表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/157

107話 絶技

「“死狂い”」


『ヒィィ!』


「オラァさっさと食わせろ!!」


『ヒャァァァ!』


俺が捌いて、真莉亜が焼く。

ヤギに対してずっと攻撃を仕掛けていた。

捌いて、焼いて…

捌いて、焼いて……

捌いて、焼いて………

捌いて!焼いて…………


「「当たれよ!!?」」


さっきからちょこまかと動き回るから全然当たらないし!

ヤギのくせに避けてんじゃねぇ!


時刻は深夜の3時。

本来ならみんなお寝んねしている時間だ。

しかし俺たちは今でも起きてこの夜襲を行っている。

そして休まずに戦っている俺たち。

もうすでに気付いている者はいるだろう。

そう、俺たちはモーレツに腹が減っている!

夜襲のために食事を控えていたからか、胃袋の中の貯蔵庫はすでに空っぽだ。

そして今俺たちは、空腹が限界でハングリー精神が最高潮に至っているのだ!


「貴様さっきからちょこまかと逃げやがって! 恥はないのか!?」


『何なのよアンタら?! さっきから飢えた眼で斬りにかかったり燃やそうとしたりと、何がしたのよ!?』


「「うるせぇ! 腹減ってるんだから黙って食わせろ!!」」


『単純に飢えた狼じゃないのよ!?』


飢えた狼だからなんだ?

俺たちは一週間前もこんな感じだったんだぞ!

ちょっとは間隔を開けさせろや!

それに運動したら腹が減るのは常識だろうが!


「とにかく腹が減ってるから、さっさとくたばるか俺たちの腹の足しになりやがれ!」


『なってたまるか!?』


「「じゃあ死ね!!」」


『情緒不安定にもほどがあるだろう!?』


まあ冗談はともかく、さっさと終わらせないとマジで空腹と眠気が半端ないから、手加減なしでボッコボコにしてやりますか。


「ジンギスカンになりやがれ! “禁じられし氷槍の雨(フォルカス)”!」


『ちっ、調子に乗るな!!』


ジンギスカン…じゃなくて、ヤギはどうしても食べられたくないみたいで、俺の数十本の槍を次々と砕き割っていった。

しかし、敵が俺だけだって事を忘れるなよ?


「こうなれば先に刻んだ方がよさそうね。“21ノ憎悪ノ刃(ブラックジャック)罪状ノ宿命(ジャン・バルジャン)”」


俺の槍が全部砕けたのを逃さずに、すかさず真莉亜が21本の黒剣が襲い掛かった。

いや結構バラバラな動きをしながら襲うな。

……いや、違うな。

無茶苦茶に振り回しているように見えて、ちゃんと退路を作って逃がさないようにして攻撃している。

結構うまいな。


『はぁ…はぁ…』


思ってたよりも時間が掛かるかなって思ったけど、そんなに掛からないかな?

いや、まだ分かんねぇな。

何せ向こうは元神徒。

あと何個か仕掛けを持っていてもおかしくない。

まぁ、奴を抑え込むのはいいんだけど、問題なのは…


「おい、照に皇! お前らも攻撃を仕掛けろよ!!」


「「は、ごめんなさい!」」


さっきからずっと思ってたけど、俺と真莉亜だけしか動いてなくて、照と皇は一歩も動いてなかった。

ボス目の前にサボるとはいい度胸だな。

あとで二人にはお仕置きが必要だな。


「お前らアイツの被害者だろ? 何で一番の被害者が何もしないんだよ!?」


「いや、さっきから二人の攻撃を見ていたら私たちはいらないかなって。」


お前は何を言ってるんだ。

地球に害する存在、ましてや魔人となったら、流石に倒すのがあたり前だろうが。

この二人、実は恨みとかなかったんじゃないのか?


