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105話 部下の責任は上司の責任

「あーもう! 何処行ったんだよ、あの狂剣士は!」


俺はアジュールを連れて、頭に血が上った状態で何処か行ってしまったサヨリを絶賛探している最中だった。

そして今現在、全力疾走で地下をずっと走り回っております。


「我が主、もしかしたらすでに外に出られている場合もあるのでは?」


「……もうその可能性しかなくなったよ! はぁ…仕方ねぇ、俺との繋がりを利用して逆探知してやる。」


まぁ実戦は初めてだし、そもそもちゃんとできるかどうかわからないけど、言ったからにはやってやるしかないよな。

やり方は簡単で、【救済王ノ意思(アダム)】の中にある『従者魂(ソウルジェム)』を使って従者の契りを繋いでいるサヨリを指定し、さらに同じようなやり方で、リラの神術を使って探知すると言ったやり方だ。


ただこれの問題なのは、リラの加護を持ってない俺が、リラの神術を使えるかどうかが問題だ。

果たしてうまくいってくれるかどうか……


「神術“栄光の箱舟”」


――――――――――ポーン。


よっしゃ反応あり!

そんでまさかの使えた! やったぜ!

多分リラよりかは弱いだろうけど、明らかに俺にも使えた。

リラの神様、ホントにありがとう。


「見つけた。」


「何処にいましたか?」


「地下に入る前の階段。多分俺の氷を壊そうと必死になってると思うな。」


サヨリは頭に血が上って理性がほとんどない状態だけど、強い反応に敏感で、それに反応して動いているような感じだ。

そして今、上には巨大な反応が数体。


一つは真莉亜。

一つはクソビッチ。

一つは何かわからないでかい反応が四つ。


多分これに反応して外に出ようとしてるのは確定だろう。


「とりあえず外に出る前に止めるか。」


俺は虚空門(もん)を使ってすぐにサヨリのいる場所まで飛び、目の前には暴走状態のサヨリが、丁寧に自分の大剣で氷をバキバキ壊していってた。


「我が主、私が止めましょうか?」


「いやいい。いつでもこうなってもいいように、対策はあるから。」


サヨリに近づくと、向こうも気付いたのか、大剣を振り回すのをやめて、こっちを睨んできていた。

そして顔を見て確信。

いつも通りの暴走状態でした。

いや、ホント勘弁してほしいわ。

何でこの戦闘狂はこんなに血眼で戦場に行こうとするの?

バカなの? 死ぬの?


