

3,異能での被害が大きい場合、罰金もしくは実刑を与える。

4,許可なしに異能で殺人を犯した際は、即実刑判決を行う。


これが新しく増えた校則だ。

これで少なくとも、簡単に異能を使う事はできなくなるだろう。

ただこれで問題が出てくるのは、異能を持った者が欲を出して殺人を行った場合はどうするかだ。

そうなった場合、警察はおろか軍を使わない限りは抑えるのは困難になるだろう。

そこで俺はある方法を考えた。


―――――『相手が異能者なら、こっちも異能者で対抗できる組織を作ろう』っと。


その発案を出した事で、ある組織が結成された。


名前は『対異能者特別対策本部“ホークアイ”』


初期メンバーは、俺,真莉亜,夏奈,トモ,明日香,生徒会全員,来斗,穂花だ。

監督役で、博士と櫻井先生の二人も一緒になった。

主な活動としては、異能者による事件での場合に警察と一緒に行動して事件を解決するって事になった。

まぁ現状はこんな感じで、場合によっては変えていくかもしれないけどな。

もちろんタダ働きって訳じゃない。

事件の大きさによって、ちゃんと報酬を貰う事はできる。

ただし貰えるのは、その事件に協力していた人物だけどね。


そして俺たち初期メンバーは、校則があっても異能が使えるようにと、政府から『異能者特別執行人』の称号を貰った。

この称号を持ってる異能者は、警察がいない場合でも異能を使って異能者を制圧できる権利みたいなもので、いわば警察手帳と似たようなものだ。

ちなみにその称号は生徒手帳に付けられ、俺たちは特別特待生になった。

特待生は授業での単位を取れなくても問題ないと言ったVIP待遇だ。

称号持ちのリストは、妖術師関連のお偉いさんが所持する事になった。

理由は翠嵐さんとパイプが繋がってるからだ。


拠点場所は学校内にある空き教室で、今はそこを使うようにしている。

仮の場所だから、正式な拠点は今後決めるつもりだけど、決めるなら博士の秘密基地があるあの町の何処かにした方がいいかもな。

あの場所は異能者が多くいた場所だし、何より工場地帯に近いからな。


その異能者の後始末が終わるまでが二週間。

残りの一週間は、俺自身の状況整理だ。

今の俺は、クロノアたちが言ってた『ゼロ』になっている。

その事については、近い日にティファニスに話をしてもらおう。

俺はまだ仕事が終わってないんだからな。

何せ終わっているのが半分だから。

まだ半分あるんだよ。

でもしょうがない。

そうなるようにしちゃったんだから。

それに俺も、さっさと終わらせてあの二柱(ふたり)にも逢いたいし、何より彼女たちが俺の残りの記憶を入れ込んだ物を持ってるんだからな。

それの回収もしないといけない。


「そういえば零君、前に助けた異能者の妹さんってどうなったの?」


「あぁ、あの男の妹さん、どうやら急に呪いが消えたみたいで、あとから目を覚ましたらしい。」


そう、何故か目を覚ましたのだ。

夜襲を終えてから数時間経った時に、俺は約束通りに呪いを解くと言ったのだが、その妹さんが急に目を覚ましたという連絡が来たのだ。

最初は意味が分かんなかったけど、あとからトモが俺に言って来て、どうやら呪いの正体はE1が原因だったと言った。


ま、事件が解決したのなら別にもうどうでもいいか。

それに彼も、ホークアイに加入させるつもりみたいだしな。


「しっかし、これで俺たちは普通の生活とはおさらばかぁ……。平和な生活は、もうできそうにないな。」


「そうだよねぇ。これからって時に全部ぶっ壊されたから、これからどうするのかなぁ…」


「「ハァ……」」


ホント、いい加減にしてほしいわ。

勇者と魔王は、平和が恋しいのですよ。

誰でもいいから、俺たちの平和を返してください。

そしたら俺たちは血を流さないで済むのですから。


「なーにため息ついてんだお前ら。何かあったのかよ?」