「敵を目の前で何を言ってるんだ、このアイドルは。さっさとお前たちも一緒に攻撃を仕掛けろ。さもないと俺の飯を食わしてやらんぞ。」


「やるわよ萌歌! 私たちのオアシスが失われる前に!」


「そうですね! 彼のご飯が食べられなくなるのは致命的です!」


なんか俺の飯でやる気を出されるのは癪だけど、まあ二人がそれで動くのならいいか。

だけど真莉亜が奴を逃がさないようにしてるし、一秒だけで充分だな。


「時間停止。からの“死狂い”」


極限氷魔法である“禁術 閉ざされた禁忌の世界(ザ・ワールド)”。

そしてがら空きになった腹部に“死狂い”を撃ち込む。

本数は7本でいい。

どうせ当たるんだし、これだけでもかなり効くんだからな。


「そして時は動き出す。」


「―――…ぶじゃ!?」


よし命中。

あとはどれ程の効果があるかだな。

あの時は相手が悪かったから意味がなかったけど、今度はちゃんとこの目で確認が出来る。

さあ、果たしてどうなるか?


『この…調子にの…って……うっ…!?』


「始まったか。」


突然苦しみだしたって事は、効いたみたいだな。

受けた傷から状態異常が一気に襲いだしたな。

水ぶくれ、凍傷、出血、火傷、麻痺、盲目、呪い。

それが一気に襲い掛かる恐怖なんてないだろうな。


『こ……これって…?』


「おぉ、効果はかなりいいみたいだな。」


「な、何が起きてるの?」


「俺の“死狂い”の効果が出てるんだよ。あの凶線には、それぞれ状態異常を発生させる仕組みなんだよ。」


「それじゃあ、今はそれが発動してるの?」


「そうゆう事だ。ましてや、消失点のようにピンポイントでその一点に集中してやったんだ。これでノーダメージって訳にはいかないだろう。」


普通ならヤバイだろうけど、相手が相手だから少し無理があるかな。

俺としてはどっちでもいいけどな。

何せまだ不完全燃焼なんだから。


『くぅぅ…! クッソがあぁぁぁ!!』


うわぁ…あの女気合で全部治しちゃったよ。

しかもあの表情見てると、もう色欲とか何も関係ないな。


『人間風情が……烏滸がましいんだよぉぉぉ!!』


ありゃりゃ、ヒートアップさせちまったな。

しかも魔力が上昇()がってるって事は、向こうは本領を発揮するみたいだな。


「真莉亜、今からは俺のバックに回ってくれ。」


「え? どうして?」


「向こうは今から本来の力を加えてくるからだよ。多分魔力だったらリベルやアジュール以上だ。」


「マジで?」


俺の()が正しければ、だけどな。

でも正直言って今の俺じゃ分かんねぇから、一人で突っ込むのはなしでいこう。

また死にかけたらみんなにボコられるからな。


「照、次からは俺と二人でやるぞ。」


「私も戻ったばっかだから分かりずらいけど、これってもしかして…」


「そのまさかだ。皇は照のバックに回れ。」


「分かったわ。」


「ドラゴン、お前も二人と一緒に俺たちのカバーに入れよ。」


ドラゴンは俺の指示に対して、頷いて答えた。

さーて、向こうは果たして俺以上か。

それとも出来損ないか。

まあどっちであろうと、全力でやらないと間違いなく死ぬな。


『教えてあげるわ、人間共! 私の真の力が神に至ってるってことをね!!』


おーおー、顔が山姥みたいになっちゃってるよ。

もうあれは「色欲」より「憤怒」だよ。

パクリだ、パクリ。


『怯えなさい! これが私の本当の力! そして私は古の神の一柱、邪神パウウェスよ!!』


うん、予想通り(・・・・)

やっぱそっち側だったんだな。

黒ヤギを取り込んだ大罪魔人獣(トリニティビースト)