「うぅぅ……うわあぁぁぁ!」


あーあー、乙女がしちゃいけない顔になっちゃってるよ。

そんで避けても意味が無いのはもう理解している。

仕方ない、さっさと止めますか。

それじゃあいつもの特効薬の雪玉を顔面に目掛けて…


「おりゃァァァァァ!」


雪玉をサヨリに全力で投げて、それをまともに受けたサヨリは一瞬にして凍って、その場から動かなくなった。

これがサヨリの簡単な止め方、凍らせて止める。

凍って動けなくなるついでに、頭も冷えて落ち着く。

まさに一石二鳥なやり方だ。


「あの、我が主。今投げた雪玉は一体?」


「今の雪玉は“瞬間氷結雪玉(スリーズボール)”って言って、表面はただの雪玉だけど、中に液体窒素と同じくらいの冷却を魔法で実現させてるの。」


ネーミングセンスがダサいのは、俺が適当に付けた名前なだけで、実際には雪玉としか言ってないから、別に変なこだわりはない。


「それにしても、凍ったサヨリ殿は大丈夫なのですか?」


「大丈夫だよ。凍ってるけど意識はちゃんとあるし、お湯を掛ければすぐに溶けるから。」


「あ、そうなのですね。」


まぁ今溶かしても意味はないから、とりあえず俺の虚数空間の先に入れ込んでおくか。

あとは上に行く前に、ここに残ってる全員を安全な場所に連れて行けばいいか。


「主君!」


「ん? シグレか。」


後ろから声と一緒に気配を感じて振り向くと、そこにはシグレが一人で立っていた。

シグレが一人って事は、何かあったのかもな。


「何かあったのか?」


「はい。実は母上殿との行動をしている際に、地下で魔物にさせられていた人が数人いまして、分身を使って外に運べる人を探していたのです。」


どうやら予想は当たってたみたいだな。

地下って事は、俺が猫に教えてもらったあのキノコの培養施設のような感じで、まだ地下に行けるような場所があったんだな。


「人数と容態は?」


「数は16名。容態は昏睡状態で、全員魔物にはなっておりません。」


「そうか。だったら俺が行こう。アジュール、付いて来てくれ。」


「はい。」


そうとなったら、気配で場所の確認。

場所は……ここか。

近くにいるのは、ルナとエミリアの二人か。


「零!」


「トモ。それに先生たちも。」


「って、うぇ!? お、お前…なんだ、その格好!?」


「あぁ、これは――――」


「零くん!」

「おーい、勇者。」


「ん? あぁ、母さん。それにレーヴェも。」


俺がその場所まで行こうとしたら、まさかの地下に侵入をしていたメンバーが全員この場に集まってくれた。

いや全員じゃないか。

ここにルナとエミリアがいない時点で全員じゃないわ。


「―――で、トモの話を続けるけど、これは魔装って言って、まぁ…鎧の代わりみたいなものだ。」


「それが鎧なのか…?」


「全然普通の服にしか見えないよ。」


まぁ初見から見たらそう思うよな。

俺もコレが鎧なんて思いたくないもん。

でも鎧の代わりになってもん。


「ま、別の日にちゃんと話すよ。」


「ねぇ零くん、上の方から巨大な反応がしてるけど…」


「あぁ。一人は真莉亜で間違いないよ。後はクソビッチと周辺にあったビルがロボか何かになってるんだろう。」


「白崎くん、神崎さんの反応なんだけど、まさか彼女も魔王に?」


あぁ、やっぱそこに食いつくよな。

まぁこの世界に異世界の魔王が二人になってしまたら、笑える冗談じゃないのは確かだし、不安にもなるだろう。

よし、ここは味方である事を前面に出して説明しよう。


「大丈夫ですよ先生。真莉亜は完璧に自我を持ってますし、それに――――もうアイツの迷いはなくなってますから。」


かなりあっさりとした事を言ったけど、事実なのは本当だ。

今の真莉亜は、もう何も恐れていない。

俺への不安もなくなれば、過去からのしがらみからも解放されている魔王マリアベルは、最強の魔王として君臨しているのだから。


「……そうですか。でしたら教師である私ができるのは、生徒である彼女を見守る事をしたほうがよろしいですね。」


「ありがとうございます。」


さて、こんな空気でのんびりとはできないし、さっさと用事を済ませていくか。

ここに全員いるのなら、分断して動いたほうがよさそうだしな。


「今、上にクソビッチ…色欲がいる以上、トモと来斗は迂闊に外に出る行為は危険すぎる。それに俺はまだここにいないといけなくなったから、二人は俺と一緒に付いて来て。」


「何でだ? 敵が外にいるのなら、全員で襲い掛かった方が手っ取り早いんじゃないか?」


「トモは知らないだろうけど、色欲は最強の洗脳を持ってるんだ。奴に洗脳されたら、それこそ洗脳を解かない限り一生奴の手駒にされちまうんだぞ。」


「うげっ…そんなにヤバい奴なのか?」


ヤバい奴ではすまないだろうな。

色欲に加えて、奴は元神の神徒。

たとえ色欲が封じられても、神徒としての実力はかなり厄介だろう。

色欲を持った神徒に、4体の巨大ゴーレム。

メンバーはもう限られているな。


「とりあえず先に母さんと先生、それにアストレアとレーヴェを外に出すから、真莉亜のバックアップに入って。」


「うん。」

「分かったわ。」

「りょ。」

「おっしゃあ!」


「俺たちはどうするんだ?」


「トモや明日香たちは、俺と一緒に付いて来てほしい。」


トモたちは外に出ればやられる可能性は大だし、結界の外に出れば安全だろう。

でもどうせ見てられなくなって、誰の話も聞かずにクソビッチに襲い掛かりそうだし、俺と一緒に来てもらった方が安全かもな。

それじゃあメンバーも決まった事だし、虚空門を出しますか。


「これに入れば外に出られるから、そっちは任せるよ。」


「了解。零くん、あとはお母さんたちに任せてね。」


そう言い残して門の中に入っていき、四人が無事に行ったところで、門を閉じて行動を開始した。


「シグレ、案内してくれ。」


「承知。」


シグレを先行させて、俺たちはその後を追うかのように付いて行った。

それにしても、ホントにここのアジトは広すぎるよな。

工場地帯の半分は占めてるだろうし、強盗や何もかもで資金源を盗み続けてここまでさせたのだろうな。

汚い、さすが色欲汚い…いろんな意味で。


「この先です。急いでください。」


「急がなくてもいいぜ。何せここから先には行かせる気はないからな。」


『―――!!』


前から声が…

今おる中であり得るなら……おそらく幹部か…


「初めまして、侵入者ども。俺は幹部最強の、E1だ。」


やっぱ幹部か。

ここにいるって事は、待ち伏せていたのか。

洗脳は……分かんねぇな。

それに何だ、この反応は?


