SS智也1 VS異能者幹部E1
零たちが見えなくなるのを確認したE1は、ヘルメットを脱いで俺の方を見てきた。
「さてと、早速やりたいところだが、ここじゃ狭すぎてやりずらいからな、場所を変えようぜ。」
そう言ってE1が指パッチンをすると、通路にいたはずの俺たちはいつの間にか広い空間の部屋に立っていた。
突然場所が変わった事に、俺はとてつもない焦りを感じた。
(な、何をしたんだ…!? まさか…今のがコイツの異能なのか!?)
俺だけじゃない、明日香や来斗たちも同じみたいだ。
いきなり場所が変わった事に焦っているし、何より全員を同時にこの場所まで移動させた異能を持ってる事を自分から晒したのだから、それほど自身があるのは確かなんだろうな。
「随分と広い場所だろ? ここなら存分に戦えるし、何より外部から邪魔されないんだからな。」
E1の言葉に、俺はその意味に気付いて周囲を見渡した。
俺たちがいるこの部屋には、部屋を出るためのドアが無かった。
つまり、ここから出るにはE1を倒さない限り出られないのか。
「気付いたみたいだな、そういう訳だ。四対一、常識からしたら俺が不利だけど、この場所に常識は関係ないからな。全力でかかってきやがれ。」
逃げ場もない。
相手も本気で来ている。
こうなった以上仕方ない。
それに俺は、ここに来てから何も役に立ってないんだ。
ここでやらないで、何時役に立つんだよ。
「いいぜ。ここで決着を着けてやるよ。」
「トモだけじゃないわ。私たちも同じよ。」
「幹部が相手でも、俺たちなら絶対に勝てる。」
「博士やみんなの幸せのために、今日で終わらせる。」
三年間も長かったけど、苦しい日々は次の朝にはそれも全部おさらばにしてやる。
俺だけじゃない。
明日香も来斗も穂花も、みんな同じだ。
俺は零にヒーローって言われたんだ。
こんなとこでヒーローが負けるわけにもいかねぇ!
恐怖はない。
怒りもない。
ただ平和な明日を迎えるために、拳で悪を倒してやる。
「いくぞE1!」
「来い! 全員叩き潰してやる!」
俺はとりあえず何も考えなしに突っ走った。
奴がどんな異能を持ってるか分からねぇが、パワースーツの中は生身の人間と同じなんだ。
「先制は貰うぜ!“夕臓”」
トモが先制攻撃を仕掛けたのに対し、E1はそのまま俺の攻撃をまともに受けた。
普通なら、トモのパンチはアマチュアのボクサーと同じ威力があるが、異能のおかげで120%の力を発揮できる攻撃は、一撃一撃が強力なはずだ。
しかし、避ける素振りもしなかったE1の体には傷一つなく、攻撃が効いていないように見えた。
「どうした? この程度か?」
「なっ…!?」
「シッ!」
「ぐっ…!」
ヤベェ、効かなかった事に動揺しちまって隙を作っちまった。
しかし今の攻撃、完全に手応えはあった。
それなのに奴は無傷。
……いったい何をしたんだ?
まさか、アイツが来ているパワースーツのせいか?
「ちょっとトモ、大丈夫なの?」
「あぁ、大丈夫だ。どうやらあっちには、何かしらの異能で体をガードしているか、あのパワースーツのどっちかでガード下に違いないな。」
「…それなら、今度は一斉に攻撃をしましょう。」
「そうだな。来斗、穂花! 前に出るぞ!」
「分かった。」
「うん。」
俺が先方に走って、来斗が右から、穂花は左から攻撃を加えるやり方。
攻撃を続けていって、敵の異能を探っていくしかないな。
「くらえ! “雷獣”」
「ふん、温いな。」
「だったらこっちはどう。“捕縛”」
来斗の異能である『雷撃』で攻撃をしたが、やはり俺同様に効いてなさそうだった。
だけど穂花の異能である『捕縛』は効いたみたいで、あっさりとE1の体を縛る事が出来た。
「おっと、捕縛の異能を持ってる奴がいたのか。」
「よくやったわ、穂花。“一窮入魂”」
明日香の必殺、たとえ当たってもただで済むはずはないだろう。
E1はまた同じように受けに入ったが、今度は効いたみたいで、直撃した瞬間顔を歪ませた。
「ぐっ…」
「さっきは効いてなかったが、今度は骨に響かせるぜ!」
「やばっ…!」
「ぶっ壊れろ! “赫胴”!」
一瞬できた隙を逃さないで、奴の懐に入り込んで、今度は俺の必殺の“赫胴”を明日香の“一窮入魂”が当てた場所に叩き込んだ。
「ごほっ…!」
E1はトモの必殺技を受けて後方にぶっ飛び、部屋の壁に叩きつけられた。
この時、トモたちは確実に勝ったと思い込んでいた。
だけど現実はそうもいかなく、E1は壁にめり込んでたが、すぐに体を動かして壁から剥がれた。
「うそ…トモ兄の“赫胴”を受けても、まだ立つの…?」
「だけど、確実に効いてるみたいだわ。このまま一気に攻めていくわよ。」
明日香の言う通り、さっきのかかなり答えたみたいで、少しふらついた動きになってる。
それにあいつが着けてたパワースーツも、俺の攻撃でその部分だけが完全に壊れていた。
これなら勝てる、絶対に。
「すげぇな…初めてだぜ、こんなに傷を負ったのは。」
「そうかよ。だったら今度こそ終わらせてやるよ。」