それに加えての本来の姿。

少なくとも、この世界の兵器じゃ倒せないな。

となったら、見逃すって選択肢はなかった事になったな。


『さっきまでのはお遊びよ。これからは本気で殺しにいくわ!』


「はいはい、御託はどうでもいいんだよ。さっさとかかって来いよ、ヤギビッチ神。」


『人間風情が、まずは貴様から殺してやる!』


魔力による引っ掻きか。

ヤギの蹄じゃないから、普通にヤベェな。

速度はそこまで速くないし、普通に避けるか。


そうして避けたら、腕の速度が速すぎて飛ぶ斬撃みたいになって、後ろの建物をスッパリと切った。

わぁお、避けて正解だった。

剣で弾けても、余波などで傷を負いそうだな。


『クソッ! 避けんじゃねぇよ!?』


「なーにバカ言ってるだ。殺し合いなのに、そう易々と当たってたまるかっての。」


『くぅぅ…こんの…!』


「それに、相手は俺だけだと思うなよ?」


「横からシュゥ―――――――!」


「ぼばっ!?」


超!!エキサイティン!!

俺に簡単に声を掛けてきているところに、照が横槍を入れるかのように蹴りを顔面にかました。

パウウェスは俺に集中しきっていたせいか、それに気付かず顔面にもろに受けて飛ばされた。

そんで敵が飛んで行ったのなら、追撃が基本だよな。


「懐がガラ空きだぜ。“断罪の氷獣(ヴェルガンド)”」


俺の体を氷で覆い、その形は獣の姿へとさせていった。

そしてメリケンサックのように拳の尖った辺りで、腹を思いっきり殴った。


『ぐっぽ…!?』


腹に受けて変な声を出しながら、パウウェスは地面に叩きつけられた。

そして再びガラ空きになった腹にもう一発撃ち込んで、一気に畳みかけた。

普通よりも殺傷性は高いし、パンチも戦神ノ意思(アテナ)のスキルの一つである“戦極大家”のおかげで120%のパワーで殴ってるから、威力も段違いだ。


『うぅぅ……ああああああああぁぁぁ!!』


殴られ続けられるかと思ったら、いきなり叫んで周囲に魔力を放出しだして、俺を強制的にその場から退けさせた。

それにしても、向こうは全力の割には自分の力を使ってない。

もしかしてコイツ、神格を持ってないのか?

つまりは出来損ないって訳か?