「E1…!」


「久しぶりだな、超強化(フルパワー)天穹(アーチャー)。ずっと別の部屋で見させてもらってたけど、随分とお荷物状態みたいじゃねぇか。」


「黙れ。お前たちのせいで何年も逃げる毎日だったんだ。それも今日で終わらせてやる。」


何年も逃げてた?

そんなのこいつ等の口から聞いてないって事は、黙ってたんだな。

明日香が俺を見て申し訳なさそうにしてるし。


「へへっ、お仲間と一緒にまとめて相手してやるよ……って言いたいけど、超強化(フルパワー)天穹(アーチャー)、それに横にいるガキの四人以外は特別に見逃してやるよ。」


え、見逃す? 俺たちをか?

何でわざわざ特別に見逃す必要があるんだ?

もしかして数の暴力は嫌なのかな。


「何のマネだ?」


「別に深い理由はない。ここで決着を着けたいのなら、よそ者は必要ねぇじゃねぇかよ。」


あぁ…E1の言葉を略すならこうか?

『決着を着けてやるから、よそ者は邪魔するな』って訳か。

うーん、向こうがそうしてるし、下手に刺激させないほうがいいかもな。


「トモ、どうする?」


「…行ってくれ。ここは俺たちでどうにかする。」


「零、E1の話に合わせて。ここは、私たちで相手するわ。」


どうやら、トモも明日香も合わせるみたいだな。

それに来斗と穂花もさっさと行けって視線を送ってくるし、ここは敵さんとこいつ等に甘えますか。


「分かった。ただこれだけは言っておく―――――勝てよ、絶対に。」


「心配するな。ヒーローは負けねぇからよ。」


「その言葉、裏切るなよ?」


トモの目を見る限り恐怖はなさそうだな。

それじゃあ邪魔者はさっさと消えるとしますか。


「行くぞ、シグレ、アジュール。」


俺は二人を連れてその場を後にして、ルナとエミリアのいる場所に向かった。

しばらくすると壁や床がボコボコになりだしてきた。

いや何があったんだよ。

どんな事すればこうなるんだよ。

まるで怪獣が暴れたような有様だな。

ただあり得るなら……レーヴェか。


「この穴です。明かりが薄くなってきているので分かりずらくなってますけど。」


おっと、どうやら到着のようですな。

確かに少し暗いから、明るくさせてみるとしますか。


「バルス!」


「「……」」


ヤベェ、だだ滑りじゃねぇかよ。

視界が把握出来たのに空気が冷たい。

二人そろって「何があったの?」って顔してしまってるし。

恥ずかしかぁ……やらなきゃよかった。


「ん゛っ…ん゛ん…! た、確かに地下に行ける階段があるな。この先にいるのか?」


「…あっはい。この先にお二人がおられます。」


一瞬シグレの返事に間があったけど、触れないでおこう。

それに触れたら俺が傷を負っちまう。

自分から傷に塩を塗りたくないからな。


「よし、行くか。」


穴の先にあった階段を下りていったら、そこには壊れたカプセルが大量にあり、ルナとエミリアの二人が待ってくれていた。


「あら、あなた達が来てくれたのね。」

「レイさん。それにアジュールさん。」


「遅くなってごめん。ここにいる人がそうなのか?」


「はい。独断で全員見ましたが、命に別状はなかったです。」


うん、シグレが言ってるならそうなのだろう。

シグレはこう見えてけが人を見る目は持ってるから、その辺りの判断は曖昧でも問題はないからな。

人数も16人、報告と同じ人数だから問題なし。


「それでは主君。お願いできますか?」


「任された。っとその前に、この馬鹿を溶かすのが先だな。」


サヨリを中から取り出してその場に置き、俺は水と炎魔法でお湯を作って、頭からぶっかけた。

凍ったサヨリを見ていたシグレが何かに察したみたいで、俺に聞いてきた。


「…主君。サヨリ殿が凍ってるのは、もしかして…」


「そっ、いつもの暴走だよ。」


「あぁ……またですか。」


俺がイラつきながら言うと、シグレも理解してくれて、冷たい目で凍ったサヨリを見た。

いやホントこいついい加減に反省してほしいわ!