「ひっひっひ…だったら俺も否定するために、全力で抵抗してやるよ。」
E1はそう言うと、両手に異能を展開させて、次の瞬間に消えてトモの目の前にいた。
「なっ!」
「受けときな。“サイコバースト”!」
E1が一瞬にして懐に入られたのに焦ったトモは、何も考えずに自分の異能でガードをしたが、それを貫通させるパワーに負けて、攻撃はガードを弾いて腹に直撃した。
「がはっ…!」
「トモ!」
「「トモ兄!」」
「他人より自分を優先したらどうだ。」
「はやっ…うっ…!」
明日香がトモの心配をしていたら、E1がすでに明日香に向けて攻撃を仕掛けてきていて、それに反応したのが遅かったせいで、E1の攻撃を受けてしまった。
「「明日香姉!」」
いきなり攻撃が来たと思ったらあっさり二人が倒された事に驚いた来斗と穂花は、その場から動く事ができず、ただ何があったのかを理解できないまま二人がやられたのを見る事しかできなかった。
「お~い、なーにあっさり終わっちゃってるのよ。」
「お、お前…今のが異能なのか…?」
「そうだよ。これが俺の異能、“具現神通力”。空間を捻じ曲げて攻撃を避けたり、威力を弱めたりしたりするのが可能な異能だよ。」
サイコパワー…なるほどな。
だから俺の最初の攻撃が奴に通用しなかったのか。
そしてさっき受けた攻撃で気絶しなかったのは、パワースーツと奴の異能で、ダメージを最小限にされたのか。
「しかし驚いたぜ。超強化と天穹がここまで強くなったとはな。こんだけ強ければ、俺達と一緒に世界を征服したほうが幸せになれるんじゃいのか?」
「ふざけんじゃねぇ…! 誰がお前らみたいに汚い存在と一緒に過ごすかよ…」
「まぁ、お前ならそう言うだろうな。だったら俺は、お前たちを絶望させるためにこうする事にするよ。」
そう言ってその場から消えると、ずっと動けずにいた来斗と穂花の首を掴むと、俺たちの近くまで歩いて見やすいように立った。
「おい…てめぇ何する気だ!」
「別に、俺のもう一つの力を教えてやるだけだよ。」
するとE1は二人に何かをし始めて、体に何かしらの刺青が浮き上がりだして、二人が一気に苦しみだした。
「がっ……ぁぁ…」
「く…苦しい…」
「E1! 二人に何をしたの…!?」
来斗と穂花が苦しみだした事に怒りが沸き上がってきてのか、明日香が声を荒げながらE1に叫んだ。
「なーに、ちょっとした呪いだよ。大丈夫だ、すぐには終わらない。」
そう言ってるけど、二人の苦しみ方からしたらそれが信じられなかった。
何やってるんだよ俺…さっさと体を起き上がらせろ!
「ついでだからいい事を教えてやるよ。俺はこう見えて地球にいた人間じゃないんだ。」
「ち…地球にいた人間じゃない…?」
「そっ。要は異世界人って事だよ。俺はこう見えて、パラディエスって世界から来たんだけど、勇者である彼は俺の存在に気付いていなかったみたいだけどね。」
「あんた、零の正体に気付いていたの!?」
「そうだよ。なにせ彼は6代目勇者であって、異世界では有名人だからねぇ。俺はあっちの世界の住人なのに分かってなかったみたいだけどな。」
零が前に言ってた勇者だった世界。
つまりこいつは零がいた異世界の人間なのか?
ということは…まさか…?
「お前、俺たちをこの部屋に連れてきたのは…」
「その通り。俺が使える魔法の一つ、“空間転移”を使って移動させたんだよ。」
そういう事か。
俺たちは最初からこいつには勝てなかったのか。
零と同じ力を持ってるなら、そりゃあ余裕でおるのは当たり前か。
「さてと、これのリミットはおおよそ10分。それ以上過ぎればこの二人は終わり。逆にそれ以内に俺を倒せば二人は助かる。」
「10分……随分と優しく長い時間を与えるのね。」
「当たり前だろ。何せ俺は戦いが大好きだからな。逃げも隠れもしない、全力で誰かと戦いたいんだよ。」
戦闘狂かよ。
いや、別におかしくはないか。
スコーピオンにいる以上、そういった奴らがいても当然な事だ。
…二人とも…少しだけ耐えてくれよ。
「OK……それじゃあその時間までに、お前をぶっ潰してやる。」
ようやく体が動かせれるようになって、俺はゆっくりと体を動かして立ち上がった。
明日香も俺と同じようにゆっくり立ち上がって、目の前にいるE1を睨んだ。
「いいな、その目。屈してないその目が、俺を昂らせてくれる。」
「俺はヒーローに憧れた。悪を倒す姿に、昔からなりたかった。それを明日香は、零は、絶対に馬鹿にしなかった。」
昔俺は、自分の夢を初めて二人に教えた。
悪を倒すヒーローになりたいと。
二人は俺の夢を馬鹿にはせず、むしろ応援してくれた。
それが嬉しかった。
だから俺も二人を守ろうと、悪い奴を何度も倒してきた。
「俺の拳で、お前という悪をぶっ倒す!」
「私も、トモと零のために…来斗と穂花と博士のために、あんたを倒す!」
「いいぜ! 同時に掛かってきやがれ!」
ヒーローは拳で戦うのが基本なんだ!
決してパクリじゃない!