俺たちは声がした方を振り向くと、食べ終わって満腹になったトモと明日香がやってきた。

別に溜息をついたっていいでしょうに。

何せ平和な生活にグッバイ宣言しちゃったんだから。


「相川君、白崎君たちは少し前まで別の世界で戦っていたのですよ。本当だったら二人はこっちで平和に生きるつもりだったのに、また戦いを強いられているのですよ。」


夏奈も調理を終えてこっちに来て、トモに説明をした。

夏奈の言う通りだよ。

だって勇者を終えたらようやく普通の生活ができると思うじゃん。

そんで地球に帰って来るなりまた戦いって。

俺は戦争なんて大っ嫌いなんだよ。


「でもその割には、かなりの異能者を殺したみたいじゃない? 勇者なのに人を殺すっていうのはどうなのよ?」


「殺したのは人を殺すのに愉悦を持った奴だけだ。人殺し以外は入院レベルで止めたよ。」


「そうだよ明日香ちゃん。それに言っておくけど、勇者が人を殺さないってイメージは人の妄想だから。それに罪人を殺したのにその人を罪人呼ばわりにする日本はおかしいのよ。」


真莉亜さーん、その通りだけどそれは言っちゃダメでしょう。

まぁ確かにこの世界は罪人を殺したら罪人になるってルールがあるけど、そのルールはおかしいと思うのは否定しないよ。

ルールだけじゃない、法律もおかしい。

家族を失って一人生き残った人は、その人間に罪を意識してほしいし、警察に逮捕してほしいって思ってるはずだ。

なのに法は、罪人に正しい罰を与えない。

そんなのは法じゃない。

ただの哀れな慈悲だ。


「まあまあ、今はそんな暗い話はやめよう。そんな事より私からしたら、アンタ達の関係に驚いたわよ。」


「あぁそうだ。それもそうだったな。まさかお前らが三人で付き合ってたなんてな。」


トモから言われて、俺たちは申し訳ない気持ちになった。

本当なら最後まで隠そうか考えたけど、流石にこいつら相手に隠し事はしたくないと思い、三人で正式に付き合ってる事を二人に教えた。

かなり理由を聞かれたけど、真莉亜も夏奈も同じくらい好きって言う事が分かった瞬間、二人は諦めたかのように俺たちを祝ってくれて、二股を隠すのに協力するって言ってきた。


「しっかし、真っ当に生きていたお前がまさか二股なんてしてるとはなぁ……人生で一番驚いたぜ。」


「最初は俺も香織ちゃんも反対したんだよ。でも二人の圧に押されまくって俺が折れたんだから、しょうがねぇんだよ。」


「今になって冷静に考えてみると、二股なんて恐ろしい事をしてるんだなって思ったよ。」


夏奈、気付くのが遅すぎんだよ…

学年首席のお前が、こんなおっかない事をしてるって知られたらどうなるか分かんねぇだぞ。

でも認めちまった俺も同罪だけどな。


「そういう訳だヒーロー。俺たちの悪行は、大目に見てくれ。」


「分かってるよ。これで貸しはなしになったんだからな。」


「助かる。」


貸しが何なのかは、知らなくても分かるよな。

まぁ俺にとって不安要素が無くなるのはありがたいし、何より既に翠嵐さんは知ってて許した(・・・・・・・)ってのが驚きだったけどな。


「おーい零ちゃん! おかわりってまだなのー?」


照……アイツまだ食い足りねぇのかよ。

もう俺腕が上がんねぇんだけど。

あっ桜姉、代わりに作ってくれるのか。

ありがたい。


「さてと、俺たちもぼちぼち食べていこうかな。」


「だったらさ、せっかくだから食べ比べしてみない?」


「いいわね。それじゃあまずは白崎君の料理から食べていきましょう。」


食べ比べか。

真莉亜も料理の腕を上げたし、夏奈の料理は滅多に食べれないから、俺も付き合うかな。


「そんじゃあ、俺たちは行ってくるよ。」


「おう、行ってこいヒーロー。」


ヒーロー……ね。

そう言われるのも、悪くは無いな。

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