人様に迷惑をかけるんじゃねぇっての!

どれだけ俺たちに迷惑をかければ済むんだよ!


「あ、あの、サヨリさんはどうして凍っているのですか?」


「あぁ…簡単に言うと、頭に血が上ったせいで暴走して、俺たちに迷惑をかけたから凍らせたんだよ。」


「え? 迷惑って…?」


「ルナ殿、後で某が教えますので、どうか今は触れないでください。」


「は、はい。」


すまんな、シグレ。

帰ったらお前の好きなかりんとうを用意してあげるからな。

というか、そろそろ言ってやらんといかんな。


「シグレ、いい加減その一人称はやめなって前に言ってただろう?」


「うっ…し、しかし、族にいた時からずっとこうしないといけなかったので、今更帰るのはどうかなっと。」


相変わらず昔から律儀なもんだな。

まぁ助けられた恩でこうなってるのだから、しょうがないのか。


シグレの故郷は大体分かってるだろうとは思うが、シグレの一族は、日本の忍者の末裔にあたる存在だ。

どうして忍者が異世界にいるのかは簡単で、引き裂けた道(リバーゲート)がとある忍者の里を集落ごと飲み込んでしまって、異世界に伝来されたのが答えだ。


「お前の族はなくなっても、お前の心の中に存在してるんだから、今更変えたって誰も言わねぇよ。」


「うぅぅ……わ、分かりました。それが…いえ、ボク(・・)…でよろしいですか?」


「うん、そっちの方が接しやすくていいぞ。」


素晴らしいギャップ萌えだ。

俺でなきゃキュン死しちゃうね。

シグレの一人称が変わった事に驚いていたルナだが、それで接しやすくなったのか、自分から話しかけに行った。

それを見ていたエミリアが、意外そうな顔をしていた。


「驚いたわね。ルナが自分から話に行くなんて何時ぶりかしら…?」


「珍しいのか?」


「身内以外ではね。同じ獣人だからなのかもしれないけど、あの子から話しかけていくのは、私たちにとっては嬉しい事だわ。」


「そっか。ならこれからはあれが増えていってくれるといいな。」


エミリアの言う通り、最初の頃からルナは俺たちに無理して接してきているような感覚がした。

真莉亜に聞いた事があったが、ルナはリラと同じで親から迫害を受けていたのを聞いていたから、尚更なんだろう。


「ほいっす!!」


「あ、起きた。」

「おはようサヨリ。気分はどうだい?」


氷を溶けてからずっと寝ていたサヨリが起きて、そばにいたエミリアと俺で冷たい視線を送っておいた。

最初は何処か分からずにキョロキョロしていて、俺たちの冷たい視線に気付いて、自分が何をしたのかを理解した瞬間、黙って土下座をし出した。


「また……ご迷惑をおかけしました。」


「ホントだよ。いい加減その病気を治せよ。」


「は、腹を切れば許してくれますでしょうか?」


「しなくていいわアホンダラ。しかも腹切ればエミリアの餌食になるから、倍近くの苦痛を味わう事になるぞ。」


「あら、別に吸ってもいいわよ?」


「やめてくれ…」


こんなとこで腹を斬られたらたまったもんじゃない。

しかもまだ終わってないんだから、ちゃっちゃと終わらしてから真莉亜の援護に行かないといけないしな。

とりあえずサヨリ(ばか)も頭が冷えて元に戻ったし、ここに眠っている人たちを全員、虚数空間にしまっちゃおうかね。


「よし、これで完了っと。さて、俺たちも外に出て真莉亜の援護をしに行くか。」


「主君。親友の方はどうされましょうか?」


あぁそうか。

あいつ等がいるから、誰かは残らないといけないのか。

……とりあえずシグレでいいか。


「シグレ、トモたちの邪魔にならない所で見ていてくれないか?」


「承知しました。終わりましたらボクから主君に念話を送ります。」


「分かった。それじゃあ、俺たちも外に出るぞ。」


虚空門(もん)を外につないで、早速援護に参りますか。

あ、サヨリは外で待機させるようにしておくか。

また暴れてもらったらめんどいからな。

サヨリのキャラ設定

「誰か個性の強いキャラがいるかな?」

「だったら一人くらい血に飢えた奴を入れたらどうだ?」

「なるほど、バーサーカーか。」


そして今のサヨリがある

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