なーんだ、期待して損した。


「どうした? 全力の割にはそんなものか?」


『黙れ人間が!! “誘惑の舞踏会アスモデウス・デスマーチ”』


色欲の魅了を付与させた弾幕か。

これだったら…


「真莉亜! ドラゴン!」


「任せて! “意気消沈の煉獄(ニルヴァーナ)”」

「グオオオオオオォォォォ!!!」


真莉亜が広範囲の炎を、ドラゴンが竜の息吹(ドラゴンブレス)を使って弾幕をかき消した。

パウウェスの弾幕が消えた瞬間に、照が突っ込んで進んでいき、一気にパウウェスの目の前まで近づいた。


「私がいる事を忘れないでね。“黄昏の斬滅(サウザンドスラッシュ)”」


「私もいきます。“月の乱舞(ムーン・ソード)”」


照の亜光速の速さで振られる双剣の斬撃が、連続でパウウェス襲いかかった。

そしてそれに合わせるかのように皇の斬撃も襲いだした。

たとえ一撃防いだとしても、続く第二撃、三撃が襲い掛かるから、どんなに防いだとしても無駄だろう。


『ぐっ……あっ…がっ……!?』


上手く受け流したりしてるけど、一撃一撃が脅威の斬撃なんだ。

たとえ防いだり受け流しても、掠ったりしただけでもアウトだから、あれは時間の問題だな。

しかし、アイツがハズレだと分かったら、何だか気分が乗らなくなってきたし、そろそろ終いにさせるか。


「照に皇! 少しだけそいつを抑えておいてくれ!」


「え? いいけど、何をするの?」


「もうそいつには期待も何もない。俺が一撃でトドメを指す。」


「わ、分かった。」


二人に奴を逃がさないように頼んだ。

俺が出す技は、敵を『絶対に』殺す技だ。

そして『絶対に』当てる技だ。

もちろん、逃がすつもりなどない。


「ヤギ相手に使うのは癪だが、魅せてやるよ。俺の『絶技』をな。」


絶技――――それを覚えようとなったのは、俺がある国に行った時だった。

白崎零には二人の師が存在する。


一人は剣の基礎を教えてくれた師である――――グレン・インソムニア


もう一人は、剣の()を教えてくれた師であり、零の親友でもある東ノ国の侍――――モモタロウ


彼が召喚されて十ヶ月たった頃、グレンの誘いで剣技を覚えるため、親友の住んでる国に出向いて、残りの二ヶ月間をそこで費やした。

そして、今彼が持っている剣技を覚えた時に、彼は零にこう言い放った。


『敵を絶対に一撃で殺せる絶技を覚えろ。』


その言葉がきっかけで、零は修行を終えて冒険を始めと尚、鍛錬を毎日ようにずっとやり続けた。親友との約束のために、一日も欠かさず剣を振り続けた。

しかし、当時魔王であった真莉亜との最終決戦までに、零の絶技は『未完成』のまま勇者の責務を終えてしまい、親友との約束は果たす事が出来ないまま、彼は異世界を後にしてしまった。


だけど今の彼はあの時とは違う。

肉体も魔力も、剣の技術もスキルも、あの時とは全く違う。


今まで半身だったからこそ全力を出せなかった肉体と、魔王へと覚醒したからこそ得た魔力、この二つが完全になった事で、未完成だった絶技はついに完成した。


「――――――“絶技”」


零の放つ絶対必殺の一撃は、剣を抜き、全身を低く構えた状態から始まる。

そして零が放った言葉を合図に、世界が歪んだ。

空気は重くなり、それと同じように殺意がジョルメに襲いかかった。

この時、パウウェスは本能で感じる。

次に来る攻撃は……己の「死」と言う事に!


『くそっ…どきやがれ!!』


パウウェスは必死に照をどかして逃げようとしていたが、彼女は決して逃がさなかった。

彼女は思っていた。

零の言った言葉は、間違いないと。

それは彼をずっと知っているからこそ、信じれる言葉だからだ。


「どかしたいのなら、全力でやってみなさい!」


彼女たちは決してどかなかった。

それを見ていた俺は、気が楽になったかのように笑った。

まったく、昔と変わらず無茶をするもんだな。

そんで皇も、俺が照に言った事が聞こえたのか、進んで照と一緒に奴の足止めをしている。

二人が頑張ってるんだ。

だったら俺も、それ相応の事をしてやらんとな。


加減はいらない。

迷いはいらない。

躊躇いはいらない。

ただ剣を研ぎ、肉体の全てを使い、命を燃やし斬るだけだ。


零が踏み出した瞬間、歪んだ空間はあらゆる生物を動く事を許さなかった。

歪んでいた空間は、やがて時間を止め、あらゆる生物の動きを止めた。

しかしこの時、零は極限氷魔法で時間を止めてなかった。

だとしたら何故、時間を止められたのか。

答えは簡単。

零の取り込んだ神格(・・)が、時間を止めたからだ。

それにより完成された最強の剣技。

その名も――――――


「―――――零閃(ぜろせん)!」


零は音速の速さでパウウェスに迫り、防御を無視するかのように彼女の体を両断をした。

防御不能。

絶対必中。

その間彼女は、まだ逃げれる策を探していた。

しかし、それは零によって失わされた。

それを彼女は知らない。

時が止まった世界でそれを知ってるのは、白崎零ただ一人だけ。


『――――――…え?』


時が再び動き始めた時には、彼女は終わっていた。

そして彼女は混乱する。

一体何時斬られたのか?

何で自分が負けたのか?

今の彼女にはわからなかった。

その疑問を答えるかのように、照はパウウェスの耳に聞こえるように言った


「アンタが負けた理由はただ一つ…――――――アンタは、真の力を持っていなかった事よ。」


『……く……そ……が……』


体を両断されたパウウェスは、糸の切れた操り人形のように、ただ何も抵抗できないままゆっくりと地面に倒れこんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://narou.nar.jp/rank/index201_0.php
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